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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年10月号

ウォッチング自治体の独自施策

企業支援に特化した障害者の就労支援10年間の取り組み

鍵和田幹夫

埼玉県では、障害者の就労を促進するために「障害者就労支援センター」を県内市町村41か所に設置し、10か所の障害者就業・生活支援センターと一緒に就労支援を進めている。

また、平成23年度からは未達成企業に対して障害者雇用開拓を強化するために「雇用開拓員」を5人配置、平成25年度からは障害者の離職防止のため企業や働く障害者双方をサポートする「職場定着支援センター」をスタートし、ジョブコーチ6人を配置するなど、県独自の取り組みを積極的に進めてきた。

埼玉県障害者雇用サポートセンター(以下、当センターという)は、これら施策の中核事業として、障害者自立支援法の施行、就労を目指す支援学校の設立、雇用率達成に向けた指導基準の強化など障害者をめぐる環境が、福祉から就労へと大きく転換した平成19年5月28日に開所し、10年余に亘(わた)り、一貫して障害者を受け入れる企業支援に特化した活動を行なっている(資料1参照)。これらの取り組みにより、平成28年度埼玉県実雇用率は1.93%となり、全国平均実雇用率を0.01%超過することができた(資料2参照)。

資料1 サポートセンター運営の概要図
資料1 サポートセンター運営の概要図拡大図・テキスト

資料2 埼玉県の年度別障害者雇用推移
資料2 埼玉県の年度別障害者雇用推移拡大図・テキスト

当センターは、1.雇用の場の創出、2.就労のコーディネート、3.企業ネットワークの構築、4.その他就労に関わる各種相談、の4本柱で業務を行なっている(資料3参照)。

資料3 サポートセンター業務概要
資料3 サポートセンター業務概要拡大図・テキスト

具体的には、年間1,000社を超える企業訪問を中心に、延べ2,000件を超える雇用に関わる相談を受け付け、業務の切り出しや社内啓発、職場環境整備、障害者雇用に関わる各種セミナー・研修等の開催など、雇用に関連するあらゆる事項についての企業支援を行なっている。

併せて、年間500件を超える短期訓練(埼玉県独自の企業内実習制度)の実施や、障害者就労支援センター等連絡協議会などへの参加や職場見学の実施などを通して、各就労支援機関との信頼関係を深め、企業と各就労支援機関とのネットワーク構築や支援機関スタッフの育成などにも側面的に寄与している(資料1参照)。

さらに、地域別企業情報交換会や特例子会社連絡会などを通して、特例子会社が持つ障害者雇用に関する優れたノウハウや課題解決についての情報共有、障害者雇用に理解ある企業の拡大など、県内各企業間のネットワーク構築を図っている。

当センタースタッフは、民間企業出身アドバイザー15人、精神保健福祉士6人を含む総計23人で、各支援機関と協力しながら、県内2,837社(平成28年6月現在対象企業数)の企業支援を行なっている(資料4参照)。

資料4 埼玉県規模別障害者雇用状況(平成28年6月)
資料4 埼玉県規模別障害者雇用状況(平成28年6月)拡大図・テキスト

今後の課題としては、実雇用率1.21%の100人未満企業や、県内未達成企業1,448社のうち88%(1,277社)を占める200人未満企業などの中小企業(資料4参照)への支援や、精神障害者や発達障害、高次脳機能障害など新たな障害特性に応じた雇用推進の取り組み(資料5参照)などがある。

資料5 障害者雇用の課題(埼玉)
資料5 障害者雇用の課題(埼玉)拡大図・テキスト

これらの課題に対し、中小企業関連団体が実施する障害者雇用に関する事業への協力を積極的に進めたり、精神保健福祉士と企業支援アドバイザーとがペアを組んでの企業支援や、埼玉モデル(埼玉県独自の組織とさまざまな社会資源を活用しながら、当センターが中心となって各支援機関との有機的な連携を図り、企業の障害者雇用拡大と職場定着支援を推進する活動)の推進など、さまざまな取り組みを行なっている(資料5参照)。

(かぎわだみきお 埼玉県障害者雇用サポートセンターセンター長)