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東日本大震災被災者支援を省みて
公益社団法人日本オストミー協会からの提言

公益社団法人日本オストミー協会
副会長 笹岡 勁

1.はじめに

 人工肛門や人工膀胱を持つ排泄障害者(以下「オストメイト」という。)にとって、命の次に重要且つ必需品は、ストーマ装具である。ストーマ装具は、大腸・直腸がん、膀胱がんや腸疾患等の治療のため、手術によって腹部に造設された排泄孔(以下「ストーマ」という。)から出る排泄物を入れるプラスチック製の袋と、これを腹部に密着させるための面板で構成されている。面板には、長時間にわたり皮膚と接するため、皮膚保護剤を用いた材料が使用されている。通常は2~4日間隔で貼りかえるが、取り扱いに注意しないと漏れによる臭気発生や肌荒れなど皮膚のトラブルの原因となる。オストメイトは、外見上は障害者とは見えないが、人としての尊厳性に関わる排泄障害を抱えており、その障害は他人に知られたくないとの意識が強く、災害時には問題を一人で抱え込むという特徴がある。

 平成7年発生した阪神淡路大震災での教訓を踏まえ、日本オストミー協会(以下「当協会」という。)では、災害に備えストーマ装具の個人備蓄、非常持ち出し袋の準備、洗腸から自然排便へと排泄法の切替え等の啓発や、日本ストーマ用品協会(以下「用品協会」という。)との間で「激震災害地へのストーマ装具1ヶ月分の無償配布」に関わる協定を締結した。

 また、国に対しては、被災地のオストメイトへストーマ装具を速やかに配付するように要望し、内閣府による「災害時要援護者の支援ガイドライン(平成18年)」や厚生労働省の「災害救助事務取扱要領」に避難所や福祉避難所にオストメイト支援のためにストーマ装具の備蓄が指針として盛込まれた。

 しかしながら、東日本大震災発生時において、国の指針は全く発揮できず、被災地におけるストーマ装具の備蓄や流通在庫が少なく、ストーマ装具の入手は困難であった。このような状況の中、用品協会では、被災地の全オストメイト(被災3県のオストメイトの推定人口8,000人のうち被災者を3,500人と想定)を対象にストーマ装具の2週間分を準備し、震災発生の僅か4日後の3月15日に関東から、福島、仙台、盛岡の対策本部や販売業者に配送した。(3月24日には、さらに5,500人×2週間分のストーマ装具を配送した。)

 しかし、被災地の対策本部や病院への配送やオストメイトへの支給は、対策本部関係者、看護師、保健師、ケースワーカー等が、オストメイトの排泄障害やストーマ装具に関する知識や理解が充分でなく、円滑に進まなかった。多くのオストメイトは、震災被害のみならず、自己の排泄処理に不安を抱え避難生活を過ごすことになった(1~5)。

 被災直後には、行政のみならず医療関係も混乱し、オストメイトへの支援は二次的な扱いになったが、日が経つにつれオストメイトへの理解も進み、ストーマ装具の入手など協力が得られるようになった。このような中で、ストーマ装具の現地販売店関係者、ストーマケアを専門領域とする日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会(以下「JSSCR」という。)や日本創傷・オストミー・失禁管理学会(以下「JWOCM」という。)の果たした役割は大きく、被災直後から積極的に支援活動がなされた。皮膚・排泄ケア認定看護師(以下「WOCナース」という。)は、被害の少なかった内陸部の基幹病院を基点に、活発な支援活動を実施した(6)。原発事故に伴う避難オストメイトのストーマケアについては、医療機関による支援体制が全国的に形成された。

2.大規模災害時のストーマ装具確保の問題点

 当協会では、阪神淡路大震災を教訓(7)にオストメイトの災害対策として、「自分のストーマは自分で守る」、「仲間同士の支え合い」を基本理念とする「自助」・「共助」による対策(8)として、ストーマ装具の外出時の携帯、非常持出品の準備、家庭内での複数保管場所の準備、親戚・知人宅等への預託保管等、いまだ一部自治体の協力しか得られていないが公的施設への各自のストーマ装具の保管等や会員相互の連携等の対策や啓発活動に取り組んできた。阪神大震災以来17年、用品協会による被災オストメイトへの1か月分のストーマ装具(義援物資)を無償提供するという民間ベースの支援制度が出来たとは言え、災害の度に繰り返される「ストーマ装具の確保」についての公的な支援(公助)については、国や自治体には、抜本的な反省や検証に基づく対策を講じて頂きたい。

(1)大規模災害におけるオストメイトの公的災害救助

 わが国においては、大規模災害の発生時は、災害救助法に則り各種の救助が実施される。その一例として避難者へ被服や寝具等の日常生活での必需品の救助の概念は下図に示すとおりである。災害発生直後は自助・共助で、その後、避難所が開設されると国の災害救助法に基づく救助が開始される。

避難者へ被服や寝具等の日常生活での必需品の救助の概念テキスト

 

 避難所で必要な日常生活品は、当初は備蓄品で、その後は物資供給協定や災害救助協定、あるいは義援物資で調達され被災者に給与される。

 国の災害救助に関する通知では、ストーマ装具も避難生活での生活必需品とされている。

 しかし、ストーマ装具に関しては、上図の◎印で示す制度、即ち公費による備蓄、事業団との物資供給協定、他の都道府県との災害救助協定等が欠如、もしくはあってもこれまでの災害では機能しなかった。

 従って、「自助」・「共助」でストーマ装具を確保できないオストメイトは、用品協会の無償提供のストーマ装具(義援物資)の到着まで公助による救助が受けることができないのが現状である。

(2)災害時にストーマ装具を確保する公助の仕組み

 国(内閣費、厚労省)は阪神淡路大震災を教訓に、平成9年、大規模災害における応急救助全般のあり方を「大規模災害における応急救助の指針」(以下指針と略)として取りまとめ都道府県に通知している。また、平成18年には内閣府が「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を策定し、高齢者や障害者等の要援護者の避難時や避難所での支援策が同様に通知された。

 指針は、平成19年に新潟中越地震やガイドラインを踏まえた見直しが行われ、事業団体との物資供給協定、他都道府県との災害救助協定策定の他に、下記のようにストーマ装具に関する項目が新しく織り込まれた。

  • ① 要援護者の生活必需品として、ストーマ装具などの消耗器材についても災害救助基金による備蓄を可能とした。
  • ② 要援護者の生活必需品として、紙おむつやストーマ装具などの消耗器材を災害救助法第23条第1項第3号に基づき給与することを可能とした。

 本改正によって、大規模災害時に必要なストーマ装具は、『国の責任において、都道府県が備蓄すること、物資供給協定あるいは他都道府県との災害救助協定により調達し、市町村を窓口として給与される。』ことになった。

 改正後の指針は、厚労省が主催する全国会議等により都道府県に周知されている。今回の大震災では、被災地域の応急救助は本指針に則り実施されたが、ストーマ装具については、地方自治体で見直されることなく放置され、用品協会が提供した義援物資を被災地へ配布するという補完的な応急救助が行われたにすぎない。

3.被災・避難生活におけるオストメイトの特有の諸問題

 当協会では、震災で被災したオストメイトの避難生活の実態を調査し、今後の災害時のオストメイトの支援や生活の質(QOL)の向上のために、国や自治体へ改善要望活動に取組みたいと考えている。しかし、被災地のオストメイトの避難生活の実態は、会員情報(1)~(5)が一部得られたものの、報道なども少なく全体像がつかめない状況であったので、被災地のストーマ装具取扱販売会社の協力のもと、当協会の会員・非会員を問わずに岩手県、宮城県及び福島県の被災オストメイトを対象にアンケートを実施し、被災直後の生活の実態を調査し、問題点を整理した。

(1)避難所について

 岩手、宮城、福島県で、避難所に避難した人は調査したオストメイトの55%で、そのうち福祉避難所へ入居できた人は10%、即ち全体の僅か5.5%が福祉避難所に入所した。一方、震災発生前から避難すべき避難所を指定・指示されていたのは、福祉避難所入居者のうち27.5%で、7割以上の人は避難所の事前指定を受けていなかった。

 「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」(平成18年、内閣府)に基づき、地方自治体は一次避難所の住民への通知を終了していたと思われるが、日頃の住民に対する啓蒙活動が充分でなく、また福祉避難所についても行政上の対応がなされていなかったのでないかと危惧される。

 避難所における医療や介護に関する相談窓口は、42.5%の人が無かったとしている。複数回答では、30%が緊急医療チームによる医療提供や32.5%が看護師や介護士の巡回相談を利用したとしている。また7.5%の人が、巡回していたWOCナースに相談している。医療や介護関係者が、被災地に入って支援していたことが伺える。オストメイトのストーマケアを専門とするWOCナースの避難所への県外派遣が青森県から岩手県へ行われた。都道府県の行政区域を越えた派遣は困難とされていたが、大震災のような広域の災害発生時には、このような取組が速やかに実施されるような仕組みが事前に構築されることを期待したい。

 厚労省の災害時要援護者対策として、「避難所や福祉避難所においては、災害発生後保健師等による相談窓口を設置する」とされている。今回の調査では、約1/3の人が「相談窓口はなかった」と回答している。これは、実際に無かったケースと、被災者がその存在に気付かなかったケースが考えられる。後記の対策として、一部の避難所では実施されたが、相談を担当する保健師等には一目で判別可能なワッペンや腕章等の着用が効果的である。オストメイトマークのピクトサインのワッペンを相談員の上着などに貼り付けると効果的である。

(2)避難所のトイレについて

 避難所のトイレには、オストメイト対応を含む障害者用トイレの設置は非常に少ない。調査結果では、40%のオストメイトがストーマ装具からの排泄処理をしやすい洋式トイレを、33%は洋式トイレが無く和式トイレを利用した。オストメイトの排泄処理は、比較的長い時間を要することや発する臭気の問題があり、避難所のような列を成して順番を待つトイレの使用は、オストメイトにとって苦痛である。そこで、避難所近くの自宅、親戚、知人宅に出向き、利用した人もいた。

 避難所のトイレ設備は、オストメイトや身体障害者だけの問題ではなく、高齢者等に対する対策としても改善が求められる。被災オストメイトからは、「和式トイレは排泄処理が困難なので、障害者トイレ、オストメイト対応トイレを設置して欲しい。」との要望がある。厚労省はバリアフリー化されていない施設を避難所にした場合、障害者トイレ等を速やかに仮設する(9) としており、ポータブルオストメイト対応トイレの利用も併せ実施されるよう切に望みたい。都市型の阪神淡路大震災でのオストメイトのトイレ事情につては、山下が詳細に述べている。(11)

(3)避難所の入浴設備について

 避難所に入浴施設がなかったと60%のオストメイトが回答しており、また設置されていた避難所においても、半数の人が入浴をしなかったとしている。入浴した人は全体の18%に留まる。

 オストメイトは、平常時においても公衆浴場や温泉地の大浴場への入浴に躊躇しているが、避難所の混雑した浴場では、ストーマ装具を装着していることを近隣の人に知られることを恐れて入浴しなかった人が多かった。一方、避難所についての要望等には、入浴に関しての記述は見当たらない。これは、破壊を免れた家屋の利用や民間の入浴施設等の利用があったものと思われる。入浴が切実な問題であった人口が過密な都市型の阪神淡路大震災での状況と大きく異なる。

(4)避難所でのストーマ装具の入手について

 避難所に入所した80%のオストメイトは、ストーマ装具の入手に関する情報提供を受けていない。提供を受けた人の割合はわずか15%であった。避難所では、テレビ・新聞からの情報入手は難かしく、携帯ラジオと避難所の掲示板だけが情報源となっていた。

 一方、43%のオストメイトが自宅からストーマ装具を持出すことができた。津波被害を受けなかった場合は、被災後も被害を受けた家屋から持ち出したケースが多くあった。

 被災直後のストーマ装具入手先は、病院、販売店、被災地対策本部(岩手)が主体になっている。用品協会から送付したストーマ装具の現地受け入れが混乱する中、被災地の病院や地域に密着しているストーマ装具の販売関係者が大きな役割を果した。被災地の病院に対しては、被害の少なかった内陸部の基幹病院から活発な支援が実施されていたことが、JSSCR学会のシンポジウム(6)で報告されている。

 行政の窓口で受領した人も29%になっている。当協会岩手県支部の調査(10)では、大船渡市、釜石市の地域福祉課(災害対策本部)には、各々30名以上のオストメイトが来所しストーマ装具を受領した。

 ガソリンの入手が困難で、被災直後は用品協会が提供したストーマ装具を沿岸部の 被災地に配送することが困難であったが、被災地のオストメイトも支給場所(病院・行政窓口・災害対策本部)まで行くことができず消防団員へ依頼したケースが多く見られた。

 地域の病院は、混乱した被災直後はストーマ装具の受入を拒否していたが、徐々にオストメイトの苦境を理解し、相談や情報など支援の一端を担った。

(5)避難所でのストーマ装具の交換について

 ストーマ装具交換は、他人に知られたくない行為であり、その交換を行う所はトイレ及び入浴問題と共に善処すべきと、阪神淡路大震災以降これまで指摘されてきた。自分でストーマ交換を行うことのできる人は、各自が避難所の環境を考えて対応したが、車中や壊れた自宅、避難所の空き部屋、野外で交換したと述べており、そのような場所で、また暗闇の中で交換せざるを得なかったのが現実であった。

 また、ストーマ装具の交換間隔はストーマ装具入手困難さを考慮して日頃より長くした人が5割近くいる。その結果として皮膚障害を生じ、漏れが多発したり、交換を早めたりと悪循環が生じている。

 ストーマ装具の交換は、ストーマ装具と腹部の接着面の粘着力低下による排泄物の漏れや、皮膚障害の防止のために定期的に行う必要がある。その行為は、腹部のストーマを露出させ、清浄な環境で、時間をかけて行う。排泄は人として機微に関わることであり、更衣室や授乳室と同様に、ストーマ装具を交換する場所は特別に配慮が必要であるので、避難所の設営時には、ストーマ装具交換場所の設置につき理解と配慮を切に求めたい。

 ストーマ装具の交換間隔が長くなり、皮膚障害を発症したとか、避難所でストーマ装具交換を自力でできず依頼する人がいない場合は、オストメイトにとって深刻な問題である。

 ストーマ装具の交換は医療行為であって、平成23年の厚労省の通達でストーマケアに関する研修を受けた介護士はストーマ装具の交換をしても良いとの見解を示したが、未だそのような介護士は誕生しておらず、医師や看護師でしかできない。このように避難所においては、医療関係者に頼らざるをえない適切なストーマケアが行なえるように、身近に相談にのってもらえるWOCナースの巡回の実施が望まれる。

(6)オストメイト自身の自覚と準備

 ストーマ装具の交換や汚れたストーマ装具の洗浄に使用する水が、水道の断水により入手できないのは、阪神淡路大震災でも新潟中越地震や新潟中越沖地震でも同様である。大地震が起これば上・下水道は破壊され、水は入手し難いことを前提に、水を使わなくてよい剥離剤や皮膚洗浄剤を非常持出用品に加え、また水を極力使用しない交換方法をオストメイトは日頃から身につけておく必要がある。一方、人工膀胱造設者は充分に水分の摂取をしないと、尿路感染による高熱を発熱し腎臓の機能に悪影響し、生命に関わる問題も抱えている。

 災害時には日頃使い慣れたストーマ装具が必ず入手出来るものではないので、オストメイトは日頃から色々のストーマ装具への見識を深め、あるいは自分のストーマサイズに合わせて腹部に貼り付ける面板のホールカットが出来るようにしておく事も必要である。

 当協会では、常日頃から災害時に受け取るストーマ装具の品番、品名を明確にするため、ストーマカードの持参を呼びかけている。今回の東日本大震災でも岩手県では無償提供されたストーマ装具の受け取り時、ストーマカードの提示を必要とした。ストーマ装具の名称やメーカー名を覚えていなかった人の内訳は、当協会の会員が14%、非会員が86%であり、あまりにも多くの人が、自分の使用しているストーマ装具の品名や品番に無関心で、その入手に混乱した。

 交換後の使用後のストーマ装具等汚物の捨て場所は、避難所におけるゴミ回収に係る問題と関連するが、オストメイトは日頃の廃棄ルールを再度確認し徹底する必要がある。このようなオストメイト全員への啓発は、行政が日常業務の一端として行えば、あまり経費や労力を要しないことであり、当協会が兼ねてから協力を提案している事項である。

4.オストメイトの災害時対策への提言

 オストメイトの災害対策の基本は、「自助」、「共助」であるが、過去の大震災を見ても「自助」、「共助」だけで全てのオストメイトが震災直後にストーマ装具を確保するのは不可能である。大震災等でストーマ装具を確保できなかったオストメイトのために、迅速・確実で公平な救助が必要で、そのためには一般の生活必需品と同様の「公助」の仕組みが必須である。

 国は、阪神淡路大震災等の大災害を教訓に、ストーマ装具と明記の上、「避難所での給与」、「基金による備蓄の推進」、「事業団体との物資供給協定の締結」を指針として地方自治体に通知している。しかしながら、東日本大震災でも明らかになったように、地方自治体においてはこれらの施策が全く進展していない。

 そこで、オストメイトの災害対策を国の通達内容に沿って、早急に具現化することを要望する。

(1)避難所でのストーマ装具の給与

 オストメイトの避難する避難所においては、ストーマ装具を備蓄し、被災即日に給与可能となるように事前に体制の整備を行い、避難所については、入所できる避難所を事前に指定することを提言する。

(2)ストーマ装具の災害救助基金による備蓄の推進

 国が指針で示しているように、ストーマ装具は避難生活に不可欠な物資である。災害が発生した場合に、直ちにこれを供給できるように、基金を活用して備蓄することを提言する。

 なお、ストーマ装具は1500種類以上あるが、備蓄するストーマ装具は消化器系と尿路系で各数点に種類を限定し、被災オストメイトでストーマ装具を持ち出せないと想定される人数の1週間から10日分とし、同時にストーマ装具交換に必要な剥離剤、洗浄剤等も必要員数分の備蓄を行う。オストメイトには、災害用ストーマ装具の使用法について、オストメイト社会適応訓練事業の中で研修を行うことを提言する。

(3)ストーマ販売事業者とのストーマ装具物資供給協定の締結

 避難生活において、オストメイトが日頃使い慣れたストーマ装具を入手できるように、ストーマ装具単独で、供給実態に則した協定の締結を行うこと。 なお、本協定は現状の日常生活用具の給付の仕組みを活用し、費用の全額を基金の負担とすることでも可能になると思慮する。

(4)避難所にオストメイト対応トイレの設置

 避難所、福祉避難所に「オストメイト対応トイレ」を設置すること、及び「オストメイトポータブルトイレ」を備蓄すること。

(5)介護職へのストーマ装具の交換に関する研修の実施

 平成23年に介護職においても、ストーマケアに関する研修を受けることにより、ストーマ装具を交換できることになった。災害時に自分でストーマ装具の交換が出来ない要援護オストメイトを救済するため、地方自治体が介護士を対象に研修を実施すること。今回の災害においても、オストメイトに関わる知識不足が明白になった保健師や一般看護師にも、この研修は有用である。

(6)緊急通行車両確認標の発給に関する厚労省医政課文書

 「医薬品、医療機器等の安定供給に係わる緊急通行車両確認標の発給等について」に関する厚労省医政局経済課の事務連絡文書に、発給する対象団体に公益社団法人日本オストミー協会及び日本ストーマ用品協会を加えること。

 国は、医薬品・医療機器を被災地に円滑に輸送できるよう「緊急通行車両確認標章」を発給しているが、ストーマ装具は医薬品や医療機器と同様、即日必需品である。災害のたびに「緊急通行車両確認標章」取得に時間を要するので、支援が支障なく行えるようにストーマ装具関連団体を予め発給対象団体に指定すること。

(7)障害者安否確認に関する提言

 個人情報保護法及び災害時の錯綜する業務の関係で、地方自治体は被災地のオストメイトの安否確認及びストーマ装具の入手の確認ができない。

 災害発生時に、地方自治体は、オストメイトをはじめ障害者の安否確認は全く実施されず社会的にも問題となっているが、障害者団体では、所属員の安否確認をいち早く実施している。身体障害者手帳の給付を受け、補装具やストーマ装具を含む日常生活用具の公費給付を受ける障害者は、該当する関連団体に所属させ、行政が実施できない安否確認等や必要な補装具やストーマ装具等入手確保の確認などの業務を分担させることを提言する。

5.参考資料

(1)「東日本大震災対策(中間報告)」 日本オストミー協会誌 平成23年5月247号 p1-4

(2)特集「東日本大震災」 日本オストミー協会誌 平成23年11月250号 p4-17

(3)特集「東日本大震災第2回」 日本オストミー協会誌 平成24年1月251号 p3-11

(4)特集「東日本大震災第3回」 日本オストミー協会誌 平成24年3月252号 p15-20

(5)特集 東日本大震災第3回 平成23年障害者週間セミナー(オストメイトは災害に備えよう!~東日本震災からの学び~) 日本オストミー協会誌  平成24年3月252号 p15-16

(6)舟山祐士、田村由美ほか シンポジウム「災害時におけるストーマ・排泄ケア」 平成24年2月4日JSSCR第29回総会抄録集 (2012.1.6 仙台共同印刷

(7)オストメイトはその時… -大地震・その証言と教訓-(震災一周年記念誌) (社)日本オストミー協会兵庫県センター 平成8年2月15日

(8)公益社団法人日本オストミー協会ホームページ http://www.joa-net.org

(9)「大規模災害における応急救助の指針について」 厚生省社会・援護局保護課長通知 平成9年6月30日

(10)「東日本大震災時のオストメイトへの自治体の対応」日本オストミー協会岩手県支部 未発表

(11)山下亨 ライフクライシス(IV章 究極のトイレクライシス)平成15年3月(近代消防社刊)

(文責 公益法人日本オストミー協会副会長  笹岡 勁)