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「JANNET NEWS LETTER」
(April 2000 第25号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<トピック>

RI2000年代憲章とその意義

JANNET広報啓発委員長・国際リハビリテーション協会副会長
松井亮輔

 国際リハビリテーション協会(RI)は、昨年9月ロンドンでの年次総会で「2000年代憲章」を採択した。RIが憲章という形で障害者施策について提言するのは、1980年6月カナダのウィニペグで開かれた年次総会で採択した「80年代憲章」に続いて、2回目である。
「完全参加と平等」をテーマとする1981年の国際障害者年を踏まえた80年代憲章では、「新しい十年にあたり、障害の発生を減らし、障害者の権利が尊重され、障害者の完全参加が歓迎される社会づくりをすべての国の目標としなければならない」と宣言し、その実現のため、

  1. 障害の予防
  2. リハビリテーション、ケアおよび援助サービスの提供
  3. 地域社会への障害者の統合と平等な参加の確保
  4. 障害の予防・治療、障害および障害者の能力などについての市民啓発

の4つを列挙。そして、各国はそれぞれの状況に鑑み、これらの目的達成のため総合的な国内計画を立てるよう勧告する、としている。  それに対し、2000年代憲章では、「私たちはすべての社会においてあらゆる人びとの人権が認められ、保護されるようにするという決意をもって、新世紀を迎える。本憲章はこのビジョンを現実へと変えていくこと」を宣言するとし、その実現に向けて次のことを提案している。

  1. 障害を人間の多様な状態の普通の部分として受け入れること。
  2. 障害者が他の人びとと同じ人権および市民権を確保できるようにすること。
  3. 障害者を地域社会生活に完全統合するため環境上、電子情報上、態度上のあらゆる障壁を取り除いて、交通手段、情報技術、教育、公共サービス、雇用等、地域社会の資源にアクセスできるようにすること。
  4. 政府開発援助(ODA)による途上国の社会基盤整備事業について、最低限のアクセシビリティ基準が条件付けられるようにすること。

 そして各国は、その憲章で表明された目的を達成するための期限を明確に定めた総合計画を策定しなければならない、と強調する一方、これらの目的を達成するための鍵となる戦略として国連・障害者権利条約の制定を呼びかけている。
以上の対比から明らかなように、80年代憲章と比べ、2000年代憲章では障害者の人権、市民権およびアクセス権などにより大きな重点が置かれている。とくに、国連・障害者権利条約制定が提案された背景としては、1975年の国連・障害者権利宣言や、1993年の国連・障害者の機会均等化に関する標準規則等が、強制力を持たず、それらを踏まえた国内施策を進めるかどうかは、あくまで各国政府の判断に委ねられてきたため、あまり実効が上がっていないことへの反省がある。
また、国連・障害者の機会均等化に関する標準規則の各国での実施状況をこれまでモニターしてきた特別報告者B.リンドクビスト氏(スウェーデン元社会大臣)の任期が2000年8月に切れ、いまのところそれ以降、障害者の完全参加と平等をさらに推進するための国際的な手立てがないことから、同条約の制定はそれを打開するための強力な手段と見なされている。もっとも、2000年の国連総会でたとえこの条約が提案され、加盟国の賛成多数で採択されたとしても、それが実施されるには各国での批准手続きが必要であり、したがってこの条約が実効を上げうるまでには、相当な期間が必要となる。RIとしては、そうしたことをじゅうぶん認識したうえで、その実現に向けて息の長い取り組みを開始することを決断したわけである。