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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年11月号

検証 障害者差別解消法 第4回

環境整備から交流へ
~明石市が進める誰もが安心して暮らせる共生のまちづくり~

明石市福祉総務課障害者施策担当

障害者配慮条例の検討から制定まで

明石市では、平成26年4月に障害者施策担当を新設し、障害者差別解消に向けたさまざまな環境整備を進めてきました。平成27年3月に、障害者配慮条例に先立って制定した手話言語・障害者コミュニケーション条例では、手話を言語として再認識し、その普及に努めるとともに、さまざまなコミュニケーション支援や情報保障の充実などについても規定し、障害当事者と共に施策を推進していく基礎をつくりました。その後、取り組んだ障害者配慮条例の検討には、障害当事者や支援者だけでなく、民生児童委員や医療関係者、民間事業者など多くの方にご参加いただき、障害のある人もない人も一緒になって、誰もが安心して暮らせるまちづくりについて議論を重ねました。

条例の名称にも「差別解消」という言葉は使わず、「配慮を促進」「共生のまちづくり」といった言葉を使い、障害のある人にだけ関係のある条例ではなく、すべての市民に関係のある条例として認識していただけるよう、工夫しました。

また、条例づくりのもう一つの成果として、障害当事者や支援者の方々と行政の担当者が意見交換する機会がたくさん作れたことがあります。このときから続いている当事者目線に立った信頼関係や連携が、今日のさまざまな施策の推進に大きく寄与していると言えます。

障害者配慮条例制定後の取組

平成28年4月に障害者配慮条例が施行してからは、「合理的配慮の推進」と「障害理解の促進」を二つの柱としてさまざまな取組を進めてきました。

合理的配慮の提供を支援する公的助成制度では、点字メニューの作成や筆談ボードの購入、段差解消の工事など、事業者等が合理的配慮を提供しやすくするためにかかる費用を市が一定額まで助成しています。この制度については、環境整備のための経費を助成するだけでなく、合理的配慮がどういったものかをイメージしてもらうためのきっかけをつくるなど「啓発事業」としての側面を意識した運用を続けてきました。障害のある方からもご好評をいただいていますが、制度を利用した事業者の側からも「障害のあるお客様への対応の際に身構えてしまうことが少なくなった」といった声をいただくなど、一定の成果が上がっています。

また、公的助成制度は民間事業者だけでなく、自治会や町内会など地域の団体も対象としており、自治会館の改修やバリアフリー化など地域の環境整備にも役立てていただいています。

障害者差別解消法にも規定されている障害者差別解消支援地域協議会についても、障害者配慮条例に規定された「明石市障害者の差別の解消を支援する地域づくり協議会(以下、地域づくり協議会)」を兼ねる形で設置しました。地域づくり協議会の委員については、障害者配慮条例検討会のメンバーを引き継ぐ形で構成されており、商業者や交通事業者にもご参加いただいています。その関わりもあって、商業者や交通事業者にも障害理解のための研修に積極的に取り組んでいただいています。

公的助成制度を利用して環境を整備した商業者には、制度利用だけで終わるのではなく、市が作成しているパンフレットを通じて障害のある人への配慮について学んだり、市と商工会議所が共催で開催している事業者向けの研修会へのご参加など継続的に取り組んでいただいています。

交通事業者としては、バス会社が社会福祉協議会と連携し、車いすについての研修を運転手対象で実施しました。正座して車いすに乗ってみる体験や、実際にバスを使って乗降のサポートの仕方を教わるなど、実践的な内容を学んでいただきました。

また、地元のタクシー協会と社会福祉協議会、市の共催で、視覚障害について理解する研修を実施しました。視覚障害当事者からお話を聞いた上でグループに分かれ、お釣りの渡し方や情景説明のポイントなどをグループワークを通じて視覚障害当事者の方とコミュニケーションしながら理解するなど、交流型の研修として実施することができました。

市職員の研修についても、条例検討段階から入門的な障害理解の研修を継続して実施しているほか、手話入門研修や手話検定の受験料助成、視覚障害理解や知的障害理解など、障害当事者や支援者と連携しながらさまざまな研修を実施しています。

今後に向けて

こうした研修や啓発の取組を、地元の障害のある方たちと一緒に進めることができているのは、これまで条例づくりなどのさまざまな環境整備を障害のある人と一緒に進めてきた大きな成果だと思います。今後は、障害のある人とない人が交流の中からお互いを理解する、コミュニケーションを通じて多様性を知る、そういった取組を実践していきたいと考えています。

今年6月には、地元の障害者団体が連携を深めていくために「明石市障害当事者等団体連絡協議会」を設立しました。今後も行政だけでなく、障害当事者や支援者、商業者や地域の方々と力を合わせて取組を継続的に推進していきます。