用語の解説 Stakeholder Washington Group(WG)on Disability Statistics

用語の解説

Stakeholder

 Stakeholderという英語は,一般に障害関係の文脈では,日本語の「当事者」という言葉と同様の場所でよく使われている。たとえば,障害問題の解決のための会議に参加する人たちは,こう呼ばれる。
 この語は,元々は,賭け事の掛け金の委託を受ける管理人のことをさし,それが転じて企業での利害関係者のこととなった。つまり直接的な利害関係者であるStockholder(株主,出資者) に対し,企業はこの他にも従業員や販売債権を持つ人たちなど多くの関係者の利害が絡む存在であることを念頭に置いたより広い概念として,Stakeholderが存在する。
 日本語の障害当事者でも障害者本人だけでなく,家族も入るのか,介助者なども入るのかといった議論がある。StakeholderはStockholderに対立する意味で,どちらかというと利害関係者を広くとっていく方向性がある言葉である。一方で,企業の利害関係者の意味で使われたことから,障害関係のStakeholderの場合,通常は,政府や民間企業,NGOはこれに含まれない。政府や民間企業等は,障害Stakeholderと協力して問題解決にあたるべき存在とされる。しかし,関係省庁の意味でStakeholderが使われる場合もまれにあるので,注意しなければならない。
 日本の当事者という言葉がどちらかというと障害者本人への方向性を持っているのと比べると,若干,両者の意味にはずれがある。
 一方,国連のような国際機関においては,Stakeholderは,NGO,当該問題の専門家,政策決定者など多くの関係者を含む意味で使われ,国連の条約等のStakeholder会合がよく開催される。この場合,Stakeholderの参加があることが会議の正当性を担保することになる。逆に会議を正当化する担保となるStakeholderとしてどういった人たちが参加しているべきであるかも問題になってくる。

(森 壮也/JETROアジア経済研究所主任研究員)

Washington Group(WG)on Disability Statistics

 2001年6月にニューヨークで行われた障害の計測に関する国連の国際セミナーにおいて,国際比較に利用できる障害計測法の開発の必要性が認識されて設立されたワシントン・グループでは,国際生活機能分類(ICF)の概念に基づいて障害者の統計ツールとして,見ること,聞くこと,運動,認知,セルフケア,コミュニケーションに関する基本的な質問からなる短い質問セットと前述の項目に,精神,痛み,疲労を加え,いくつかの質問項目が付随する拡張質問セットが策定され,世界各国あるいは国際機関などによるフィールド調査を行なっている。
 ワシントン・グループは,開発の状況やフィールド調査の報告会を毎年開催している。昨年の第11回の会合では,(1)短い質問セットを用いたイスラエル・アルゼンチン・中東アラブ・オマーン・南アフリカでの利用実績の報告,(2)調査を行なった際の質問項目の翻訳に関する問題点の紹介,(3)拡張質問セット最終版に向けての米国の国民健康面接調査(NHIS: US National Health Interview Survey),(4)ヨーロッパの健康と社会統合の調査(EHIS: European Health Interview Survey)での利用報告,(5)子どもの障害と環境因子のアセスメント項目策定を行なっているワークグループの活動報告としてイタリアおよびユニセフの調査での活用報告,(6)米国公衆衛生協会での協議内容についての報告,が行われた。ディスカッションでは,地域の経済状況や文化の違いに配慮した質問項目の翻訳の在り方,拡張質問セットの利用拡大に向けてどの地域でも活用できる理解可能な具体的な評価基準の設定,子どもの障害と環境因子に関する質問セット開発に向けての策定作業に関して活発な議論が展開された。

(筒井澄栄/国立障害者リハビリテーションセンター研究所 障害福祉研究部心理実験研究室長)


主題・副題:リハビリテーション研究 第152号

掲載雑誌名:ノーマライゼーション・障害者の福祉増刊「リハビリテーション研究 第152号」

発行者・出版社:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数・頁数:第42巻第2号(通巻152号) 48頁

発行月日:2012年9月1日

文献に関する問い合わせ:
公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
電話:03-5273-0601 FAX:03-5273-1523

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