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ニュージーランドのメンタルヘルスサービス計画 ニーズ対応方法について

1 はじめに

1.1 本計画の目的

この文書は、1997年に発行された『ニュージーランドのメンタルヘルスサービス計画:作業文書』の修正版であり、その後にメンタルヘルス委員会が完了したセクターおよび作業からのフィードバックを含んでいる。

本計画は「全国メンタルヘルスサービス開発計画」であり、政府の「全国メンタルヘルス戦略」の目的を実現するために必要な質量両面の改革(どのような種類とレベルのサービスが様々なグループの人々に必要であるか)に関する委員会の見解を記述している。委員会は引き続き戦略の実施を監視する責務を遂行できるよう、この最終計画を作成した。

本計画は、きわめて重度の精神疾患患者に適切な治療と支援を与える、適切に機能するメンタルヘルスシステムのためのプランを提示する。ニュージーランド人のメンタルヘルスを改善するために、一連の経済的、社会的、教育的および文化的戦略が必要とされるが、本計画は不良なメンタルヘルスの改善に資するニュージーランド社会の広範囲にわたる問題を直接取り扱っていないことに留意しなければならない。

1.2 回復へのアプローチ

回復は目指す目的地であるが、同じくそのための旅である。回復は人それぞれに異なる。精神疾患罹患者の中には、回復は割合見つけやすい目的地に向けて1回か2回しか旅しない道程の者もいるが、他の人にとっては、目的地が捕らえにくい迷路、辿りつくのに一生かかる迷路である。

回復は、人々が精神疾患のある場合あるいはその症状が現に現れていない場合に、かつ、発症後に起きることがある孤立、貧困、失業、差別などの多くの損失にもかかわらず、りっぱに生きることができるときに生じている。回復とは、必ずしも、人々が完全な健康状態に戻ったり、全ての損失を取り戻したりすることを意味しないが、人々がそのような障害にもかかわらず、りっぱに生きることができることを意味する。

歴史的には、メンタルヘルスサービスは回復へのアプローチを用いることができなかった。人々がその地域社会から孤立したり、人々を強制し人々に選択を拒否するために権力が行使されたり、精神疾患のある人は決してよくならないと見なしたりするような環境では、回復は全く起こりえなかった。

メンタルヘルスサービスを使用せずに回復した人もいるし、障害にもかかわらず回復した人もいる。しかしながら、大部分の人は、サービスがその回復を助長するよう計画され実施されれば、はるかに良くなるであろう。事実上、メンタルヘルス部門が行うことは、全て回復を助けるか妨げるかのいずれかである。

本計画は、回復へのアプローチを使い差別の問題に取り組むサービスのニーズを明確にすることによって、全国メンタルヘルス戦略に基づいて作成される。差別は回復への大きな障壁である。このように回復と差別に重点を置くことは、政府の戦略が書かれてから部門に生じた考え方の発展を反映している。

1.3 メンタルヘルス委員会の役割

委員会は1996年に政府により設置された。委員会は次の職務を有する。

  • 全国メンタルヘルス戦略の実施を監視すること
  • 精神疾患罹患者に対する差別を減らすこと
  • メンタルヘルス労働力の増加を図ること

委員会のビジョン記述書は、
精神疾患患者が、その権利を尊重して公平で平等な機会を与える環境で生活することができ、かつ、最良の成果と回復を達成するために、そのニーズに適切に対応する要員の適切な組み合わせによって提供される十分に開発された一連のメンタルヘルスサービスを利用できることを確保することを目的とする。
このビジョンを達成することにより、次のことが確保される。

  • 回復へのアプローチが全てのサービスにおける標準方法となること
  • 差別が回復への障壁と見なされ、かつ、全てのサービスによりゼロ容認とされること
  • 全てのサービスにおいて最良の方法が選択され常時組み込まれること
  • 成果を評価し、最良の成果と回復によってサービスの開発を推進すること
  • 政府のサービス利用目標を達成すること
  • 全国メンタルヘルス基準は全てのサービスにおいて達成すること
  • 総合的な統合サービスと協同的アプローチを推進する資金調達および契約プロセスを整えること
  • 効果的、効率的サービスの提供を可能とする法改正を行うこと
  • サービス利用者とメンタルヘルス労働者は、ヘルス消費者の権利を理解し、サービス利用者に影響を及ぼす全ての意思決定に参加すること
  • サービス利用者の回復を支援するために必要な技能、知識および姿勢を有する人々が労働力に十分に存在すること
  • 機構がサービスの提供、統合および改善を支援すること
  • 広範囲にわたるサービスが全てのニーズおよび人口集団のために利用できること

1.4 全国メンタルヘルス戦略

全国メンタルヘルス戦略は1994年6月に政府が『待望:メンタルヘルスサービス戦略の方向性』を発行して始められ、さらに全国メンタルヘルスプランである『前進:より多くの、より良いサービスのための全国メンタルヘルス計画』(1997年7月)により発展した。
戦略には次の二つの主要目標がある。

  1. 地域社会における精神疾患の有病率とメンタルヘルス問題を減少させること
  2. 精神疾患患者の健康状態を改善し、精神疾患患者が消費者、家族、介護人および地域社会全体に及ぼす影響を減少させること

戦略には次の7つの方向性がある。

  1. メンタルヘルスサービスの増大
  2. マオリの人々に対するサービスの増大と改善
  3. メンタルヘルスサービスの改善
  4. 個人の権利と公衆保護とのバランスの維持
  5. 全国薬物政策の策定と実施
  6. メンタルヘルスサービスのインフラ構築
  7. 啓蒙活動と予防の強化

本計画は最も重度の精神疾患に罹患した人々のニーズを満たすために必要なメンタルヘルスサ-ビスの開発に重点を置き、その大部分は全国メンタルヘルス戦略の第2の目標を取り扱っている。第1の目標は他の部門にもかかわるはるかに幅広いアプローチを必要とする。

保健予算局(HFA)の推計によれば、現在メンタルヘルスサービスは大人の約1.5パーセント、子どもと青少年の約0.7パーセントのニーズを満たしている。政府戦略は2004年までに人口の3パーセントのニーズを満たすことができるようメンタルヘルスサービスを増大することを目指している。本計画は、この3パーセントの利用目標を達成するために必要な「より多くの、より良い」サービスに重点を置いている。

1.5 本計画の領域と役割

この文書が極めて詳細で高度に規範的であることを望む人もいるが、他の人は高レベルに詳しいと改革を抑えてHFAの役割との混乱を引き起こすと考えている。委員会はこれらの二つの見解の中間のアプローチを選んでいる。本計画は良いサービスの枠組み、主要パラメーターおよび原則を設定し、どのように細目を、地方のニーズと希望の検討から始める「ボトムアップ」方式で決定すべきかを示している。

より効果的なアプローチを見つけ使用することを全てのメンタルヘルスサービスの主要な重点としなければならない。インプット資源ガイドラインは、革新的な方法でサービスが策定され実施され資金供与されることを制限しないし、また 制限すべきではない。

HFAは、本計画を資金決定の指針として使用し、サービス提供者は現在のサービスと方法をさらに改善する必要があるかどうかを評価するために使用すべきである。

1.6 モニタリング

委員会は全国メンタルヘルス戦略の実施につき保健省へ報告しなければならない。この報告に当たっては、次の各項目に関する特定の報告を含めなければない。

  1. 保健省がHFAとの交渉により全国メンタルヘルス戦略における戦略の各方向性につき特定の目標および実行段階を設定した範囲
  2. 下記における保健省の実績
    1. 全国メンタルヘルス戦略における戦略の各方向性について、HFAによる目標と重要段階の進捗状況を確認すること
    2. HFAが目標と重要段階に達することができなかったことに対応したこと
  3. サービス提供者、精神疾患罹患者、家族、介護人および地域社会に明確に伝達することにつき、IFAが達成した進歩の測定における保健省の実績
    1. 全国メンタルヘルス戦略を実施するために必要な修正
    2. サービス提供者、精神疾患罹患者、家族、介護人および地域社会が果たすべき役割と引き受けるべき責務
  4. 精神疾患罹患者に影響を及ぼす性質のサービスが終始一貫して効果的に提供されることを確保するために、サービス提供者の間の調整と協同を推進することにつき保健省とHFAが達成した進歩
  5. 保健省、HFAならびに精神疾患罹患者、家族および介護人に影響を及ばす性質のサービスの提供に関する責務を有する他の全ての政府省庁が全国メンタルヘルス戦略を実施している範囲
    1. 委員会が直接サービスを提供することを通して
    2. 委員会がサービス提供のために資金を供与する関係者または委員会がサービスを購入する関係者によるサービスの提供につき定めた基準を通して
  6. 保健省およびHFAが次を確保するために設定したシステムの有効性
    1. メンタルヘルスサービスに対する政府資金が他の目的に流用されないこと
    2. メンタルヘルスサービスに関する政府支出が明白な効果をもたらすこと

委員会は、これらの責務を上記の各側面における保健省およびHFAの実績を継続的に監視することで遂行する。

「1998-2002年保険金局全国メンタルヘルス資金プラン」は、今後数年間にわたって漸進的に全国メンタルヘルス戦略を実施する。このプランに基づいて、1998/99年中に達成すべき進歩の目標および中間目標は、保健省とHFAとの交渉により定められ、1998/99年HFA資金取決めに含められた。

委員会のモニタリングの主要部分は、HFAの資金プランおよびHFA資金取決めが各年につき達成目標の設定を行っているかどうかを報告できるように、これらの文書の評価を含んでいる。

さらに、委員会は全国メンタルヘルス戦略の特定の目的および目標に対しての部門の進行状況を定期的に調査する。最近数ヵ月では、この調査には次の事項が含められた。

新しい抗精神病薬の利用増加状況の推移調査
危機管理及び退院計画に関する保健病院サービス政策およびプロトコルの調査
保健病院局、保健省およびHFAへの消費者参加の調査は現在実施中である。

公式調査のほか、委員会は消費者、家族、サービス提供者、HFA、省庁および政府部局への訪問と対話により広範な非公式モニタリングを実施している。

このモニタリングの役割において、委員会は保健省、HFAおよびその他の政府機関と協同のうえ精神疾患に対する公衆の理解を深め、精神疾患罹患者が受ける差別と偏見を減らし、全国メンタルヘルス戦略の目標と目的に対する理解を増すことに積極的に取り組んでいる。戦略の目標はメンタルヘルスサービスだけでは達成することができない。目標を達成するには、全ての部門、特に社会福祉、雇用、住宅、教育、刑務、法務および人権(人権委員会および保健障害者委員会)の諸部門による調整的アプローチと相互補完的な措置が必要である。

委員会は、また主要機関と協同のうえ職業として選ぶべき道としてメンタルヘルス部門のイメージをよくすることに努めるとともにメンタルヘルス労働力の問題に取り組んでいる。