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国連世界情報社会サミット(World Summit on the Information Society : WSIS)

グローバルフォーラム ―情報社会における障害者― の配布プログラム:2003年12月12日

グローバルフォーラム組織委員会

2003年12月12日 9:30 ― 18:00

スイス ジュネーブ パレクスポ

プログラムは次のフォーマットで利用できる: 印刷、拡大印刷、CD-ROM

09:30 ― 10:30
A:オープニング・セッション

A01
歓迎の辞
バーナード・ハインザー、bernhard.heinser@sbszh.ch (スイス視覚障害者図書館理事、www.sbs-online.ch
A02
開会の辞1
モーリッツ・リュエンバーガー(スイス政府連邦議会議員、スイス連邦環境・運輸・エネルギー通信省長、世界情報社会サミットスイス代表団団長)
A03
開会の辞2
ピエール-フランソワ・アンガー(ジュネーブ州政府職員)
A04
基調講演
キキ・ノードストローム、kino@iris.se (世界盲人連合会長、www.worldblindunion.org
国際障害同盟会長)
キキ・ノードストローム氏は世界盲人連合(WBU)の会長で、およそ160カ国における約600の様々な組織を代表している。また現在、7つの大きな国際的障害者グループのネットワークである、国際障害同盟の会長職にも就いている。これらの障害者グループには、障害者インターナショナル(DPI)、インクルージョン・インターナショナル(II)、リハビリテーション・インターナショナル(RI)、世界盲人連合(WBU)、世界ろう連盟(WFD)、世界盲ろう連盟(WFDB)、そして世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワークが含まれる。ノードストローム氏は、更に、スウェーデン視覚障害者協会の運営委員会にも参加しており、スウェーデンのユニセフの評議員と、スウェーデンのジェンダー・農業担当大臣の下に設けられた女性と暴力に関する諮問グループのメンバーに加え、国連障害者の機会均等化に関する基準原則を監督する国連専門家委員会のメンバーも務めている。ノードストローム氏は既婚で5人の子どもがいる。

10:30 ― 11:00
休憩

11:00 ― 13:00
B:成功を収めた事例の紹介

B01
RNIB(英国王立盲人援護協会)と主流の通信会社との連携 ― 課題と成果
スティーブ・タイラー、steve.tyler@rnib.org.uk (RNIB、www.rnib.org.uk
シャーロット・グレゾ、charlotte.grezo@vodafone.co.uk (Vodafone、www.vodafone.co.uk
要約:
RNIBは3年間電気通信産業における研究活動を行ってきた。そして一連の明確な戦略と、主要な製造業者・ソフトウェア提供者及びネットワーク所有者との協力により、テレコミュニケーションの環境に対する認識を変えることに成功し、ある主要なネットワークプロバイダーとの連携について合意に達した。この結果、イギリスにおいて、またほどなく国際的なレベルにおいても、アクセシブルな製品とサービスを提供できるようになるであろう。これはVodafone社との戦略的な協定を通じ可能になったもので、両組織がお互いに利益を生む協力体制をもたらすため、戦略方法を結びつけることで実現した。
グレゾ氏は、グループの企業責任を担当する部署を設立するために、2001年にVodafone社に加わった。この部署は、グループレベルでの企業責任を管理する政策やプロセスの確立に、子会社や提携会社と協力して取り組んでいる。企業責任は、環境問題と社会問題の両方を網羅し、具体的には、Vodafone企業責任レポートで述べられた責務を確実に果たし、「我々の周りの世界に対して、強い関心を持つ」という価値観と企業責任とをしっかりと結びつける活動を行っている。

B02
スイスにおけるアクセシビリティーの保障
ジュルグ・スタッカー、juerg.stuker@namics.com (namics、www.namics.com
アーノルド・シュネイダー、arnold@access-for-all.ch (Stijtung Zugang für Alle / アクセス・フォー・オール、www.access-for-all.ch

要約:
障害者の機会均等に関するスイスの法律によれば、政府は2004年1月1日から、オンラインによるアクセシブルなサービスが利用できるようにしなければならない。このプレゼンテーションは、その原理と、法律制定の過程において民間の組織がスイス政府に提案した試行方法の要点を紹介している。視覚障害者のためのオンラインによる行政手続きの利点が、短いデモンストレーションを通じて紹介される。 シュネイダー氏は、障害者を対象にした技術改良を進めるスイスの団体、アクセス・フォー・オールの理事を務めている。同氏自身視覚障害があるコンピューターの専門家で、技術改良のエキスパートでもある。 スタッカー氏はスイス最大のインターネット・サービス会社である“namics”の技術部長であり、スイス視覚障害者図書館の役員をしている。

B03
知的障害者のための活動におけるICT:「パーソナル・パスポート」
フレッド・ヘデル、fred.heddell@mencap.org.uk (インクルージョン・インターナショナル、メンキャップ 学習障害の理解、www.mencap.org.uk )
ミニオン・アンディ、andy@thebigree.org (リックス・センター)
要約:
このプレゼンテーションでは、知的障害者のための革新的なICTの活用について、写真やマルチメディア、パーソナル・パスポートのサンプルを使って、アクセシブルな方法で説明する。ICTと障害に関する議論では、知覚及び運動面の障害がある人々のニーズが優先され、認知及び知的障害者のニーズは除外される傾向がある。ICTは、日々の社会生活におけるコミュニケーションや、計画及び決断のため考えをまとめる際の、新たな手段と機会を、知的障害者に提供する。マルチメディアのパーソナル・パスポートは、知的障害者がすぐに生活の質を向上できるように、非常に包括的にICTを利用する仕組みになっている。パーソナル・パスポートは、知的障害のために社会の中で受ける可能性がある制約を、真に軽減するデジタル機器を、知的障害者が利用できるようにし、このような人々が、情報に基づき自分自身で決断を下し、自分の考えを表現し、伝えるのに役立てられる。
フレッド・ヘデル氏は、東ロンドン大学のリックス技術革新研究センターの創立者である。同センターは、マルチメディア技術の利用を促進し、障害に関する国際的な知識の共有を可能にするために設立された。同氏は、1999年から2003年まで、王立メンキャップ協会の会長を務め、英国最大の障害慈善団体の全般的な運営と監督の責任を果たした。現在は、200の知的障害者団体からなる世界的な連盟である、インクルージョン・インターナショナルの財務部長の職に就いている。Fredは学習障害に関する本を何冊か書いており、またBBC放送で、障害者や障害、コンピューター及びマイクロ技術に関する150以上のテレビ及びラジオ番組の脚本を書いたり、コンサルタントとして活動したりしている。
ミニオン・アンディ氏は東ロンドン大学のドックランド・キャンパスにあるリックス・センターで、マルチメディア及び学習障害に関する研究の責任者として活動している。同氏は、また、英国の大学と企業の学際的なチームと共同で、知的障害者のためのバーチャルな学習環境のひな型を開発する“PACCIT-APPLE”という重要なイギリスの研究プログラムも指導している。アンディ氏には、印刷物やビデオ、及びオンライン形式による著作が多数あり、そのクライアントは、メンキャップ、チャイルドライン、インクルージョン・インターナショナル及びチャンネル4TVなどである。
B04
ディスレクシア(読み書き障害)がある人々のためのDAISY(アクセシブルなデジタル情報システム)製品
トールビョーン・リンドグレン、torbjorn.lundgren@fmls.nu (FMLS / ディスレクシア[読み書き障害]がある人々のための組織)
要約:
過去3年間、スウェーデン・ディスレクシア協会(FMLS)は「印刷された世界へのアクセス(www.sprakaloss.se参照)」というプロジェクトに取り組んできた。プロジェクトの課題は、言語の美しさや多様性、豊富な語彙を損ねることなく読みやすくするにはどうしたらいいか?また、どのように技術を使えば、読みの障害を防ぎ、これを補うことができるだろうか?ということである。トールビョーン・リンドグレン氏は、著書「未来の学習教材 ― 読み書き障害(ディスレクシア)がある人々のために(英語版はwww.hi.se/butik/pdf/03326-pdf.pdf 参照)」の中で、この活動に関する重要な結論を述べている。その一つでは、このような人々はテキストを含むDAISY図書を必要としていると記しており、それ故、「未来の学習教材」のスウェーデン語版は、CD版を付録としてつけている。また、「印刷された世界へのアクセス」というプロジェクトの活動は、音声、テキスト、絵や写真及び映像を備えたDAISYのCDで紹介されている。しかし、DAISYの読みとり機器(LpPlayer、EaseReader、TPB Readerなど)はもともとは視覚障害者のために作られたものなので、現在FMLSは、ラビリンデン AB社と共同で、特にディスレクシアその他の読み書き障害がある人々のニーズに合わせたデジタル図書読みとり機器を製作中である。
リンドグレン氏は、著述家で、自身もディスレクシアの障害がある。同氏はこのテーマの論文、本、パンフレット及び小説を書いている。また「印刷された世界へのアクセス」プロジェクトの、二人の指導者のうちの一人である。
B05
精神障害者を支援するテレビ会議システムの開発とデジタル・アーカイブ
山根耕平(べてるの家)
要約:
北海道浦河町、人口およそ16,000人の町に年間約2000人もの見学・取材陣が訪れる精神障害者のコミュニティがある。このコミュニティ、浦河べてるの家では、ブロードバンド・ネットワークを利用して日本中の人々と交流し、精神障害者の社会的・経済的発展のために必要な情報や知識をアクセスして交換しあっている。具体的にはテレビ会議システムとデジタル・アーカイブを活用して交流を行っている。http://www.tokeidai.co.jp/beterunoie/
山根耕平氏の経歴
1971年4月千葉県に生まれる。
1996年早稲田大学大学院理工学研究科卒業 機械工学専攻。
1996年4月三菱自動車工業株式会社に入社。
2001年11月浦河べてるの家に参加。
2002年2月突発的な宇宙人の幻聴を聴くが、べてるの家の仲間達にミーティング を開いてもらって助けてもらう。
2002年5月幻覚妄想大会でグランプリを獲得。
現在社会福祉法人浦河べてるの家OA事業部に所属し、日本各地で多数講演を行っている。

B06
ICTの高性能化に向けたアクセシビリティーの設計 実践的なアプローチ
ジョージ・カーシャー、kerscher@montana.com (DAISYコンソーシアム事務局長、www.daisy.org
要約:
情報通信技術(ICT)には、数多くの設計条件がある。すなわち、高機能で効率がよく、かつ社会の全ての人が使える物でなくてはならない、という条件である。その基本条件を追求していくと、高性能の情報システムは、障害者のニーズと全く矛盾しないということが明らかになる。従来の印刷による出版物は、性能が悪い上、アクセシビリティーもない。優れた設計によるシステムは、一人一人に最も適切なフォーマットで情報を提供することができる。もし、美しいフォーマットの印刷物がほしければ、それを得ることができるし、もし読み上げてほしければ、そうすることができる。また、点字でほしければ、やはりそれを得ることができるのである。高性能の情報システムは、情報の検索や関連事項の分類、コンテンツの書式設定を行い、最終的に適切な形で各人に提供することができる。また、マルチメディア形式のプレゼンテーションを行うために、何層もの情報を次々と加えていき、一度にまとめることもできる。我々の高度に視覚的な世界においては、探し求めている情報は、文章ではなく、ビデオや音声に保存されている場合が多いので、マルチメディアは極めて重要である。我々は高性能システムにより、ビデオや音声を検索することを望んでいる。では、どのようにしたらよいのだろうか?マルチメディアによるプレゼンテーションは従来の印刷による出版物を大きくしのぐもので、これこそが、未来のICTなのである。
ジョージ・カーシャー氏は、情報を単にアクセシブルにするだけでなく、視覚障害者や印刷物を読むのに障害がある人々にとっても、完全に実用的にするための技術を開発することに全力を投じている。カーシャー氏自身視覚障害者であり、1987年にコンピューターを基礎とした情報技術の開発を始めた。そして、健常者と障害者の両方にとって同時に役立てられる、情報システムにおけるXMLの様な構造的なマーク・アップの重要性を根気強く主張してきた。現在カーシャー氏は、DAISYコンソーシアムの事務局長と、アメリカ合衆国の視覚障害者及びディスレクシア(読み書き障害)がある人々のための録音を行う団体(RFB&D)の、アクセシブルな情報を担当するシニア・オフィサー、更に、公開電子図書フォーラム(OeBF)の理事長と、W3Cの4つの支部の一つである、ウェブ・アクセシビリティー・イニシアティブ(WAI)運営委員会の共同議長も務めている。
B07
技術を通じた社会参加:カリブ海地域における視覚障害者を対象としたコンピューターの導入
アーバル・グラント、arvel.grantccb@candw.ag (カリブ視覚障害者委員会常任理事)
要約:
効果的なスクリーンリーダーと視覚強化プログラムの開発とともに、情報技術は視覚障害者にとって、社会の他の人々と同様、ほぼアクセシブルといえるようになってきた。視覚障害者が可能性に満ちた新しい世界へと入ってゆけるように、教育的・職業訓練的な基盤を提供する活動の一環として、カリブ視覚障害者委員会(CCB)は、サイト・セイバーズ・インターナショナル(視覚障害の予防及び治療を行う国際的な団体:SSI)の多大な経済・技術支援を受け、500台以上のコンピューターを、カリブ海地域全体で行われる正式な研修プログラムに参加する視覚障害児・者が利用できるように設置する地域計画に着手した。プレゼンテーションでは、視覚障害者としてグラント氏自身がジャマイカの教育・職業訓練部門において経験したことを引用しながら、この計画の構成と開始に関する背後の事情を簡潔に紹介する。
グラント氏は1953年にジャマイカで生まれ、先天的な視覚障害がある。同氏は、キングストンにある救世軍盲学校を卒業後、西インド諸島大学に入学し、政治学の学位を取得した。1980年代中頃にカリブ視覚障害者委員会にプロジェクト・オフィサーとして参加し、1992年に常任理事に任命された。

13:00 ― 14:30
休憩

14:30 ― 16:30
C:全ての人のためのICT(情報通信技術)の設計と開発

C01
TeleSIP ― 聴覚障害者・難聴者・言語障害者のユーザーのための新しいコミュニケーション基盤
ビート・クリーブ、kleeb@procom-deaf.ch
ウルス・リンダー、linder@procom-deaf.ch (プロコム財団、www.procom-deaf.ch
要約:
TeleSIPは、聴覚障害者・難聴者・言語障害者と健聴者が「自然な言語」でインターネットを通じコミュニケーションできるようにする、最新の世界的なコミュニケーション・システムである。これは新しいSIPインターネット標準規格(SIPはセッション・イニシエーション・プロトコルの意)に基づくマルチメディア・コミュニケーション・システムである。このソフトは、SIP記録サーバー内の記録と結合して、聴覚障害者・難聴者及び言語障害者が各自のニーズに応じ、テキストや音声、映像によりコミュニケーションをとれるようにする。映像は手話や読唇術を使えるよう、高画質で送信される。このシステムはスイスのシーメンス社とプロコム財団により開発され、二人の専門家による共同作業の結果、障害があるユーザーの真のニーズとともに、公的な国際標準規格をも満たすことに成功した。
クリーブ氏は工業用化学薬品の製品開発に携わる化学者であり、同時にマーケティング・サポーターでもある。同氏は、スイスの聴覚障害者のためにボランティア活動を行っており、Schweizerischer Gehörlosenbundの委員、副会長、名誉会員を経験し、また、スイス聴覚障害者協会の会長と、世界ろう連盟の聴覚障害者のための技術支援に関する専門家委員会の委員を務めた。
リンダー氏は、スイス連邦工科大学(ETH)で電子工学の学位を取得した、アクセシブルなテレコミュニケーション及び情報技術に関する専門家である。同氏は聴覚障害者のための電子技術協同組合の設立者であり、その理事も務めている。同組合は、1979年に設立された、聴覚障害者及び難聴者のためのコミュニケーション技術を専門とするスイスの組織である。リンダー氏はヨーロッパのテキスト・テレフォンの開発と製造の分野における先駆者の一人で、現在はIETF(インターネット技術特別調査委員会)のSIPを基盤としたマルチメディア・コミュニケーション・ソフトウェア及び製品に熱心に取り組んでいる。
C02
自閉症と情報コミュニケーション技術支援
ジョン・バーク博士(ケンタッキー自閉症支援センター所長、ケンタッキー州ルイヴィル、ルイヴィル大学小児医学・教育学・学習学部助教授)
須田初枝(社会福祉法人けやきの郷理事長、日本自閉症協会副会長)
阿部淑子(社会福祉法人けやきの郷常務理事、日本自閉症協会出版部副部長)
阿部氏、須田氏、山根氏の写真
要約:
このマルチメディア・プレゼンテーションの目的は、自閉症その他の認知障害を抱える人々を対象とした特別な教育及び治療に対する要求を満たすために、情報コミュニケーション技術(ICT)をどのように利用できるかについて、具体的な提案をすることである。まず日本とアメリカ合衆国からの代表を迎え、自閉症者を対象としたオンライン双方向教育及び研修システムと、研究成果を実際に適用することに焦点を当てた技術について、ICTを利用した現在の活動に関する情報を紹介する。次に、日本にある福祉施設とその工場で大きな成功を収めた、成人の自閉症患者が雇用の機会を得られるように環境を整える支援活動の事例について紹介する。更に、成人の自閉症患者が参加した公開プレゼンテーションの抜粋を紹介するが、これは、全ての出席者に、自閉症の人達によく見られる、独特かつ共通のニーズを伝えるためである。最後に、自閉症その他の認知障害を抱える人々へのサービスや教育を向上させるに当たり、どのようにしたら情報コミュニケーション技術が重要な役割を果たせるかについて、簡潔に論じる。
ジョン・バーク博士は、ケンタッキー自閉症支援センター所長で、ルイヴィル大学の小児医学・教育学・学習学部助教授でもある。1997年8月に同大学に来る以前は、ジョン・ホプキンズ大学で指導し、同大学の教育技術センターのプログラム・ディレクターを務めていた。バーク博士は、カリフォルニア大学のサンタバーバラ校(UCSB)で、心理学、教育学及び言語コミュニケーション学の学位を取得し、UCSB及びUCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)医学部の共同プログラムを通じて、言語聴覚科学の博士号を取得した。博士は、様々な政府機関(合衆国教育省、国立精神衛生研究所など)の出資による、いくつかの重要な自閉症その他の障害の研究及びトレーニング・プロジェクトに広く関わっている。
須田初枝氏は、社会福祉法人けやきの郷の理事長で、日本自閉症協会(ASJ)の副会長でもある。また、1998年より全国障害児福祉連盟理事、1983年より全国特殊教育推進連盟理事、1973年より障害者福祉団体連絡委員会の副会長を経て現在は理事を務めている。更に、1985年のけやきの郷設立に深く関わり、1988年に理事長となり、現在に至っている。須田氏には、44歳の自閉症の息子がおり、35年以上もの間、自閉症の人々とその家族のために広く活動してきた。1967年には、自閉症児の親の会を日本で初めて設立した。
阿部淑子氏は、社会福祉法人けやきの郷の常務理事で、1970年より日本自閉症協会(ASJ)出版部の副部長を務めている。1954年に早稲田大学で英文学の教養学士号を取得し、自閉症の息子を育てるために、日本自閉症児親の会に参加し、そこで須田氏に出会った。1978年からけやきの郷の設立に深く関わり、現在はその運営の中心となっている。阿部氏には41歳の息子、太郎がおり、30年以上自閉症の人々のために広く活動してきた。阿部氏は世界的に有名な、自閉症児と健常児の統合教育に成功した武蔵野東学園初等部の設立にも貢献した。また、自身の経験と、太郎のカナダ旅行の経験、カナダでは自閉症の人々も全く問題なく(「ノー・プロブレム」に)暮らすことができることにヒントを得て、「合い言葉はノー・プロブレム」というノンフィクションを1996年に執筆し、日本エッセイストクラブ賞にノミネートされた。
C03
全ての人のためのDAISY(アクセシブルなデジタル情報システム)プロジェクト
マーク・ハッキネン、オープン・ソース・プロジェクト・コーディネーター、hakkinen@dinf.ne.jp (DAISYコンソーシアム、www.daisy.org、AMIS、www.amisproject.org
ディペンドラ・マノシャ、dipendram@vsnl.net(国立視覚障害者協会、ニューデリー、インド、www.nabdehli.org
モンティアン・ブンタン、mbuntan@tab.or.th(タイ盲人協会、www.tab.or.th)
マリッサ・ディメグリオ、marisa@dinf.ne.jp(全ての人のためのDAISYプロジェクト、www.amisproject.org
東美紀、m-azuma@dinf.ne.jp(全ての人のためのDAISYプロジェクト)
ハッキネン氏、マノシャ氏、ブンタン氏、ギーリング氏の写真
要約:
オープン・ソース・ソフトウェア(OSS)は、包括的な情報社会の技術的インフラストラクチャーを築く際の課題の解決に向けて、望ましい方向性を提供する。OSSにより、発展途上国における個人や組織の特有のニーズを満たす解決方法を、それぞれの地域で開発し、支援することが考えられるようになった。しかし、これまではほとんどのOSSには、主流の市販ソフトにさえも見られるようなアクセシビリティーが欠けていた。アクセシブルなOSSを開発するには、教育、知識の伝達、そして能力開発が不可欠である。この目的のために、全ての人のためのDAISYプロジェクトにより、一連のオープン・ソース開発ワークショップが始められた。ワークショップでは、発展途上国のプログラマーにDAISY及び関連する、アクセシブルな情報のための国際的な公開標準規格と、DAISYのオープン・ソース・ソフトウェア開発を紹介し、また、地域の言語やインターフェースの条件を満たすよう、ソフトを地域にあったものに改良することに重点がおかれる。ワークショップ自体も、障害者にとってアクセシブルにし、ワークショップを終えた者は、特別なDAISY OSS開発活動に加わったり、あるいはワークショップで得た知識や技術を自分の仕事に生かしたりできるようにする。アクセシブルなICTの開発と改良を進める地域的な能力を開発することは、発展しつつある情報社会に地域のニーズが反映されることを保障する上で重要である。
マーク・ハッキネン氏は過去25年間、全ての人にとってICTをより利用しやすくするために、教育・商業・及びNGOの分野において研究開発活動を続けてきた。1995年には、視覚障害者がワールド・ワイド・ウェブにアクセスできるよう、視覚を使わないウェブ・ブラウザを初めて開発した。また、アクセシブルな情報に関する標準規格の開発に、W3C及びDAISYコンソーシアムなどの組織とともに積極的に取り組み、現在W3Cウェブ・アクセシビリティー・イニシアティブの研究開発グループの責任者となっている。
ディペンドラ・マノシャ氏は、デリーの国立視覚障害者協会の技術部長を10年間務めている。また、インドの言語用の点字変換ソフトやTTSソフトなどの研究開発活動を始め、その活動の調整を行ってきた。現在は全ての人のためのDAISYプロジェクトの、アシスタント・プログラム・マネージャーとして、オープン・ソース・ソフトウェアの開発の調整と、発展途上国における拠点の設立に責任を負っている。
モンティアン・ブンタン氏はアメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリスのミネソタ大学で、音楽理論と作曲の修士号を取得し、2002年よりタイ盲人協会の技術、国際関係及び人材開発担当理事を務めている。1993年から2002年までは、タイのマヒドール大学ラチェスダカレッジの副校長を務めた。ブンタン氏は、タイ視覚障害者協会の第一副会長で、世界盲人連合の執行委員でもある。
マリッサ・ディメグリオ氏は全ての人のためのDAISYプロジェクトの、AMIS(Adaptive Multimedia Information System)開発コーディネーターで、2000年から、DAISY及びアクセシブルなソフトウェアの開発に参加している。現在は、AMISを地域にあわせて改良することと、次のバージョンを開発することの、二つの活動を中心に行っている。AMISはオープン・ソース・ソフトウェアで、www.amisproject.orgで、無料で入手できる。ディメグリオ氏はアメリカ合衆国ニューヨーク在住である。
C04
C04の発表者ヴァレスト氏の写真e-ワーキングと障害者同士の交流のための共通のICTアプリケーション
トニー・ヴァレスト、chairman@isdac.org(ISdAC国際協会、www.isdac.org
C05
障害者のためにウェブをアクセシブルにする標準規格と戦略
ジュディ・ブルーワー、jbrewer@w3.org(W3Cウェブ・アクセシビリティー・イニシアティブ理事、www.w3.org/WAI
要約:
ワールド・ワイド・ウェブは、情報化時代の中心技術を障害者にとってアクセシブルにする素晴らしい機会を提供する。ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)のウェブ・アクセシビリティー・イニシアティブ(WAI)は、視覚、聴覚、身体、認知及び精神障害など様々な障害を抱える人々のための、アクセシビリティーに必要な条件を支持することを表明している。これらのアクセシビリティーに必要な条件は、優れたウェブ・デザインとも一致し、様々なタイプの機器からウェブにアクセスするための強力な基盤も提供する。ブルーワー氏は、ウェブのコンテンツ開発者及びウェブ・ベースのアプリケーション制作者向けのガイドラインと、アクセシビリティーのニーズに対する意識を高め、その解決に関するトレーニングを提供する戦略を含む、アクセシビリティーを促進するための、最新のウェブ技術改良について説明する。特に、標準規格の統一が、アクセシブルなウェブ・コンテンツの制作に対する幅広い支援を確実にする上で果たす重要な役割についてと、それが、アクセシブルな情報技術に必要な条件の標準化を進める、地域及び国家の活動にとって、何を意味するのかについて述べる。更に、現在ウェブ・アクセシビリティーの問題を解決するためにW3C/WAIを通じて産業界と障害者団体、アクセシビリティー研究センター、そして政府が共同で行っている活動に参加し、コメントするには、どのようにしたらよいかについても述べる。これに加え、ウェブ・デザイナーが、オンラインの教育課程、チェックリスト、クイック・ティップス(アクセシブルなウェブ作成のための10の基本)、専門用語の解説などを提供するアクセシブルなサイトを制作するのに役立てられる、WAIが開発中の多数の方法についても紹介する。
ブルーワー氏は、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)の、ウェブ・アクセシビリティー・イニシアティブ(WAI)の理事で、19997年9月から、ウェブのアクセシビリティーに関するW3Cの5つの活動分野の調整に当たっている。具体的には、W3Cの技術(HTML、CSS、SMIL、XMLなど)にアクセシビリティーを取り入れることを保障し、ウェブコンテンツ、ブラウザ及びマルチメディア・プレーヤー、オーサリング・ツール及びXMLアプリケーションのためのアクセシビリティー・ガイドラインを開発し、ウェブサイトの評価と修正のためのツールを改良し、ウェブ・アクセシビリティーに関する教育と福祉活動を行い、将来ウェブ・アクセシビリティーに影響を与える可能性がある研究開発活動を監督している。この活動を通じて開発されたWAIのガイドラインに、ますます多くの世界中の国々で採用されている、ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティー・ガイドライン1.0がある。同氏はアクセシビリティー政策と国際的な標準化を担当するW3Cの連絡部長で、ウェブ・アクセシビリティーに対する社会認識を高め、その実施を促し、コンセンサスに基づいたアクセシビリティー解決方法の開発に関する産業界、障害者団体、アクセシビリティー研究者、及び政府の間の効果的な対話を保障する役割を果たしている。また、同氏はMIT(マサチューセッツ工科大学)のコンピューター科学研究所の研究職にも就いており、W3Cに加わる前は、主流の技術への障害者のアクセスを増やすことを目的とした、アメリカ合衆国によるいくつかのプランに参加していた。
C06
災害と疾病を防ぐためのICTの役割
河村宏、hkawa@rehab.go.jp (国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所、障害福祉研究部長www.rehab.go.jp
要約:
障害者は、災害や疾病の致命的な影響を防ぐために、ICTの設計と開発に関して特別なニーズを持っている。このプレゼンテーションでは、災害や疾病によってひきおこされる損害のうち、避けられる損害をなくすために、個々の障害者のニーズに合わせてどのようにICTを利用できるかについて、まとめている。災害や疾病への備えや予防、対応及び復旧に関する、手頃な価格で、アクセシブルなフォーマットによる、世界的なパブリックドメインの知識の共有が提案され、論じられる。
河村宏は、日本の国立身体障害者リハビリテーションセンター(NRCD)研究所、障害福祉研究部長である。大学の理学部で地理学を学び、障害関係の活動及び障害問題について幅広い経験がある。同氏は、国際図書館連盟(IFLA)の盲人図書館セクションの部長の経験があり、国際的なアクセシビリティーの標準規格であるDAISYの創始者かつ研究者でもあり、また国際協力機構(JICA)アジア太平洋障害開発センターの諮問委員会のメンバーと、障害分野の研修と就労、雇用に関する平等達成を目標とした世界的な研究・情報ネットワーク(GLADNET)のメンバーも務める。更に、ウェブ・アクセシビリティー・イニシアティブ/W3Cの運営委員でもある。そして、日本の障害者のニーズに合わせて著作権法を改正する際に主導的な役割を果たし、発展途上国におけるDAISYの実施を支援し、アクセシブルなICTの開発により、障害者のニーズに合わせて、災害の被害を軽減し、その準備と対応をすることに関する研究を行っている。ごく最近では、世界情報社会サミット(WSIS)の市民社会局で障害者グループの中心となって活動している。

16:30 ― 17:00
休憩

17:00 ― 18:00
D:クロージング・セッション

D01
開会の辞
パトリス・マグニィ、ジュネーブ市政府職員
D02
情報社会に関する障害者のニーズと要求を述べた「アクセシブルな情報社会に関するジュネーブ宣言」に関する討論と決議
以下の文書について議論される。
アクセシブルな情報社会に関するジュネーブ宣言
我々は、2003年12月12日にスイスのジュネーブで開催された、情報社会における障害者に関するグローバルフォーラムの参加者として、以下のことを共同で宣言する。

障害者は、人間社会にとって不可欠かつ不可分な存在として、情報社会の全ての局面に参加し、あらゆる種類の障壁、偏見及び差別から解放され、完全参加の権利を享受することができなくてはならない。
ICTを含む情報及び通信の内容は、情報社会を形作る上で極めて重要な役割を果たすもので、ユニバーサル・デザインの原則と支援技術の利用に基づき、障害者を含む全ての人々にとってアクセシブルにされなければならない。

2003年12月7日

チューリッヒ