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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年9月号

難病患者の私が心がけていること

和久井美紀

私はアイザックス症候群という難病患者である。全身の筋肉が痙攣(けいれん)や痛みを伴う硬直を起こす。私の場合、常にその症状があるわけではなく、運動や寒さなどが症状を誘発する。なので、症状がない時には健康そうに見えることが一番厄介だ。長距離を歩くと下肢の筋痙攣や硬直を起こすことが多く、今でこそ外出時には車いすを使うが、ちょっとそこまでの買い物くらいは歩いて行かれる。もし外出時に災害に遭遇した場合、自分に病気があることをどのように伝えればいいのだろう?

私は幸いにも、大きな災害に直面したことがない。東日本大震災も、地震の起こる2か月前に、病気の治療のため家族で鹿児島に引っ越していた。実際に災害に遭った友達に聞くと、「被災しても、そこで手を差し伸べてくれる人はほぼ皆無だと思っていた方がいい」と言われた。障害者や難病患者だけでなく、みな同じ被災者なのだ。心にゆとりがなくなるのだろう。自分の身は自分で守らなければならない。そう思った。

では、自分が何を備えておけばいいのか?絶対に欠かせないものは薬だ。薬を飲み忘れると全身が痛み出し、とても動けない。外出時には最低3日分の薬を持ち歩くようになった。家には最低1か月程度の薬の予備がある。お薬手帳も持ち歩くよう心がけている。

実は、夫も私とは違う難病患者であり、家には酸素も吸引器も常備してある。いざという時のために、ご近所の方にはそれぞれの病気の説明が書いてあるパンフレットを渡し、ここには難病患者が住んでいるということを知ってもらうようにした。

とはいえ、まずは自分の身は自分で守ることが不可欠だ。少し心のゆとりができたころに、手を貸してもらえるよう、日頃からご近所の方と交流を持つように心がけている。そして、病気のことを知ってもらえるよう声に出すことも大切であると考えている。知ってもらうことから始めないと、いざという時に説明しても分かってもらえないかもしれない。

私たちは、すべて手を借りなくてもできることもある。援助してくださることはとてもありがたいけれど、できることは自分たちでやれる。どうしても助けてほしいところだけお願いすることが大事なのではないのだろうか?

災害時でなくても日頃から障がい者も支援者も声をかけあえる日常が望ましいと私は思っている。災害が起こらないことが一番の理想であるが、誰もが「いざ」という時のことを考えておかなければならないだろう。

(わくいみき アイザックス症候群りんごの会)