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「JANNET NEWS LETTER」
(April 2000 第25号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<図書紹介>

アジアの障害者と国際NGO

ニノミヤ・アキイエ・ヘンリー著
明石書店 1999年

 アジアの障害者の自助活動の実体はほとんど知られていない。本書はアジア太平洋障害者の十年の背景と趣旨から始まり、その行動計画(アジェンダ・フォア・アクション)をDPI(障害者インターナショナル)の発展に焦点を合わせて評価している。
アジア太平洋障害者の十年は、余すところ2年となった。実施の中心となった国連ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)は、行動計画の中心に途上国を置いて、そこでの障害者の生活の向上を強く意識して十年を推進した。我が国ではその精神を障害者プラン等、十年の中で採択された施策の形で推進しようとしたが、残念ながら基本概念である「障害者の機会の均等化」は政策レベルから日常での自己決定に至るまでまだ十分に実現されているとは言い難い。それは障害者当事者の活動がまだ弱体であるためなのか否かを、アジアの他の障害当事者の活動と比して考察してみたいと、本書を手に取った。
国際NGOの専門家である著者は、国際的自助団体としてのDPIの誕生を、20世紀における人権活動の中で起こった国際的なNGO活動の中での当然の成り行きとしてみている。グローバルな平和運動、ジェンダーの視点、言語・聴覚障害や知的障害の人たちをも代表するための数々の試み、自立生活モデルの提示、農村地域への浸透などの取り組みから、世界でのDPIの活動の広がりを説明している。
翻ってアジアではDPIはどの程度エンパワーされているのであろうか。フィリピンDPI(フィリピン障害者連合)とタイDPI(タイ障害者協議会)は各種の障害を網羅し、全国的なネットワークをもつモデルとすべき自助団体であることは知っていたが、研究対象となった他のDPI国内組織も予想以上に検討していることがわかった。
我々は彼らを援助の対象として付き合うことが多い。しかし実際は、情報や技術、資金などの資源を一方的に提供していく未発達の組識として彼らを見なしてはいけないことを、本書は教えている。
札幌でDPIの世界会議が開催される2002年はアジア太平洋障害者の十年も終結する。今アジアで障害分野の開発に関わっている人々にはすぐにでも読んで、自分たちの国際協力の場で得たものを活かしてほしい。

アジア・ディスアビリティ・インスティテート 中西由起子