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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年9月号

検証 障害者差別解消法 第2回

茨城県における障害者差別解消の取り組み

茨城県保健福祉部障害福祉課

1 はじめに

茨城県では、障害のある人と障害のない人が対等な権利を持っていることを再確認し、誰もが安心して楽しく暮らすことができるよう「障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための茨城県づくり条例(障害者権利条例)」を、差別解消法に先駆けて、平成27年4月1日に施行しました。

本条例では、障害者差別相談室の運営や普及啓発活動についての規定を定めています。本県は、本条例に基づき、障害者の差別解消の取り組みに力を入れてきました。

2 障害者差別相談室

障害者差別相談室では、障害者からの電話、来所等による相談対応や、必要な助言及び情報提供を行なっています。相談員は障害福祉関係従事者(精神保健福祉士等)を3人配置しています。県内であれば、どこへでも出張し、必要に応じて当事者と顔を合わせ、ヒアリングや状況確認を実施しています。

相談者は不安と緊張でナーバスになっていることが多く、相談員は相談者との信頼関係を丁寧に築いていかなくてはいけません。そのために、まずは相談者の話をしっかりと聞くことを心掛けています。話を聞くことは、それだけでも相談者の精神的な苦痛を和らげる効果があります。また、状況の正確な理解は、適切な対応を行うために不可欠です。

昨年秋頃、視覚障害者の方から、工場見学に行った際に盲導犬の同伴を拒否されたという相談がありました。

当初は、相談者と工場側の意見が折り合わず、解決が困難なケースのように思われましたが、相談室は「どうすれば問題を改善できるか?」という、双方の言い分を粘り強くヒアリングしました。何度も現場に足を運び、お互いが譲歩・配慮できる合意点を探った結果、工場側が障害者向けの見学方法(手に取って感触・匂いが伝わるものを展示する等)を工夫するという提案をしてくれました。この提案に相談者も納得し、結果として、工場の見学方法の改善にも繋(つな)がりました。

差別問題の相談は、マニュアルどおり対応すればよいという簡単なものではありません。それでも、当事者と一緒に問題を考え、一つ一つの事案に対し誠実に取り組めば、解決できるケースは多くあります。

3 普及啓発活動

普及啓発活動は、差別解消のための主要な取り組みの一つです。

差別の問題は、障害のある方よりも、むしろ、大多数の障害のない方々にいかにして関心を持ってもらうかが大きな課題です。

本県では、昨年度、障害者権利条例のパンフレットを35,000部作成し、市町村役場、公共交通機関、ショッピングモール等に配布しました。

また、差別相談室に寄せられた相談をまとめた相談事例集を作成・配付しました。この相談事例集は本県ホームページ(注)からも閲覧することができます。相談事例集は、県障害福祉課が実施している出前講座でも教材として活用しています。差別的取り扱いの禁止、合理的配慮の重要性を説明する際、実際にあった事例はイメージしやすく、説得力があるため、講義で大変役に立っています。

より多くの県民の皆様に差別問題について関心を持ってもらうため、Jリーグのサッカーの試合でもPR活動をしました。車いす利用者らが、横断幕「みんなでつくる差別のない茨城へキックオフ!!」を手にグラウンドを周回しました。この取り組みは、(株)FC水戸ホーリック様ほか、さまざまな関係者にご協力をいただきました。

差別問題について多くの方々に幅広く関心を持ってもらうには、多様な機会を捉えて広報する必要があります。そのため、関係各所との連携はとても重要になります。

4 おわりに

障害者の差別解消については、法律や条例が施行されてからまだ日が浅く、本県も試行錯誤しながら施策を実施しているところです。相談対応等の能力向上を図るため、ノウハウの集積化や自治体間の連携体制の強化に努めてまいります。

また、差別問題は、社会にまだ十分浸透しているとは言い難い状況です。差別解消は、社会全体が一丸となって取り組まないと解決できない課題です。多くの人々と問題意識を共有する必要があり、社会全体の理解促進・啓発活動が今後も重要であると考えています。


(注)障害者差別相談事例集URL
http://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/shofuku/kikaku/shofuku/g/syougaisyajyourei.html