用語の解説 訪問リハビリテーション 訪問看護サービス

用語の解説

訪問リハビリテーション

 訪問リハビリテーション(以下訪問リハビリ)は、地域社会で生活する障害児・者、虚弱者に対する援助の1形態であり、地域リハビリの考えに基づき、対象者と家族の家庭に出かけてサービス提供や援助活動をすすめることである。狭義には、理学療法士や作業療法士等リハビリ専門職が実施しているものを指す場合がある。

 訪問リハビリを法制度からみると、多くは老人保健法に基づき実施されている。

・訪問指導(保健事業):これは40歳以上で寝たきりあるいはこれに準ずる状態にある者に対して、主治医との連携と指導もと、保健婦または看護婦が実施するものとされ、必要に応じて理学療法士、作業療法士等の協力を得ることとしている。

・訪問による訓練指導(老人医療):これは保険医療機関が家庭で上記同様の状態の者に対して、診察に基づき計画的な医学的管理を継続して行い、理学療法士または作業療法士を訪問させて、基本的動作能力または応用的動作能力もしくは社会的適応能力の回復を図るための訓練等必要な指導を行うものとされている。

・老人訪問看護ステーション:上記同様の状態にある老人医療受給者に対し、主治医の指示に基づいて老人訪問看護ステーションから看護婦や理学療法士等が訪問し、看護や機能訓練等を提供するものとされている。

・老人保健施設からの訪問活動は規定されていないが、訪問による訓練指導として実施されている。

 また老人保健法以外でも、身体障害者や老人に対する日常生活用具給付や居宅改善を実施するにあたっても訪問活動が行われている。

 訪問リハビリの確たる定義はまだないが、訪問指導、訪問による訓練指導、訪問看護等が訪問リハビリとして行われている。また訪問リハビリ=在宅での機能訓練というとらえられ方が強いが、これはリハビリ=訓練という旧いイメージの影響である。

訓練は訪問リハビリの1部であるが介護方法の指導や社会資源の紹介、住宅改造のアドバイスなど「あたりまえの生活」を回復するための総合的支援内容が訪問リハビリといえる。それをすすめていくには福祉・医療・保健の関係職種の具体的な場面での協力が重要である。

森倉三男/(麹町保健所)

訪問看護サービス

 訪問看護サービスという時に看護婦が訪問してケアを行うサービスと解釈する向きもあろうが、本来は病院内のケアと同様、その問題に応じて看護婦はもちろん医師、理学療法士、作業療法士、言語療法士、栄養士、そしてケースワーカー等さまざまな職種がチームを組んで患者及び家族に関わってゆくサービスと考えられる。もちろん実際の訪問活動は看護婦が中心となって実施しているということが多々あろうが、その場合でも前述したような多くの専門職が連携することによって訪問看護サービスは成り立っているということを理解しておく必要があろう。訪問看護サービスにおいては自分自身の判断や選択を必要とする場面に数多く遭遇する。そのためにも常時多職種との連携を図ることによって自分勝手な判断に陥らないようにすることは大切である。

さて、訪問看護サービスは患者や家族が実際に生活する場へ出向いての看護の提供となるわけだが、そこでは患者や家族が主体であり、点としてサービス提供者が処置を実施したとしても、面として毎日のケアを実施してゆくのは家族であるということも特徴のひとつである。サービス提供者は単に技術を提供するのではなく、家族に指導してゆくことが必要であるし、さらにそれは技術の伝達ではなく、本人の闘病意欲を引き出し、家族の介護力を補い、向上させてゆくものでなくてはならない。そしてサービス提供者は、ある時は患者や家族の相談相手としてその思いや訴えに耳を傾け、隠されたニーズの顕在化を図ったり、精神的援助をしたりする。また、専門職として患者の合併症の予防や日常生活能力の低下防止、家族の側の健康保持を行うなど、訪問看護サービス提供者の役割は数多くある。定期的な訪問看護サービスの提供は、患者の在宅療養を可能にする必須条件のひとつであろう。

看護の本質を患者中心の看護に求めるのであれば、患者の生活の場でその患者にふさわしい個別の看護を提供し得る訪問看護サービスは看護の原点ともいえる。ただ、在宅ケアとは訪問看護のみで成り立つものではなく、真の在宅ケアを可能にするにはより幅広い展開が不可欠となろう。

森倉三男/(麹町保健所)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1996年5月(第87号)41頁

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