音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年8月号

えちぜん鉄道の取り組み

佐々木大二郎

当社・えちぜん鉄道は、二度の正面衝突事故を起こし、福井からの鉄道事業を撤退した前身の京福電気鉄道の施設をそのまま譲り受け、平成14年に設立されました。現在ご利用のお客様は、通勤・通学・回数券の日常利用が約63%、その他普通乗車券やフリーきっぷ・企画乗車券などの非日常利用が約37%となっております。

平成28年利用目的別内訳
図 平成28年利用目的別内訳拡大図・テキスト

福井市を起点に、永平寺町と勝山市を結ぶ勝山永平寺線と、あわら市と坂井市を結ぶ三国芦原線の2路線からなり、沿線には東尋坊や大本山永平寺、恐竜博物館にあわら温泉と、福井県嶺北の主要な観光地も多数あり、近年は県外からの観光のお客様も増えております。

えちぜん鉄道は、開業から14年間「地域共生型サービス企業」を企業理念に、さまざまな取り組みを行なってまいりました。なかでも、特徴的で注目を集めているのが「アテンダント」の導入です。

当初、開業前に鉄道施設の状況や沿線地域の状況を確認して回ったときに気づいたことは、まず、高齢者の方が非常に多いということでした。次に、各駅がほとんどバリアフリー化されていないこと、駅周辺の施設やバスの情報も無いことでした。

当社では、駅の設備をすべてバリアフリーにする予算も無く、また、駅をすべて有人駅にすることも経営的に厳しい中で、電車内に1人、切符販売や乗降補助、接続バスの案内や駅周辺の情報提供ができる人材(アテンダント)を乗車させることで、課題の解決を図りました。

アテンダントの乗車時間は通勤・通学の時間帯を除く日中に限定し、買い物や通院などにご利用される高齢者の方や、観光で来られる県外のえちぜん鉄道に乗り慣れない方の対応を中心に乗務しています。

開業から14年が経ち、今では地域の皆様に愛され、お客様とえちぜん鉄道のパイプ役として活躍しています。

次に、アテンダントの障害者の方に対する主な業務内容としましては、基本的に「電車とホームの間が大きく開いている駅でのアナウンスによる注意喚起」「ご高齢や白杖の方、車椅子の方に対する乗降補助」「聴覚障害のお客様との筆談等での対応」が挙げられます。ほかにも、車内の揺れなどで転倒されないよう発車・停車時には、注意を怠らないよう気をつけております。アテンダントのちょっとした気配りやお声掛けがお客様の安心感に繋(つな)がるものと考えております。

会社全体としても、無人駅等での車椅子のご利用の方に対してはあらかじめ、ご利用の日時・駅をご連絡いただくことで社員を派遣し、スムーズにご利用いただけるよう取り組んでおります。また、ホームの段差につきましても、運転士・アテンダントが対応できるよう携帯用スロープの設置を全車両に行なっております。

最近では、認知症の方のご利用につきましても、地域包括支援センターとの情報交換などを実施し、対策を協議・検討しているほか、視覚障害者ヘルパー向けの講習会にも駅務員・アテンダントの参加を促し、業務に活かせるよう取り組んでおります。

今後、ますます高齢化が進む中で、障害をおもちの方も必然と増加の一途をたどると思われますが、当社のような地方鉄道では、ハード面における大規模な投資改修は困難です。そこは、これからも当社のソフト面でのきめの細かい人材によるバリアフリーを目指してまいりたいと考えます。

(ささきだいじろう えちぜん鉄道(株)営業開発部)