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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年11月号

ワールドナウ

第9回WBU総会に参加して

指田忠司

はじめに

去る8月19日から24日まで、米国フロリダ州オーランドでWBU(世界盲人連合)の第9回総会が開かれ、日本からは、当法人理事長の竹下義樹ほか4人の国家代表とオブザーバー3人が参加した。また今回も、2012年の第8回総会(タイ王国、バンコク)と同じく、総会後半はICEVI(国際視覚障害者教育会議)との合同プログラムとなったため、会場は両会議の参加者であふれていた。

筆者は2008年の第7回(スイス、ジュネーブ)以来8年ぶりに参加し、8月21日から4日間、総会及び関連イベントに参加した。本稿では、総会全体の模様とともに、一新されたWBU新役員の顔ぶれ、総会決議やワークショップ、機器展示会などの関連イベントの様子について報告する。

第9回総会の概要

(1)今回の特徴と参加者

WBUでは、1984年の結成以来、4年ごとに各地域持ち回りで総会を開催しており、北米で開催されるのは第5回総会(1996年、カナダ、トロント)以来20年ぶりであり、米国での開催は初めてである。総会のホストは、米国最大の視覚障害当事者団体、NFB(全米盲人連合、1940年設立)で、総会会場となったフロリダ州オーランドのホテルは、ここ数年、同連合の全国大会の会場となっている。

今回の総会には、加盟約170か国のうち99か国・地域の代表が参加したという。日本からは、前述のとおり、国家代表5人が、出席できない3人分の委任状を持参して出席した。今回の総会は夏休みシーズンで、北米屈指の観光地で開かれることから、旅費・宿泊費も高額となり、途上国からの代表派遣に問題があったという。WBUでは、途上国代表の総会参加について、機会の平等を保障する観点から参加費、旅費等の補助を行う仕組みを設けているが、今回は高額の費用のため募金集めに難渋したようだ。

(2)各種報告と役員選挙

総会では、19日の開会式の後、第8回総会以降4年間の活動報告、会計報告、6つの地域協議会の活動報告などが行われたほか、定款改正、本部役員選挙、加盟各国から提出された決議案の審議と採択などが順次行われた。

このうち、本部からの報告、地域協議会の報告、定款改正などは原案どおり承認された。新役員の選挙では、会長、第1副会長、事務局長、会計などが無投票で承認され、第2副会長のポストについて国家代表の投票が行われた。そして、総会3日目の21日までに次の本部役員が選出された。

(3)新役員

まず、会長にはF・K・シュローダー博士(米国、全盲男性)が選出された。同博士は、クリントン政権下の1993年から8年間、連邦教育省リハビリテーション部長として活躍したリハビリテーション行政の専門家で、2012年からWBUの第1副会長を務めてきた。次いで、第1副会長にはスペインのF・リアニョ氏(全盲男性)が選出された。同氏はONCE(スペイン盲人協会)の国際関係部門を担当している人だが、これまで、WBUなどの国際団体にはほとんど出席したことがないという。

選挙になった第2副会長には、タンザニアの国会議員、E・マチャ女史(全盲)が、カナダから立候補した女性を圧倒的な得票差で当選した。また、事務局長には、インドのA・K・ミッタル氏(全盲男性)、会計にニュージーランドのM・エイベル・ウイリアムソン女史(全盲)がそれぞれ当選した。ミッタル氏はこれまで会計を2期8年間担当してきた人。エイベル・ウイリアムソン女史は、これまでWBUAP(世界盲人連合アジア太平洋地域協議会)の執行委員、女性委員会の委員長などを2期務めてきた経験をもっている。

(4)WBUAPの総会と役員選挙

総会3日目の21日午後からは、6つの地域協議会ごとにそれぞれ総会や集会を開いた。日本が属するWBUAPでは、総会を開いて、活動報告、会計報告などが行われ、原案どおり承認された。注目された役員選挙では、田畑美智子氏(日本、強度弱視)が2期目の会長に無投票で当選。副会長には李慶忠〈り・けいちゅう〉氏(中国、全盲男性)、事務局長にT・カヒル氏(フィリピン、全盲男性)、会計にN・ジャーヴィス氏(ニュージーランド、全盲男性)、地域代表執行委員に、G・ドンドブドルジ女史(モンゴル、全盲)、N・スワナウット女史(タイ、全盲)、W・ジョリー氏(オーストラリア、全盲男性)がそれぞれ選出された。田畑会長とドンドブドルジ女史以外、すべて新人となったことから、始動にはしばらく時間がかかりそうだが、田畑会長の指導力のもと、これまでの地域協議会内の連携が発展することを期待したい。

(5)ワークショップなど

今回の総会では、障害者権利条約とマラケシュ条約に焦点が当てられ、この2つの条約の批准と効果的な実施を通じて視覚障害者の生活と福祉の向上を図ることを目的に、複数のワークショップが企画されていた。筆者は、障害者権利条約に関するワークショップに参加したが、障害者権利委員会の審査方法の改善、パラレル・レポートの意義などについてオーストラリア、クロアチア、英国などの専門家が意見交換をしていた。また、マラケシュ条約については、9月30日の効力発生までこぎ着けたことが報告され、今後の批准に向けて更なる啓発活動の必要性が指摘されていた。

まとめにかえて

総会会場では熱心な討論が行われていたが、これと並行して、支援機器の展示会が行われていた。欧米各国のほか、日本からの2社を含めて約20社がブースを出してそれぞれの製品を展示していた。また、ホテルの駐車場を会場に、視覚障害者が各種のセンサーやGPS(全地球方位システム)などを活用して、視覚障害者が自力で運転する自動車の試乗会も行われ、人気を集めていた。

日本から提出した会費制度の見直しを内容とする決議案については、賛否の意見が続出し、結局、見直しのための作業部会を設置するのではなく、本部執行委員会で4年後までに検討することで決着したが、日本の提案がこれほど議論の的になったのは初めてのことだろうと思われる。今後の詰めを期待したい。

(さしだちゅうじ 社会福祉法人日本盲人福祉委員会常務理事)