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日本身体障害者団体連合会(日身連)の取り組みと提言

社会福祉法人日本身体障害者団体連合会

東日本大震災への対応

 日身連は都道府県・政令市等の加盟64団体から構成され、各加盟団体は市区町村等に支部組織を有している。日身連東日本大震災特別対策本部(本部長 小川榮一日身連会長、日身連事務局内3月17日設置)は、被災地特別対策本部(本部長 前田保東北・北海道ブロック代表・青森県身体障害者福祉団体連合会会長、事務局仙台市障害者福祉協会3月18日設置)と連携し、被災地の情報収集活動、被災地及び全加盟団体へのアンケート調査(支援提供や支援ニーズ等)、被災地加盟団体・支部組織の再建支援、政府や政党等への緊急並びに中長期的支援に関する具体的支援対策等に関する要望活動、日本障害フォーラム(JDF)との連携活動に取り組んでいる。

 未曾有の大震災の前に被災地加盟団体及び支部組織は多大な被害を受け、情報や生活必需品の不足に混迷を深めた。加盟団体会員の多くは、福祉サービスを受けていないので福祉施設等からの支援や連絡はなく、当事者団体につながっていて良かったという声が寄せられた。ただし、当事者団体に加入している在宅障害者の割合は少なく、どこにもつながりのない多くの在宅障害者は生活必需品や食料品を入手できず、さらに多大な不安と混迷を極める避難生活を強いられた。日身連としてつながりの拡充に努めたい。

日身連と加盟団体の連携した取り組み  

 東日本大震災特別対策本部のコーディネートにより、被災地加盟団体は、JDFによる支援組織の立ち上げに協力し、被災地の行政や地元組織とのつなぎと信頼関係を構築するための役割を担った。

 宮城県内では、3月23日にJDF幹事会メンバーと地元障害者団体との意見交換会(仙台市内)が行われ、県内の障害者団体間の緩やかなネットワークとして、「被災障害者を支援するみやぎの会」(当初17団体)が発足した。そして、1週間後にJDFみやぎ支援センターが設置され、障害者施設の被災状況調査や浸水した住居の清掃作業、生活用品・福祉用具等の調達・配送等の活動に取り組んだ。被災障害者を支援するみやぎの会は、JDFみやぎ支援センターや難民を助ける会、行政機関等との情報交換会を重ね、当初20に満たなかったネットワーキングの輪は60団体以上に及んだ。

 その後、地元の日身連加盟団体が協力して、JDFの支援組織が福島県、岩手県に設置された。各加盟団体代表はJDF支援組織の代表や副代表としてその後も継続的にかかわることになった。JDFの支援活動は別途詳述されるので、本稿では割愛する。

 東日本大震災特別対策本部は同被災地特別対策本部と協働し、被災地視察、障害者団体等との会合、情報収集に努め、必要な支援や国等への要請活動を行った。さらに全国各地の加盟団体等から寄せられた義援金等(2,963万8千円)や支援物資の受付と配分を行い、被災障害者の生活再建や障害者団体の組織再生支援等の活動を行った。

 また、被災地障害者団体の代表を全国10数地域に派遣し、被災地の障害者の現状や災害時における障害者団体の役割等についての啓発活動を実施して、各地域における障害者の災害対策を推進した。

 第56回日本身体障害者福祉大会(とやま大会、平成23年5月)では、“復興 みんな仲間 思いはひとつ”をテーマにプログラムを急きょ変更し、政策協議で『障害者と災害』をテーマに被災地加盟団体から現地状況をレポートしてもらうとともに、行政機関の支援活動の問題点等を協議した。また、被災地の障害者福祉施設の授産品の即売会や募金活動等、復興支援を呼びかけて支援活動の輪を広げ、第57回日本身体障害者福祉大会(さいたま大会、平成24年5月)においても被災地支援のためのプログラムに取り組んだ。

被災地加盟団体の活動

 被災地加盟団体は、被災した沿岸部の支部組織を巡回・訪問して、障害者の被災状況の把握および安否確認や被災障害者の支援に務めた。一部例をあげると、ある加盟団体は県社協に協力し支援物資の輸送を行うとともに、支部組織を通じて被災障害者に救急箱、初期消火器、医療用マスク、食料品や衣料品等を配布した。さらに必要に応じて、反射式ストーブ、ファン式ストーブ、電気こたつ、電気カーペット等を配布して、被災障害者の防寒対策を実施し、在宅及び仮設住宅の被災者へのふれあい・見守り活動を、引き続き行っている。

 また、福祉避難所開設後、人員不足に窮した加盟団体に、他の加盟団体や日身連等から人的支援を行った。災害時相互応援協定を締結している団体間では災害時緊急車輌の指定を受け、福祉避難所等への生活必需品、食料品等の配送に取り組んだほか、運営する身体障害者保養所に福祉避難所を開設して体温コントロールが困難な障害者達を受け入れた。日身連加盟団体間での連携が、被災地の加盟団体活動を支えた成果からも、今後、日身連として加盟団体間の連携の促進に取り組みたい。

震災発生直後から今日までで見えてきた課題

 障害者の死亡率が住民全体の倍以上に及ぶことが判明し、改めて災害弱者としての障害者への避難支援の在り方が問われる。不十分であった災害時要援護者登録の促進と充実化が求められる。障害理解の不足から障害者は一般避難所で生活のしづらさを感じ、被災した自宅に戻ったり、親せきの家を転々とした。障害理解のための活動に取り組む必要がある。

 福祉サービス利用者は福祉施設とのつながりで、ある程度支援を受けることができたが、施設とつながりのない在宅障害者は社会環境の破綻、さらには住み慣れた場所で生活できなくなったことで、大きな制限を受けることになった。日身連加盟団体の会員の多くは、福祉サービスを受けていない在宅生活者であることを考えると、地域につながりの輪を広げることの重要性が強く認識された。町内会、地区社協、民生・児童委員会との連携が求められる。

 加盟団体によっては、防災訓練への参加や災害時専門ボランティアの養成と登録に取り組んでいた団体もあり、減災に関してある程度効力を発揮した。また、自治体災害対策本部が発行する「被災された方のための生活支援情報」等を、会員のニーズに合わせて墨字版、点字版、音声版、メーリングリスト版の会報の号外として、それぞれ10数号まで発信し続けた団体もあった。その他の好事例等を調査、分析して、加盟団体の取り組みとして一般化していくことも重要である。

 震災発生後、各団体は会員の安否確認活動に取り組んだが、支部協会の名簿が流失したために確認が行えなかった場合も多かった。行政に問い合わせても障害者手帳所持者に関する情報を得ることはできなかった。個人情報保護の壁が必要な支援を妨げたのである。個人情報の取り扱いについても、今後、大いに議論、検討する必要がある。

今後に向けて

 被災者の生活は時間の経過とともに大きく変化した。そして、仮設住宅、民間の賃貸住宅(みなし仮設)での生活が続いている。障害者はみなし仮設利用者が多いが、個人情報保護のため、その存在が知られず、孤立を深める危険性が大きい。また、仮設住宅やみなし仮設住宅では、バリアフリー化や医療機関等への移動手段が不十分なために生活に困難を強いられている障害者も数多い。柔軟な制度運用と改善が求められる。

 やがて、被災した人々が社会とのかかわりを回復していくとき、障害者や高齢者が取り残されてしまう心配がある。障害のある人々が孤立することなく、健康を維持し、学んだり、働いたりして、地域社会に参加するためには、多様な支援の選択肢が必要になる。バリアフリー化された復興公営住宅への入居支援と障害者や高齢者が地域社会と隔絶した復興公営住宅に隔離されることなく、地域社会の一員として充実した生活を営むことができる仕組みの構築が求められる。

 日身連は、地域社会の中で地域住民とつながって生活する在宅障害者の当事者団体である。今後、地域の住民組織等との相互理解を図り、孤立のない社会、障害者や高齢者だけが取り残されることのない社会の構築のための活動を行っていく必要がある。被災者間の格差や被災地間の格差を生じさせないような活動が求められる。

 東日本大震災を契機に、人々の間につながり、支え合い、信頼関係の大切さが意識されたという報告があるが、これらを一時的なものにすることなく、今後の日本の社会全体に定着させる必要がある。加えて、今後危惧される災害に対して、障害や障害者の理解を図りながら、防災・減災に向けた意識啓発を、当事者から発信していくことも重要である。これらの促進を図るためにも、日身連の果たすべき役割は大きい。