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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年8月号

ANAにおける取り組み

白井昭彦

ANAグループでは、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、障がい者スポーツを含めた各種競技の普及振興や、ハード・ソフト両面でのユニバーサルサービスと心のバリアフリーの強化に取り組んでいます。世界トップクラスの「ユニバーサルサービス」を実現し、文化や言語、国籍、年齢、性別、障がい等を問わず、世界中の多様なお客様の懸け橋となりたいとの思い、また世界と日本各地をつなぎ、新しい価値を生み出すきっかけとなりたいとの思いからです。

当グループでは、障がい・傷病でお手伝いの必要なお客様に、ご予約から空港・機内まですべての旅のシーンで安全・快適にお過ごしいただけるよう、さまざまなお手伝いを提供しております。

ANAご予約の専用窓口「おからだの不自由な方の相談デスク」では、病気やけが、障がいによりおからだが不自由でご搭乗に不安のあるお客様に、航空機のご利用に関するご相談やご希望を伺っています。聴覚や言語に障がいがあり予約やお問い合わせの電話ができないお客様向けには、TV電話による遠隔手話やチャットによりオペレーターがANAへ電話をする「代理電話サービス」を行なっております。上体をご自身で支えられないなどで座位が保てないお客様の補助具として、上体を固定する「アシストシート」や「サポートベルト」のお貸し出しを承っております。また、お座席に座ることができず、離着陸時も横たわった状態でご搭乗されるお客様には、「ストレッチャー」でのご搭乗の相談を承っており、転院される方を中心に搭乗の手配を行なっております。

また、初めての経験や慣れない環境への対応にご不安を抱えている方にも、安心して空の旅を楽しんでいただきたいとの思いから、飛行機の乗り方を予習・事前に準備ができる「そらぱすブック」をご用意しています。

ANAセールスのご予約では、「お体の不自由なお客様の旅行相談デスク」の窓口で、心身の障がい、またはアレルギーを含む病気やけがをおもちのお客様、ご高齢のお客様のみならず、ツアー販売代理店からのご相談も承っています。ツアーへの参加について、心配なことや不安に感じていることなどのご相談やご希望を伺い、伺った内容にあわせて、ツアーをお楽しみいただくためのご提案や手配を行なっています。また、障害者差別解消法に関する旅行業者からの相談も実施しております。

羽田空港第2ターミナルでは、おからだの不自由な方、お子様連れ、お手伝いが必要なお客様にご利用いただける「SPECIAL ASSISTANCE カウンター」を設置しており、カウンターでは、「筆談ボード」や「コミュニケーション支援ボード」の他に、専用のタブレット端末を通じ、オペレーターがお客様と空港係員のやり取りを手話と音声で同時通訳する「遠隔手話通訳」や、係員の声を認識し文字で表示する「音声認識」のツールがあります。

また、大車輪を外すと機内の通路を通ることができる「空港用車いす」・体格の大きなお客様用の「大型車いす」・フルフラットの状態までリクライニング可能な「リクライニング車いす」・保安検査場の金属探知機に反応しないでスムーズに通過でき、大車輪を外すと機内の通路を通ることができる「樹脂製車いす」と4種類の車いすもご用意しております。ANAホームページでは車いすでのご搭乗についての動画もご紹介しております。加えて、出発ロビーにはご搭乗口までの歩行移動が不安なお客様のために、「電動カート」を2台ご用意しております。

心のバリアフリー強化のためには、当グループ社員が自らの問題として積極的に協力してバリアを解消していくことを目的とした「心のバリアフリーセミナー」・「補助犬セミナー」・「高齢者疑似体験」を実施し、障がいをおもちの方やご高齢の方が感じている心のバリアへの理解を深めています。また、特別支援学校・病院などを対象にした発達障害の子どもを持つご家族向けに搭乗体験も実施しております。

また、先月から当グループ全社員3万9千人を対象に、接遇の基本・サポート方法のe-learningを開始しています。人としての原点、サービスの原点に立ち返り、より多くのお客様に安心・安全・快適な空の旅を楽しんでいただけるよう、お客様とともに、社員とともに、社会とともに、価値ある体験を創り上げていきたいと考えております。

(しらいあきひこ (株)ANA総合研究所主席研究員)