音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年8月号

1000字提言

ノーマライゼーションという言葉のいらないまち(3)

戸羽太

東日本大震災から6年以上が過ぎた。

復興まちづくりは徐々に進み、今私たちのまちづくりは少しずつハード整備からソフト整備にシフトしてきている。

高齢者、障がい者、子どもたち、外国人などいろいろな人たちがこのまちで暮らしているし、これからも暮らしていく。

陸前高田市のまちづくりの最終目標である「ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり」

私がイメージする究極の目標は、陸前高田市全体を住民・来訪者のパワースポットにすることである。

震災で文字通り壊滅したまち、陸前高田。

たくさんの人々が犠牲になり、市内の家屋の半分が完全に姿を消し、中心市街地そのものが消滅したまち。

それでも、あと数年すればきっと真新しいまちとして蘇(よみがえ)るだろう。

私はいつも思う。

都会で暮らす人たちのみならず、日本中で人生につまずき、時に絶望を感じている人たちが必ずいるのだろうということを。

そして、復興を成し遂げた後のこんな会話を想像する。

「おい、お前は何をそんなに悩んでいるんだ? そんなに悩んでいるなら、少し会社を休んで陸前高田にでも行ってきたらどうだ?」

震災でボロボロになったまち。

それでも諦(あきら)めず、住民の努力とたくさんの方々からの応援で蘇ったまち。

悩んでいる人たちに陸前高田を訪れてほしい。

復活したまちを見て、人はどんな絶望の淵からも復活できるのだということを感じてほしい。

そして、その復活を果たしたまちでは、障がいがある方々が笑顔で店先に立ち頑張っている。

おじいちゃんやおばあちゃんが幸せそうに笑っている。

いつの日か、そんな光景を見ながらこう感じてほしい。

「俺の悩みも深いけど、このまちの人たちを見ていたら何だか元気をもらった気がする。もう一度、東京に戻って頑張ってみようかな」

一度は地獄を見た。

でも、人には無限の可能性があると信じている。

障がいがあっても、歳をとっても、もっともっと人生を謳歌してほしい。

そんな場所、そんなまちを作り上げることが私たちの真の復興である。


【プロフィール】

とばふとし。陸前高田市長。1965年、神奈川県足柄上郡松田町生まれ。東京都町田市育ち。東京都立町田高卒。会社員を経て1995年4月から陸前高田市議を務め、2007年3月に助役に就任。その後副市長を務める。2011年2月の市長選に初出馬、初当選を果たした。市長就任直後に東日本大震災により壊滅的な被害を受け、復興に向けた新しいまちづくりを進めている。