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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

検証 障害者差別解消法 第5回

八王子市の障害者の権利擁護に関する取組について

八王子市福祉部障害者福祉課

1 はじめに

現在、人口56万人を超える本市には、2万5千人近くの障害のある方や、その他難病にり患している方がいらっしゃいます。このような方々が住み慣れた地域で安心して暮らすことができるよう、「障害のある人もない人も共に安心して暮らせる八王子づくり条例」を平成24年4月1日に施行し、障害者の権利擁護の推進に取り組んでいます。

この条例では、障害を理由とした差別を禁止し、行政のみならず、事業者や市民に対し、合理的な配慮を行うことを求めています。また、差別相談体制や解決のための仕組みも定めています。

2 条例制定までの経過

最近、差別解消法の施行を契機に、多くの自治体が条例を制定する動きがあります。

本市の場合は、平成18年の障害者権利条約の採択など、障害者の権利擁護の機運が高まっていた頃、「障害者も安心して暮らせるまちづくりを」と、市内にある障害者団体が「八王子障害者の条例を考える会」を発足し、市民を対象とした勉強会などを開催したことが発端です。そこでは、障害者の抱える問題や自分たちの生きづらさなどの意見交換を重ね、最終的に条例制定を求める請願を八王子市議会に提出し、全会派一致で採択され、条例制定につながったのです。つまり、市民の障害者の権利擁護に対する熱い想いが本市の条例には詰まっているのです。

3 条例の改正

条例施行後、市はさまざまな取組や差別相談への対応をしてきましたが、いくつかの課題やより取り組むべき方向性が明らかになりました。そこで、差別解消法の施行に合わせ、主に次の点について条例を改正しました。

1.合理的な配慮の提供の義務化

差別解消法では、行政機関等には合理的な配慮を法的義務とし、事業者は努力義務としています。

しかし、市の施設を管理する指定管理者は市の事務事業を行なっていること、また、市が出資する外郭団体も市と同様の対応が求められることから、法的には事業者ですが、合理的な配慮の提供を義務化しました。

また、市の委託事業者については、条例での義務化はしませんでしたが、障害者と関わる事業について、契約の中で合理的な配慮の提供を求めることとしました。

2.障害理解教育に関する取組

障害者への差別をなくすためには、すべての人が障害を理解し、一緒に社会的障壁を除去する方法を考えることが一番大切です。そのためには子どものうちから障害を理解する必要があるとの認識から、障害理解教育に必要な環境整備を教育委員会と連携して取り組む旨規定しました。

具体的には、これまで一般向けの障害理解ガイドブックを作成して周知啓発を図ってきましたが、今年度から小学生向けガイドブックを作成し、市内70校の全小学4年生に配布し、授業の中で活用することとしました。また、学校での授業の方法を例示した学習指導案や交流授業に協力してくれる障害福祉事業所などの一覧も作成しました。

3.差別解消のための体制強化

差別相談を受けた時の課題として、相談者が途中で取り下げた時の対応の限界がありました。たとえば、精神障害者が、不動産屋に障害を理由に賃貸契約を拒否されたケースで、市へ相談をしたのだけれど、他の不動産屋で契約をした。また、事を荒立てたくないのでこれ以上関与しなくてもいいという方がいらっしゃいました。この場合、市としては、ご本人が取り下げられたため、それ以上の対応ができなかったのですが、これを放置すると、その不動産屋は依然として差別的対応をする恐れがあり、根本的な解決にならないのです。

そこで、差別事案の解決を求めて市長に申立てがあった場合の諮問機関として設置している「八王子市障害者の権利擁護に関する調整委員会」に、差別解消法に規定される地域協議会の所掌事務を併せ持たせ、委員数も7人から16人に増やすとともに、取り下げられた差別事案について調査ができるように体制を強化しました。

4 今後の課題について

これまでさまざまな取組をしてきましたが、やはり、市民、事業者への周知というものが大きな課題となっています。

条例制定当初、毎年大きなホールで障害理解のイベントを開催していましたが、年々、一般の参加者が減少してきたため、平成27年から、50万人の市民が参加する「いちょう祭り」に参加し、手話体験、点字体験、障害理解クイズなどを通し、広く一般市民への周知活動を行なっています。

今後もさまざまな機会をとらえ、障害のある人もない人も共に安心して暮らせるまちを目指して、障害理解啓発に取り組み、差別事案があった場合は、適切な対応をしていきたいと考えています。