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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第4次基本計画 分野別の評価

難病に関する保健・医療施策の推進

篠原三恵子

難病者の多くは、体力がない上に体調が不安定で、継続的活動が困難で短時間しか活動できない等の困難を抱えており、障害の特性に応じた社会参加の権利を保障するための合理的配慮が必要である。

第4次基本計画は、日本が権利条約を批准後、初めての基本計画であるので、条約の理念を具現化すべく、難病者を含むすべての障害者の社会参加の保障を促すものとなることを期待する。

本計画の中に、障害特性等に配慮したきめ細かい支援、理解促進・広報啓発に係る取組等の推進、相談支援体制の構築の方向性が示されたのは評価できる。難病・慢性疾患に起因する心身の機能の障害をもつ者も「障害者」に含まれることになったのは、2011年の障害者基本法改正においてだが、この事自体が周知されているとは言い難いため、この経緯を「我が国における取組」の中に明記していただきたい。

難病患者等への障害福祉サービス等の提供に当たり、障害者総合支援法の対象疾病の拡大を図る方向性は評価できるが、対象疾患には客観的診断基準確立等が求められるため、厚労省が認める客観的診断基準のない筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)等多くの難治性疾患が依然として除外されている。福祉サービスの対象を病名で区切らず、慢性疾患によって生活のしづらさがあるすべての人に必要な合理的配慮が提供されるよう、生活の困難さに応じて支援する仕組みに抜本的に変えるよう提言していただきたい。

難病等の予防・治療に関する施策を進め、医療の確立、普及を図るとともに、難病患者(児)の医療費の負担軽減を図るため、医療費助成を行うことは評価できる。2014年には難病法が成立し、児童福祉法の一部が改正されたことで財政的基盤が確立され、都道府県の超過負担が軽減され医療費助成の対象疾患が拡大されたが、難病法の要件を満たさないME/CFS等多くの難治性疾患が未(いま)だに対象となっていない問題を是正するよう提言していただきたい。医療的ケアを必要とする幼児児童生徒や長期入院を余儀なくされている幼児児童生徒の教育機会確保の充実に努めることは評価できるが、小児ME/CFS患者のような自宅療養を余儀なくされている児童の教育を受ける権利の保障にも努めていただきたい。

短時間労働や在宅就業、自営業などの多様な働き方の環境整備、テレワークの普及・拡大を図り、時間や場所を有効活用できる柔軟な働き方を推進するとしており、難病者の就労の権利が拡大されることを期待する。

(しのはらみえこ 慢性疲労症候群(CFS)をともに考える会代表)