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IGFワークショップ
インターネットのユニバーサルデザイン化におけるアクセシビリティと人間工学の導入-「次の10億人」の10%を占める障害者にサービスを提供する方法

組織:ITU(国際電気通信連合)
2008年12月4日 インド ハイデラバード

会議議題

このワークショップでは、さまざまなユーザーの個々の能力に関係なく、すべての人にとってインターネットをアクセシブルにする必要性を強調する。これは、情報不足の撲滅だけでなく、社会経済的差別の撲滅というニーズにも、影響を与える。

インターネットへのアクセスは、あらゆる国のすべての人にとって、インターネット取引、インターネット医療、インターネット教育、およびインターネット通信全般から利益を得るために、重要である。インターネットをユニバーサルデザイン化する計画に障害者のニーズを取り入れることにより、「次の10億人」へのサービスの提供が促進され、国際的なインターネット社会への参加が増加するであろう。

プログラム

モデレータ:
「開会の辞」
ITU Andrea Saks(アンドレア・サクス)

基調講演: 「アクセシビリティ ITUの優先課題」
ITU電気通信標準化局長 Malcolm Johnson(マルコム・ジョンソン)

講演者:

講演内容、講演者の略歴と写真、および講演内容の要約は、このイベントの公式ページhttp://www.itu.int/ITU-T/worksem/accessibility/200812/index.htmlからごらんいただけます。

共催機関

背景

ITUはインターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)のDynamic Coalition on Accessibility and Disability (DCAD)の創立メンバーの一つである。DCADの目的は、国際社会のすべての部門が、情報社会に対する平等なアクセスを有する未来を構築するために、関係各機関の連携を促進し、インターネット・ガバナンスを取り巻く重要な議論において、ICTアクセシビリティが取り上げられるようにすることである。私たちは、すべてのコミュニティが、「アクセシブルなICT世界」から利益を得られると確信している。なぜなら、人は個人的な状況、環境(たとえば、騒音の中での電話など)、あるいは文化的状況(たとえば、話し言葉の違いなど)が原因で、恒常的に、あるいは一時的に障害を負う場合があるからである。さらに、私たちは皆年をとり、今は当然のことと考えている能力を失ってしまうので、アクセシブルな通信から恩恵を受ける人の割合は膨らむであろう。私たちは、すべての人による最大限可能なICT情報の利用を妨げる、適切な機能の欠如が原因で、一部の人々が孤立してしまうのを容認することはできない。ITUはDCADに参加しているさまざまな関係者で結成された運営委員会と共同で、このワークショップを企画した。

ワークショップ運営委員会

  • Andrea Saks (アンドレア・サクス)ITU
  • Stefano Polidori(ステファノ・ポリドーリ)ITU 電気通信標準化部門 電気通信標準化局
  • Asenath Mpatwa (アセナス・ムパトワ)ITU 電気通信開発部門 電気通信開発局
  • Alessandra Pileri(アレッサンドラ・ピレリ)ITU 電気通信開発部門 電気通信開発局
  • Marco Obiso(マルコ・オビソ)ITU 電気通信開発部門 電気通信開発局
  • Peter Major(ピーター・メジャー)ITU 無線通信部門 無線通信局
  • Bill Jolley(ビル・ジョリー)オーストラリア通信・メディア局(ACMA)
  • Angela Garabagiu(アンジェラ・ガラバギウ)欧州評議会
  • 河村宏 DAISYコンソーシアム
  • Axel Leblois(アクセル・レブロワ)G3ict
  • Cynthia Waddell(シンシア・ワデル)国際インターネット障害者支援情報センター(ICDRI)
  • Jorge Plano(ホルヘ・プラノ)インターネット学会アルゼンチン支部(ISOC-AR)
  • Misako Ito ユネスコ
  • Shadi Abou-Zahra(シャディ・アブ・ザーラ)W3C ウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブ
  • Clara Luz Alvarez(クララ・ルズ・アルヴァレス)ITU 電気通信開発部門 第一研究委員会 課題20ラポーター
  • Fernando Botelho(フェルナンド・ボテリョ)リテラシー・ブリッジ(Literacy Bridge)
  • Arnoud van Wijk(アーノウド・ファン・ウェイク)インターネット学会(ISOC)

このイベントにおける実況字幕は、インターネット学会(ISOC)のご好意により提供されます。

講演要旨

1.「国連障害者権利条約(UNCRPD):インターネットに与える影響は?」

国際インターネット障害者支援情報センター(ICDRI)
Cynthia Waddell(シンシア・ワデル)

障害者権利条約のICTにかかわる義務の実施における政府の役割に関する発表。アクセシビリティ基準を支持する政府の好事例として、カナダ、アイルランドおよびアメリカ合衆国におけるツールキットの公的斡旋、実践的な公共サービスなどを紹介。障害者の視点を主流に取り入れることと、関係者間の連携についても語る。

2.「ウェブ・アクセシビリティの国際標準規格」

W3C ウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブ
Shadi Abou-Zahra (シャディ・アブ・ザーラ)

ウェブの可能性を最大限発揮させるというワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)の責務には、障害者のために高い利用性を促進することが含まれる。W3Cウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブ(WAI)は、W3Cのコンセンサスに基づくプロセスを通じ、ウェブ・アクセシビリティにさまざまな関係者を巻き込みながら、活動を展開している。ここでいう関係者には、産業界、障害者団体、政府、アクセシビリティ研究機関などが含まれる。W3C/WAIは世界各地の機関と共同で、ウェブ・アクセシビリティに関する国際標準規格として広く認められているガイドラインの開発を進めている。講演では、ウェブ・アクセシビリティの国際標準規格である、ウェブ・コンテンツ、オーサリングツール、ブラウザおよびメディアプレイヤーに関するW3C/WAIガイドラインの採用が、障害者のウェブ・アクセシビリティを可能にする上で、どのように重要な役割を果たすかを解説する。

3.「発展途上国におけるウェブ・アクセシビリティ法の実現」

インターネット学会アルゼンチン支部(ISOC-AR)
Jorge Plano(ホルヘ・プラノ)

この講演の目的は、発展途上国にウェブ・アクセシビリティ法がないことを示し、そのような法律を実現するためのガイドラインを提供することである。講演では、発展途上国におけるウェブ・アクセシビリティ法の状況を簡潔に紹介し、ウェブ・アクセシビリティ法で検討しなければならないおもな課題の概略を述べるとともに、その促進のためのロビー活動の戦略について、アドバイスを提供する。

4.「低価格および無料の支援技術:大規模な配備を可能にするには」

Mais Diferencas 、リテラシー・ブリッジ(Literacy Bridge)
Fernando Botelho (フェルナンド・ボテリョ)

多くの政府は、低価格および無料の支援技術に対する認識がない場合は特に、障害者の権利を確保する政策の企画・実施は不可能であると考えている。これは発展途上国で特にいえることである。低価格および無料の代替手段に関する認識を高めることにより、国連障害者権利条約で規定されている義務を順守しないことを正当化するために、しばしば利用されてきた経済上の理由が、かつては当然と思われていたが、もはや通用しないことを示す。この短い講演では以下について述べる。

  1. 低価格および無料の支援技術(LNCT)の例。LinuxプラットフォームおよびWindowsプラットフォームの両方の事例など。
  2. 低価格および無料の支援技術の広範な採用を妨げる共通の障害。知的所有権、教育、競争政策など。
  3. LNCTの広範な採用のための短期および長期戦略。オープン標準規格、研究開発、調達、教育政策などに関する支援。

5.「リアルタイム字幕:必要不可欠なアクセシビリティ機能」

インターネット学会(ISOC)
Arnoud van Wijk(アーノウド・ファン・ウェイク)

  • 情報社会、日常生活におけるインターネット
  • TTYの過去と現在
  • リアルタイム字幕とは?
  • 解説
  • 技術
  • インターネット・テレフォニーの一環として(公衆電話網からIP電話への移行
  • 相互接続のためのトランスコーディング・ゲートウェイ
  • 主流としてのリアルタイム字幕は通信の自由と新たなサービス(リレー通訳および遠隔地手話通訳、携帯型TTY)を可能にする。

6.「スペース・ネットワーク・システムズ・オンラインとアクセシビリティ」

ITU 無線通信部門
Peter Major(ピーター・メジャー)

基本概念: 静止衛星は高度36,000kmの軌道を、地球の回転速度と同じ速度で回っているため、地球表面からは静止しているように見える。

静止衛星以外の衛星の軌道速度は、地球の回転速度とは異なる。

通信衛星は1960年代初期から打ち上げられてきた。周波数(有害な干渉)と(静止衛星の)軌道上の位置という2つの重要な資源について、調整が必要である。

無線通信局(BR)の役割

国際電気通信条約付属無線通信規則(100年前の国際条約で、地域無線通信会議および世界無線通信会議で定期的に改正されている)に基づき、主管庁はBRに対し、通信衛星システムの実施計画を通知する。そしてシステムの主な特性(周波数帯、軌道上の位置、サービスなど)について説明する。BRはその情報を処理し、事前公表資料を発行する。事前公表資料の情報を提出した主管庁は、最初の資料の発行から2年以内に、通信衛星システムに関するさらに詳しい内容(調整依頼)を、追加データ(出力の特性、サービスエリアなど)とともにB Rに提出しなければならない。BRは影響を受ける可能性がある衛星(主管庁)を特定し、調整依頼を公表する。主管庁は、影響を受ける主管庁との調整を開始する。

調整に成功した主管庁は、衛星の打ち上げから6か月以内に、打ち上げ場所、打ち上げ機、製造者、その他の契約上のデータ(手続的真正性情報)をBRに通知し、実際の特性について通告し、調整依頼の提出から5年以内にその衛星の使用を開始しなければならない。BRは、手続的真正性情報と、通告された情報の両方を公表する。これらのデータはすべてBRのスペース・ネットワーク・システムズのデータベースに保存され、主管庁、オペレーター、およびその他のユーザーが、1996年からインターネット上のスペース・ネットワーク・システムズ・オンライン(SNSオンライン)を通じて利用できるようになっている。

アクセシビリティ試験計画:

  • SNSオンラインのウェブページを修正し、視覚障害者向けにアクセシブルにする。
  • アクセシビリティの問題を特定するために利用できるツール(Cynthiasays、Wave、Jawsなど)を使用する。
  • 経験を積み、アクセシブルなアプローチを形式化する。
  • ITU内でアクセシブルなアプローチを可能にする。
  • ITUの研究委員会に結果を提供し、勧告に盛り込んでもらう。

7.「防災のための情報アクセシビリティ」

DAISYコンソーシアム
Dipendra Manocha(ディペンドラ・マノシャ)

発展途上国の多くの国民は、自然災害および人為的災害に対し脆弱である。その脆弱性は、無知と経済的な困難が原因で何倍にも増加する。(遠隔地では、ごくわずかな、あるいは非常に不十分なインフラストラクチャーしかないので、望ましい通信手段へのアクセシビリティがなくなってしまう。)

また、何らかの身体障害あるいは感覚障害がある人々の場合も、このような脆弱性が増加する。南アジアの津波、そしてインドのビハール州で最近発生した洪水では、このような脆弱性の例が数多く認められた。

情報は、以下にあげる災害対策の3つの局面すべてにおいて、重要な役割を果たす。

  • 防災
  • 災害の警告
  • 救済事業

デジタルコンテンツそのもののアクセシビリティの標準規格として、あるいはアナログ情報のソースとしてのDAISYは、災害対策のあらゆる局面に関する情報のアクセシビリティ確保において、非常に大きな役割を担っている。DAISYはオープン規格である。したがって、誰でもこれを情報の作成と配信に使用することができる。DAISYはすべての情報が、あらゆる人のもとに、いかなる身体障害あるいは感覚障害にも対処できる複数のフォーマットで届けられるよう、保障する。DAISYコンソーシアムは、アクセシブルな情報を作成するためのオープンソースな解決策を促進し、開発している。そのような情報のオーサリングは、多数の主流のオーサリングツールをDAISY Pipelineと統合するために設計された、Save As DAISYと呼ばれるオープンソースなアドインを使用して行うことができる。さらに、このシステムはどの現地語に対しても高い適応性を備えている。

オープンソースの再生ソリューションにより、すべてのユーザーグループのために情報をカスタマイズできることから、DAISYは、災害対策などの重要な課題における情報アクセスおよび情報作成の最善策とされている。


このコンテンツは、以下のページの抄訳です。
http://www.intgovforum.org/cms/workshops_08/showmelist.php?mem=51
http://www.itu.int/ITU-T/worksem/accessibility/200812/abstracts.html