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VISION2005(視覚障害者関連の世界最大の展示、関係発表会)における、DAISYコンソーシアムの構成団体の代表らによるDAISY紹介セッション報告

富士海
(財)日本障害者リハビリテーション協会 情報センター

項目 内容
発表年 2005年
備考 英語版:原文

DAISY方式の解釈…
「DAISYで読む」…DAISYは国際標準規格

日時:2005年4月4日
会場:VISION2005 The Queen Elizabeth II Conference Center (英国)

DAISY introductory session

DAISY introductory session

DAISY introductory session

VISION2005(視覚障害者関連の世界最大の展示、関係発表会)にて、 DAISYコンソーシアムの構成団体の代表らによるDAISY紹介の1時間のセッションがもたれた。 Lynn Leith(CNIB(カナダ国立盲人協会))がメインスピーカとしてGeorge Kerscher (RFB"D 米国)と対話をする方式で発表が行われた。DAISYで何が出来るのか何を目指しているのかわかりやすくまとめられた導入的発表であった。

読書は生涯の友

視力を喪失すると、有意義かつ有効な方法で情報にアクセスする能力が損なわれる。点字は、入手は大幅に制限されるもののアクセスを提供してくれる。しかし、大多数の人は、点字の学習が困難または不可能になる人生の後半で視力を失い、また、視覚障害児の多くは点字の読み方を教えられていない。

数十年間、カセットテープ(それ以前は、レコード)が大多数の視覚障害者が情報にアクセスできる唯一の方法だった。本を端から端まで読む以外の目的では、これらのアナログの形式はきわめて不十分だった。

移動訓練は、おそらく視覚障害者が最初に求めるものの1つであるが、訓練が終わったら、移動に関する指導への継続的な要求はない。一方、読書、情報へのアクセス、学習は生涯続くことである。これらがなければ、教育、職業、生涯にわたる日々の学習が大幅に制限されてしまう。

概要:厳密には、DAISYとは何か?

DAISYは頭字語…

DAISYは、以下の頭字語である。

  • デジタル (Digital)
  • アクセス可能な (Accessible)
  • 情報 (Information)
  • システム (SYstem)

DAISYの概念は、印刷物を読むことができない人が、目が見える人と同じくらい簡単に能率よく印刷図書を使用できるようなアクセス可能な音声媒体の必要から生まれた。

DAISYが生まれた1990年代初期には、「DAISY」の「A」は「音声(Audio)」を表していた。その後、色々な事が起こり、DAISYは単なるデジタル音声をはるか越えたものとなり、真の意味で「より良い読書方法」になった。

DAISYは国際的なコンソーシアム…

DAISYコンソーシアムは、全世界の正会員12、準会員51、フレンド会員23の組織で構成され、各組織が、全ての人に対する情報アクセスの提供に熱心に取り組み、DAISY標準規格の採用と実施を行っている。

誰でも使う事のできるオープンな国際標準規格…

DAISYコンソーシアムは、インターネットのための標準規格を設定する組織、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)と連携している。

DAISY標準規格は、可能な限り、次の既存の標準規格に基づき、これを適用している。

  • XHTML
  • XML
  • 同期マルチメディア統合言語(SMIL)

DAISYにマルチメディアのサポートを提供しているのはSMILである。本の要素を結びつけて最終的にナビゲーションを容易にし、DAISYを「より良い読書方法」にしているのはSMILである。全てをまとめているのは、SMILという接着剤である。

DAISY図書とは何か?

DAISY図書とは、

デジタル(D)

DAISY図書を構成するデジタルのファイルの組み合わせは、推奨されて一般に実施されている標準規格(DAISY 2.02または最新のDAISY/NISO標準規格)に準拠しなければならない。

アナログの世界の読み取りは、直線的で極端に非効率的な作業だった。DAISY図書では、読者は本の中を、そして、本の中の特定のポイントへ迅速かつ容易に移動することができる。この機能は、本の「ナビゲーション」と呼ばれている。

アクセス可能な(A)

DAISYは、徹底的にアクセス可能なものとして設計された。DAISY標準規格の開発のごく初期の段階で、多くの国の録音図書の読者から、完全にアクセス可能な音声図書に関する読書上の要求と将来像についての意見を求めた。アナログ録音が読者の読書上および情報の要求を満たしていないことは非常に明らかだった。本の中の特定のポイントへのアクセス、カセットの扱いにくさ、音質の問題、他にも多数の問題があり、録音図書の作成者がデジタルのプラットフォームへの移行を開始しなければならなかったことは明白だった。しかし、録音図書のデジタル化自体が、全ての問題、特にアクセシビリティーや本の中の特定のポイントを移動するナビゲーションに関する問題を解決するわけではないだろう。DAISYを真に国際的な標準規格にするために、アクセス可能な「音声図書」を越え、点字を含む複数のアクセス可能なフォーマットの作成を促進しなければならないことが開発段階で明らかになった。

情報(I)

「情報時代においては、情報へのアクセスは基本的人権である。」国連のGeorge Kerscherの演説から(バンコク2002年)

毎年、世界で発行されるアクセス可能なフォーマットによる印刷物の割合は3~5%である。公立図書館の蔵書の95%がページが糊付けされた状態だったら、これは図書館とは呼べないだろう。しかし、標準の印刷物を読むことができない人は、そういう状況に置かれている。

システム(SY)

DAISYはアクセス可能であり、印刷物を読むことができない人々の情報と読書の必要を満たすものであることから、国際的に採用されて実施されている標準規格に基づく国際的なシステムになった。

つまり...

DAISYとは、

  • 標準的な印刷物を読むことができない人のアクセスを可能にする標準規格
  • 読者が見出しから見出しへ、ページからページへ、節から節へ、句から句へ、場合によっては語から語へ移動できる、ナビゲーションを可能にする標準規格
  • ページなど特定のポイントへ直接アクセスできる、ナビゲーションを可能にする標準規格

DAISY図書は、マークアップ・テキストと音声を含むファイルで構成され、ファイルの組み合わせは6通りある。使われているDAISY図書の種類と読書システムによって、検索ができる。DAISY図書は、常にDAISY標準規格に準拠している。

DAISY図書の種類

DAISY 構造ガイドラインで定義され、記載されているように、DAISY図書の種類は6つある。6つのうち4つは、デジタル音声のサウンド・ファイルとマークアップ・テキストファイルのリンクを通してアクセスを向上させ、人間の声または合成音声による読み上げを行っている。読者に本の構造へのアクセスを提供しているのはこれらのリンクである。これらのリンクがDAISYのデジタル録音図書(DTB)の鍵である。

6種類のDAISY図書

  • タイプ1:音声とタイトル要素のみ:
    ナビゲーション構造を持たないDTB。DTBのタイトルのみテキストで表示可能。コンテンツはリニアオーディオで提供される。DTB内のポイントへ直接アクセスはできない。
  • タイプ2:音声とNCCのみ(NCCまたはNCX):
    ナビゲーション構造を持つDTB。二次元構造で、連続的および階層的ナビゲーションの両方が提供される。多くの場合、この種のDAISYのDTB構造は、元の印刷物の目次に似ている。ページ・ナビゲーションが提供されるものもある。
  • タイプ3:音声、NCCと一部のテキスト:
    上記のナビゲーション構造を持つDTBに一部のテキストを加えたもの。索引、用語集などキーワード検索と直接のテキスト検索が有効な場合にテキスト要素が加えられる。音声とテキスト要素は同期している。
  • タイプ4:音声とフルテキスト:
    ナビゲーション構造、完全なテキスト、音声を持つDTB。音声とテキストは同期している。このタイプは、点字の作成に使える。
  • タイプ5:フルテキストと一部の音声:
    ナビゲーション構造、テキスト、一部の音声を持つDTB。発音のみ音声形式で提供される辞書に使うことができる。タイプ4同様、音声とテキストは同期している。
  • タイプ6:フルテキストのみ:
    ナビゲーションセンターとマークアップ/構造化された電子テキストのみを含んでいるDTB。音声はない。このファイルは、点字の作成に使用できる。

DAISY DTBは本か、それともマルチメディアの読み物か?

  • 公的に入手できる印刷本は、約500年前、グーテンベルグ活版印刷と共に生まれた。
  • 従来の録音図書(1930年代)は、印刷物をアナログで表現したものである。
  • DAISYデジタル録音図書(DTB)は、印刷物のマルチメディアで表現したものまたは印刷物の複製である。

点字は、視覚障害者に印刷図書へのアクセスを提供した第1番目の画期的な発明であった。DAISYは第2番目であり、現時点で、アクセス可能な読み物のための究極のアクセス可能な標準規格である。

DAISYのDTBは、次に示す媒体を同期させることができる:

  • 音声 ―人間の声または合成音声による印刷された言葉の読み上げ ―
  • テキスト ― 印刷物の電子(XMLベースの)テキスト ―
  • 画像
  • ビデオ(開発中)

中心概念:構造とナビゲーション

構造

少なくとも二次元構造で、印刷物の連続的および階層的な構造を表している。

ナビゲーション

参考図書、ガーデニング本、料理の本などをどう読んでいるのだろうか。

初めから終わりまで読むのか、興味のある部分または必要な情報が載っている部分だけを読むために真っ直ぐ特定のポイントを開くのだろうか。DAISYデジタル録音図書のナビゲーションでは、グローバルナビゲーションローカルナビゲーションの2つの方法が設定されている。

グローバルナビゲーション

特定の本のポイントまたは部分(章、部、ページ、索引など)への移動のこと。

ローカルナビゲーション

単一のテキスト要素(リスト、表など)または狭い範囲のテキスト要素(単語、文、節などのグループ)の中の移動のこと。印刷図書を読む場合の「走り読み」に似ている。

DAISYコンソーシアムの将来像、使命、目標

将来像

DAISYコンソーシアムが描く将来像は、情報が一般大衆に対して公表されるときに、印刷物の読みに障害がある人が、公表された全ての情報をあまり費用をかけずに、アクセス可能で非常に機能的で豊富な特徴を持つ形式で入手できるようにすることである。

使命

DAISYコンソーシアムの使命は、印刷物の読みに障害がある人が主流の出版社、政府、図書館が提供する情報へ世界的にアクセスできるようにするために、より広い地域社会のためになる方法で、国際的なDAISY標準規格、技術、実施戦略を開発、統合、振興することである。

DAISYコンソーシアムは、どこで印刷または電子コンテンツが作成されても、DAISYフォーマットの出版物が世界中で入手できるように努力する。

DAISYコンソーシアムは、開発途上国におけるDAISY標準規格の使用に特別に注意を払い、これを促進する。

目標

  • 標準規格
  • 道具
  • 主張、意識、世界的実施
  • 国際図書館、貸出と交換
  • 開発途上国
  • 意思の疎通

ボタン1つ押すだけ: 「... より良い読書方法」

「ナビゲーション」、「構造」、「情報へアクセスするための有意義で有益な方法」など、豊かなDAISYの読書体験を表す言葉はすべて、高レベルまたは教育的な読書の必要に合わせたもののように思われる。ところが、DAISYデジタル録音図書と読書システムは、高レベルの読者の要求ときわめて単純な読書方法を必要としている読者の要求の両方に対応している。「視覚障害者の、または視覚障害者のための」図書館が提供する音声テープの本の場合、テープまたはトラックが終了したらテープをひっくり返したり、別の制御ボタンを押したりしなければならなかったし、いつも複数のテープを出し入れする必要があった。全DAISY図書の95%以上は、一枚のCD(DAISY図書の大部分は、現在CDで配布)に収まる。技術に弱く、手先が器用ではない高齢者でも、ボタン1つ押すだけでDAISY図書を再生することができる。停止するのも同じボタンを押せばよい。テープ交換も小さな棒状のボタンを押す必要もない。現在のDAISY読書システムには「スリープ」機能が設定できるものもあり、設定した時間が来たら再生を止めることができる。読者が寝てしまっても、DAISYプレーヤーは予め設定された時間が来たら停止する。全てのDAISY読書システムには、本が最後に再生された位置をメモリーに記憶し、複数の本についてこの情報を記憶する。これ以上簡単な読書はないだろう

全ての必要を満たす機能性

「ボタン1つ押すだけ」の一方で、DAISYデジタル録音図書のさらに高度な機能の例として、ブックマーク、単語検索、「ページ検索機能」、音声の歪なしに音声スピードの速度を変更する機能が挙げられる。

DAISYの対象「読者」

全ての世代、全ての目的

  • 就学前
  • 小・中等教育
  • 高等教育
  • 職業、最初から最後まで
  • 退職

標準的な印刷図書を使用できない人々

  • 視覚障害者
  • 認知障害者
  • 印刷図書を手に持つことができない身体障害者

DAISYに関する質問

  • DAISYデジタル録音図書はどこで入手するのか。
  • プレーヤーはどこで入手するのか。費用はどのくらいかかるのか。

同じ土俵に立つ

DAISYコンソーシアムの目標の1つは、DAISY標準規格を主流にすることである。第1歩は踏み出した。主流の出版社がDAISY形式で本を作るようになれば、アクセス可能な読み物の割合は増え始め、我々は同じ土俵へと向かっていくだろう。情報へのアクセスは可能になるだろう

DAISYデジタル録音図書、DAISY標準規格、DAISY読書システム(ハードウェアおよびソフトウェア・プレーヤー)に関する多くの情報が、DAISYウェブサイトで入手できる。

詳細はwww.daisy.orgを参照のこと。