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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年11月号

列島縦断ネットワーキング【東京】

スポーツを通して交流と働く場づくりを目指す
~パラSCエスペランサの活動

神一世子

2017年3月1日、多摩市にあるフットサルコート(フットサルステージ)の隣に、障がい者就労で運営するスポーツバー「E’s CAFE」を、オープンしました。

夜の営業やバースタイルでのアルコールの提供、障がい者スポーツの普及振興を目指すという点で、これまでにない障がい者就労支援事業所として注目していただきました。

E’s CAFEを運営する一般社団法人パラSCエスペランサは、その母体団体ともいえる特定非営利活動法人CPサッカー&ライフエスペランサ(以下、CPサッカー・エスペランサ)の理念、活動をもとに、障がいのある人たちにスポーツを通じて「こころ」と「からだ」の成長を促す機会を提供し、将来的な自立や積極的な社会参加につなげる事業を行なっています。

その一つに、放課後等デイサービス「エスペランサNEXT」があります。エスペランサNEXTは、パラスポーツ(障がい者スポーツ)を通じて、子どもたちの体力、コミュニケーション能力、協調性、チャレンジ精神を養うことを目的に、主に、サッカーのプログラムを中心に、アートや英語のプログラムも行なっています。

現在は、知的障がい、発達障がいなど、さまざまな障がいのある子どもたちが通ってきており、継続してプログラムに参加していく中で、ルールを守ること、友だちを思いやること、我慢することやできたことを喜ぶことなど、子どもたちの成長を感じることができています。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、障がい者スポーツへの理解は高まりつつありますが、それでもやはり、障がいのある人たち、特に子どもたちのスポーツを楽しむ機会は少ないと感じています。

CPサッカー・エスペランサを立ち上げた当初、障がい者スポーツ・サッカーは、今以上に認知度や関心度は低いものでした。

サッカーができる場所は限られ、その場所を求めて、みんな遠方から移動時間と交通費をかけて集まって来る、遠征や大会があっても、職場から休暇が取れず参加できなかったり、時間はあっても金銭的余裕がなく参加できなかったり。

そのこともあって、将来、「自分たちでサッカーコートを持ち、障がい者も健常者も一緒に働き、サッカーをする環境、そして交流する環境を作り出す」ということを、CPサッカー・エスペランサの最終目標としました。

E’s CAFEをオープンしようと思ったきっかけは、2013年の春、サッカーの遠征でオランダに行った際、街角のカフェで、障がい者スタッフの方が生き生きと働いている姿を見かけたことでした。その姿は、笑顔と自信に満ちていました。その時、同時に頭に浮かんだのは、海外のサッカー場やスポーツ施設に必ずあるクラブハウスのような場所で、同じような光景がつくれないかということでした。

サッカーをする人も、応援する人も、その家族も、地域の人も、サッカーと食事とお酒を楽しみながら、みんなで交流する場所。そこに、当たり前に、障がいのある人たちも混ざり合う光景を作りたいと思いました。

もう一つには、障がいのある人たちの高校卒業後の職業選択の幅が、まだまだ限られていることにあります。好きなことを仕事にできる、好きなものに囲まれて仕事ができる、エスペランサNEXTの子どもたちが将来働きたいと思うような場所を作りたい、そういう想いもありました。

今すぐに、サッカーコートを持つことは難しいけれど、まずはその第一歩として、日本でも、サッカーコートに隣接した障がい者就労も可能なスポーツバーを開きたい!と思うようになりました。

その結果、「みんなが、みんなを支える社会」という理念を掲げ 「はたらくNIPPON!計画」を行なっている日本財団様と一緒にプロジェクトをスタートすることになり、約1年間の準備期間を経て、今年3月1日、オープンに至りました。

E’s CAFEは、飲食を通じて、そこに集まる人が交流する空間をつくることと同時に、サッカーや障がい者スポーツについて知って、見て、触れてもらえる機会をつくることを目指しています。また、ここで働くスタッフが、仕事の合間に、隣接するフットサルコートで、サッカーの練習ができる、スポーツを楽しむことができる職場を目指しています。

現在は、支援スタッフ5人、スタッフ5人の10人で、お店を運営しています。

スタッフは、料理の仕込みや調理、お客様のご案内、水や料理を運んだり、オーダーをとったり、レジを担当するスタッフもいます。夜の営業では、貸切パーティーも多く、ドリンクのグラスを運んだり下げたり、ひたすら食器洗いをする日もあります。

もちろん、お店の開店の準備、看板にメニューを書いたり、チラシを配ったり、また閉店の最後の片づけ等も担ってもらっています。

幸か不幸か、まだまだ大繁盛しているお店ではないため、比較的ゆるやかなペースで仕事をすることができ、スタッフそれぞれもじっくり丁寧に業務にあたることができています。それでも時々、大忙しになることもあり、そうなると、パニックになることもありますので、今後はどんな場面においても、普段どおりの接客、調理ができるよう運営体制を整えていきたいと考えています。

また、現在は、店舗内の飲食業務がほとんどですが、今後は、お店のPRや、店舗や隣接するコート等を利用したイベントの企画運営、近隣企業へのお弁当やコーヒーのデリバリーサービス、モニターから流す映像の製作など、E’s CAFEを拠点に、業務の幅を広げていき、誰もが交流できる空間づくりと、障がい者スポーツ・サッカーの普及振興を目指していきたいと考えています。

まだまだ発展途上ですが、多くの方に愛されるお店を目指して、今後も取り組んでいきたいと思います。

皆さん、ぜひ一度、E’s CAFEへお越しください!

(じんいよこ 一般社団法人パラSCエスペランサ代表理事)


※特定非営利活動法人CPサッカー&ライフエスペランサ

CPサッカーの普及強化と、CPサッカーを通じて肢体不自由児者の自立と積極的な社会参加を支援する団体。小学生から成人を対象としたCPサッカーチームの運営のほか、健常者、障がい者が交流する大会やイベントを開催している。

※CPサッカー

脳性まひ、脳卒中、脳挫傷など、病気や交通事故等で、運動機能に障がいのある人たち7人で行うサッカー。1984年から2016年まで、パラリンピックの種目として世界的に発展してきたが、2020年の東京パラリンピック種目からは落選。2024年の種目復活を目指している。