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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第5期障害福祉計画・第1期障害児福祉計画の策定について

久保幸司

1 障害福祉計画等の基本的事項について

障害福祉計画・障害児福祉計画とは、障害者総合支援法及び児童福祉法に基づき、障害福祉サービスなどの提供体制の構築や自立支援給付などの円滑な実施を目的とし、都道府県や市町村が作成する計画です。障害者・児の自己決定と自己選択を尊重し、市町村を基本とした身近な実施主体により障害の種別によらない一元的な障害福祉サービスを実施すること、地域生活への移行や就労支援などの課題に対応したサービスの提供体制を整備することを基本理念としています。都道府県や市町村は、国が定める基本的な指針(以下「基本指針」という。)に即して、これらの計画を作成することとされています。基本指針は、これまで3か年の計画期間ごとに見直しを行なってきました。

第1期計画期間(平成18~20年度)では、平成23年度を目標として、地域の実情に応じた数値目標及び障害福祉サービスの見込み量が設定されました。続く第2期計画期間(平成21~23年度)では、第1期の実績を踏まえ、第3期計画期間(平成24~26年度)では、障害者自立支援法の改正などを踏まえ、第4期計画期間(平成27~29年度)では障害者総合支援法の施行などを踏まえ、それぞれ見直しを行なってきました。

平成29年3月、次の第5期計画期間(平成30~32年度)に向けて基本指針を見直し、都道府県や市町村に示しました。

図1 障害福祉計画・障害児福祉計画について
図1 障害福祉計画・障害児福祉計画について拡大図・テキスト

図2 第5期障害福祉計画等に係る国の基本指針の見直しについて
図2 第5期障害福祉計画等に係る国の基本指針の見直しについて拡大図・テキスト

2 基本指針見直しのポイント

基本指針の見直しに当たっては、障害者総合支援法の改正などの直近の障害者施策の動向等を踏まえ、次のようなポイントに重点を置いています。

(1)地域共生社会の実現に向けた取組

地域のあらゆる住民が「支え手」と「受け手」に分かれるのではなく、地域、暮らし、生きがいをともに創り、高め合うことができる「地域共生社会」の実現に向けた取組等を計画的に推進する。

(2)精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築

精神障害者が、地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)にも対応した地域包括ケアシステムの構築を目指す。

(3)障害児支援の提供体制の計画的な整備

児童福祉法に障害児福祉計画の策定が義務づけられたこと等を踏まえ、以下の柱を盛り込み、障害児支援の提供体制の構築を図る。

1.地域支援体制の構築

2.保育、保健医療、教育、就労支援等の関係機関と連携した支援

3.地域社会への参加・包容の推進

4.特別な支援が必要な障害児に対する支援体制の整備

5.障害児相談支援の提供体制の確保

(4)発達障害者支援の一層の充実

発達障害者支援法の改正を踏まえ、発達障害者の支援の体制の整備を図る。

3 成果目標等について

また、基本指針においては第5期計画期間が終了する平成32年度末までに、次のような「達成すべき基本的な目標」(成果目標)を掲げています。

(1)施設入所者の地域生活への移行

・地域移行者数は平成28年度末の施設入所者の9%以上

・施設入所者数は平成28年度末の2%以上削減

(2)精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築

・各圏域、各市町村に保健・医療・福祉関係者による協議の場を設置

・精神病床の1年以上入院患者数を14万6,000人~15万7,000人に(平成26年度末の18万5,000人と比べて3万9,000人~2万8,000人減)

・精神病床の退院率は入院後3か月で69%、入院後6か月で84%、入院後1年で90%に(平成27年度時点の上位10%の都道府県の水準)

(3)地域生活支援拠点等の整備

各市町村または各圏域に少なくとも1つ整備

(4)福祉施設から一般就労への移行

・一般就労への移行者数は平成28年度の1.5倍に

・就労移行支援事業利用者は平成28年度の2割以上増

・就労移行率3割以上の就労移行支援事業所を全体の5割以上に

・就労定着支援事業利用者の1年後の職場定着率を8割以上に

(5)障害児支援の提供体制の整備等

・児童発達支援センターを各市町村に少なくとも1か所設置(※)

・保育所等訪問支援を利用できる体制を各市町村で構築

・主に重症心身障害児を支援する児童発達支援事業所、放課後等デイサービスを各市町村に少なくとも1か所確保(※)

・医療的ケア児支援の協議の場を各都道府県、各圏域、各市町村に設置(平成30年度末まで)(※)

※市町村単独での設置・確保が困難な場合には、圏域での設置・確保であっても差し支えない

また、これらの成果目標の達成に向けて、障害福祉サービスの見込量など、定期的な状況確認を行うべき指標(活動指標)を定めるものとしています。

4 その他の見直し

その他に、今回の基本指針では新たに次のような記載を追加しています。

・障害者虐待の防止対策の推進を図る観点から、都道府県及び市町村において、相談支援専門員やサービス管理責任者等に対し、常日頃から虐待防止に関する高い意識を持ち、障害者等及び養護者の支援に当たるとともに、虐待の早期発見と通報を行うこと。

・都道府県や難病相談支援センター等において、それぞれの業務を通じて難病患者等本人に対して必要な情報提供を行うこと等により、難病患者等の障害福祉サービス等の活用が促されるようにすること。

・障害者の社会参加を促進する観点から、都道府県や市町村において、国との連携を図りながら、障害者の芸術文化活動の振興を図ること。

・平成28年4月に施行された障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律を踏まえ、障害を理由とする差別の解消に向けて、日常生活や社会生活における障害者の活動を制限し、社会参加を制約している社会的障壁を取り除くことが重要であること。

・意思決定支援の質の向上を図るため、都道府県において、ガイドライン等を活用した研修を実施するとともに、事業者や成年後見の担い手を含めた関係者に対する普及を図るよう努めること。

5 計画の推進について

都道府県、市町村においては、この基本指針に即して、平成29年度中に、平成30年度からの計画を作成するとともに、計画に盛り込んだ事項について、定期的に調査、分析、評価を行い、障害福祉施策を総合的、計画的に行なっていくことが求められます。

(くぼこうじ 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課課長補佐)