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Ⅰ.障害別のニーズと配慮事項

4.内部障害

内部障害者について

●内部障害のほとんどは、共通の特徴・悩みとして「外見からは障害があることが分からない、分かってもらえない」いわゆる「見えない障害」という点があります。(呼吸器機能障害者の方で酸素ボンベを携帯している場合もあります。)

●一定の、定期的な治療行為を必要としますが、「外見上」その必要性と重要性を認識してもらうことが困難です。

●腎機能障害者は、隔日に人工透析治療が必要であり、治療日以外についても、症状変化が起きやすいことで、そのことに対する不安、また周囲から「不信の目」で見られること等で、ストレスを受けやすい状況にあります。

●オストメイト(大腸がん・膀胱がんによる人工肛門・人工膀胱増設者の総称)は、生来の肛門・膀胱がないため、便尿の排泄は腹部に開けた「ストーマ」(排泄用の小さな穴)から行いますが、括約筋がなく常時排泄が行われるため、ストーマ装具(蓄便・蓄尿のための容器)を腹部に装着して生活しています。ストーマ装具は、適時洗浄・交換する必要があり、特に外出時・災害時にはオストメイト対応トイレが必要です。

ストーマ装具

(写真:ストーマ装具 「オストメイトの手引き」日本オストミー協会より転載)

災害時に困ること

●まず避難する際には周囲の支援が必要であり、次の「治療を確保」する段階でも、医療機関や関係機関、住民組織からの支援が必要ですが、上記の通り「外見上」その必要性を認識してもらえません。本人が努力していても、それを分かってもらえません。

●避難所等での集団生活を一定期間強いられる場合、一般的に内部障害者は、免疫力が低下しているため、感冒等の感染症に対する不安が大きくなります。

●避難所等での食事については、一般の「非常食」では対応出来ない場合が多いです。それが、長期に渡る場合には、不安も大きくなり、体調にも影響します。

●日本オストミー協会では、災害時におけるストーマ装具の緊急持ち出し準備を指導しています。これまで、災害時にストーマ装具を持ち出せなかった場合は、入手が困難であり、持ち出せた場合でも、避難所にオストメイト対応トイレがなく、装具の洗浄や交換ができなかった事例があります。洗浄・交換には20〜30分を要するため、一般トイレとは区別する必要性があります。

(1)日ごろの備え

本人の備え

●まず大前提として、自身の疾患・障害について、充分本人が認識しておくことが大切です。また本人が高齢の場合は、家族の認識も重要です。

日頃からの備えのイラスト

●自身の障害について、近隣住民によく認識してもらう努力も大切です。個人情報保護との関連が議論になりますが、命を守るために、この点はよく検討すべきです。

●日常的に自身が居住するコミュニティに参加する意識を持ち、交流することも重要です。

●いざというときに医療を確保できるよう、災害時における医療機関との連絡方法、第二・第三の医療機関の確保、自身に必要な薬剤の確保等を行っておきましょう。

●人工透析治療の場合、隔日実施が基本ですが、日常の自己管理から、災害・緊急時には、3日程度治療ができないことも想定しておくことが大切です。

●オストメイトの場合、自宅内外の数か所にストーマ装具を分散保管しておくとよいでしょう。また、日ごろからオストメイト仲間と連絡網を作り、装具の保管を含めた助け合いの輪を広げておきましょう。

周囲の備え

●平常時から、周囲の住民や自治会は、当事者の存在を充分認識し、可能であれば自治体は、こうした障害者情報をリスト化して、個別具体の支援策を策定する必要があります。

●それぞれの地域にどのような要援護者がいるかという情報(名簿等)に基づいて、県や市町村の「災害時マニュアル」を策定し、個々の障害の特性を踏まえて、それに応じた個別の支援策の策定が求められます。このためには、「個人情報保護」との整合性が問われますが、「人命尊重」の立場に立った判断が求められます。

●オストメイトへの対応については、ストーマ装具を避難所などに緊急支給できるよう、ストーマ装具販売店などからの供給体制をつくり、また、病院のストーマ外来の緊急対応などの仕組みも備えておきましょう。

(2)災害が起きたとき

●普段から準備していた、医療機関、関係機関との連絡網を活用しましょう。特に行政からの情報提供が困難になった場合、患者団体等が作成している連絡網から情報収集することは、これまでの事例からも非常に有効でした。

●災害・緊急時用に、一定の薬剤を確保しておくことが大切です。主治医等との事前の対策を講じておきましょう。

●自身の障害・治療情報については、患者会等が作成する「防災カード(災害手帳)」等に記入・携帯することが、緊急時に対応する医療機関等で非常に役立った事例があります。

●非常持ち出し用品の中に、自分に必要な装具、医療機器、薬剤や、その名称、サイズ、処方などのメモを含めて携帯します。なお、水分補給が大切な場合は、ペットボトルも携帯します。

(3)避難しているとき(避難行動・避難生活)

●日ごろから準備しておいた、医療に関する非常時の連絡網を活用しましょう。その優先順序に従って、医療の確保と生活の継続について、家族、自治会等を含めて日ごろから対策を講じ、災害時には、これに基づいて行動しましょう。

●可能であれば、被災地を離れて一定期間の生活と治療環境を確保することが、最も安全です。

●感染症、治療・医療の必要性、食事管理等々の理由から、障害や疾病の状態によって、一般被災者と避難所の区画を分ける必要性が発生します。そうした意味から、昨今議論されている「福祉避難所」については評価されるところです。

●避難所に、オストメイト用仮設トイレの設置が望まれます。

 

オストメイト対応トイレのマーク

(図:オストメイト対応トイレのマーク)