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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年9月号

障害者防災リーダー養成の取り組み

八幡隆司

障害者支援センターの必要性

ゆめ風基金では2005年に設立10年を節目として、障害者の防災・減災を活動の柱に加えました。そして、この時に発行した「障害者市民防災提言集」においても、災害時に障害者支援センターを立ち上げることを提言していました。これは阪神・淡路大震災で障害者支援センターを立ち上げ、そこを拠点にして数多くの障害者支援を行なった経験によるものです。

2011年の東日本大震災では、早期に被災3県に入り込み、地元団体と協議し、被災地障害者センターを立ち上げてもらい、2016年の熊本地震においても、まず被災地障害者センターを立ち上げてもらいました。そして、この被災地障害者センターが被災障害者をはじめとした障害者支援に大いに役立つものとなっています。

各自治体の防災計画を見てもボランティアセンターの位置づけはあっても、障害者支援センターの位置づけはありません。ですから、大規模災害が発生した時には必ずボランティアセンターは立ち上がりますが、障害者支援の仕組みはつくられないのが現状です。しかし、東日本大震災を見ても、ボランティアセンターでは障害者支援まで手が回らないということがはっきりしています。

2004年の中越地震、2007年の中越沖地震では、新潟県が障害者相談支援センターの設置をしており、とりわけ2007年の中越沖地震の場合はいち早く障害者宅を訪問し、安否確認をするとともに障害者のニーズに応える活動を行なっています。しかし、その後の災害でこういった枠組みはできていません。

大規模災害が発生した時には、どこの地域においても被災地障害者センターをつくってもらいたいというのがゆめ風基金としての願いですが、まだまだ自治体レベルでつくってもらえそうにないので、まずは民間の障害者団体などでこの動きをつくろうと考えています。

障害者防災リーダー養成講座開講への想い

ゆめ風基金では、大規模災害が起きた時に、障害者を支援するセンターを被災地障害者支援センターと呼ばずに被災地障害者センターと呼んでいます。ひとつは被災地では被災していない障害者も、周りの病院やスーパーが被災したために支援を必要とすることがある。もうひとつは、災害前から本来福祉サービスを利用すべきはずだった人が、震災によって見つかり、災害によるものではなく震災前から困っていたという状況にあり、こういう人たちも含めて支援するという考え方があるからです。

実際に、災害が起こって被災地障害者センターをつくろうとするとさまざまな準備が必要になります。まずは、地元団体が複数集まって被災地障害者センターを立ち上げる構成員になってもらうことが必要です。そして事務所の所在地、代表、事務局長、会計を定め、事務所の準備、銀行口座の開設(寄付金の窓口となる)を進めなければなりません。口座開設には規約も必要となります。支援を行うにはボランティアを集める必要がありますが、ボランティアが宿泊する場所の確保もしなければなりません。ボランティアのコーディネートのための書類、支援を行うための記録書式などさまざまな文書も必要となります。

ゆめ風基金では、こういった被災地障害者センターの設立に必要なマニュアルや書式などを、昨年、データとしてまとめました(表1)。なお、被災地障害者センター設立に必要なデータは、http://tinyurl.com/ycrohrc8にあります。

表1

1はじめに
この文書
被災地障害者センターの立ち上げから準備まで
2ボランティア関係
これまでとこれから
ボランティアオリエンテーション資料
ボラシフト表
ボランティア8か条と注意書き
ボランティア申込書
ボランティア登録名簿
情報伝達・対応システム
3支援関係
現地訪問調査報告書
追録 要支援者票
電話 現地調査 報告書
物資提供後の状況調査票
要支援者 基本情報
4広報関係
被災地宮城チラシ
被災地熊本チラシ
被災地障がい者センターみやぎ(広報誌)
5その他事務関係
寄付金御礼
業務日誌ひながた
労働契約書(専従スタッフ)
6会計
被災地会計
被災地会計記入上の注意

このデータを基として、この他にも被災地障害者センターの設立に必要な知識を学んでもらおうと、今回、障害者防災リーダー養成講座を企画しました。

この間、被災地に出向いて、被災地障害者センター設立のサポートをしてきましたが、その中でボランティアは全国から集まっても中心になるコーディネーターが足らないということを痛感してきたからです。また今後、南海・東南海地震が予想されており、このような広範囲の地震が発生すれば、とてもゆめ風基金だけで対応できるものではありません。

また、被災地で直接活動するボランティアは結構体力が必要とされますが、コーディネーターの場合はボランティアに的確な指示を出すことが仕事なので、障害当事者にも担える役割となっています。その意味で、今回の講座には障害当事者にも積極的に受講してほしいと考えていました。

実際の運営と今後について

この企画は、国際交流センタービッグ・アイに共催団体となっていただき、広報や会場借り上げ、当日のお手伝いなどをしていただきました。チラシができて宣伝に入ると早速、視覚障害の方から参加申し込みが届きました。また、メールやインターネットを通じて宣伝をすると定員80人の枠に対して、わりと早くに定員を超える申し込みが殺到すると同時に、車いすの方、聴覚に障害がある方など多数の障害当事者の参加申し込みがありました。

内容としては、午前中にゆめ風基金の八幡が被災地障害者センターの実際の運営に必要なことを講義し、午後からは、AJU自立の家わだちコンピューターハウス所長の水谷さんが、被災地の障害者の要望についてどう対応するかのグループワークを行い、その後、両講師で質疑応答とまとめをするという形式で行いました。

ゆめ風基金としては全国でこの講座を開催し、たくさんのリーダーを養成して、災害が起こった時に被災地の支援にあたってほしいと考えています。すでに、受講者には受講修了書をお渡しするとともにメールアドレスなどをお聞きし、大規模災害が発生し、被災地障害者センターを設立する時にはゆめ風基金推薦の支援者として、中心的な役割を担うことを目的に入ってもらうことをお願いしています。

ただ今回は、第1回目の講座として、まだまだ講座内容の改善も必要と考えていますし、1日の受講だけでは日にちが経つと忘れてしまうことから、継続したグループワーク活動など中級的な講座も必要になるかと考えています。

今回は大阪で講座を開催しましたが、関東の方からこちらでもぜひやってほしいという声もあり、第2回目として、来年の2月ごろに横浜で開催することを予定しています。まだまだ試験的な取り組みですが、今後、充実を図っていきたいと思います。

(やはたたかし ゆめ風基金事務局長)