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平成17年度 マルチメディアDAISY図書製作普及事業 総括報告書

【シンポジウム】知的障害児・者にとってDAISY図書とは

藤澤和子(京都府立向日が丘養護学校)

こんにちは、藤澤です。

私は言語担当をしていますが、以前からシンボルや機器などを使って知的障害の人たちが、できないことをできるようにするための支援に関わる実践研究を進めてきました。読書に関しても、文字が読めないと、読書自体が非常に難しいという状況があります。そういう点で、何か新しい方法がないかなと思っているときにDAISYの図書のことを知りました。

学校のほうでサンプルをいくつかいただいたので、早速、いろいろ試してみたのです。主に、そういう知的障害の人がDAISYをどのように捉えたかということを報告させていただきたいと思っています。

本がなかなか読みにくいというのにはいろいろ理由がありますが、まず、文字の読める人が少ないということです。ですから、読み聞かせだったら喜ぶ人も多いですが、1人で読むという機会をもつことが本当に難しいのではないかと思います。それから、興味の幅が広がりにくい、集中が続かない人が知的障害の人にも多い傾向があると思います。特に年齢が上がってくると内容、文字も多くなり、その生活年齢に合う本が理解できないような傾向が非常に強くなっていくのではないかと思います。結果として、本への興味や要求が高まらない、そのために情報や知識を得る機会が少ない、娯楽が少なくなる、という悪循環があると考えられます。

(*藤澤氏パワーポイント資料2参照)DAISYのサンプルをいただいたので、うちの学校の個別指導の言語指導の時間に知的障害児4名、肢体不自由と知的障害の重複3名にモニターしてもらいました。

(*藤澤氏パワーポイント資料3参照)◎がもっと読みたいという要求があった人、○が自発的な要求はないけれども集中した人、△が途中で興味をなくす人、×が全く興味のない人、このような印を付けたのです。

この行でAさんからずっと見ていきます。小4の女子のAさんは,発達年齢が5歳程度の人です。結果は◎で、自分でもテキストを読もうとしました。これは、読みなさいと言ったわけではないですが、自分で読もうという動きがありました。

Bさんは2歳半程度の人ですが、内容が難しかったのだと思います。途中で集中しなくなりました。

Cさんは最後まで聞きましたが、内容の理解はできませんでした。

D君は5歳程度の高校2年生の人ですが、最後まで集中しました。特にスウェーデンのLLブックで、『赤い靴』をDAISYにしたものに非常に興味を示しました。肢体不自由と知的障害の重複の人たちは、ほとんど自分の体を自律的に動かせないのです。

E君は小学校6年生の子ども、男子ですが、低学年レベルの読書ができます。自分で文字も何とか読むのですが、DAISYも非常に集中して聞いていました。文字は読めますが、サンプルのスピードと量にはどうもついていけなくて、聞いていたという感じです。

Fは中学1年生の女子で、この人も読み聞かせは聞くという人です。この人も集中して聞きました。

Gさんは低・中学年レベルの読み聞かせによる読書ができる人です。自分では読めませんが、理解はできたわけです。この人も『赤い靴』にとても興味をもちました。昔話も大変好きでした。もっと読みたいという要求がありました。こういうモニターの結果でした。

DAISYは、知的障害の人にとって学習というよりは本が好きになる、いろいろな物語に親しめる機会を提供するものになれば良いな、と私は思っているのです。DAISYの効果としては、ほとんどの子が集中したことです。いまの子ですから、やはりパソコンが好きなのです。パソコンで自動送りになって音声が流れるので、集中します。途中で嫌になった子も1人いますが、そういう効果があるのかなと思っています。また、文字が読めない、あるいはページがめくれなくても一人で読書ができますから、そういうことはやはりよかったなと思います。『赤い靴』には若い女の子が出てきますので、生活年齢が中学ぐらいになると興味が出てくるのです。年齢に応じた本も、これであれば聞いて楽しめるということがよかったなと思います。また、先生と一緒に読んで、途中で止めるといったこともできますから、知的障害の人でも、内容の読み取りや文字の読みの学習に使っていけるのではないかと思います。

課題です。(*藤澤氏パワーポイント資料5参照)改良の余地がいろいろあると思いましたが、思いつきですから、簡単に聞いていただければと思います。文字が出ますが、どう考えても読めないだろうという人もいるわけです。ですから、絵や写真だけのDAISYもあっていいのではないかと思います。文字がわからなくてもシンボルだったらわかる人もいると思うので、文字の代わりにシンボルを付けたような内容もいいかなと思います。アニメーションの利用も楽しめていいかなと思いました。

レイアウトは、絵や写真を多くし、テキストは少なくする。読み上げているテキストを目立たせるポイントになるものも文字数や行数を少なく出さないと、とてもついていけないと思います。読み上げの速度調整や読み方なども、やはり知的障害の人用にゆっくりと読んであげるのがいいと思います。ですから、DAISY図書は、発達年齢と生活年齢の両面から選んでいったら良いのではないかと思います。

著作権の問題があるとおっしゃっていましたが、絵や写真が中心の漫画や旅の本など、それから文字や音声を中心にした小説など、いろいろなレベルが考えられるのです。それは、知的障害の人の読書の楽しみを1つ増やすことになると思います。

養護学校で言えば、学校で作った教材などで結構いいものがあると思うのです。そういうものをオリジナルでDAISYにしていったら、著作権も問題ないし、今までのいろいろな蓄積が利用できると思います。少し長くなりました。これで終わりです。