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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第4次基本計画 分野別の評価

A型事業からみた「雇用・就業、経済的自立の支援」について

久保寺一男

「障害者基本計画(第4次)の策定に向けた障害者政策委員会意見(案)」が示された。全Aネットとして、「3.各分野における障害者施策の基本的な方向」の「8.雇用・就業、経済的自立の支援」の内容について、いくつか項目ごとに指摘したい。

(1)総合的な就労支援

労働と福祉の一体的な展開について、福祉施策と労働施策の縦割り行政はよく指摘される。その例が就労支援機関の障害者就業・生活支援センターであり、所管が労働部局と福祉部局でそれぞれが別々に監査をしている。縦割り行政の壁をなくすワンストップ支援機関として障害者就業・生活支援センターの充実が必要である。

また、就労継続支援A型事業は福祉施策と労働施策にまたがる制度であり、A型の利用者は福祉施策の利用者であると同時に、労働法規が適用される労働者である。就労施策を論じる場合、中途半端な存在のように言われる。とかく、示した左の図のような感覚で考えてしまいがちであるが、しかし本来は右の図のような意識を持つ必要があろう。

A型に対する意識を変える
図 A型に対する意識を変える拡大図・テキスト

(2)経済的な自立の支援

雇用・就業の促進と適切な組み合わせで、年金や諸手当(年金生活者支援給付金や特別障害給付金)支給を充実するとしている。しかし所得補償を考える時、賃金・工賃と年金等と合わせて、年金制度との連動などの課題を検討すべきである。

(3)障害者雇用の促進

一般就労の高齢期及び一時的な不安定期の受け入れ、または福祉的就労からのステップアップなど、一般就労と福祉的就労の相互移動についても明記すべきである。

(4)障害特性に応じた就労支援及び多様な就業の機会の確保

障害者優先調達推進法の推進とある。しかし国等の入札条件に法定雇用率達成を入れることと、また民需への取り組みを検討することが、第4次では無くなった。明記すべきである。

(5)福祉的就労の底上げ

多様な働き方を推進する時、A型事業の存在は重要なものと考える。ゆえにB型事業所と比較し、最低賃金の確保、労働・社会保険料の負担等、経営条件が厳しいA型事業所の実情に配慮した経営支援策を講ずること。また就労継続支援A型事業所及びB型事業所等の福祉的就労の在り方を検討する必要があろう。

(くぼでらかずお NPO法人就労継続支援A型事業所全国協議会理事長)