特集/社会リハビリテーションの最近の動向 身体障害者更生施設の整備の経緯と社会リハビリテーションプログラムの位置づけ

身体障害者更生施設の整備の経緯と社会リハビリテーションプログラムの位置づけ

赤塚光子

はじめに

 わが国の障害者施策は施設福祉から在宅福祉へ大きく転換してきたが、身体障害者更生施設は身体障害者福祉法制定時より、法に定められた基盤のもとに従前と変わりなく存続している。しかし、50年近くに及ぶその歴史の中で、身体障害者更生施設を必要とする対象者像は変化してきており、肢体不自由者更生施設においては施設数の減少傾向が続いている。

本稿では、身体障害者福祉法の改正や関連通知、審議会答申等から、肢体不自由者を対象とした更生施設を中心に身体障害者更生施設の整備の経緯及び現況を概観し、今後果たすべき役割と課題を検討してみたい。

1.身体障害者更生施設の整備の経緯

身体障害者更生施設は、身体障害者福祉法第29条に規定された「身体障害者を入所させて、その更生に必要な治療又は指導を行い、及びその更生に必要な訓練を行う施設」をいう。肢体不自由者更生施設、視覚障害者更生施設、聴覚・言語障害者更生施設、内部障害者更生施設及び重度の肢体不自由者及び内部障害者を対象とした重度身体障害者更生援護施設がある。

 障害者福祉の理念の深化や障害者を取り巻く社会状況の変化に呼応して、身体障害者福祉法は30数回に及ぶ改正を重ねてきた。昭和59年には、「更生」が単に職業的、経済的自立を意味するものではないことが明記され、平成2年の改正でその目的は「自立と社会経済活動への参加を促進する」ことと規定され、「広く社会参加の促進を図るという積極的な方向」に発展的に改められた。一連の法改正等に伴って、身体障害者更生施設にもこの間に、一定の変更がなされてきた。

 表1は、身体障害者福祉法の改正に伴う、身体障害者更生施設の整備の経緯を整理したものである。

表1 身体障害者福祉法改正と施行通知等にみる身体障害者更生施設の整備状況
年 次 内    容
昭和25年 身体障害者更生援護施設の設置は国又は地方公共団体とする
昭和26年 身体障害者更生指導施設が肢体不自由者更生施設に、中途失明者更生施設が失明者更生施設に名称変更される
社会福祉法人等も、身体障害者更生援護施設の設置が可能となる
昭和29年 ろうあ者更生施設が加わる
昭和33年 社会福祉法人の設置する身体障害者更生援護施設のうち厚生大臣の指定する施設への収容委託が可能となる。ただし、医学的機能を必要とする更生施設は国立、公立によるものとする
昭和38年 重度身体障害者更生援護施設の創設
昭和42年 肢体不自由者更生施設等に通所制度が発足 
内部障害者更生施設が加わる 
身体障害者施設入所年齢が、15歳以上に引き下げられる
措置費負担を、設置者から措置者に変更
昭和43年 更生訓練費の支給開始
昭和47年 市町村の身体障害者更生援護施設設置等について、都道府県の許可制から届出制に変更
昭和59年 肢体不自由者更生施設、失明者更生施設、ろうあ者更生施設、内部障害者更生施設を、法律上身体障害者更生施設に統合、施設形態の弾力化を図る 
身体障害者更生援護施設の費用徴収規定
昭和61年 社会福祉施設への入所措置事務が機関委任事務から団体事務に変更
平成元年 国の負担又は補助の割合の変更
(8/10から5/10に)
重度身体障害者更生援護施設の入所者の範囲拡大(内部障害者)
平成2年 身体障害者更生援護施設への入所決定権等の市町村への移譲(平成5年施行)

 国または地方自治体の責任において、身体障害者の社会復帰のためにつくられた身体障害者更生施設は、障害範囲の拡大にも対応して、昭和40年代初めには障害種別施設が整備された。また、昭和38年には、重度者を対象とした重度身体障害者更生援護施設が創設されている。

 当初は入所利用のみであったが昭和42年には通所による利用も開始され、その後昭和59年には障害別施設が身体障害者更生施設として法律上統合され、必要に応じて相互に利用しあえる弾力的運営が可能となった。身体障害者手帳所持者であれば、社会参加の準備をする場として活用しうるように整備されてきたといえる。

 昭和40年代半ばからは、在宅生活支援の各種制度が整備、拡充されてきた。身体障害者更生援護施設等も多様に整備されてきたが、更生施設、生活施設、作業施設、地域利用施設別にみた施設数の変化は、表2のとおりである。他施設の増加に比べて、更生施設数は微増の状況にある。

表2 身体障害者更生援護施設等の設置数の変化
(単位:ヶ所)
種  別 昭和58年 平成7年
更生施設 134 137
生活施設 151 289
作業施設 250 433
地域利用施設 251 476
計  786 1,335

2.肢体不自由者更生施設等の運営基準・指針

 次に、現行の身体障害者更生施設の設備、運営の基準等を、訓練内容規定を中心にみていく。この基準は、昭和60年1月の厚生省社会局長通知「身体障害者更生施設等の設備及び運営について」に示されている。

 この通知にある身体障害者更生施設等は、身体障害者更生施設、身体障害者療護施設、身体障害者授産施設を指している。第1章ではこれら施設に共通する事項を次のように定めている。

 第7 更生訓練

 施設は、入所者が自ら進んでその障害を克服し、その有する能力を活用することにより、社会経済活動に参加することができるようにするため、施設の特性に応じ必要な医学的訓練、心理的訓練または職能的訓練を行わなければならないこと。

 第8 生活指導

 1 入所者には、教養の時間を設けるとともに、自由に利用できる新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、図書等(特に視覚障害者施設にあっては、点字図書等)を備えて社会適応性を助成するように努めること。

 2 入所中の情操の陶冶に注意し、雑誌、ニュースの発行およびスポーツ、映画、演劇、音楽会等を適宜実施するとともに、適当な娯楽備品を備え付けること。

 第2章では、各身体障害者更生施設の基準を定めている。第2章第1は身体障害者更生施設の種別を、第2では各更生施設を定義し、第3以降に各施設の基準を示している。以下、肢体不自由者を対象とした更生施設である、肢体不自由者更生施設と重度身体障害者更生援護施設に関する施設の目的と運営基準をみていく。

 第2 定義

1 肢体不自由者更生施設は、肢体不自由者を入所させてその更生に必要な治療及び訓練を行う施設とする。

5 重度身体障害者更生援護施設は、重度の肢体不自由者を入所させてその更生に必要な治療及び訓練を行う施設、又は内臓の機能に重度の障害のあるものを入所させて医学的管理の下に必要な指導及び訓練を行う施設とする。

 第2章第3は、肢体不自由者更生施設に関するもので、ここに「更生に必要な治療及び訓練」が示されており、医学的更生、心理的更生、職業的更生に分けて記述されているので、少し細かくみていく。

 医学的更生の内容は、①医学的診断、②医学的更生治療及び訓練(職能整形外科的治療、理学療法、作業療法、運動療法)である。

 心理的更生は、①心理的診断、②心理的更生措置からなり、心理的判定は各種検査の実施に生活歴や観察を加えること、更生措置における集団指導では比較的小集団の討論会、演劇、レクリエーション、各種クラブ活動を実施すること、個別に相談助言を行う場合は、適切な時期に他の更生指導と関連して実施するよう留意すべきとしている。

 職業的更生は、作業用義肢、装具の装用とともに補助工具や手先用具の使用、入所者の特性に応じて準備訓練、基本訓練、応用訓練に分けて実施すること、訓練科目は地方の実情に応じて事務的科目(珠算、簿記、印刷、タイプ等)、特殊技術的科目(衛生検査、写真)及び農園芸等に考慮を払い、なるべく適性と希望に応じることができるように努めること、となっている。

 この中に、医学的更生及び職能的更生の細部に関しては、昭和29年の社会局長通知「肢体不自由者更生施設における医学的更生並びに職能的更生における実施の指針について」に基づき実施することという一文がある。

 昭和29年の指針とは、社会的更生へのより効率化を図るために、特に重要な根幹をなす指導訓練要領を、医学的更生における運動療法実施と職業更生のための職能訓練実施についての指針として定めたものである、両指針には、それぞれの評価、訓練の実施目的、方法、留意点等が詳細に記されている。

 この指針のマニュアルとしての完成度は高く、現在に応用すべき内容が含まれている。しかし、昭和29年という作成年代を否応なく感じさせられるものでもある。例えば、運動療法にある障害種別(肢切断者、麻痺者、その他の肢体不自由者)、職能訓練の準備段階の班構成(義手班、義足班、補助器班、痙直麻ひ者その他、弛緩麻ひ班)、職能訓練の準備段階の内容(事務、縫芸、工芸、園芸、金工作業)、訓練科目(謄写筆耕科、洋服科、手芸科、木工芸科、靴科、ラジオ組立科、自転車組立科)にみるようにである。どのような理由で、対象者あるいは訓練科目等の再構成がなされてこなかったのかは不明である。

 重度身体障害者更生援護施設については、第2章第7に基準が示されている。このうち肢体不自由者に関する部分では、入所者の要件に、身体障害者更生施設入所要件の他に「職業的更生は困難であるが、少なくとも、自助動作の機能が回復する可能性があると判定される重度の肢体不自由者」であることが加わっている。

 入所者への「処遇」は、次のように示されている。「肢体不自由者更生施設の基準(「職業的更生」を除く)に準じるが、重度の身体障害者の特性にかんがみ、それぞれの特性に応じた事項について留意すること。なお、各人の特性及び必要性に応じ、職業的更生の主旨に添って指導を行うことは差し支えない。」また、その他の留意事項として、二次的変形をまねくことのないよう予防措置を図る、残存機能を最大限に育成助長するための訓練を行う、義肢装具の装用と自助用具等の活用による日常生活が可能になるような指導を行う、常時就床している者にも効果的な各種療法を実施する、更生の動機づけについては十分に配慮する、重複障害者に対しては、その障害の種類に応じ必要な指導を行うことが挙げられている。

 これらの援助を行う職員は、肢体不自由者更生施設においては、施設長、医師、あん摩マッサージ指圧師、理学療法士、作業療法士、心理判定員、職能判定員、職業指導員、生活指導員、看護婦であり、重度身体障害者更生援護施設においては施設長、医師、心理判定員、理学療法士、作業療法士、あん摩マッサージ指圧師、生活指導員、看護婦、寮母となっている。

 肢体不自由者更生施設の入所期間は原則1年で6か月の延長が可能であり、重度身体障害者更生援護施設においては、おおむね5年以内とし入所者各人に対する指導計画によって適宜決定するとなっている。

 更生施設関連の通知には他に昭和60年の「身体障害者更生施設等の運営について」、昭和62年の「身体障害者更生施設、身体障害者療護施設、身体障害者授産施設の設備及び運営基準の施行について」があるが、ここでは更生訓練等には触れてはいない。

 従って、肢体不自由者更生施設等の身体障害者更生施設は、上記昭和60年の通知に示された基準に基づいて運営されていることになる。更生訓練の内容は、医学的訓練、心理的訓練又は職能的訓練であり、生活指導の内容は社会適応を助成するための施設内での配慮の域にある。また、肢体不自由者更生施設における医学的更生及び職能的更生は、昭和29年の指針に準拠して実施するのである。

 リハビリテーションは通常、医学的リハビリテーション、社会リハビリテーション、職業リハビリテーション、教育リハビリテーションで構成されるとするが、ここには、「社会リハビリテーション」という言葉はみられない。心理的更生がこれに近く、総体として社会リハビリテーションを目指すものと推察はされるが、その内容にも正面から触れてはいない。

3.答申等にみる身体障害者更生施設への提言

 身体障害者福祉法及びその関連通知には、身体障害者更生施設等における「社会リハビリテーション」の実施について明示されていないのであるが、昭和41年、昭和45年の身体障害者福祉審議会の答申にはこの必要性が明確に記載されている。

 その前段として、昭和30年代には施設の整備、運営が好ましく進捗しなかった様子をうかがわせる昭和36年の「身体障害者更生援護施設における入所定員の適正化等について」の厚生省社会局長通知がある。この通知では、施設規模からみて過大な定員を定めたり、基準定員に適合していない施設に適正化を求めると同時に、施設によっては長期間定員が充足されずにいるため、原因を極め、関係機関と緊密な連絡協調を図り施設の特性を広く理解させるよう等の指示をしている。

 そして、この5年後の昭和41年に、身体障害者福祉審議会会長から厚生大臣あてに「身体障害者福祉法の改正その他身体障害者福祉行政のための総合的方策」の答申がなされている。

 答申は、わが国は身体障害者対策にかなりの立ち遅れと不十分さがみられるとし、リハビリテーションの体系を確立させるために、①リハビリテーション技術の開拓、②リハビリテーションを実施する職員の充足、③リハビリテーションを行う施設の整備が必要、であるとしている。

 そして、第2部各論の第3章で社会リハビリテーションが取り上げられ、第1節に社会的リハビリテーションの必要性が、次のように書かれている。

 「リハビリテーションにおいては、医学的リハビリテーションと職業的リハビリテーションが重視され、不十分ながらも一応の成果を挙げている。しかしながら、更生に成功しない数多くの例が見受けられる。これは、社会的リハビリテーションという第3の重要な要素に欠けていたからである。」

 そして、重度の身体障害者も視野に入れた社会的リハビリテーションの内容を心理的更生指導と生活適応訓練に分け、それぞれの内容を示している。特に生活適応訓練については、リハビリテーションにおける新しい分野であり、今後の問題として、専門職員の充足と資質の向上、生活適応訓練の体系化とその細部の具体的内容の確立、生活適応訓練の研究を課題としている。

 昭和45年の同答申「昭和41年の本審議会答申以後の諸情勢並びに今後の社会経済情勢の変動に対応する身体障害者福祉施策」においては、第2章の3、に身体障害者更生援護施設におけるリハビリテーションの充実の(2)に、施設における心理的、社会的、職業的リハビリテーションの拡充強化について述べている。

 ここでは、医学的リハビリテーション及び職業的リハビリテーションの重要性を指摘しながら、「社会適応を図るための心理的、社会的リハビリテーションを常に並行して行い、全人格的な完全な社会復帰を目指した訓練の充実が必要」とし、より具体的に対策を示している。

 「心理、社会的リハビリテーションには、動機づけ、カウンセリング、心理療法、ケース・ワーク、生活指導、自治的活動指導、クラブ活動、行事、後保護指導があるが、生活指導の中には、家事、育児の仕方、家庭における応急手当の仕方等の訓練も当然含めるべきであろう。」

 「また、作業療法、日常生活動作訓練(ADL)、肢体不自由者の歩行訓練は、主として医学的リハビリテーションの一環として実施されるものであるが、施設の特性に応じ、心理、社会的、職業的リハビリテーションと併せて、これら訓練を行う場合の実施体系を確立する必要がある。」

 社会(的)リハビリテーションの重要性と内容、実施方法は、少なくともこの2つの答申には明記されていたのであるが、国の基準や指針には未だに他のリハビリテーションと併記して取り入れられていないのは、前述したとおりである。

4.肢体不自由者更生施設、重度身体障害者更生援護施設(肢体不自由者)の現況

 肢体不自由者更生施設数及び重度身体障害者更生援護施設数の推移を表3に示した。前者は減少傾向にあるが、後者は増加している。

表3 肢体不自由者更生施設及び重度身体障害者更生援護施設の年次推移 (単位:ヶ所)
年 次 肢体不自由者
更生施設
重度身体障害者
更生援護施設
昭和55年 51 39
60年 48 52
平成2年 44 61
4年 44 66
5年 43 68
6年 42 70
7年 41 71

 また、肢体不自由者更生施設の定員充足率は、施設全体でみると、5割に満たない状態であると報告されている(身体障害者更生施設実態調査報告書、全国身体障害者更生施設長会調査、平成5年)。同報告書によると、重度身体障害者更生援護施設の充足率は約9割である。

 以下、同報告書から両更生施設の利用者の状況を一部抜粋してみる(重度身体障害者更生援護施設には内部障害者数が含まれている)。

 在所者の主たる障害、身体障害者手帳による障害の程度、介助の必要性の状況を表4、5、6に示した。両施設を比べると重度身体障害者更生援護施設により重度の障害のある利用者が多いが、このことよりも、肢体不自由者更生施設利用者の重度化の状況に目を奪われる。職員体制をやりくりして、必要な介助を行っている状況がうかがえる。

表4 在所者の主たる障害
(構成比に占める順位の5位まで、その他を除く)
( )内、各構成比:%
肢体不自由者更生施設 重度身体障害者更生援護施設
脳血管障害 (36.2) 脳血管障害 (39.1)
脳性麻痺 (21.3) 脳性麻痺 (19.5)
頭部外傷 (9.0) 視覚障害 (9.7)
脳腰髄損傷 (7.2) 頚髄損傷 (6.7)
頚髄損傷 (4.9) 頭部外傷 (5.5)

 

表5 在所者の障害等級別各構成比 単位:%
等 級 肢体不自由者
更生施設
重度身体障害者
更生援護施設
1級 30.1 47.9
2級 43.8 43.8
3級 13.7 6.2
4級 7.3 1.3
5級 3.3 0.6
6級 1.8 0.2

 

表6 在所者の要介助の状況
(入所者に占める構成比) 単位:%
介助
内容
程度 肢体不自由者
更生施設
重度身体障害者
更生援護施設
排便 全面 0.9 5.3
一部 1.8 11.7
排尿 全面 0.8 4.2
一部 1.7 11.0
入浴 全面 2.4 11.5
一部 10.8 40.1
食事 全面 0.5 1.7
一部 1.8 14.9
更衣 全面 1.3 4.2
一部 4.0 20.1
整容 全面 1.1 3.4
一部 5.5 28.4
歩行 全面 6.6 18.5
一部 11.0 27.6
言語 全面 2.5 7.4
一部 11.1 23.4
書字 全面 4.9 16.0
一部 9.3 29.2

 表7は、両更生施設における実際に行っている訓練の内容である。機能訓練、体育訓練が上位にあるが、両更生施設とも社会生活訓練を約1/3の入所者に実施している。社会生活訓練担当職員の配置がない中で、各施設ごとに対応がなされている。

表7 在所者の訓練内容
(構成比に占める順位の7位まで、その他を除く)
肢体不自由者更生施設 重度身体障害者更生援護施設
機能訓練(PT)  (57.1) 機能訓練(PT)  (68.0)
体育訓練 (56.3) 機能訓練(OT)  (47.2)
機能訓練(OT)  (38.7) レクリエーション  (41.0)
レクリエーション  (38.4) 体育訓練  (37.2)
社会生活訓練  (31.2) 社会生活訓練  (37.0)
パソコン・ワープロ (27.1) 工芸  (14.2)
手芸  (15.6) パソコン・ワープロ (14.2)

 表8は、修了者の入所期間、表9は、終了後の状況である。

表8 修了者の入所期間の各構成比
単位:%
等 級 肢体不自由者
更生施設
重度身体障害者
更生援護施設
1年未満 18.1 12.4
1年 46.4 36.3
2年  19.7 19.3
3~5年 10.7 14.5
6~10年 3.6 9.2
11~15年 0.2 3.3
16年以上 1.1 5.0

 

表9 修了後の状況の各構成比
単位:%
修了後の状況 肢体不自由者
更生施設
重度身体障害者
更生援護施設
就職 30.9 4.8
自営 2.3 1.3
職業訓練校 5.2 1.8
重度授産施設 7.3 10.4
身障授産施設 7.7 5.3
家庭復帰 30.4 34.2
作業所 3.3 3.8
療護施設  1.1 12.0
その他の施設 2.8 9.9
入院 4.4 8.1
死亡・その他 4.6 8.4

 退所後の生活がなかなか決まらない入所者の入所期間を延長し、本意であるか否かは不明であるが、家庭復帰者が3割強にのぼっている。肢体不自由者更生施設の本来の対象者は就職を目指す人たちであるが、就職者は修了した人たちの約3割に過ぎない。肢体不自由者更生施設の本来の役割を継続しながらも、重度身体障害者更生援護施設との差異が不明確な部分も大きい。

 これらの数字に示されるように、昭和60年の通知にある現行の運営基準は、運営そのものに関しても、もはや実態にそぐわない状況にあるといわざるを得ない。

5.社会リハビリテーション確立の必要性

 身体障害者更生施設は、一定の期間、職員の援助を得て新しい自分を発見しながら、退所後の生活にじっくりと向かい合い、新たな人生をつくっていく機会を提供する場である。修了後のゴールが職業生活であろうとなかろうと、人生の途中で障害をもった人たちが、自分の生活を再構築し再出発するための場、あるいは幼い時から障害をもつ人たちが、社会人としての生活をつくりあげるための学校とは異なる学習の場として機能することが求められている。

 しかしながら、肢体不自由者更生施設を例にとると、この利用を必要とする人たちやそこで必要とする訓練プログラムの内容は著しく変化してきた。実態が変わってきているにもかかわらず、昭和60年に定めた運営基準のみならず、昭和29年に定めた指針も改定されずに現在に至っている。

 全国の肢体不自由者更生施設の中には、利用者に合わせたプログラムを開発し、これを行うための職員体制に工夫をこらしている先駆的な施設も見受けられる。社会生活訓練、社会適応訓練等と呼称されている施設が多くみられるが、中身はまさに在宅生活を送るために必要な力を獲得する社会リハビリテーションの実践であるといえるであろう。

 身体障害者福祉審議会の答申に社会リハビリテーションの重要性が指摘されていた昭和41年、45年当時と比べると、その重要性はさらに高まっているといえるであろう。「リハビリテーションにおいては、医学的リハビリテーションと職業的リハビリテーションが重視され、不十分ながらも一応の成果を挙げている。しかしながら、更生に成功しない数多くの例が見受けられる。これは、社会的リハビリテーションという第3の重要な要素に欠けているからである。」この答申の意味を改めて受け止め、その構築に取り掛かる必要がある。

 全国で展開されてきた先駆的な実践をもとに、社会リハビリテーションに求められる内容を精選し、社会リハビリテーション実践の具体的プログラム、援助方法を体系化することが求められる。同時に、これに見合う職員配置等も検討される必要があろう。

おわりに

 平成8年度から、障害者プランに基づく新たな事業として障害者の在宅生活を支援する「市町村障害者生活支援事業」が開始されることとなった。身体障害者更生施設は、地域における諸事業と連携することで、これまで以上に利用者の自立と社会参加に貢献することが可能となろう。

 身体障害者更生施設の再整備に向けた取り組みが、今こそ期待されている。

〈参考文献〉 略

東京都心身障害者福祉センター技術援助科研修係長


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1996年11月(第89号)8頁~14頁

menu