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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年8月号

検証 障害者差別解消法 第1回

「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」
~障害者差別をなくすための千葉県の取り組み~

千葉県健康福祉部 障害者福祉推進課共生社会推進室

1 条例の概要

本県では、平成19年7月1日に「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」を施行した。

「うつ病の薬を飲んだだけで会社を解雇された」「「盲導犬はちょっと…」と言われレストランへ入ることを拒否された」など、依然として、誤解や偏見のために、障害のある人は、日常生活のさまざまな場面で「生きにくさ」「暮らしにくさ」を余儀なくされている実態がある。このような実態を踏まえ、障害のある人に対する理解を広げ、差別をなくすために、全国に先駆けて制定した条例である。

この条例は、障害のある人に対する差別について、次の2つを「差別」として定義している。

1.障害を理由とした不利益な取扱い

障害のある人の日常生活や社会生活の場面に即して、福祉、医療、商品・サービス、雇用、教育、建物・公共交通機関、不動産取引、情報提供の8つの分野に関して定める、具体的な15の行為。

2.合理的な配慮に基づく措置の欠如

たとえば、視覚障害のある人にとって、音響式信号機のない横断歩道、バスの行き先案内や運賃表示、タクシーやエスカレーターの利用、自動券売機や自動改札など、社会にはさまざまな障壁があるが、このような日常生活や社会生活のさまざまな場面において、障害のある人が、障害のない人と同じような生活をすることができるよう、合理的な配慮に基づく措置を行わないこと。

また、条例では差別を解消するための仕組みとして、1.個別の差別事案について第三者を交えた話し合いにより解決を図る仕組みや、2.制度や社会慣行が背景にあって構造的に繰り返される差別について、さまざまな関係者がその解消に向け議論する仕組み、3.障害のある人のために頑張っている人を応援する仕組みを定めている。

2 差別解消に向けて

差別の中には、すぐに解消できるものもあれば、時間や費用をかけて解消していかなければならないものもある。

このため条例では、違反行為に対して罰則を設けず、第三者が間に入って、両者の主張をよく聞き、知恵を絞って解決を目指す仕組みを基本としている。

具体的には、身近な地域で相談業務にあたる「地域相談員」と相談員への助言指導や、事実の調査を行う「広域専門指導員」が地域での事案の解決を図る。また、地域での解決が困難な事案には、「千葉県障害のある人の相談に関する調整委員会」が助言・あっせんを行い、差別をしたとされる者が助言・あっせんに従わないときは、調整委員会の進言を踏まえ、知事が勧告を行うことができるようにしている(図1 個別事案解決のしくみ)。

図1 条例による個別事案解決のしくみ
図1 条例による個別事案解決のしくみ拡大図・テキスト

また、条例や広域専門指導員の周知を図るため、平成27年度から6月15日の千葉県民の日に啓発活動を実施している。

3 情報保障に向けた取り組み

条例により、誰もが暮らしやすい社会づくりを推進する一環として、行政の職員などが障害のある人と情報のやり取りをする際にどのような配慮を行うべきかを示すため、平成21年12月に「障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン」を策定し、平成29年3月に改訂をした。

このガイドラインは、障害のある人に対し、それぞれの場面(印刷物を作成する、窓口で対応する、会議を開催するなど)に応じ、具体的にどのような配慮をするべきかを示したものであり、県では、その趣旨の徹底を図るため、県庁職員などを対象にした研修会の中で啓発を行なっている。県内の市町村や民間事業者にも一層広めていくため、今後ともさまざまな機会をとらえてPRしていく。

4 今後に向けて

条例制定以来、啓発活動や相談対応の充実を図ってきたところであるが、依然として、周囲の人々の障害に対する理解の不足や誤解・偏見によって、障害のある人からの相談が多く寄せられている。

個別の差別事案の解決に向けた活動を積み重ね、障害者差別解消法や条例以外の取り組みと合わせて、障害のある人に対する差別をなくしていくことが重要であると考えている。

こうした取り組みを全国に発信し、また、全国各地の取り組みを本県も学ぶことにより、社会全体が「障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会」へと変わっていくことを期待したい。