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障害者と災害時の情報保障
~新潟中越地震の経験と今後の防災活動~
シンポジウム報告書

シンポジウム「利用者が参画した防災活動とマニュアルづくり
~新潟県の経験と今後の展望(先進事例を交えて)~」

○コーディネータ

災害時情報保障委員会 委員長 藤澤 敏孝

私は知的障害関係の仕事をしています。午前中、育成会の報告がありましたがグループホームなど、 障害者が地域で生活していて、自然災害や生活することによる多くの人的災害等に遭ったときに 災害情報が出されたとしても、その情報が正しく認識出来ない為に被災に遭う事や、 正しく避難できずに二次災害に遭うなどと、多くの問題があります。

当事者が参画したマニュアルづくりを

マニュアルは訓練のためにつくっているのではないし、マニュアルどおりにやった、 だから私には責任がないという責任逃れのためにあるわけでもありません。 また訓練のたびに棚から取り出して使うものでもありません。 やはり利用者・当事者にとって、安全であるということが一番です。 サービス業であれば、統一ルールでお客様にはどういうことをするか、 よい製品をつくるには、どういうマニュアルが必要かなど、それぞれ目的があるわけです。

障害をもった人にとっては、障害の種別や特性に応じたマニュアルが非常に大切です。 たとえば、避難所での生活についてです。避難所がなぜ困るのかは具体的に当事者でなければ わかりません。又ボランティアをする人も、障害者に関わったことがある人なら、 こういう理由で避難所での生活は難しいということがわかります。 ゆえに当事者が参画したマニュアルが大切ということです。

話は変わりますが、私の法人には通勤寮があって、駅から歩いて5分ぐらいの便利な所にあります。 その前後に家がないので、県の監査が来ると、地域の協力を得た防災マニュアルができていないと 指摘されます。寮長は私にそのことで相談に来るのですが、私は無視しておけば、と言います。 なぜかというと、通勤寮なので、火災があれば近所の人を待って逃げたり誘導してもらうより、 自分たちで逃げたほうが早いからです。

私の働く入所施設では、人口が2,700人ぐらいの高齢、過疎化の進んだ地域にありますが、やはり、 地域との防災協力マニュアルがないと指摘をうけますが、それも無視しています。なぜかと言えば、 お年寄りに施設に助けに来てもらうよりも、私たちが「どうしましたか?」と聞くほうが、 先のような気がするからです。けれども無視しておいて本当にいいのでしょうか。 事故があったとき、マニュアルをつくるようにと指摘をしたにも関わらず、無視していたということに なってしまいます。当事者のためのマニュアルをつくろうとしても、日本の建前社会のシステムに 押されてしまうことがあります。その狭間で今苦しんでいます。

災害時情報保障委員会でも、実際にどうしたらいいのか皆さんと議論して、災害時の実態調査を しました。アンケートは、兵庫県、宮城県、北海道の全市町村にお願いしました。 実際マニュアルは生かされているかと質問したら、マニュアルはできているが形骸化しているとの 回答でした。

午前中にも名簿の作成にあたっては、同意方式や手挙げ方式などの提案がありました。 阪神・淡路大震災のときに、在宅障害者がどうサポートされたかを中心に調べたことがあります。 在宅障害者のサポートは本当に貧弱なものでした。行政に名簿を提出してほしいと言っても 拒否されました。ボランティアの方々が一軒一軒友だちを訪ね、その友だちをたどって名簿をつくり、 安否確認を進めていったという話を聞き、今後解決していかなければならないことだと思いました。

午前中の丸山さんの話に、支部局ががんばれば、という話がありましたが、確かに支援者が その気になってがんばってくれないと、当事者にとって当事者のマニュアルは夢物語に 終わってしまいます。このシンポジウムが当事者参加のマニュアルづくりの視点で進められればと 思います。

発行
2005年3月
編集・発行人
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