特集/リハビリテーション工学 視覚障害者のためのテクニカルエイド

特集/リハビリテーション工学

視覚障害者のためのテクニカルエイド

小田浩一 *

1.はじめに

 視覚障害者のためのテクニカルエイドの種類は多岐に及んでいる。1991年に筆者らがまとめた視覚障害者用のコミュニケーションエイドのリストには、約70種類の機器が挙げられている。紙面が限られているので、エイドの名前や性能については他の資料にゆずることにし、代表的なエイドのカテゴリーとその機能・発展の動向について述べてみることにした。また、この小論では、もっぱらコミュニケーションを支援するエイドについて述べたので、視覚障害者が障害物を避けながら移動するときに用いる超音波センサーなどの歩行用エイドは取り上げていない。関心のある読者は、別の文献を参照されたい。

2.盲人用読書機:オプタコンとOCR

 視覚障害者に最も困難なことのひとつは、文字で表現された情報の入手である。本や新聞、公報や時刻表など情報サービスのほとんどが印刷文字で提供されているので、これは重大な問題である。盲人やその関係者は、それらを点字や朗読テープに置き換えるために点字図書館や出版所といった社会的機構をつくりだしてきた。最近では、パソコンを利用した点字への翻訳(以下点訳)が効率を上げている(4(2)参照)し、全国規模のパソコンネットで点訳データの交換と点訳ボランティアの振り分けを行うシステムがさらに点訳の効率を引き上げている。それでも、多くの情報が短いサイクルで生産・消費されてゆく現代では限界がある。そこに、視覚障害者が入手したい印刷情報をその場で調べられる読書機のニーズがある。

(1) オプタコン(Optacon;OPTical-to-TACtile CONverter;光学―触覚変換機)

 オプタコンは、まだパソコンの現われる以前に開発された最も早期のテクニカルエイドのひとつである。ハードとしては、弁当箱くらいの本体と大人の親指くらいの大きさの小さなカメラとが細いケーブルで接続された機械である。本体上面に人差し指を乗せる部分があり、6列20行の120本もの小さなピンがジーンと振動して指の腹を刺激するようになっている。小さなカメラを印刷物の上に乗せて動かすと、そのカメラがとらえた文字の形そのままにピンが振動するので、盲人は指の先で文字を読むことができる仕組みになっている。

 一時はオプタコンがあれば点字は要らないとさえ言われたことがあったが、使用にかなりの訓練を要すること、最大でも点字の半分以下の速度しか出ないこと、漢字になると実用的な速度で読めないなどの限界も知られるようになった。これらの限界はオプタコンの機械的な欠点からくるのではなく、もっぱら人間の触覚の問題によって生じているため、オプタコンを改良することによる改善の可能性は低い。ただ、オプタコンをある程度利用できるようになった盲人からは、他のエイドでは得られないさまざまな利用価値が報告されている。いろいろな機器の液晶パネル、数式や理化学記号や楽譜、印刷物のレイアウトなど、カメラで撮像できるものならどんなものでも触覚で調べることができるので、つぶしが利くわけである。

(2) OCR(Optical Character Reader;光学文字読みとり装置)

 オプタコン時代の盲人の夢のひとつは、カメラで読みとった文字を音声で読み上げるスピーチ・オプタコンであった。スピーチ・オプタコンは、カメラが撮影した形を機械が何という文字であるか認識するOCR技術という大きな難関にはばまれ、ついに実現しなかった。現在では、英語の文字認識は十分実用段階に入っており、これをスキャナやカメラと合成音声(5(3)参照)とを結び付けて盲人用の読書機としたものが製品化されている。一方の漢字仮名交じり文を読み取る日本語のOCR技術は、まだまだ遅れている。それでも、一般向けのOCR製品を盲人が操作できるように改良したものが開発されている。現在のOCRには、読み取りの精度、個人レベルで購入できない価格、絵や図表の少ないレイアウトの簡単な文書しか読み取れないなどの問題点がある。

(3) 電子ブックと電子出版

 最近、紙に印刷されない図書、電子ブックが普及し始めた。例えば、音楽CDと同じCD1枚に広辞苑1冊分の情報が納められているのである。このようなCDは、音楽のCDと区別してCD-ROMと呼ばれている。電子ブックは、コンピュータやコンピュータを内臓した専用の読書機を使って読む。このとき、テキストの部分を合成音声で読み上げさせれば、盲人用読書機に成るのである。

 電子ブックの普及が視覚障害者の情報入手に与える影響は計り知れない。コンサイスな辞書でもその点訳は数年を要し、本棚一杯の点字本になった。そこにはコンサイスさはなくなり、価格的にも、単語を引く労力の意味でも大きな問題を残していた。それが、同じ価格で、同じ時に入手できて、かつ知りたい部分をパソコンが検索して読んでくれる。すでに富士通や日本電気に盲人用CD-ROM読書機の製品があるし、通常の電子ブックの読みとり装置をパソコンに接続して検索読み上げができるようにすることもできる。

 電子ブックを可能にした背景には、あらゆる印刷情報の電子化がある。紙に印刷された情報の方も、印刷前のコンピュータ・データが入手できれば、わざわざOCRで読みとらなくてもそのまま盲人に使える原理である。アメリカでは出版元から印刷前のデータをもらって点字にしたりディスクで提供したりするサービスが始まっている。日本でも、各所で試行錯誤が行われている。幸い、これまで出版社ごとにばらばらだった電子データの形式が、SGMLという形式に統一される動きがあり、ECではSGMLを読み上げるソフトの開発が行われている。電子ブック時代の読書機は、特別な製品ではなくパソコンにCD-ROMの読みとり装置と合成音声装置がついた、一般的な盲人用パソコンシステムである(5節参照)。

3.ロービジョンエイドCCTV

 弱視者が抱えている問題を簡単に示すと図1になる。横軸が見ているものの大きさ、縦軸がコントラストで、この中のどこかに我々が見ているものが位置する。図の中は、晴眼者のと弱視者のコントラスト感度曲線の2本によって3つの領域に分けられる:①黒い領域;晴眼者にも弱視者にも見えない領域、②白い領域;晴眼者にも弱視者にも見える領域、③灰色の領域;晴眼者に見えるが、弱視者には見えない領域である。灰色領域の大きさや形は、個々の弱視者のコントラスト感度によって異なってくる。今、ある文字表示が●印の場所にあったとする。つまり、コントラストの高い大きな文字で書かれていたとすると、晴眼者にも弱視者にも読めるので問題は起こらない。同様に○印も誰にも見えないのだから、不公平がない。▲印の文字表示にだけ、弱視者が読めないという障害が生じる。弱視者用エイドの機能は、灰色領域にあるものを白い領域に移動させることである。

図1 弱視者の問題とエイドの機能の模式図

図1 弱視者の問題とエイドの機能の模式図

(1) 拡大鏡とCCTV

 弱視の人たちは、ルーペで近くのものを拡大したり、遠くのものを望遠鏡で見たりして見えにくさを改善してきた。これらのレンズ類の機能は、見ているものを図1の横軸にそって左に動かすことである(破線矢印)。より新しいテクニカルエイドであるCCTVは、大きさを拡大するだけでなく、コントラストの強調や白黒の反転などができる。図1の上で考えると、CCTVは横軸と縦軸の両方で見やすさを改善することができることが分かる。軸が2つになると、さまざまな弱視者のニーズに合わせて融通を利かせることができる。例えば、もっと拡大しないと見えないのにレンズではできないという場合、CCTVでは拡大率を押さえたままコントラストを上げることで見やすさを改善できる。(図1の実線矢印)。また、CCTVの画面はレンズよりもずっと大きい視野を表示できるので、中心視野に障害のある弱視者やより大きな文字を必要とする弱視者に特に都合が良い。CCTVとは、Closed Circuit Television(閉回路テレビ)の略称であり、日本では拡大読書機とか拡大テレビと呼ばれている。

(2) 画像処理とゴーグル型エイド

 CCTVの後に来るエイドの1つの可能性は、画像処理付きCCTVである。弱視でぼやけた視野をくっきりと見せるために輪郭線を強調する画像処理を施すと、顔や風景が見やすくなるという研究がある。欠損した視野の一部を避けて表示するような画像処理も検討されている。このように、弱視の眼の特性の研究と画像処理という高度な技術が応用されてくるであろう。小さなテレビディスプレイの技術は、すでに携帯性のあるエイドを可能にしてきているが、さらにゴーグルの中にディスプレイを組み込んだものもできるであろう。

(3) 電子ブックと電子出版

 コンピュータ画面を拡大する装置(5(5)参照)を用意すれば、電子ブックはそのまま拡大図書になる。検索機能も有効である。印刷前の電子データから直接拡大印刷できれば、拡大図書の制作コストも時間も大幅に削減できる。上述したSGMLと同種のTEXを使って、拡大図書を効率良く作る方法やいわゆるDTP(Desk Top Publishing)を利用する方法が成功を収めている。

4.視覚障害者用ワードプロセッサ

 2節と3節では、視覚障害者の情報入手のテクニカルエイドについて述べてきたが、4節では情報生産のためのテクニカルエイドについて述べる。

(1) 点字ワープロ

 視覚障害者の間でベストセラーのテクニカルエイドは、点字ワープロと呼ばれるものであろう。全国で2,000台以上のパソコンがこの点字ワープロとして視覚障害者の文書作成に供されている。点字ワープロという名称は、点字文書を作成するワープロという誤ったイメージを与えるが、本当は漢字仮名交じり文書(以下墨字文書)を書くためのワープロである。点字文書の作成には、点訳ソフト(次節)というエイドがある。点字ワープロという名称は、元来漢字の点字を使って漢字かな交じり文書を入力していたところから来ている。

 通常の点字は、仮名文字を触覚で読めるように2列3行合計6つの点の配列にコード化したものである。これに対して漢字の点字とは、その点字を1~4文字並べて漢字をコード化したものである(図2)。長谷川式あるいは6点式と呼ばれる、漢字の音と訓の読み方の情報に基づいてコード化する方式と、川上式とか8点式と呼ばれる、漢字の部首を基にコード化する方式がある。

図2 かなの点字と漢字の点字

 通常の仮名の点字(左上)と、2種類の漢字の点字。右上が6点式、下の2つが8点式の漢字の点字である。6点式では漢字の音読み(この場合もくの「も」)と訓読み(この場合「き」)の最初の2文字に特殊な1文字を前置して表す。8点式では、上の2点が漢字の始まりと終わりを示し、木片は「き」という点字の上に漢字の点をつけて表す。林は、木が2つ並ぶ。

 

図2 かなの点字と漢字の点字 6点式(かきく)   図2 かなの点字と漢字の点字 6点式(木)

 図2 かなの点字と漢字の点字 8点式(木)       図2 かなの点字と漢字の点字 8点式(林)

 

 

 点字ワープロは、パソコンに通常のプリンタと音声合成装置(5(3)参照)を接続したもので、入力は通常点字タイプを使う要領(図3,5(2)参照)で行う。入力された文字は画面に表示されると同時に合成音声で読み上げられる。現在の点字ワープロは、漢字の点字による漢字の直接入力だけでなく、晴眼者が使うのと同じ仮名漢字変換も利用できる。盲人が漢字を確認するには、漢字の詳細読み機能を使う。例えば、「学」という文字は「学校の学」というように読み上げられるのである。点字ワープロは、これまで盲人には不可能に近かった墨字文書の自作を可能にした。リハビリテーション施設や盲学校では、この点字ワープロをコミュニケーション訓練に組み込み始めている。

図3 通常のキーボードから点字タイプ式に入力する方法

図3 通常のキーボードから点字タイプ式に入力する方法

(2) 点訳ソフト

 点字文書を作成・編集するワープロは、点訳ソフトと呼ばれている。自動的に墨字文書を点字文書に翻訳するソフトは自動点訳ソフトと呼んで区別している。点訳ソフトによって点字板や点字タイプがパソコンに置き換えられたことで、点訳ミスの校正が容易になり、点字プリンタで何部でもコピーを作れるようになった。最近では、自動点訳ソフトで一旦機械点訳し、その後点訳ソフトで手直ししてレイアウト・印刷する効率的な方法が使えるようになった。点訳ソフトは、合成音声を使って盲人自身が利用できるようにもなっている。

5.パソコン入出力機器

(1) ヒューマンインターフェイス

 パソコンは元来、計算や情報処理をする頭脳の部分と、テレビモニタやキーボードといった人間が操作するための部分からできている。自動車で言えば、エンジンとハンドルに対応する。視覚障害者がパソコンを使えない理由は、後者が晴眼者向けにデザインされているからである。だから、操作部分さえ視覚障害者に合わせて直せば、情報処理そのものは晴眼者と同じ内容を共有できる。この操作部分をヒューマンインターフェイスとかマン―マシンインターフェイスとか呼んでいる。以下に視覚障害者向けにインターフェイスを改善するエイドについて説明する。これらは、単体では機能しないが、パソコンと組み合わせることで、個々のニーズにあった強力なエイドを構成する。

(2) 点字入力

 ブラインドタッチという言葉があるくらいだから、パソコン通常のキーボードは盲人にも利用できる。しかし、キーの数が7つと少ない点字タイプ式の方が、ホームポジションから手を外さなくて良いので視覚障害者には都合が良い。そこで、パソコンに接続する点字キーボードや、普通のキーボードの一部を点字キーに見立てて点字入力を可能にするソフトがある(図3)。これらのハード・ソフトの重要な点は、点字ワープロを使っているときだけでなく、一太郎やロータス1―2―3といった晴眼者用の通常のソフトを使用しているときにも点字入力ができることである。

(3) 音声合成装置と画面読みソフト

 日本に住んでいて音声合成装置を知らない人は、数少なくなってきたと思われる。NTTの番号案内、エレベーターの案内、JRや私鉄の駅でのアナウンス、はては罐ジュースの自動販売機にまで合成音声が使われている。現在、音声は若干不自然ながら、それらしい日本語を話す音声合成装置が数種類市販されている。価格は10万円内外である。表1(a)に音声合成のおかげで、盲人の情報入手速度がどの程度改善されたかを示してある。データは、天才的な人間がどこまでできるかという数値を比較したもので、どの視覚障害者もこのような速度で読めるというわけではない。普通、オプタコンでは毎分100文字がせいぜいであろうし、点字では毎分300文字が平均である。これに対して、合成音声なら、慣れれば毎分2,000文字くらいは普通に聞き取れるのである。これは、晴眼者が黙読する速度とあまり変わらない。

 ただし、合成音声装置はパソコンに接続するだけでは機能しない。パソコンの画面に表示された内容を合成音声装置に読み上げさせる画面読みソフトが必要である。晴眼者の目は、そのときどきで違った作業をしている。例えば、漢字の変換に注目しているとき、数行分の文書を読み直すとき、句読点の位置を調整するときなどである。このような眼の役割を音声に置き換えるには、カーソル位置の漢字の詳細読みや、カーソル位置の文の読み上げ、段落の読み上げといった読み上げ方、句読点や「」をひとつももらさず発音する校正モードの読み上げなどいろいろな読み上げ方をする画面読みソフトが必要なのである。

表1 テクニカルエイドが視覚障害者の情報処理の効率に与えた影響(Oda,1992より)
(a)エイドないしメディアによる情報入手の速度の違い
エイド 速度(文字/分)
オプタコン 500
点字 1,250
合成音声(英語) 2,000

(b)エイドによる点字情報の出力速度の違い
エイド 速度(文字/分)
点字板 120
点字タイプライタ 300
点字プリンタ 600~24,000

(4) 点字ディスプレイと点字プリンタ

 視覚障害者にとって、情報入手の速度の点で合成音声にかなうものはないが、1文字1文字の正確さの点では点字の方に軍配が上がる。図4が、点字ディスプレイとかピンディスプレイと呼ばれるものである。2列3行の点で1文字を表す点字の点を、電子的にコントロールして上下させている。現在、1文字分の点字ディスプレイを作るのに約1万円程度のコストがかかる。プログラマなどわずか1文字の誤りでも致命的なミスに結び付いてしまう職業で好んで利用されている。点字ディスプレイの問題点は、コストと、機構的に2行以上のディスプレイを作りにくいことである。

 点字プリンタは、紙の上に文字のかわりに点字を打ち出すプリンタである。欧米ではプリンタと言わず、エンボッサ(打ち出し機)と呼んでいる。点字プリンタは、日本でも7~8種類が販売されており、点訳ソフトとの組み合わせで、視覚障害者のための点字サービスを、速くかつパーソナルなものに変えてきている。残念ながら、価格は100万円内外と高いものが多い。表1(b)に、点字プリンタがいかに点字制作の効率を高めているかを示した。点字プリンタ以前は、点字タイプライタがもっとも速いエイドであった。現在最も速い点字プリンタは、人間が点字タイプする80倍の速度で点字を打ち出すことができる。

図4 点字ピンディスプレイの模式図

 平らな板に2列3行に開けられた穴の中を小さなピンが上下する。この6つのピンが点字の点に対応して、1文字を表現する。ピンとピンの間隔は、2.3ミリメートルくらいである。ピンの駆動には、ソレノイドや圧電素子が使用される。

図4 点字ピンディスプレイの模式図

(5) 画面拡大

 弱視者のためには、パソコンの画面を拡大するエイドが必要である。これには、特別の装置を付加するエイドとソフトウェアだけで拡大するものがある。前者はソフトウェアに手を入れていないので、拡大する前と変わりなくソフトが動作するという利点があるが、コストが高くつく欠点がある。後者はその反対で、価格は安いが、ソフトウェアの動作速度が遅くなったり正常に動作しなくなったりする。どの製品も拡大率は2倍から20倍くらいまでで、拡大の他に画面の白黒を反転したり、カーソルを追従したり、画面全体に対してどの部分を拡大しているかを調べたりする機能が備わっている。国内でどのような製品があるのかについては、文献を参照頂きたいが、米国製のパソコンには、画面拡大の機能を標準で備えたものがあることを付け加えておく。

6.盲人用パソコン

 ヒューマンインターフェイスを改善するエイドを駆使すれば、通常のパソコンも視覚障害者にとってかなり強力なテクニカルエイドになることを述べてきたが、一方で、ハードもソフトも盲人専用に開発された盲人用パソコンも存在する。図5(盲人用パソコン「ユリーカA4」 略)に1例を示してある。盲人専用なので不要なテレビモニタは接続できないが、かわりに合成音声で情報を読み上げる機能がついている。キーボードも点字キーが標準になっている。ワープロや電卓、データベースや音楽ソフトなどすべて盲人用に設計されたソフトが付属している。

 最近、晴眼者用のパソコンを改造してゆく方法では解決しない問題も増えてきている。例えば、MacintoshやWindowsといったいわゆる視覚的な操作方法、GUI(Graphical User Interface)を取り入れたパソコンの増加である。これは一般的な動向なので、盲人は使いにくいパソコンを相手に苦闘を強いられることになりそうである。晴眼者へのインターフェイスが改善されてゆくなら、同様に視覚障害者のためのインターフェイスも進歩していって欲しいものである。その意味でも、本当に盲人の使い勝手を追求した盲人専用のハードやソフトの開発・研究は存在価値がある。

7.PDS

 ソフトウェアだけですばらしい効果を上げているエイドの中には、いわゆるフリーソフトウェアとかPDS(Public Domain Software)と呼ばれる、無償ないし手数料程度で利用できるものがある。これらは、障害者自身を含めたボランティアのプログラマが提供しているものである。例えば、点訳ソフトや点字入力ソフト、自動点字変換ソフト、自動で漢字仮名交じり文に変換するソフトや盲人用通信プログラムなどがある。画面読みや画面拡大ソフトには、フリーではないが、コストの低いものもある。

 PDS文化が成熟してきて、視覚障害者のコミュニケーション障害の軽減や知的生産性の向上にかなりの貢献をしていることは特筆すべきである。

文献 略

*東京女子大学


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1993年9月(第77号)2頁~9頁

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