「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2018年1月号
生き方・わたし流
僕の今の気持ちとグループ活動
村上鑑
皆さんこんにちは。カンちゃんこと村上あきらと言います。
高校卒業後、東京で働いていた時にバイクで交通事故に遭いました。それから14年が経ちました。高次脳機能障害者です。
働いている職場
地元に帰ってから、障害者雇用で市立函館病院の軽食喫茶に１日３時間６年間働いていましたが、もう少し長い時間を働きたいと思い、現在の靴屋さんで荷物の整理やお店の清掃、雪かきなどで１日５時間６年間働いています。この時は、「すてっぷ」という障害者の就労を支援している所にお世話になりました。
コロポックルの作業所
仕事が休みの時には週１回、僕のように交通事故や病気などで脳に損傷がある人たちが行くコロポックルという作業所に通所しています。この作業所では、石けん作りや結び昆布、鍋敷き作りなど、いろいろな作業をしています。昨年から、有機栽培の黒豆・黒千石豆の栽培で農作業にも取り組んでいます。昼休みには、麻雀もします。麻雀は頭を使うのでとてもいいです。月１回、若松町の総合福祉センターの体育館でソフトバレーなどもしています。作業所にはピアノがあり、みんなで歌の練習をしたりして、地域の歌の発表会にも出ています。
自助グループ「トラスト」
５年前に、作業所に通所している高次脳機能障害者の人たちを中心に「トラスト」を立ち上げました。トラストは脳損傷の後遺症を持つ当事者が自分たちのリカバリーを信じて道なき道を進むために可能性を信じて活動していこうという団体です。定期的にまちづくりセンターに集まって、活動の内容について話し合っています。食事に行ったり、映画を見たり、美術館に行ったり。毎年行われる函館脳外傷リハビリテーション講習会では、活動報告をして会代表の奥井さんの作詞作曲の歌を披露したりしています。
土曜日や日曜日にやっていること
障害者と一緒に行く「ひまわり号」という旅行に僕は車いすを押す係として参加しています。今は実行委員にもなり、同じ年齢の車いすの友達もできました。車いすからバスへの移動や入浴の介助などのお手伝いをしています。フェリーに乗って青森や秋田にも行きました。
＊ひまわり号とは車いすの通れない改札口、階段が多く障害者の利用できるトイレの無い駅や列車の構造などで、障害がある人たちが自由に列車に乗って旅ができないという現状の中、列車に乗ってみたい、旅をしたいという障害者の切実な願いを実現させようと、１９８２年11月３日、東京の上野駅から栃木県の日光駅を走らせたのが始まりです。
他の当事者グループとの交流
ひまわり号で一緒になった人が「トラスト」の活動に加わり、その人を介して函館市内にも身体障害者や精神障害者の自助グループがあることが分かりました。他の自助グループが主催する当事者の体験発表会があり、何回か発表しました。事故当時のことを語ったり、高次脳機能障害のことを話したり（いろいろな本を読んで、障害の説明をします）しています。これは自分を振り返り、自分自身の障害を理解することにもなります。
今の気持ち、これからのこと
僕は、交通事故に遭ったことでいろいろなことを学びました。親への感謝の気持ちや友人への感謝の気持ち、事故に遭っていなかったら人に対する気持ちが、貧しかったのではないかと思います。
今の生活を精一杯頑張ることと、将来的には一人暮らしをしたいと思っています。
作業所で歌っている奥井直実さんの歌の詩です。
〈HOU TO WALKIN〉
何度転んでもいい またたちあがればいい
君はまだ何一つ あきらめなくてもいい
今はまだだれかの番 必ず次は君の番
上手に空を翔る姿 君に見せてあげられる
明りの消えた暗い道は 誰も不安になるだろ
もう少しあなたが僕らを 知ってくれたなら
誰よりもうまく 飛ぶ姿 見せてあげられる
つまずいたり転んだり 泣いたり笑ったり
分かってもらえずに 悲しくなったり
悔しすぎて奥歯が砕けるほど 噛みしめたり
今日ここに来たことだけで 君は一人じゃない
青く綺麗な空色や 茜色の雲
また明日も同じように 見るために歩こうよ
ゆっくりでもいいのさ 自分のはやさで
ふみ出せばそこに必ず 道は出来るから
歩き出すこと決めた時には 思いきり跳べ
プロフィール
村上鑑（むらかみあきら）
北海道函館市にて1982年3月5日生まれる（35歳）。函館の保育園を卒園と同時に隣町の七飯町に引っ越す。七飯小学校、七飯中学校、函館工業高校と進み、18歳で東京のディスカウントショップのペット部門で働きました。しかし2003年7月25日、交通事故で奇跡的に命は助かりました。半年後仕事に復帰したのですが、なかなかうまくいかず、お店の方々に迷惑をかけると思い自主退社して地元に戻りました。精神障害者手帳2級、身体障害者手帳5級。