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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年11月号

全国の児童発達支援事業と放課後等デイサービスの実態調査からみえる利用児像

小澤温

1 はじめに

児童発達支援事業(児童発達支援センターを含む)は、2012年の児童福祉法改正により、これまでの障害種別による4種類の通園事業が一元化することによって制度化された。放課後等デイサービスは、同様に児童福祉法の改正により、これまでの児童デイサービスを改変し制度化された。その後、この事業は増加し、特に放課後等デイサービスの増加は激しく、その実態解明が喫緊の課題となっている。このような状況をもとに、本研究注)は、児童発達支援事業(児童発達支援センターを含む)と放課後等デイサービスの業務実態の把握を行うことを目的とした。

2 調査対象と調査方法

児童発達支援事業、放課後等デイサービス事業を合計すると、全国で10,033か所(2015年7月時点で、児童発達支援事業3,872か所、放課後等デイサービス6,161か所)に及ぶため、全体の2割を目途に標本抽出をし、最終的には1,924か所に質問紙を送付した。なお、児童発達支援センターのうち医療型105か所には悉皆調査を実施した。

質問項目は、1.事業所の属性、職員体制、支援内容、2.利用者の状況(障害の種別等、併行通園、サービス利用など)、3.職員の職種、配置、4.関係機関との連携、である。調査は2015年12月~2016年1月に実施した。本調査は、研究代表者の所属機関(筑波大学)において研究倫理委員会の承認を得た上で実施した。

3 調査結果の概要

(1)児童発達支援事業、放課後等デイサービスの事業所の概要

677事業所(このうち放課後等デイサービス231か所)から回答を得た(回収率36.1%)。

(福祉型)児童発達支援センターは社会福祉法人の経営が多く、(医療型)児童発達支援センターは公営、社会福祉事業団の経営が多かった。児童発達支援事業では公営、社会福祉法人の経営が多く、放課後等デイサービス、多機能事業所ではNPO法人、株式会社の経営が多くみられた。このことから、比較的利用者や職員の多い事業である児童発達支援センターの場合は、公営、社会福祉法人の経営が多く、比較的小規模な事業である放課後デイサービスはNPO法人、株式会社などの経営が多いことが示された。

(2)利用児童の概要

(福祉型)児童発達支援センター、(医療型)児童発達支援センター、児童発達支援事業においては0歳からの利用があり、難聴・肢体不自由児など生後早期に発見される子どもの支援が早期に開始されていることが示唆された。併行通園に関しては、3歳から始まり4歳、5歳と年齢とともに併行通園をする児童数が増えており、事業所種別では、(福祉型)児童発達支援センターで37.9%、(医療型)児童発達支援センターで20.8%、児童発達支援事で55.8%であった。

利用児の主たる障害については、(福祉型)児童発達支援センターでは知的障害、発達障害児の数が多く、また、聴覚障害児の多くが(福祉型)児童発達支援センターを利用していることも明らかになった。(医療型)児童発達支援センターは肢体不自由児、重症心身障害児が多く、児童発達支援事業、放課後等デイサービス、多機能事業所は知的障害児、発達障害児が多く利用していた。

(医療型)児童発達支援センターでは、医療ケアを必要としている児の割合が高いが、実人数でみると、放課後等デイサービス、多機能事業所においても数多くの医療ケアを要する児が在籍していることが示されている。難聴に関しては、旧・難聴幼児通園施設であった(福祉型)児童発達支援センターの在籍児が多く、人工内耳を使用している聴覚障害児の数も(福祉型)児童発達支援センターに多いが、放課後等デイサービス、多機能事業所にも少なからず在籍していることが示された。

放課後等デイサービス(調査回答の231か所)の利用児合計12,268人うち小学生は7,710人(62.8%)、中学生は2,589人(21.1%)、高校生は1,969人(16.0%)であった。特別支援学校は6,856人(55.9%)、地域の学校は5,412人(44.1%)、このうち特別支援学級は2,955人(24.1%)であった。放課後等デイサービスについて、自事業所の平均的な利用日数は3.17日、他事業所の利用日数は2.47日であり、他の事業所利用日数を合わせると、週4~6日の利用が多い。

4 現状と課題

(福祉型)児童発達支援センター、(医療型)児童発達支援センター、児童発達支援事業は、2012年の法改正以前に、すでに通園施設や児童デイサービスとして設立運営されていたことから公立、社会福祉法人の経営が多い。これに対して、放課後等デイサービス、多機能事業所は、2012年の法改正以降の新規事業なので、設置母体が幅広く、特に、株式会社やNPO法人を中心として、急速に設置されたことから、脆弱な運営基盤の上で事業を行なっていることが明らかになった。児童発達支援センターは障害児の毎日の生活の場としての利用が多いが、放課後等デイサービス、多機能事業所では毎日の生活の場としてではなく、適宜利用されていることが多く、日によって利用児が変動することも示された。

(おざわあつし 筑波大学)


【注釈】この調査研究は、厚生労働科学研究費補助金・障害者対策総合研究事業「障害児支援の現状分析と質の向上に関する研究」(平成27年度)(研究代表者:小澤温)による。