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全国肢体不自由児者父母の会連合会(全肢連)の取り組みと提言

一般社団法人全国肢体不自由児者父母の会連合会

1.今回の震災全体を通じての見解

 東日本大震災前より、阪神淡路大震災をはじめさまざまな自然災害の教訓を生かし、災害要援護者の緊急避難や避難後の生活支援体制構築が謳われていた。しかし現実は、市区町村で構築される体制整備は遅れているうえ、東日本大震災のような甚大かつ広範囲にわたる災害では、被災者の支援を担う行政機関自体の機能が麻痺することも浮き彫りとなった。

 災害時要援護者の避難態勢は、地域(町内会など)に委ねられているケースが多く、施設や病院、関係団体だけでなく地域住民との結びつきの重要性も改めて考える契機となっている。

 さらに、行政機関による支援だけではさまざまな個別のニーズへのきめ細かな対応には困難な点も多く、関係団体やボランティア組織、企業等による連携した被災者支援体制構築が急務である。

 災害大国である日本では、災害時要援護者の緊急避難時の支援や避難所での生活、その後の生活再建の体制構築は不可欠であり命に関わる問題でもある。地域住民や各種団体との連携や行政との折衝など、地域と密着し草の根的な活動を主体とする父母の会の役割は重要と考えている。

 また、障害児者やその家族への災害への備えはもちろんのこと、普段の地域生活の中での自助、共助の必要性などの啓蒙活動も役目と考えている。

2.全肢連の取り組み

 関係団体と「障害児・知的障害・発達障害者関係団体災害対策連絡協議会」を立ち上げ、国とも相互に協力・連携し、各団体が把握する被害状況や被災地のニーズを持ち寄り、被災地支援を展開してきた。

 団体としては、各支部と連携し会員の安否確認を優先的に進めながら、宮城、岩手、福島の施設や支援学校の被災状況を確認。物資の支援活動や義援金の配布などを行っている。なお、義援金に関しては、3県のみならず被災県より聞き取り調査のうえ配分している。

 また、東北の復興支援活動として、全肢連全国大会と併催で、平成23年9月3日に東京、平成24年9月8、9日は宮城県仙台市で「ばりあふりーフェスティバル」を開催。東北復興支援コーナーを設置しトークセッションや募金活動、東北物産品の販売等の支援のほか、「災害を乗り越えて幸せに暮らすには~己の持つ絆を再確認しよう~」をテーマに市民フォーラムを行っている。

 各党の緊急ヒアリングにも参画し、緊急に要する支援の他、以下の「中・長期的に継続して必要とする支援」などを提言している。

(1)在宅障害者等の孤立を防ぐための日中活動の場の確保。

(2)情報保障

手話、字幕、解説放送の確保とともに、紙面による情報提供含む。

在宅者へ確実に情報提供できる体制整備の構築。

(3)心のケアとしてのカウンセリングの提供。

特別支援学校や特別支援学級への支援ならびに在宅者への訪問カウンセリング含む。

(4)避難などによる利用者減少により、運営が厳しくなる施設や作業所への支援。

(5)就労の場の確保として、企業への斡旋と作業所等への支援強化。

(6)災害時に迅速に対応する初動マニュアルや支援、復興マニュアルの再構築。

(7)国で定めた「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」に基づき、災害時における障害児者の救援支援システムの構築。

(8)災害時や緊急時における障害者の医療と短期入所施設の確保と体制の充実。

(9)災害時に特別支援学校が「福祉避難所」として対応できるように予算化を要望する。

 また、国は阪神淡路大震災を受け災害時要援護者の緊急避難などに関し、ガイドラインを設けていたが、現状は市区町村ごとに体制構築状況に違いがあるうえ、実際に自身の避難支援計画の内容、避難計画の存在自体を知らない障害児者やその家族が大勢いる。そこで、全国の1,897市区町村(政令都市の区も含む)に対し、災害時要援護者、特に障害児者の避難並びに避難所での支援体制の現状と、障害児者やその家族への公知活動に関し調査している。調査後は報告書にまとめ、地域での支援体制構築に向けた活動に活かしたいと考えている。

3.支援活動を通して見えてきた課題

災害発生時の課題

(1)障害児者の被災状況の把握と物的・人的支援

(2)災害に対する障害児者(関連施設含む)の備えと、避難所、避難先での生活

(3)医療的ケアを必要とする障害児者への支援

(4)災害時の国・自治体・障害関係団体の連携

復旧・復興時の課題

(1)制度や財政措置について

(2)ニーズの変化に対する対応

(3)被災時のサポート拠点と、福祉サービスの維持、再生

その他

(1)被災した障害児者およびその家族、福祉関係者への心理的支援

(2)避難の長期化に対する支援と受入体制への協力

4.今後に向けた提言

 大規模災害だけでなく、近年日本列島はさまざまな自然災害に見舞われ、いつ自身の身に起きてもおかしくない状況にある。災害に向けた備えは個人の実情に応じて日常的になされることも必要だが、制度や体制上の不備などについては、平常時から国・自治体と関係団体が連携して取り組まなければならない問題である。

 先の震災を教訓とし、障害児者の直面した課題や支援のあり方を速やかに把握・検証し、今後の障害児者の支援対策に生かすことが急務である。机上の空論ではなく検証に基づいたガイドラインの見直しと、市区町村による具体的な支援体制整備に向けての財政、人的支援が不可欠である。

 行政への提言、要望活動を強めるのはもちろんのこと、地域での先駆的な活動や模範となる施策を広く収集・公知し、障害児者やその家族に対し災害に対する心構え、備えを啓蒙していくのも重要である。