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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

2017私が選んだ今年の5大ニュース

朝霧裕

あさぎりゆう。1979年埼玉県生まれ。愛称は「ダッコ」。ウェルドニッヒ・ホフマン症(進行性脊髄性筋萎縮症)のため、車いすの生活。24時間の介助サポートを得て、さいたま市でひとり暮らし。シンガーソングライターとしてコンサートやライブ活動を行うかたわら、講演やエッセーを執筆。著者「バリアフリーのその先へ!ー車いすの3・11」(岩波書店)他。

1.ふれあい福祉基金チャリティーコンサート 彩の国ゆめコンサート最終回開催決定!

「障害の有無、世代を問わない市民有志で作るバリアフリー音楽コンサート」が、2018年9月8日に最終回を迎えることとなりました。来年で第10回の節目。記念CDを作るべく、クラウドファンティングにもチャレンジします。

2.世界初の車いすのミスコンが開催

ポーランドの首都ワルシャワで、世界初の車いすユーザーの女性のミスコンが開催されました。優勝はベラルーシの女子大生、アレクサンドラ・チチコワさん。私の若き頃は、「洗髪に介助が要る女の子が髪を伸ばすなんて贅沢(ぜいたく)」「トイレ介助が必要な子が、介助が大変なおしゃれ服を着るなんてわがまま!」という時代。新時代到来!いいね!

3.超福祉展へ行ったよ!

障害者、高齢者、LGBTなどのマイノリティーへの「意識のバリア」を変革しようと2012年より開催の〈超福祉展〉。第4回目の本年は、最大5センチの段差を自力で上がれる電動車いすWELLや、口語をリアルタイムで自動翻訳し、日本語字幕にしてスクリーンに映し出せる最新機器「Live Talk」など、最新テクノロジーが多数展示。

4.相模原事件から1年

私は「すべてが一人でできること」には何の価値もないし、そんな人間はいないと思っています。人間がそんな存在になったら、社会が形を成しえない。障害当事者がいるから階段がスロープになり、エレベーターになり、医療・介護・福祉の世界に多くの雇用を生み、生きて在(い)るだけで社会の循環に参加しています。胸張って生きましょう。

5.難病ウェルドニッヒ・ホフマン症 日本初の治療薬が承認

今年7月、『治療薬としてバイオジェン・ジャパン(株)の「ヌシネルセンナトリウム」(製品名:スピンラザ)が製造販売承認』というニュースをネットで知りました。当事者として、これまで進行を食い止める術(すべ)のなかった状態に、光が見えたらよいなと期待しています。


有賀絵理

ありがえり。1980年生まれ。茨城大学卒業。現在、茨城大学非常勤講師、茨城県地方自治研究センター研究員、DET(障害平等研修)ファシリテーター、メンタルケア心理士。認定NPO法人茨城NPOセンター・コモンズの理事などを務めている。

1.災害の発生続く

九州北部豪雨。7月5日から豪雨が降り続け大災害になってしまった。災害時、一番支障が起きるのは、重度障害者である。災害時の障害者の対応を真剣に検討しなければならない。『災害時要援護者―こころのバリアフリーをひろげよう―』(文眞堂出版)を参考にしていただきたい。

2.衆議院選挙を終えて

与党が圧勝した。激戦と言われていたが、結果は変わりなく、福祉政策も変わりそうにないと感じた瞬間であった。障害理解のある政治家が増加することを願いつつ…。

3.障害者施設虐待・暴行事件が多発

各地で報道が相次いでいる。同じ人間でありながらも抵抗が困難な立場の人間が狙われてしまう。かなしい、さみしい、もどかしい事件であるが、このような事件がただただ無くなることを祈るのみである。

4.障害者差別解消法から1年が過ぎて

各地で障害者差別解消支援地域協議会も開始した。「障害を理由とする不当な差別的取扱い」や「合理的配慮」を徹底していかなければならない。それと同時に、社会的障壁の除去も検討していくことが重要である。

5.『こころのバリアフリー』の拡がり

施策等でも、眼にし、耳にするようになったのだが、「こころのバリアフリー」とは何が必要なのだろうか。障害者・非障害者の間で、隔たりなく、差別なく、インクルーシブな社会構築が必要である。それには、障害者・非障害者お互いに認め合い・助け合い・支え合える社会を築くことが大切である。


伊藤史人

いとうふみひと。島根大学総合理工学研究科助教。ICTを活用した重度障害者(児)のコミュニケーション支援技術の研究開発を行う。近年は、視線入力訓練ソフトEyeMoTシリーズの普及に努め、多くの教育及びリハビリ現場で活用されている。

1.「日本賞」で視線入力訓練ソフトEyeMoTが最優秀賞を受賞

教育コンテンツの国際コンクール「日本賞」にて、島根大学のEyeMoTがクリエイティブフロンティア部門最優秀賞を受賞しました。あまり注目されてこなかった重度障害児の教育分野に光が当たったことは、関係者に大きな希望となりました。

2.マイクロソフトWindows10が視線入力機能を搭載へ

たった2万円のTobii EyeTracker 4Cを用意すれば、特別なソフトを導入しなくてもパソコンが視線入力マシンになります。標準のユーザー補助機能として搭載されたことで、障害者にとって入力操作の選択肢が増えます。

3.AmazonやGoogleが人工知能スピーカーを発売

人工知能(AI)は、生活を一変させるチカラがあります。話しかけるだけでさまざまな情報にアクセスでき、身体の自由がきかない障害者の生活に彩りを与えてくれるでしょう。

4.eスポーツ関連の5団体がJOC加入に向け統合化へ

eスポーツは、いわば「ゲーム大会」。一方で健常者と障害者が同じ土俵で戦える将来性のある舞台です。eスポーツ団体がJOCに加入すれば、将来オリンピック種目になった時、指先しか動かない障害者ゲーマーがオリンピック選手になれるでしょう。

5.ALSと共に生きた篠沢教授が他界

かつて「クイズダービー」でお茶の間を楽しませてくれた篠沢教授が亡くなられました。晩年はALSと共に生き、筆記が困難になってもパソコンや支援システムを駆使して執筆活動を継続しました。重度障害者になっても高度な知的活動を続けたことは多くの人を勇気づけたことでしょう。


うつみよしお

10代から精神科へ通院。闘病中。NPO法人シーズクリエーション 地域活動支援センターおへんろの駅こくぶの運営委員、スタッフとして働く。当事者であることを活かし、発言や提案をしている。障害者が働きやすい環境や安心できる居場所作りを目指している。

1.大分市選管が意思疎通図るコミュニケーションボードを作成

10月に行われた衆院選で、大分市選管は会話が難しい人とイラストで意思疎通を図るコミュニケーションボードを作成し、期日前投票で活用した。障害のあるなしにかかわらず当たり前に投票できる。そんな社会に変えていこうという動きに希望を感じた。

2.ピーン・ポーン♪ 視覚障害者の安全と安心を守る音

公共の施設などで耳にする「ピーン・ポーン」という誘導サイン。聞き取りやすい音の特性を規定した「公共施設における誘導用音サイン」に関する国際規格が日本からの提案で発行された。こういった技術面だけでなく、いろいろな面で障害者が暮らしやすい国として世界をリードしてほしい。

3.重度の障害者が社会福祉士に 3度目の試験で合格

当事者として大きな希望になった。当事者にできることはたくさんある。できないことも多いかもしれないが、何かに挑戦したいと思った時に大きな励みになると思う。

4.心の不調IT使い「見える化」精神障害者の仕事継続支援

慢性疾患をかかえながら仕事を続けるため、心の不調を早く見つけるのに役立つIT活用のソフトがあり、就労支援策として成果を上げつつある。今後、体調に合わせた対応ができれば、一般就労や症状の緩和につながるのではないかと考えている。

5.2018年4月、精神障害者の雇用義務化へ

来年4月、障害者雇用促進法の改正により、精神障害者の雇用が義務付けられる。適切な治療や法の整備、社会の理解があれば精神障害者であっても能力を発揮し、活躍できることが証明されている。精神障害者が家から出て、支援施設を卒業し、自由に職業を選ぶ。そんな未来は近いかもしれない。


宇野和博

うのかずひろ。1970年、福井県生まれ。筑波大学附属視覚特別支援学校教諭。NHKラジオ「視覚障害ナビ・ラジオ」レギュラーコメンテーター。弱視児のための拡大教科書の普及に取り組み、著作権法改正や教科書バリアフリー法制定に尽力。

1.今年もホーム転落事故相次ぐ

1月に蕨駅で、10月に富木駅で、視覚障害者のホーム転落死亡事故が発生。ヒヤリハットになっているホーム端の警告ブロック沿いを歩くという状態を改め、ホーム上の安全な場所に誘導ブロックを敷設することが急務である。

2.岡山県で障害者が大量解雇

岡山県倉敷市で、A型事業所を運営する一般社団法人が、5か所の事業所を閉鎖し、223人の障害者が解雇された。これは氷山の一角だが、障害者雇用の制度設計としてどこがまずかったのか、当事者を交えた再検討が求められる。

3.交通系ICカード「スルッとKANSAI」発売

JRを除く関西圏の主な私鉄・バス57社で使える障害者・介助者割引ICカードが発売された。半額切符を買ったり、清算する手間が省けるため、東京パラリンピックに向け、他の交通系ICカードへの波及が期待される。

4.視覚障害を理由とした配置転換に無効判決

岡山短大で授業中に飲食した学生を注意できなかったことなどを理由に事務職への配置転換を命じられた視覚障害の准教授の裁判で、岡山地裁は命令は無効との判断を示した。短大側はこれを不服として控訴している。

5.視覚障害者ボウリング世界選手権開催

日本で初めて視覚障害者ボウリングの世界大会が福岡で開催された。世界12の国と地域から101人の選手団が参加し、韓国が圧倒的な強さを見せつけた。パラ種目でなくても障害者スポーツのすそ野が広がってほしい。


北川博昭

きたがわひろあき。1955年8月東京に生まれる。現職は聖マリアンナ医科大学病院長。小児外科医として研修終了後から大学病院に勤務。その後ロスアンゼルス小児病院、ウエリントン病院などに留学、帰国後も大学に戻り2006年に小児外科教授。その後2017年から病院長。2015年から大学病院に初めて勤務犬を導入し、緩和ケアの一員としてその活動を支えている。

1.マイナス報酬改定はNO 障害25団体が与党に要望書

2018年度障害報酬改定に関連し、11月2日、衆参両院の与党議員92人(秘書を含む)に対し、少なくともマイナス改定を阻止するよう要望書を提出した。18年度は社会保障費の伸びを対前年度比で5000億円程度に抑えることが政府の予算編成目標となっているため、診療報酬、介護報酬の改定でも引き下げの議論が取り沙汰された。

2.“Assistance Dogs for Persons with Physical Disabilities” Portal Site

このことが海外向けポータルサイトに掲載された。この中には盲導犬、介助犬、聴導犬についての取り組みが英語で分かりやすく示され、これらの犬が同伴できることが英語で示されている。オリンピックを前に大きな功績と思う。

3.平成29年度摂食障害治療支援センター設置運営事業

摂食障害の患者さんは食事を食べれば治るわけでは無く、カウンセリングや患者家族の支援、栄養管理など総合的な救急医療体制が必要で、生命の危険を伴うため総合的な救急医療体制が望まれる。全国5か所で治療プログラムや支援体制のモデルの確立を行うことになった。

4.障害者暴行―栃木県警

障害者支援施設「ビ・ブライト」で、入所者が重傷を負った事件で、栃木県警は、系列の別施設でも入所者に暴行したとして、傷害容疑で同法人の元職員を追送検した。このような事件が昨年の相模原やまゆり園虐殺事件からあとを絶たない。

5.ギャンブル依存症推計320万人

賭け金は月平均約5.8万円、生涯でギャンブル依存症が疑われる状態を経験した成人が3.6%と推定され、人口換算で320万人に上ることが厚生労働省の調査で分かった。何年もしていない人も含まれるが、オランダの1.9%、フランスの1.2%に比べてかなり高い。


迫田朋子

さこたともこ。1956年生まれ。1980年から昨年6月まで、NHKでアナウンサー、解説委員、福祉番組ディレクターとして仕事をする。現在は、フリーのジャーナリスト。

1.「精神科医療の身体拘束を考える会」発足記者会見(7月19日)

NHK時代に取り上げきれなかったテーマ。今年3月にインターネット放送局・ビデオニュースドットコムで、この問題を問い続けてきた杏林大学長谷川利夫教授をゲストに迎えて伝えたが、その後、5月にニュージーランドの青年が神奈川県内の精神科病院で身体拘束後に亡くなったことは大きな衝撃だった。

2.相模原事件を風化させない

当事者団体、関係者が活動を続け、各地でさまざまに事件を問いかける市民シンポジウムなどが開かれた。メディアの役割としても、つねに、社会に問い続けなくてはならないと思う。

3.デフリンピック 日本史上最多のメダル獲得

前回のブルガリア・ソフィア大会の際は「ろうを生きる難聴を生きる」(NHK・Eテレ)という番組を担当しメダリストを紹介していたこともあり、よけいに嬉(うれ)しい。

4.花田春兆さん亡くなる(5月13日)

放送でもさまざまにお世話になりました。福祉に関わる多く人たちが師と仰いだ方であったと思います。ご冥福をお祈りいたします。

5.NHK 障害者リポーター 新規採用

古巣のことで申し訳ないが、2020年の東京パラリンピックを意識して公募した障害者リポーターが仕事を始めている。特別視してニュースとして取り上げなくてはならないこと自体には忸怩たる思いはあるが、一歩前進。Eテレだけではなく、総合テレビで当たり前のように登場してほしい。


柴本礼

しばもとれい。1963年生まれ。イラストレーター。慶応義塾大学卒業。2004年に夫がくも膜下出血から高次脳機能障害者となり、『日々コウジ中』『続・日々コウジ中』(主婦の友社)を出版。現在は家族会「コウジ村」やブログで当事者・家族の相談に乗りつつ、講演活動をしている。動物愛護団体やホームレス支援も。

1.高次脳機能障害支援法(仮称)を求めてのアピール

今後も増え続けるであろう高次脳機能障害者には、専門家だけではなく、経験者による助言を含めた恒久的な支援が必要である。TKK(東京高次脳機能障害協議会)の設立15周年記念会場と第17回日本脳外傷友の会全国大会で、高次脳機能障害(者)支援法を求めてアピールがなされた。

2.障害者と囲碁

全国の視覚障害者、特に盲学校生徒への囲碁普及活動中の柿島光晴氏(全盲の棋士アマ四段)が、5月に岩手県大船渡市で第1回全国・台湾盲学校囲碁大会を開いた。高次脳機能障害者への囲碁療法の取り組みも、2月から大森で(木谷正道氏指導)、8月から高次脳機能障害者活動センター「調布ドリーム」で始まった。

3.報道されない台風21号による多摩川河川敷被害

台風21号は10月23日未明に多摩川を襲い、河川敷に住むホームレスの人々や猫たちを飲み込んだが、ほとんど報道されていない。未(いま)だ行方不明の彼らを、ボランティアの人々が探したり生活立て直しの支援をしているが、行政からの動きは見られない。

4.介護者支援法制定への動き

要介護者600万人の7割を家族が介護、年間10万人が介護のために仕事を辞め、介護者による殺人・心中が毎月3件以上起きているという。一般社団法人日本ケアラー連盟は12月10日にフォーラムを開催し、「介護者支援法」制定のため具体策を議論する。

5.精神障害者の雇用増加

平成28年に50人以上規模の民間企業に雇用されている障害者数は過去最高で、中でも精神障害者数は大幅増。その背景には「障害者の働きたいという意欲の高まり」「企業の取り組みの拡大」「支援機関の充実」があるというが、嬉(うれ)しいことだ。


千葉潔

ちばきよし。国連広報センターに勤務(1989年~)。知識管理補佐。国連寄託図書館やウェブサイトなど担当。国連学会会員。青山学院大学卒。1959年生まれ。ノーマライゼーション2017年6月号に寄稿(「SDGsはみんなの目標」)。

1.障害者権利条約、「知らない」

内閣府が今年8月に公表した「障害者に関する世論調査」によれば、障害者権利条約を知らないと答えた人は77.9%に上りました。2006年に国連総会で採択された条約は2008年に発効。日本は2014年に批准しています。障害者のさらなる権利実現に向けて、市民の認知度の向上が望まれます。

2.障害者に対して、「差別ある」

同じく、前記調査によれば、日本社会で障害を理由とした差別や偏見が「ある」と思う人は83.9%。障害者権利条約を批准すべく成立した「障害者差別解消法」が昨年4月に施行されたものの、2012年の前回調査からわずかに5.3ポイントの減少にとどまり、障害者差別解消への道は依然として厳しいことが明らかになりました。

3.初の世界データフォーラム開催

世界各国の統計能力を政治的、資源的に支援することを目的に、初の世界データフォーラムが1月15日~18日、南アフリカで開催され、ケープタウン世界行動計画を採択しました。「誰ひとり置き去りにしない」というSDGsの合言葉を大切に、障害者に関するデータ開発への支援強化が盛り込まれています。

4.国連でSDGs進捗状況を検討 日本も報告

経済社会理事会のもと、ハイレベル政治フォーラムが7月に開催され、SDGsの進捗状況を検討。自発的報告を行なった日本は、障害者の権利実現への対策を説明。フォーラムは障害者の権利促進を盛り込む閣僚宣言をしました。

5.うつ病、世界で患者3億人

世界保健機関(WHO)の統計によれば、現在、世界でうつ病は約3億人。WHOは、支援キャンペーン、“Depression:Let’s talk”を展開し、これを今年の世界保健デー(4月7日)のテーマとしました。


戸羽太

とばふとし。陸前高田市長。1995年から陸前高田市議、助役、副市長を務める。2011年2月の市長選に初出馬、初当選。就任直後に東日本大震災により壊滅的な被害を受ける。

世界に誇れる美しいまちの創造をコンセプトに「ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり」を目指している。

1.障がい者の就労継続支援A型事業所の閉鎖相次ぐ

国や自治体からの公費に頼り、不正が疑われるケースも。2017年から国は事業の収益性を重視するよう制度改正。悪質なものは当然ダメだが、制度と世の中の実態が合っているのか大いに疑問。

2.番組キャラクターに対しLGBTコミュニティーが抗議声明

テレビ番組で性的マイノリティを侮辱したとして物議を醸し、テレビ局社長が謝罪。多様な意見が寄せられているとのことだが、お互いを知ることから始めるしかないだろう。

3.バニラ・エア騒動

LCC航空であるバニラ・エアで車イスの乗客が自力でタラップを昇ることに。報道もさまざまあり、何が真実かわからない部分もあるが、いずれにせよ、この問題を企業姿勢を高める契機にするべきだと思う。

4.内閣府の障がい者に関する世論調査にショック

「障害者権利条約」「障害者差別解消法」を知っている、聞いたことがあるという人はそれぞれ21%、27%とのこと。国民の8割が「世の中には障がいがある人に対して差別や偏見があると思う」と答えているとの報道もある。

条約や法律は成立しただけではその効力を発しない。

5.アンプティサッカーとの出合い

主に、上肢・下肢の切断障がいがある人たちのサッカー。数年以内に、陸前高田市で日本アンプティサッカー選手権を行う夢を実現させるためにプロジェクトが動き出した。

きっと復興の原動力、みんなの勇気に繋(つな)がるイベントになる。


松波めぐみ

まつなみめぐみ。大阪市立大学、龍谷大学ほか非常勤講師。立命館大学生存学研究センター客員研究員。時々、介助者。専門は人権教育、障害学。障害者権利条約の普及や複合差別等に関心がある。この数年は障害者差別解消法の研修で各地を旅してきた。2015年より大学教員の友人らと「障害のある教員」研究に取り組む。

1.相模原事件を「忘れない」ためのアクション、各地で継続

事件を風化させてはならないと、障害当事者らが各地でアクションを続けている。神戸市では毎月26日に「リメンバー神戸アクション」として街頭でビラを配り、ともに考えることを呼び掛けている。

2.「一歩前進」のはずがバッシング:バニラエア事件

バニラエアの奄美空港で車いす利用の男性が搭乗拒否され、不本意な方法でタラップを上がった(6月)。相談窓口に訴えたことにより、空港設備の改善につながった。しかし全国紙で報道後、「男性は空港に事前連絡すべきだった」等、的外れなバッシングが起こる。

3.77%は「知らない」:障害者差別解消法の浸透まだまだ

内閣府の世論調査の結果、2016年4月より施行されている障害者差別解消法について、存在自体を「知らない」と回答した人が77.2%に上ることがわかった(9月末)。内容まで含め「知っている」のは5%と、周知啓発に向けた課題は大きい。

4.過去と向き合う:優生保護法下での被害の解明と補償を求める動きが活発化

優生保護法(~1996年)の下での手術強要について宮城県の女性が人権救済を求めてきたが、日弁連は被害者への補償等を求める意見書を発表(2月)。女性差別撤廃委員会からの勧告も受けて関心が高まる。手術に関わる公文書も一部で明らかに(11月)。

5.先生も含めてインクルーシブ:「障害のある教員」テーマにシンポジウム

障害があって全国の小・中・高校、特別支援学校で働く教員をテーマとした学術シンポジウムが東京大学で開催された(6月)。主催の研究チームによる書籍も準備中である(生活書院、来年3月予定)。


山根昭治

やまねしょうじ。1955年北海道釧路市生まれ。北海道旭川市在住。一般財団法人全日本ろうあ連盟理事・スポーツ委員会委員長。デフリンピック日本選手団団長としてソルトレイクシティ、台北、サンスンへ3回派遣。

1.これまでにない応援!サムスン・デフリンピック

7月18~30日朝日新聞社、読売新聞社が初めて現地(トルコ・サムスン)に取材に来られ、連日、リアルタイムで報道した。YouTube、各競技を生中継で配信し、これまでにない応援で盛り上げていることがデフアスリートやスタッフにとって大きな励みになった。メダル数も過去最多27個獲得!

2.画期的!手話を広める知事の会、全47都道府県が入会

国への手話言語法制定を求めて、昨年7月に「手話を広める知事の会」が設立され、1年3か月で全47都道府県が入会された。早期制定を願って止まない。

3.日本耳鼻咽喉科学会が全日本ろうあ連盟と意見交換

日本耳鼻咽喉科学会が9月14日、全日本ろうあ連盟が昨年末に公開した「人工内耳についての見解」で、人工内耳をつけることを否定しないと明言したことに敬意を表明。人工内耳の効果が限定的で人工内耳装用者でも手話が必要な人もいる等互いの組織で確認する。

4.大阪府の手話言語条例で、ろうの乳幼児に手話を!

全国的に広がっている手話言語条例は、聴覚障害児が手話を身につけるという条文が記載されているが、今年3月に制定された大阪府の手話言語条例では、乳幼児の時期から手話を獲得することを明記していることが大きな反響を呼んだ。

5.聴覚障害者で全国初のバスの運転手

昨年4月より、聴覚障害者に補聴器装用の条件で第2種免許の取得を認める道路交通法が改正された。埼玉県の松山さんが、聴覚障害者で全国初のバス運転手としての道を歩き始めた。頑張れ!松山さん。

※以上の5大ニュースは、日本聴力障害新聞を中心に取り上げました。