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4.RNIB(Royal National Institute for the Blind)

中村 麻有子

平成17年3月8日(火)午前9時~11時

訪問者:寺島、川畑、阿由葉、小松、清成、谷、中村
対応者:Mr.Dan Pescod

1.RNIBの概要

RNIBは、英国最大の視覚障害者のためのチャリティ団体で、視覚障害者の権利擁護を目的としており、視覚に障害のある200万人の障害者に情報を提供し、支援し、アドバイスしている。また、点字図書や録音図書の貸し出し、日常生活訓練やコンピューター訓練、ロービジョン訓練、盲人用具の販売、図書の製作販売、調査研究など多くの事業も実施している。

RNIBは、全国に支部、研究所、訓練機関などをもっており、本部は、ロンドンにある。今回は、その本部を訪問した。

2.RNIBの盲人用具販売所

RNIBの本部には、英国最大規模の盲人用具販売所がある。そこでは、実際に、用具を手にとって触ってみることができるし、眼鏡やレンズなどの評価もしており、適切な盲人用具を得ることができるリソースセンターとしての役割ももっている。販売品の中には、解説放送付ビデオなども用意されていた。写真は、その販売所の様子である。

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3.日常生活訓練室

RNIBの中には、調理などを行う日常生活訓練室があり、実際に訓練するとともに、実際の家庭の台所で使える機器についての情報を提供したり、視覚障害者のためのカラーコーディネートなどについて評価するための部屋も用意されていた。

評価は、リハビリテーション専門家によるその人の一番の困難点、個人にもたらす影響をなどについて行われる。台所のセッティングは、一般家庭で使用するものを用意しており、まな板は黒い方が良く見えるのか、どの色がいいのか、調理器のオンオフはどういう形が最も安全なのかなどを検証する。

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4.ロービジョンクリニック

ロービジョン(弱視者)に対する視覚検査を実施している。60歳以上、16歳未満、各種障害者手当申請者、糖尿病、緑内障、登録盲人、低所得者などには、NHS(国民健康保険)や地方自治体から費用が負担されるので無料で検査が実施される。

視覚テストには、いろいろなものがあり、写真は、これはコントラストを測定するものである。コントラストがわからなくなると症状が進行してくると、転倒しやすくなるし、文字を読むにも拡大するのみでは役に立たないので、そのような検査があるとのことであった。

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5.質疑

清成/聴覚障害者でここに来て目の検査をする人もいるでしょうか。

RNIB/しばしばあります。高齢になってくると障害が一つではありませんので視力、聴力共に衰えてくることも多くあります。リハビリのセッションでそれがわかれば、特別の注意をしますし、トレーニングを受けます。

清成/例えば聴覚障害者が検査する場合、見えますかと言われても聞こえないので反応できないが、そういう人が検査する場合はどのようにサポートしているのですか。

RNIB/全く聞こえない人で必要であれば通訳を用意します。リハビリ専門家と眼鏡医に事前に知らせてくれれば準備をしておきます。

小松/家屋改造は、専門の業者がいないと自分ではできないと思いますが、そのような業者はあるのですか。

RNIB/それは社会福祉部センサリーニードが査定をして家屋改造を行います。

寺島/お金はどこから出るのですか。

RNIB/社会福祉部から出ます。

寺島/全額ですか。

RNIB/その人の収入によります。その他の障害もある場合は、社会福祉部の作業療法士がその人の能力を見て階段に手すりをつけるなどの承認も一緒にします。

清成/年間収支予算はいくらですか。RNIB会員の中に見えない人がいますか。

RNIB/視覚障害者の正確な数字はわかりませんが、多いです。RNIBの年間収支予算は15万ポンドくらい。リハビリの専門家の治療を含めていません。人材はフルタイム2名、パートタイム4名(リハビリ部門)。医療省に一回いくらで契約しています。

川畑/視覚障害者でIT関係の仕事をしている人はどれくらいいますか。

RNIB/内訳は出せません。UKの就業者のうち14万人が視覚障害者です。14万人のうち失業率は75%と非常に高いです。私達は何が雇用のバリアになっているかを調査しています。この調査の結果、雇用者の90%は視覚障害者の雇用は困難だ、不可能だと思っていることがわかりました。雇用側の態度が最大のバリアなのです。IT産業への援助政策は、アクセスワークスキームと呼んでいますが、雇用側にこのような制度をご存知ですかと聞くと、雇用者側の74%が知らないと答えました。このスキームの開始は1994年ですが、それ以来このスキームを使って雇用に就いた視覚障害者は20万人になります。このスキームはITの機器の援助経費のみならず、通勤費や個人的に会社で資料を読みとったりする時の援助費用なども出ます。私共の最大の問題点は、新しく職場における雇用均等法がありながらも雇用側が視覚障害者の潜在能力を理解していないということ、また、その人たちは雇用が必要であるという知識や自覚が少ないということ、政府の財政的援助があるということも知らないので両方に働きかけることが必要であります。このスキームの問題点は何かというと、まず、技術を入手するのが難しいということ、実際に従事している人自身が視覚障害者のニーズを十分に理解していないこと、これらのようなことからスキームが適切に稼動していないといえます。

清成/日本も同じような面あります。日本では企業が障害者を採用する制度があり、一定の人数を採用しないと反則金を国に支払う制度がありますが、イギリスの場合はどうですか。

RNIB/そのような法律はなくなりました。数年前にその法律を解除しました。

川畑/就職できない視覚障害者は何をしているのでしょうか。

RNIB/その人たちの生計ですが、大半の人が障害年金を受けています。この国で一度職に就いていて途中で障害を負った場合は職場を離れる時に既に保険を払ってきていますので給付金を受けることができます。しかし、視覚障害者は一度も職に就いたことが無い人が多いので障害年金を受けることができません。そのために、障害者手当金をもらうことができます。

阿由葉/昨年1年の実績、そのための職種と職員の数を教えてください。

RNIB/そのような数字を持っていません。何人くらい就職したかという数字は持っていません。

阿由葉/ここは仕事の斡旋はしていますか。

RNIB/国が障害者を雇用しましょうというスキームを出したわけです。国の庁と契約をして、障害者が仕事に就けるようにトレーニングをしたり、リハビリを行ったりしています。この協会自身でも視覚障害者を優先的に受け入れています。