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利用できるサービスの活用

●渡部
そうですね、図書館に関しては。
でも、図書館を利用するだけではなくて、やはり教科書というのもありますから、それはDSSのほうで、教科書をたとえば英語で言うとe-テキストと言うのですが、要は電子版に変えたものをDSSで提供しています。
具体的に言ってもよろしいですか。

E-テキストでも、3通りありまして、たとえば教科書によって既にe-テキスト化されたものがあります。それを私達のオフィスがまた作るとなると時間もかかるしお金もかかるということになるので、例えばRecording for the Blind & Dyslexic、RFB&D注釈1212というのですが、そこに教科書があるようであれば、もうその学生に、使える利用費をあげちゃうんですよ。というか、その学生にメンバーシップを買ってあげて、学生が自由自在にRFB&Dを使えるようにするんです。RFB&Dというのはとても素晴らしいサービスを提供しているのですけれど、それでもやはり教科書がRFB&Dにないときがあるんですね。そのときは、今はオンラインでありますブックシェア(Bookshare.org)注釈1313というのを私も大いに利用させてもらっているのですが、そちらのメンバーシップも提供して、学生が自分で教科書をダウンロードして、電子テキストを使う。RFB&Dでもブックシェアでも持っていない教科書も出てくるんですよ、特に3、4年生が使う専門的な教科書、または教科書でも毎年毎年変更が行われるという教科書になるとなかなかない。その場合には、私達DSSが本を高速スキャナーでスキャンを全部して、OCRをかけて、電子化したものを提供します。提供の仕方は、電子化したものをCDとして焼いたり、学生自身のフラッシュディスクにダウンロードしたりします。DAISYが再生できるビクターリーダーやブックポートなどデバイスがいくつかありまして、電子テキストを入れてあげて、学生がどこでも使えるようにしています。
2004年にDSSのオフィスで約100冊の教科書をe-テキスト化しました。私達はブックシェアを使っているので、e-テキスト化されたものは、そのまま自分達が持っておくのではなくて、ブックシェアに提出するんです、ボランティアとして。そうしたら他の学生も将来使える。ということをしているんです。

手のひらサイズのブックポート(BookPort)
写真:手の平サイズのブックポート(BookPort)

●河村
3つ今あげていただいた中の、最初のRFB&Dは録音図書ですね。人間が声で読んでいるものですね。声で読むのにすごい時間がかかるから、読み方も図表や何かもちゃんと声で読んでいるので完璧なのだけれども、でも時間がかかってなかなか新版が手に入らない。まずはRFB&Dにないかと探して、その次にブックシェア、これはテキストだけで、ブックシェアの場合にはいろいろな形式のテキストを選べるわけですよね。プレーンなテキストもあれば、htmlもあれば、DAISYもある。これでもないときはスキャンをするということですね。

●渡部
そうです。

●河村
そうしますと、最終的に学生さんが手にするのは、これは携帯用の最新のDAISYプレイヤーですよね。ビクターストリームというもので、これはいくらくらいするんですか?

●渡部
今これは329ドルだと思うんですよ。確か20ドルの郵送料が。

●河村
そうすると、5万円弱くらいで買える。それをポケットに忍ばせて、どこでも教材は耳で聞けるというふうにしているわけですね。 学生さんのほうも、中には耳で聞きながら目で読みたいという要求もあると思うのですが、そういう人達はどうやっているのですか。

●渡部
そういう学生の場合は、むしろ先ほどの写真にもありましたブックポート、それだったら音声化されたもので、それを持って教科書を見ながら本を読むという学生もあります。ブックポートの場合のいいところというのは、どこでも勉強ができるというところなんです。たとえば私の知っている学生なんかは、ブックポートを聞きながらジョギングをしたりとか、ジムに通ったりとかしている学生もいるんですよ。でもやっぱり、それでも自分も画面を見て、たとえば読まれている言葉をハイライトしたいという学生が多いんですね。その場合は、先ほど言いましたように私達がe-テキスト化したものをCD-ROMに焼くんですよ。そのCD-ROMで、ATを使いながら、先ほど申し上げましたWYNNとか、あるいは視覚障害のためにデザインされたJAWSというのがあるのですが、私達が使っているのがフリーダム・サイエンティフィックのソフトが多いのですが、MAGic、これも視覚障害者向けのものですけれど。

●河村
拡大もできるものですか。声も聞こえて、ハイライト表示されて、拡大もされるというものですね。

●渡部
そうです。それと、OpenBook。そういうソフトを使って、学生がコンピュータ1台で見ることも聞くこともできます。そのソフトウェアが、DSSに置いていないんですよ。置いていることは置いているのですが、私達のオフィスって、朝8時から夕方5時までの営業時間なんです。学生生活は、ある部署の営業時間なんか関係なく宿題をする必要があるじゃないですか。そのために、ATを図書館に置いたりとか、モンタナ大学は合わせて12か所にコンピュータラボがありまして、そのラボに40台くらいのコンピュータが置いてあるんですね。その中の必ず1台はATを設備しています。ですから、大学のキャンパス、どこでも勉強できるように、そして障害を持っていない学生と一緒に勉強できるように、という環境を作っています。

●河村
今図書館の世界では、DAISYというのは図書館がずっとこれまで開発してきて、世界中で交換しようということを考えていまして、図書館のコレクションとしてDAISYのコレクションを、普通の本と同じようにオンラインで、グローバルに交換できるようにしようという動きも一方で進めているんですね。
ですから、そういう意味で図書館というのはこれからどんどん、いろいろなコレクションを、読みに障害のある学生さんが望むフォーマットを手に入れて読める、そういう場所にだんだんなっていくのではないかな、と我々は考えて、今努力しているところなんです。
実際に要望が出て、今図書館とコンピュータラボというところが他の学生と一緒に使える施設として重要な役割を果たすというお話をされたのですが、図書館というのはわりとどこも保守的なのですが、反応はどうですか、こういう要望が出て。

●渡部
要はAT?
かなりすんなりと、ええ、いいですよと言われる。
やはりそれは、私達のオフィスが言うだけではなくて、障害を持つ学生自身の声もあるからこそできるのだと思うのですね。

●河村
そういう要望というのは、むしろ学生さんたちが自発的に図書館に出していて、DSSとしては特別コミットはしないで、学生さんたちが図書館に自分達で行くということなのですか? 

●渡部
両方です。もちろんDSSに登録した学生が、たとえば図書館の使い方がなかなか難しくてねえ、とコーディネーターと話す。そうしたらコーディネーターは「こういうふうにしたらどう?」というふうに提案をするんですよ。学生が実際に図書館に行ってリクエストをすることもありますし、でも図書館自体もたとえば予算がない、または、ATもどういうものを入れたらいいのかわからないとか、そういう状況がありますので、そのときにはDSSがバックアップとして、ATを購入して、図書館からある部屋を借り、そこにあるコンピュータにATをインストールしたりしています。要は、英語で言うとコラボレーションというのですか、それをしています。

●河村
DSSの学内での位置、地位と言ったらいいのかな。学部というのはたいがい学部長という人がいて、学内の最高の意思決定というのは学部長に集まってしまいますよね。DSSのトップの人は、そういう学内で意思決定をするようなときは、どういう立場になるのですか?