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パネルディスカッション
障がいインクルーシブな防災とまちづくり

菅野 利尚 (陸前高田市民生部社会福祉課長)

 障がいと防災については短期と中・長期の取り組みが必要と考えています。
 これは、障害に対する認識が、障害者自身はもちろん、一般市民についてもまだ十分な理解がされていないと思います。こうした中で、災害に対する障害者対応は、いつ起こるかわからない(可能性として緊急の場合もある。)ものであることから、現在の状況に応じた対応と中長期的に環境整備を行いながら取り組むものが必要であると考えています。

 まず短期的な対応については、障害者への支援ネットワークの形成が必要と考えています。このためには、支援が必要な人の把握が必要です。支援を必要な時に必要な支援が受けられる環境が必要です。障害の内容も多様です。障害のある方が、自身の障害の内容に応じ必要な支援をアピールすることが必要と考えています。当面は、支援を必要とする方に、必要な支援を提供できる人を確保することが重要と考えています。こうしたことを効果的に行うためには、災害訓練へも障害者自身が参加することが大切と考えています。訓練に参加することで支援への対応が具体的になると考えています。

 次に、中・長期的な対応についてですが、まず、障害の認識を障害者も一般も高める必要があると思います。このことで障害のある方が、いつでもどこでも必要な支援を受けることの環境が整うと考えています。支援者は、自分の能力に応じ支援を行う。支援を受ける側と支援を行う側は、その時々によって異なるものと思います。障害者イコール支援を受ける側ではなく、障害のない方イコール支援を行う側ではないということが共通認識になる必要があると思います。

 簡単に言えば、困っている人がいれば、躊躇なく声をかける。困っている人は、困っていると言えるそんな地域になれば、いわゆるノーマライゼーションという言葉のいらないまちが実現され、誰もが安心して住むことのできるまちが形成されるものと考えています。

「ノーマライゼーションという言葉のいらないまち」について

(1) 陸前高田市は、東日本大震災により市街地を中心に壊滅的な被害を受けた。

 震災からの新しいまちの復興に際して「ノーマライゼーションという言葉のいらない共生社会の構築を目指す」ことを掲げている。市役所をはじめとする公共施設や商業施設の多くを失った。この再建に際し、すべての人が使いこなすことのできる製品や環境などのデザインを目ざすユニバーサルデザインを推奨し障害のある人を含めた全ての人が、抵抗なく出かけられるハード面の整備を障害のある人の障害へのサポートを当たり前にできる住民意識の醸成を目指している。

(2) 個人情報保護とJDF調査との関連について

 震災以降、市は、被災地の住民動向の把握が困難な状況にあった。特にも、障害のある方々の動向を把握することは絶望的とも思える状況にあった。このような状況の中でJDFから支援の申し出があり、JDFには、先行して南相馬市で障害者の実態調査を行った実績があることがわかり、市としては、障害者の被災の状況の把握と今後の支援の方向性をつかむために実態調査の必要性を痛感しJDFに障害者の全数的な調査を行うことを依頼した。
 同時に、今後の障害者の支援、災害時の障害者支援を効果的に進めるために災害時の支援の必要性や個人情報の開示についての意向についても聞き取りを行った。
 個人情報の開示については、「個人情報の保護に関する法律」の第4章個人情報取扱事業者の義務 第1節個人情報取扱事業者の義務 第16条利用目的による制限 第3項に提要除外条項があり、この中で「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、個人の同意を得ることが困難であるときがあり 市長の判断において開示することとした。

(3) 避難動向

 今回の震災では、高田町内の指定避難所は11ケ所中避難所として使用できたのは第一中学校と長砂高台の2か所という状況であり、被災者は高台にある公共的施設を中心に避難を行った。結果として、市内にあった3か所の福祉作業所は、全て一般の避難所となり高齢者福祉施設も同様であり2か所の医療施設も一般の被災者を受け入れざるを得ない状況であった。こうしたことから、避難生活が長期化するに従い日常生活に不自由さのある障害者及び高齢者等のいわゆる要援護者は、極めて高いストレスと日常生活を送る上での極めて大きな不自由さを感じることとなった。同時に、一般の避難者にとっても要援護者との共同の避難生活は、大きなストレスとなった。
 本来であれば、要援護者への支援のノウハウや資格を有する機能を持つ施設が2次避難所として機能できれば避難者のストレスや不自由さは緩和されたものと考えられるが、当時の状況ではそれは不可能なことではあった。
 東日本大震災のような極めて大規模の災害であれば、内陸の遠隔地の福祉施設等との協定を結び福祉避難所として要援護者の受け入れ先を確保する必要があるものと考えられる。災害の被害規模(地域がある程度限定された災害の場合)に応じ2次避難所を設置すべきものと考えている。

(4) 陸前高田市障がい者福祉計画 第3期陸前高田市障がい福祉計画上の災害対応

 今回の被災を経験した自治体として、計画上の今後想定される災害への対応として「災害弱者も利用できるように避難所や仮設住宅を整備し、情報提供のあり方について検討する。」とし、さらに災害対策計画策定や災害公営住宅建設計画策定にあたっては、障害者を含む市民の参加・参画を原則とする。」としている。こうしたことから、この間、災害の検証及び計画策定のために障害関連団体や当事者からのヒアリングを行ったほか、災害公営住宅建設計画の計画策定にあたっても障害者団体、当事者なども参加した公聴会が行われたほか、庁内の関係各課による検討会なども開催された。
 なお、陸前高田市障がい者福祉計画 第3期陸前高田市障がい福祉計画では、①防災ネットワークの確立②重度障害者等緊急通報システムの設置③防犯体制の確立④防災無線個別受信機の設置⑤災害時緊急避難所の確保と支援体制の確立⑥防災訓練等への当事者の参加の推進⑦防災・防犯意識の啓発⑧災害時要援護者マニュアルの作成・配布を掲げている。この間、①②に関して消防署を交えた意見交換会を開催し、緊急時の双方向性の情報交換の必要性などが新たに共通の認識となった。④については、視覚障碍者については、すでに必要とされる方々への配布は完了しており、新たな需要に対して今度の対応を検討しているところである。⑧については、県の障害者復興支援センターが、県社協が作成した災害時要援護者マニュアの配布に取り掛かると同時に障害者のからの支援申し出である「おねがいカード」の配布を行っており、今後市内全域での配付について支援を行うこととしている。他についても、関係課、関係機関、団体と連携し検討を進めたいと考えている。

客席

<参考資料>

I.震災復興計画における障がい関連記載について

第1部 基本構想

第1章 復興の基本理念

「世界に誇れる美しいまちを共に創ります」

だれもが住んでみたいと思う「世界に誇れる美しいまち」

「ひとを育て、命と絆を守るまちを共につくります」

 子どもからお年寄りまで、たくましく健やかに生活を送るためには、共に支えあい、寄り添い地域力を再生しながら、より住みよいまちを再興していくことが必要です。
 生涯にわたっていきいきと、だれもが心豊かに安心して暮らすことができるよう「ひとを育て、命と絆を守るまち」を創ります。

第2部 基本計画

第3章 まちづくりの目標別計画の推進

第3 市民の暮らしが安定したまちづくり

復興基本政策3 保健・福祉・介護・医療の総合的なシステムに支えられた市民一人ひとりの居場所・陸前高田市を構築する。
共生社会実現に向けた社会意識の創生
 保健・福祉総合センターの創設

II. 陸前高田市障がい者福祉計画 第3期陸前高田市障がい福祉計画

平成24年度~平成26年度「ノーマライゼーションという言葉のいらない共生社会の構築を目指して」
http://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/kategorie/fukushi/syougaisya-fukushi/syougaisyafukushi.html