音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

高齢者の在宅福祉に関する研究-ホームヘルパーの意見を中心に-

森二三男*(日本福祉学院)

真木誠**(北海道大学医療技術短期大学部)

In-home care based on the opinions of home helpers for elderly

Fumio MORI
Japan Welfare Academy,Tsushima Kinen Gakuen

Makoto MAKI
College of Medical Technology,Hokkaido University

目次

Abstract

This study sought to investigate a practical way of coordinating the interrelation of care workers and their in-home care services for elderly.
Questionaires were completed consisting of five main questions in which items were included.the subjects were 104home helpers registered at the In-Home Care Service Center in Sapporo city.
The results are as follows;
The elderly who were given care by home helpers were 51males and 52famales of an average age of69.6years(S.D=13.32).Most of them had a history of medical treatment and still were suffering from the after-ffects of illness.There illnes or impairments were cerebrovascular stroke,heart attack,diabetes,pulmonary tuberculosis,rheumatoid arthritisetc.Most of them had no spouse(74%).
In addition,'t was difficult to expect care to be provided by a family member,for example,son,daughter or daughter in-law,because their nearest relatives did not live with them or lived in a distant area.The life style in Japan has involved near relatives,therefore our country can be seen to be lagging in social welfare especially in-home care.Conclusively,it suggested that in order to give intensive care to such people who are disabled or functionally impaired,we must create an in-home care network system.

1.目的

 在宅福祉の先進国として注目されているデンマーク、スエーデン等では,在宅ケアのほうが施設ケアよりもはるかに多額の経費を要すると問題視されているが、わが国でこの在宅ケアを計画通り実践した場合,どれほどの経費がかかるかについては現在なお未知の状態と思われる。また、経費の他にも治療が必要な高齢者の居宅に出向く医師の往診料や訪問看護料をはじめとして、保健婦、リハビリテーション関連の療法士、ホームヘルパー、ケアワーカー等々の多種多様な職種の相互連携など、未解決の課題が山積みしているのである。福祉担当の行政機関や団体、ならびに医師会や病院、施設などの側からは、これらの人々の組織化やシステム化の青写真が提示されているものの、これに血を通わせ肉をつけていく活動の進展に伴って、多くの予測し難い問題も見え始めてきているというのが現状であろう。
ところで、従来から北海道におけるホームヘルパーの活動実態や在宅福祉におけるその位置づけ、役割等々をめぐる研究は、忍博次(1985(1)、1987(2)、1993(3))らの研究グループがノーマライゼーションの基本理念を中心に据えた着実な研究を一貫して続け、その成果を報告している。また1991年の北海道高齢者問題研究協会主催のセミナーでは、前記の忍教授(北星学園大学)が「いまなぜ在宅福祉か」のテーマで基調講演をおこない、これに触発された在宅福祉サービスのネットワークをめぐる研究発表が聴衆にこの問題への強い関心を喚起させたことから、大きな意義があったと印象づけられた。
ノーマライゼーションの考え方を地域社会の中で具体化するには、地域福祉システムの確立をスタンスとしたコミュニティーワークとして在宅ケアが緊急の実践課題であるということに異論はないであろう。
イギリスではたとえかなりの重度精神障害(痴呆症状)を持つ高齢者でも病院や施設ケアよりは在宅ケアの方が望ましいとされることから、A.Whitehead(1970)は、「コミュニティーケアの活用を支持」している。ベルギーもこうした趨勢を強化しつつあるように思われるが、わが国では野上文夫(1988)が「公的責任の明確化と計画化が必要である」と力説しているように、在宅ケアはいわゆるゴールドブランの在宅三本柱と称するホームヘルプ、ショートステイ、デイサービスの拡充計画に沿って推進されることになった。
この方向をとる在宅福祉サービスは、家族介護の負担を軽減する目的をもって公的補完施策としての重要性を認識されながら活動が進められている。しかしながらこの活動の中には前述のような多くの課題が見受けられる。そこで本研究はこうした現実を把握する目的で、ヘルプサービスを利用している高齢者の心身の状態、病歴、障害のレベル等を調べ、ホームヘルパーへのコーピングの実際を知り、今後の保健・医療と福祉の連携のために必要な資料を検討しようと行ったものである。

2.方法と対象

 表1に示すアンケート用紙を作成し、平成6年6月から8月の期問に札幌市在宅福祉サービス協会に依頼して同協会に登録されているホームヘルパー120名を対象として調査し、104名(86.6%)から回答を得た。ヘルパーは男性5名、女性99名で、年齢は図1に示すとおり56歳から82歳頃までの中高年齢者が多く、平均年齢は49.6歳である。また最年少者は27歳、最年長者は同年齢の男性にヘルプサービスを提供していた85歳の男性であった。
またヘルパー経験年数は最低2ケ月の者から20年をこすベテラン10数名まで多様であるが、平均年数は約9年弱であった。さらにヘルプサービスを利用している高齢者の年齢は平均69.6歳で、図1に示したとおりであるが、なかには未だ高齢期になっていない55歳以下の障害者も9名含まれていた。

図1.ホームヘルパーと対象高齢者の年齢

表1アンケート用紙

平成6年 月

在宅福祉についてのアンケートのお願い

 このアンケートは、私ども研究グルーブが在宅福祉について検討し、より充実した良質のホームヘルプサービスを提供する資料とする目的でおこなうものです。ご記入いただいた内容については秘密を守ることを固くお約束しますので、漏れなく記人し、(  )月末までに同封の返信用封筒によりお寄せいただきますようお願いいたします。

二三男(目本福祉学院)
真木誠(北大医療短大)


氏名は記入しなくて結構ですが、下記の事項には○印と数字を記入して下さい。

・記入者の年齢、性別等   1(   歳)2(男・女)
・ホームヘルパー経験年数  3(   年)


1.あなたがホームヘルプしている人を1人選んで、性別、年齢、配偶者の有無についてできるだけお答えください。

イ.性別    1男.2女
口.年齢    (  歳)
ハ.配偶者  1)有り:1介護している.2介護できない
理由(                 )2)無し
二.他の親族 1)有り:1介護している.2介護できない
理由(                 )2)無し

2.その人の心身の現況について具体的にお答えください。

A病歴・障害等

病気の既往症と現病名(いくらでも分かるだけ記入してください)
イ.既往症:(                    )
ロ.現病名:(                    )
障害の状況(級別等がわかれば記入して下さい)
かかりつけの病院と服薬状況
イ.医師:1有り2無し ロ.病院:1有り 2無し ハ.服薬:1有り2無し

B身体の状況

イ.視力障害:1正常2軽度3中等度4重度(眼鏡使用、他:           )
口.聴力障害:1正常2軽度3中等度4重度(補聴器使用、他:         )
口.言葉づかい:1はっきりしてる 2聞き取れない(                  )
ハ.意志表現(体がこわい、疲れる、食べたいなど):
1伝える2伝えられない(                  )
二.物事の理解:1よく分かる2分からない(                     )
ホ.歩行:1介助なしで歩ける2介助が必要(車椅子使用、杖使用・他:      )
へ.立つ、坐る:1介助なしでできる2介助が必要(                   )
ト.食事:1一人でできる2介助が必要(                       )
チ.洗面:1一人でできる2介助が必要(                       )
リ.衣服の着脱:1一人でできる2介助が必要(                     )
ヌ.入浴:1一人できる2介助が必要(                        )
ル.寝起き:1一人でできる 2介助が必要(                     )

C精神の状態

イ.痴呆(ぼけ):1有り 2無し
(記憶、見当識などの喪失、たとえば外出すると帰らなくなるとか、自分の名前が言えない、間違う、年齢や生年月日が分からないなどがありましたら分かっていることを記入して下さい)
口.問題になる行動や動作:1有り 2無し
(夜間はいかい、せん妄、妄想、独語などがありましたら分かっていることを記入して下さい)

D生活歴

イ.職業歴:1会杜員 2公務貝 3役貝 4その他(               )
口.家族関係:1)人数(人:うち子弟の数人)
2)居所:1同居 2別居((1)近隣 (2)遠隔地)
ハ、経済状態:1年金 2その他(                 )
二、人間関係などの問題:1有り 2無し
(家族の人間関係や介護者との人間関係で介護上の問題があれぱ、さしさわりのない程度に記入して下さい。)

3.その人が受けている他のサービスによる支援状況があれば記入してください。
E医療

イ.通院:(  月・週  回)
ロ.医師の往診:(  月・週  回)
ハ.訪問看護ステーション:(  月・週  回)
二、訪問リハビリ療法士:(  月・週  回)
ホ.その他:(  月・週  回):具体的に(                 )

F保健

イ.訪問保健婦:(  月・週  回)
口.その他:(  月・週  回):貝体的に(                 )

G福祉

イ.介護支援センター:(  月・週  回)
口、施設のデイサービス:(  月・週  回)
ハ.ナイトサービス:(  月・週  回)
二.ショートサービス:(  月・週  回)
ホ.ホームヘルブサービス:(  月・週  回)
へ.他のホームヘルブサービス:(  月・週  回):貝体的に(           )

4、あなたがヘルプサービスしていて、その人の要求や希望をかなえてあげるうえで、困難なこと、他のケアワーカー(介護者)や医療関係者との連携上必要と考えることを率直に書いてください。

(どうもありがとうございました。記人欄が不足であれば裏面へ記入してください)


主題:
高齢者の在宅福祉に関する研究、ホームヘルパーの意見を中心に

発行者:
森 二三男、真木 誠

発行年月:
1995年

文献に関する問い合わせ先:
札幌市豊平区月寒西2条5丁目1番2号
TEL:011-853-8042 FAX:011-853-8074