音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

ニュージーランドのメンタルヘルスサービス計画 ニーズ対応方法について

5 基本的なサービス・コンポーネント

5.1 サービスへのアクセス目標値

5.1.1 保健省 のアクセス基準

保健省は、成人についてと、子どもと青少年についてのアクセス基準を定めている。これらのアクセス基準は、「展望(Looking Forward)」および「前進(Moving Forward)」の両文書の中で論じられている。保健省が1994年に定めた成人についてのアクセス基準は、Tolkien Report に基づいたものであり、当時入手することができた最善の証拠に基づいている。成人(18歳以上)についての3%の基準は、専門メンタルヘルスサービスへの1カ月毎のアクセスについての基準である。これにはアルコール乱用者および薬物乱用者へのサービスへのアクセスは含まれていない。

保健省が1996年に定めた子どもと青少年(0~19歳)についての5%の基準は、McGeorge Reportに基づいたものである。この基準にはアルコール乱用者および薬物乱用者へのサービスへのアクセスが含まれている。

保健省は現在、本計画において、子どもと青少年について様々な年齢層のアクセス目標値を用いることを支持することを確認している。有病率の傾向を表す下記の表にまとめられたこれらの目標値は、3%のアクセスとほぼ同じである。これは、2000年/2001年までに3%という、子どもと青少年の専門メンタルヘルスサービスへの現実的なアクセス目標値を定めて、その後数年間に5%に移行することが提言されたメンタルヘルス戦略諮問グループ(Mental Heath Strategy Advisory Group)の1996年の報告書に沿ったものである。2005年までに5%という目標値は、「前進」に盛り込まれている。

保健省によるアクセス目標値は、よりよい情報や証拠が入手可能となれば、今後も引き続き修正される。

年齢層 アクセス目標値(総人口におけるパーセンテージ)
0-9 1.0%
10-14 3.9%
15-19 5.5%
20 + 3.0%

5.1.2 メンタルヘルス委員会のサービス・コンポーネントおよびリソース・ガイドライン

メンタルヘルス委員会は、保険金局(HFA)によって資金供給されている現行サービスの同委員会による調査によって確認されたように、6カ月間に総人口の3%にメンタルヘルスサービス(アルコール乱用者および薬物乱用者へのサービスを含む)へのアクセスを提供するサービスのためのリソース・ガイドラインと国際的な疫学研究に基づいたニーズの推定を作成した。このニーズは、上記の保健省によるアクセス目標値に一致して、年齢層間で異なっている。

本計画における中心的サービス・コンポーネントおよびリソース・ガイドラインは、国内計画(国内のメンタルヘルス資金拠出総額およびリソースのニーズを推定することを含む)およびモニタリング(サービスの発展によって、国家的発展の妥当性を評価することを含む)のためのものである。メンタルヘルス委員会は、これらの修正リソース・ガイドラインを「前進(Moving Forward)」に含められた「戦略」アクセス目標値の達成に必要とされるリソースの最善の推定であると考えている。これらのガイドラインは、主として全国レベルおよび地域住民に必要とされるサービスを推定するために利用すべきであるとされている。これらのガイドラインは、小規模集団についての利用を目的としたものではない。第8章の「サービスの統括:包括的かつ連続的なサービスの提供」および 5.1.4の「地域ごとの革新的なソリューション」を参照されたい。

現在のリソースのレベルは、保健省のアクセス目標値の達成に必要とされるレベルをはるかに下回り、その達成にはほど遠い。HFAは、今後3年間にわたるアクセスおよびサービスの大幅な増加で順調に進展すると期待しているが、1998年~2002年保険金局メンタルヘルス資金供給計画(Health Funding Authority Mental Health Funding Plan 1998-2002)からの現在のアクセスと計画アクセスに関する下記の数値が示すように、本期末にあってもまだその道のりは遠い。


子どもと青少年(0~19歳) 成人(20歳以上)
全国のアクセス目標値 3.0% 3.0%
推定される現在のアクセス 0.7% 1.5%
2000年/2001年についての
計画アクセス
1.6% 2.2%

5.1.3 年齢層別のサービスに対するニーズ

サービスに対するニーズは各年齢層で異なり、メンタルヘルス委員会は、様々な年齢層における精神疾患の傾向を調査した。年齢層によって、あらゆる種類の精神疾患について予想される有病率が異なり、異なる種類の疾患を経験し、合併疾患発症の程度が異なる。例えば、子どもにおいて見られる精神疾患は成人において見られるものと異なり、青少年は合併障害のレベルが最も高い。

それがどのようなグループであれ、ひとつのグループに必要とされるリソースは、そのグループに含まれる総人数と、そのグループ内でのメンタルヘルス障害を経験すると予想される人数によって来まる。4つの年齢層のそれぞれにおけるニュージーランド総人口に対する人口比率と、(利用可能な疫学研究に基づいた)治療を要するメンタルヘルス障害を経験すると予想される割合の両方を下記の表に示す。

メンタルヘルスサービス
対象
年齢(歳) ニュージーランド総人口
の割合
治療を要する疾患例
の割合
子ども 0-14 23.0% 14.2%
青少年 15-19 7.1% 11.9%
成人 20-64 58.1% 67.0%
老人 65 歳以上 65以上 11.8% 6.9%

100% 100%

これらの数値は、青少年が他のどの年齢層よりも精神疾患の影響を多く受けていることを明らかに示している。青少年は人口の7%でしかないが、治療を要する精神疾患を有する人のほぼ12%を占めている。

メンタルヘルスサービスのリソースは、各年齢層における精神疾患を有すると予想され、かつ治療が必要とされる推定人数、およびその年齢層内の人数に基づいて年齢層間で分配すべきである。下記の表は、年齢層、HFA地域、および民族によるニュージーランド人口の分析を示している。

年齢(歳)
HFA地域


北部 内陸部 中部 南部
0-9 マオリ (以下数字
記入略)




太平洋地域
の人々





その他




10-14 マオリ




太平洋地域
の人々





その他




15-19 マオリ




太平洋地域
の人々





その他




20-64 マオリ




太平洋地域
の人々





その他




65 + マオリ




太平洋地域
の人々





その他










5.1.4 地域ごとの革新的なソリューション

1つのサービス・モデルが全ての状況で最適となることはない。何が最善であるかは、地方におけるニーズと条件によって異なる。地方における資金供給およびサービス提供についての決定は、サービスのユーザーに考え得る最善の回復をもたらすように、最も効果的で、柔軟で、革新的で、創造的な方法で地方のニーズに応じることに基づいたものでなければならない。

メンタルヘルス委員会は、特定のサービス・モデルやいくつかの数値にこだわることに焦点が合わせられるのではなく、各地方においてメンタルヘルスサービスにアクセスする人々に考え得る最善の結果をもたらすために必要とされる改革に焦点が合わせられることに期待している。常によりよい方法が模索されなければならない。

メンタルヘルス委員会のリソース・ガイドラインは、地方における革新を阻害すべきではない。このガイドラインは、現行のサービス資金供給やサービス提供方法に沿ったサービス提供の地域モデルに基づいたものである。HFAの全国メンタルヘルス資金供給計画(National Mental Health Funding Plan)もこのモデルに基づいている。

一般開業医およびその他の一次医療サービスは、精神疾患を有する人々へのサービスを拡大しており、この傾向は高まると期待される。このことは、専門メンタルヘルスサービスとの連携のためや一次医療サービスのためのコンサルテーションや支援ためのリソース増加ガイドラインを通して本計画において認識されて、支持されている。

各地では、統合サービスの提供の様々なモデルが試されている。これらのモデルは、各モデルが回復にいかに優れた効果をもたらすかという確かな証拠に基づいて、将来の資金供給やサービス構成の決定がなされるように、複数のパイロット計画を通してテストを行って、評価する必要がある。

回復には、地方レベルのあらゆる医療サービスや、他の(医療以外の)コミュニティ・サービスとのより大規模な統合が要求される。よりよいメンタルヘルスは、メンタルヘルスサービス単独で達成することはできない。本章のリソース・ガイドラインの作成では、メンタルヘルスサービスの効果的な提供を支援するように、他の諸部門もその分担を果たすことが前提とされている。

地方人口の人数は、地方におけるサービスのニーズを決定する上での1つの要素にしか過ぎない。精神疾患の分布やメンタルヘルスサービスのニーズは、総人口の分布と必ずしも一致するとは限らない。例えば、ニュージーランドでは、重篤な精神疾患および/または重大な障害を有する人々は、他の土地よりも大都市で生活する傾向が高く、総合病院との連携にその地方で必要となるスタッフの人数はその地区における病院ベッド数に依存する。同様に、司法精神医学的サービスは、他の場所でその地区について提供することが可能である。その地区における過去のサービス・レベルも重要な要素である。

リソースの制約の中で、地方におけるニーズに応じるサービスの考え得る最善の組合せやモデルを作成するのは、HFA、サービス提供者、および消費者の責任である。

5.1.5 本計画におけるサービス・コンポーネントおよびリソース・ガイドライン

本章の以下の部分では、6カ月間に人口の3%にサービス提供を行うために必要なメンタルヘルスサービスの総合的リソース・ガイドラインをまとめた表と共に、サービス・コンポーネントの簡単な説明を提供する。最初に上述の4つの年齢層のそれぞれの特定サービスを説明して、次いで、年齢層特定ではない、地域的な専門サービスを説明する。

本計画でリソース・ガイドラインは、人口10万人あたりに求められるサービス提供として表され、この10万人は、ニュージーランド全人口と同じ年齢と民族の組合せであることが前提とされている。

5.2 成人へのサービス

5.2.1 急性発症または危機的状態の人々のためのサービス

この年齢層のためのサービスは、迅速な対応、評価、安定化、安全確保、および危害の危険性の低減に焦点が合わせられている。これらのサービスには、マオリの人々のニーズに効果的に対応する能力が備わっていなければならない。

危機チーム
緊急評価、安定化、治療、および他のサービスへの紹介を提供する1日24時間、週7日間の機動的かつ迅速な対応が可能な特別臨床サービス。危機チームは全ての年齢層にサービスを行う。
危機レスパイト
緊急入院サービスへの入院の代替手段としての、危機的状態にある人々のための、家または他のコミュニティを拠点としたサービス・オプション。
緊急入院サービス
安全な環境での24時間介護を必要とする重度の急性症状を有する人々のためのサービス。
集中入院サービス
短期間の集中介護および治療を必要とする重度の急性症状を有する人々のための病院サービス。

5.2.2 症状が重度または再発している、および短期的だが重大なメンタルヘルスの問題を抱えている人々へのサービス

新たに重度の疾患が診断された人々、重度の疾患が断続的に再発する人々、および周期的に重度の症状を呈する傾向にある進行中の疾患を有する人々へのサービス。これらの人々のニーズはかなり異なることから、コミュニティを拠点とした集学的チームが最も有効である。このコミュニティ・チームは、全ての年齢層のサービスのユーザーやその家族および拡大ファナウ(whanau:拡大家族)との関係を築いて、効果的に対応することができる必要がある。専門性の高い技能が要求される状況によっては、独立した専門チームが望ましい場合がある。しかし、より特化したチームと、混合チームによって提供される、より全人的アプローチおよびより継続性の高い介護の機会の間には、代償が存在する。現在、コミュニティ・サービスの利用において、マオリの人々の参加が乏しい状態であり、これらの専門サービスがこの問題に対処することが可能である。

またこのグループに含まれる人々は、急性疾患や危機的状態にある場合には5.2.1で説明したサービスにアクセスする必要がある。

A 地域レベルにおけるサービス

下記のサービスは、あらゆる場所で利用可能でなければならない。

中期および延長入院サービス
複合疾患および高い支援ニーズから24時間の治療および支援が求められる、高い障害支援ニーズを有する人々のための(コミュニティ・チーム・サービスの補助サービスとしての)病院サービス。
コミュニティ・チーム
様々な環境から働きかけて、評価、処置・治療的介入、介護調整、およびキーワーカー支援を提供する集学的臨床チーム。別途提供されていない場合、コミュニティ・チーム・サービスには以下についての特別サービスが含まれなければならない。
  • 初発の精神疾患患者への(進行性疾患の発現を抑えることを目的とした)早期介入
  • 関係を築くことが困難な人々への積極的な出張福祉サービスおよびフォローアップ活動
  • 専門メンタルヘルスサービスを利用してない精神疾患や健康問題を抱えた人々のための一次医療および総合病院との連携
  • 薬物およびアルコール中毒とメンタルヘルス問題が組み合わされた問題を抱えた人々

地方におけるコミュニティ・チームもまた、重度の不安障害、ボーダー型人格障害、および摂食障害を抱えた人々や「母子」などのための専門地域サービスについて地域センターとのつながりを有して、付託を行う。可能である場合には、独立したカウパパ・マオリ・サービスを含めた、マオリの人々のニーズを満たす適切なサービスが存在していなければならない。

新療法へのアクセス
新しい薬や心理療法が他の療法と比較してより大きな効果が期待されると検証されている場合、重篤な精神疾患を抱えた人々は、認知行動療法などのこれらの有効な治療法へのアクセスを有していなければならない。この一例が、新しい抗精神病薬へのアクセス性を高めるための特定の目的および目標値を掲げた、全国メンタルヘルス戦略(National Mental Health Strategy)において認識されている。これらの新薬は、副作用が少なく、人々の健康や生活のより大きな向上を可能にして、重度の精神疾患にかかる幅広い経済的・その他のコストを軽減する。新しい抗精神病薬は、臨床的に必要とする全ての人々に処方されるべきである。メンタルヘルス委員会は、「前進(Moving Forward)」の中で提示された新たな非定型抗精神病薬へのアクセスのための目標値を支持している。
早期介入サービス
進行性精神疾患を有する人々に対応する全てのサービスは、再発の防止や抑止を目的とするだけでなく、高い支援ニーズや障害の発現を減少させる、または防止することをも目的とした早期介入戦略を実践する必要がある。状況により、これらのサービスはコミュニティ・チームから切り離して提供することができる。これらのサービスの中のいくつかにはその利用に時間制限(例えば12カ月間)が存在するが、理想的には、症状の発現を予防して、コミュニティにおける充実した生活を維持して、障害を予防するために、集中的なインプット・レベルが必要とされる限り、これらのサービスは利用可能であるべきである。これらのサービスには、サービスのユーザー10~15人につき1人の臨床スタッフを確保すべきである。
一次医療サービスとの連携
一般開業医を含む一次医療サービスとのコンサルテーションおよび連携。何らかのサービスへのアクセスを望むメンタルヘルス・ニーズを抱えた人々の大多数は、一次医療サービスにアクセスする。メンタルヘルスサービスの拡大に伴い、一次医療サービス提供者に協力して、メンタルヘルス問題の検知や管理について支援することが、メンタルヘルスサービスの役割のひとつとなる。コンサルテーションおよび提携のサービスには、自殺の危険性の識別についての研修を含めた、一次医療サービス機関のスタッフの監督および研修の支援が含まれる。メンタルヘルス・コミュニティ・チームは、一次医療診療所内に相談所を設けて現場でのアドバイスやインプットの提供を行うことができる。
精神疾患と薬物およびアルコール中毒障害を抱えた人々へのサービス
精神疾患と薬物およびアルコール中毒障害を抱えた人々(最大でメンタルヘルスサービスのユーザーの60%)へのサービスおよび精神疾患を抱えた全ての人々の薬物やアルコールの使用の危険性と精神疾患への有害作用の可能性についての教育。

メンタルヘルスサービスを利用する薬物およびアルコール中毒障害を抱えた人々の人数の多さを踏まえて、全てのコミュニティ・メンタルヘルス・スタッフは、軽度から中等度の薬物およびアルコール中毒障害の症状をみきわめ、治療することができる必要がある。また、重度の薬物およびアルコール中毒障害を伴う精神疾患の専門知識を持つ専門スタッフがコミュニティ・メンタルヘルス・チーム内で活動を行って、最も重篤な患者を担当しなければならない。またこれらの専門スタッフは、他のメンタルヘルスサービスやアルコール乱用者および薬物乱用者へのサービスとのコンサルテーションや提携を提供する。一般メンタルヘルスサービス内でこうした専門知識を提供することは、独立した二重診断サービスを設置することよりも望ましい。

コミュニティ・チームは、コンサルテーションおよび連携を強力に行いながら、アルコール乱用者および薬物乱用者へのサービスとの非常によいつながりを維持して、両サービスにおける技能を継続的に発展させる必要がある。

マオリの人々は他の人々よりも頻繁に二重診断の問題を呈する21。二重診断サービスは、マオリの人々にとって有効なものでなければならず、カウパパ・マオリのアプローチを含んでいなければならない。

総合病院との連携
総合病院内のメンタルヘルス以外のサービスとのコンサルテーションおよび連携。

総合病院との連携に必要とされるリソースは、その地方総合病院内で提供されるサービスの範囲に依存する。調査によると、身体的疾患の治療を受けるために通院するかなりの人数の人々が潜在的な精神的問題をしばしば抱えている。総合病院との連携への投資は、不必要な治療の削減に大きな影響をもたらす可能性がある。連携サービスはまた、一般医療サービスを利用する精神疾患を抱えた人々が差別を受けることなく、身体的疾患に必要な治療を受けられることを保証するという役割を持つ必要がある。

B 地域専門サービス

コミュニティ・メンタルヘルスサービスは、チーム内からニーズに応じることや、地方や地域レベルの独立した専門サービスに人々をつなぎ合わせることによってニーズに応じることができる必要がある。サービスを地方で提供するのが最適であるのか、あるいは地域センターから提供するのが最適であるのかは、いくつかの要素に左右される。

サービスの需要が比較的高く、非常に特殊な技能が必要とされる場合は、地方専門チームが適切であることがある。一般コミュニティ・チーム内で提供することや、地方レベルの専門サービスとして提供することができるサービスの例としては、早期介入サービス、一次医療サービスとの連携サービス、および二重診断サービスが先に列挙された。

地方におけるサービスの需要が非常に低く、非常に特殊で、比較的に希にしか要求されない技能が必要である場合は、地域専門サービスが適切であることがある。これらのサービスが地域センター内のみに配置される場合、これらのサービスは他の地区への出張福祉サービスを提供しなければならない。地域レベルで提供されるのがより適切となることがあるサービスの例を以下に示す。

「母子」サービス
「母子」サービスは、産褥期精神疾患を発現した母親、重篤な出産後うつ病を患った母親、および既往の進行中精神疾患を有する母親の3つのグループについて求められる。(の人々へのサービスを含む)このグループに適切なサービスを提供するには、特別な専門知識が必要とされ、地方サービスにコンサルテーションおよび連携を提供しながら、地域レベルで提供することが可能である。サービスにはレスパイト・ケアのオプションを含められるべきである。リソース・ガイドラインには、各地域における専門サービスの提供が含まれている。
摂食障害サービス
摂食障害を抱えたほとんどの人々は、一般メンタルヘルスサービス内で治療を受けている。重度の問題を抱えた数少ない人々は、専門サービスへのアクセスを必要としており、これらのサービスは、地方サービスにコンサルテーションおよび連携を提供しながら、地域サービスとして提供されるべきである。リソース・ガイドラインには、各地域における専門サービスの提供が含まれている。収容入院リソースが含められて、病院入院からコミュニティ施設までのこのリソースを利用方法の様々なモデルが現在存在している。摂食障害を抱えた人々はその障害のために時として身体的疾患に問題があることから、これらの人々については安全を最優先考慮事項とすることが重要である。
障害となる人格障害を抱えた人々へのサービス
人格障害を抱えた人々、特に重度の、障害となる人格障害を抱えた人々は、メンタルヘルスサービスのヘビーユーザーであるにも関わらず、現在、適切なサービスを受けていない。地域サービスの目的は、評価、治療計画・調整、および何らかの専門心理療法を提供することにある。これは一般メンタルヘルスサービスを支援する専門リソースとすべきで、長期ユーザーを対象とすることはないとされている。
重度の不安障害を抱えた人々へのサービス
各メンタルヘルスサービス(アルコール乱用者および薬物乱用者へのサービスを含む)および一次医療サービスは、全ての不安障害を認識して、評価して、少なくとも初期治療を提供する能力を有さなければならない。しかし、重度の不安障害を抱えた人々は、一般メンタルヘルスサービス内では十分な支援を受けることがしばしばできず、メンタルヘルスサービスや一般の医療サービスの利用度がたいてい高い。地域サービスの目的は、評価、治療計画・調整、および何らかの短期的専門治療を提供することにある。
精神疾患および知的障害を抱えた人々へのサービス
精神疾患および重大な知的障害の両方を抱えた人々へのサービスは、高いレベルの支援を必要とする。このグループに適切なサービスを提供するには、特別な専門知識が必要とされ、このサービスは、小規模センターや、知的障害を抱えた人々へのサービスとのコンサルテーションおよび連携を行いながら、地域レベルで提供されるべきである。
行動異常および/または精神疾患を伴う頭部損傷または神経障害を抱えた人々へのサービス
このグループに適切なサービスを提供するには特別な専門知識が必要とされる。病院またはコミュニティにおける、何らかの特別な収容サービスも必要となる場合がある。どの程度のリソースが必要になるかは、他にどのような回復サービスや教育サービスや支援サービスが利用可能であるかによって左右される。専門サービスは、小規模センターとのコンサルテーションおよび連携を行いながら、地域レベルで提供されるべきである。怪我に起因する問題を抱えた人々へのサービスの資金供給および購入は事故補償社団法人(Accident Compensation Corporation (ACC))の責任である。このグループのための地方におけるサービス計画にはACCとの密接なコンサルテーションを必要とする。
精神疾患を抱えた重度聴覚障害者へのサービス
重度聴覚障害者は、独自の文化と精神疾患のパターンを有している。これらの人々は、特別なサービスと専門知識(通訳サービスを含む)を必要としており、これらは、地域サービスとして提供されるべきである。リソース・ガイドラインには、聴覚障害者コミュニティとメンタルヘルスサービスのためのコンサルテーションおよび連携サービス提供する、全国にフルタイム相当人数4.5人のメンタルヘルス専門家(通訳を伴う)の提供が含まれている。これらのスタッフは、主要な聴覚障害者コミュニティ(オークランドおよびクライストチャーチ)付近の聴覚障害者コミュニティ向けの一次医療施設やリソース・センターに配置すべきである。
精神疾患を抱えた難民へのサービス
難民へのメンタルヘルスサービスは、他のサービスと十分に統合した場合に最も効果的である。リソース・ガイドラインには、身体的健康、住居、雇用、教育、翻訳サービス、および移住サービスをも含む包括的サービスのメンタルヘルス・コンポーネントの提供が含まれる。このサービスは主として、他の難民サービスやメンタルヘルスサービスとのコンサルテーションおよび連携を提供する。これらのサービスは、多くの難民が暮らしている場所(例えば、オークランドおよびウェリングトン)に集中させるべきである。

5.2.3 重度のメンタルヘルスの問題と障害を抱え、障害に対する支援を必要とする人々へのサービス

このグループに属する人々は、上記(5.2.1および5.2.2)の一般的な評価・治療サービスの他に下記の支援サービスへのアクセスを必要としている。

ニーズ評価
各個人の回復支援に必要とされる住居、職業、収入、および一般支援の要件の包括的な評価および見直し。ニーズ評価は、包括的な統合コミュニティ・サービスの一環として提供することができる。
サービス調整
個々の支援サービスの調整および明らかとされた個々のニーズに必要とされるサービスやコミュニティ・リソースへのアクセス交渉。
家を拠点としたサービス
独り暮らしの個人や家族/ファナウ(whanau:拡大家族)や友人と家を共有している人々の支援から、コミュニティや病院内の厳重管理された収容サービス施設内で暮らす人々へのサービスまで、住居や日常生活の支援についての人々のニーズに応じる方法は数多く存在する。サービスの選択肢の範囲には、カウパパ・マオリ・サービスおよびアルコール問題および薬物問題を併発している人々のニーズに応じるサービスを含めた、マオリ特定の選択肢が含まれるべきである。

以下に4つのサービス内容を示すが、これらは住居および支援のニーズに応じるように構成された他のサービスを含めるように柔軟に解釈すべきである。下記のリソース・ガイドライン数値についても、各個人に最適な一連のケアを提供するために、これらのカテゴリーについて柔軟に解釈すべきである。時とともに、収容サービスから自宅で暮らす人々へのより多くのサービス提供への転換が行われる必要がある。

1. 独立して生活している人々への移動支援
家族と共や、独立して賃貸住宅または持ち家で生活する精神疾患を抱えた人々への移動支援サービス。これらのサービスは、自己管理や生活の場であるコミュニティへの参加・一体化のための技能を含めた、その人が十分に独立して生活できるように支援するように構成された回復のための支援・教育を提供する。
2. 収容サービス提供者が運営する施設で生活する人々への昼間支援
熟練した非臨床スタッフが提供する日々の支援、または非臨床スタッフが提供する24時間支援(スタッフは建物内で睡眠を取ることが許される)。
3. 収容サービス提供者が運営する施設で生活する人々へのフルタイム支援
臨床スタッフのインプットを受けての非臨床スタッフによる24時間体制、または臨床スタッフと非臨床スタッフの混合チームによる24時間集中体制。これらのサービスには、医薬品への24時間アクセス、行動管理戦略、臨床チームとの日々のコンサルテーション、および危害低減戦略が含まれる。
4. 収容集中長期支援
入居者は収容生活を無制限に送ることができる、厳しい規則で厳重管理された環境および行動障害への支援を提供するサービス。このサービスでは、臨床スタッフによる常時保護を含む24時間不眠スタッフの配置が提供される。
雇用および教育の支援
精神疾患を抱えた人々に教育、職業訓練、および労働の機会へのアクセスを提供して、これらの人々によるこれらの機会の活用を支援する、主流の労働力における継続的な有給雇用を第一目標としたサービス。

教育および雇用サービスの提供は、保健部門の責務ではない。しかし、これらのサービスへのアクセスおよび利用の支援は、よりよい健康上のアウトカムや回復の達成に不可欠であり、疾患および障害のレベルの軽減に直接つながる。

保健サービスは、精神疾患を抱えた人々が、雇用および教育サービスへのアクセスを確実に有するようにする必要がある。マオリの人々についてこのアクセスの問題に取り組むには特定の戦略が必要とされる。

HFAは、国の政策レベルと地方サービスのレベルの両方においてこれらのニーズに確実に応じるように、様々な部門間の協働を促進させなければならない。

回復のための支援および教育
戦略・技能に関するアドバイス、および以下についての情報を提供するサービス
  • メンタルヘルス
  • 精神疾患とその対処法
  • 危機に対する備えおよび予防
  • 健康なライフスタイルの維持
  • メンタルヘルスサービスおよびコミュニティ・リソースの有効活用
  • 差別への対抗
  • 権利およびセルフ・アドボカシー
  • コミュニケーションおよび問題解決
  • 文化教育およびマオリの人々への支援
出張福祉サービス(農村部)
臨床的コンサルテーション・連携のための要素、雇用・教育支援、および個人、その介護人、および一次医療サービスに回復のための支援・教育を提供する、農村地域の人々への移動サービス。
計画レスパイト
以下を提供する代替ケア・支援サービス
a) 家族および介護人の息抜き
b) 現在の生活環境が悪化原因であり、短期的な代替環境が予防になると思われる場合の再発防止
消費者相談サービスおよび消費者管理イニシアティブ
サービスの計画、開発、およびモニタリングについてや、スタッフの登用および研修についての消費者のアドバイス・インプット。これらのサービスは、ピアサポート・サービス、教育・研修サービス、および雇用イニシアティブを提供することも可能であり、回復に焦点を合わせながら、消費者のために消費者によって管理される。
家族相談サービスおよび家族管理イニシアティブ
家族のために家族によって管理されるピアサポート・サービス、および教育・研修サービス。

メンタルヘルス委員会は、「前進(Moving Forward)」の中で提示された消費者および家族の対応や参加を増加させるための国家目標および目標値を支持する。

5.2.4 アルコール乱用者および薬物乱用者へのサービス

これらは、一次診断が薬物および/またはアルコール依存症である人々へのサービスである。アルコールおよび薬物の問題はマリオ族において有病率が高く、したがって、カウパパ・マオリのアルコール乱用者および薬物乱用者へのサービスが特に必要とされる。

精神疾患とアルコール問題および薬物問題の二重診断を受けた人々は、メンタルヘルスサービスではなく、アルコール乱用者および薬物乱用者へのサービスを受けに来て、メンタルヘルスサービスには関わりたがらないことがある。アルコール乱用者および薬物乱用者へのサービスは、これらの人々の多重ニーズにも応じることが可能である必要がある。アルコール乱用者および薬物乱用者へのサービスのスタッフは、精神疾患の評価および管理の研修を受けている必要があり、メンタルヘルスサービスからのコンサルテーションおよび連携支援へのアクセスを有している必要がある。

コミュニティ評価および治療(非収容サービス)
個人および家族へのアルコール乱用および薬物乱用に関する時限付き専門カウンセリングおよびその他の治療サービス。サービスには以下のことが含まれる。
  • 包括的な評価および治療計画の作成
  • (個人およびグループへの)様々な時限付き治療介入の提供
  • 家を拠点とした解毒のための支援
  • 昼間プログラム
  • 必要に応じた他のサービスへの紹介
  • 他のサービス、特にメンタルヘルスサービス、矯正サービス、およびその他の健康・社会サービスとの連携およびコンサルテーション
  • アルコール乱用および薬物乱用に関する情報および危害低減戦略の提供
  • カウパパ・マオリに対処するサービス
メタドン治療
「ニュージーランドにおけるメタドン治療についての国内プロトコル(1996年)(National Protocol for Methadone Treatment in New Zealand (1996))」に沿って行われるオピオイド類依存症の人々への包括的サービス。これらのサービスでは、危害低減およびサービスのユーザーの健康状態の安定化に焦点が合わせられ、専門メタドン・クリニック、および依存状態が安定した人々向けの一般医メタドン・サービスが含まれる。

メンタルヘルス委員会は、「前進(Moving Forward)」の中で提示さているメタドン治療のための国家目標および目標値を支持する。

収容サービスおよび治療
滞在期間や厳重さが様々な、集中標的コミュニティ収容療法プログラム
  • 最長4週間の短期プログラム
  • 4~16週間の中期プログラム
  • 治療コミュニティ・モデルによる16週間以上の長期プログラム
  • 支援を受けながらの生活
  • レスパイト・サービス

いくつかのカウパパ・マオリ・プログラムが含まれなければならない。

解毒サービス
薬物および/またはアルコール依存症の人々が薬物離脱の過程を安全に乗り越えるように支援する厳重さが様々なサービス。サービスには以下が含まれる。
  • 家およびコミュニティでの解毒
    コミュニティ環境での解毒を支援する。サービスには、評価、必要とされる場合の医学的インプットの円滑化、支援、およびモニタリングが含まれる。
  • 社会的解毒
    監督・支援収容施設における解毒。サービスには、評価、医学的処置、必要に応じた薬物療法、補完療法を含む非医学的介入、監督、モニタリング、および支援が含まれる。
  • 医学的解毒
    解毒の急性身体的合併症またはその可能性が医学的に管理される入院医療施設における解毒。
  • 専門入院解毒
    複雑な薬物またはアルコール依存症や関連問題を抱えた人々専門の入院施設における解毒。

5.2.5 リソース・ガイドライン

成人人口(年齢20歳~64歳)の3%のニーズに応じる包括的なサービスの提供に必要であると考えられるリソースおよびサービスの概略を下記の表に示す。これらのガイドラインの詳細は付録IVに示す。

このガイドラインには、地域レベルのみにおいて利用可能となる場合があるいくつかの専門サービスの提供が含まれている。

サービス・コンポーネント 全人口10万人あたりのリソース・ガイドライン
入院サービス ベッド数または「ケア・パッケージ数」* 24.8
コミュニティを拠点とした昼間・収容サービス ベッド数または「ケア・パッケージ数」69.1
コミュニティを拠点としたメンタルヘルス・チーム フルタイム相当スタッフ(FTE)人数49.22 人
コミュニティ支援サービス FTE人数30.5人
消費者相談サービスおよび消費者管理イニシアティブ FTE人数3.4人
家族相談サービスおよび家族管理イニシアティブ FTE人数2.1人
新抗精神病薬へのアクセス 175.7人
アルコールおよび薬物解毒サービス ベッド数または「ケア・パッケージ数」2.8
アルコール乱用者および薬物乱用者収容療法サービス ベッド数または「ケア・パッケージ数」9.1
アルコール乱用者および薬物乱用者のコミュニティを拠点としたチーム FTE人数13.95 人
メタドン治療 140カ所

* これらのサービス・リソースの最も一般的な単位は「ベッド数」であるが、「ケア・パッケージ数」の提供への移行が必要とされる。

成人向けサービスに青少年や高齢者が含まれる場合、リソースはそれに応じて増加する必要がある。一般コミュニティ・メンタルヘルス・チームの人数は、地方や地域で提供される個別の専門サービスや、カウパパ・マオリ・サービスや、太平洋地域の人々向けサービスにおける人数分が削減されることになる。

5.3 青少年へのサービス

5.3.1 サービス・コンポーネント

子どもと青少年は、年齢に応じた環境において提供される、その発育ニーズに応じた専用の専門メンタルヘルスサービスを必要とする。これらのサービスにおいては、全国メンタルヘルス戦略および回復アプローチの指導原理が、適切な方法で盛り込まれる必要がある。若年層へのサービス提供は、以下の点において成人へのサービス提供と異なる。

  • 子どもまたは青少年の発育ニーズを考慮に入れなければならない
  • 子どもと青少年との効果的なコミュニケーションにはより多くの時間と様々な技能を要する
  • 多くの「成人」の障害の症状が15歳頃から確認されるようになるが、障害の範囲が異なる
  • うつ病などのいくつかの障害は、青少年においては現れ方が異なる
  • 家族およびファナウ(whanau:拡大家族)の枠組みでケアを提供する必要性が他の年齢層についてよりも高い
  • 保健サービス以外のサービスとのより高いレベルの調整・関与が要求される

子どもと青少年向け専用専門サービスである「子どもと青少年メンタルヘルスサービス(Child and Adolescent Mental Health Services)(CAMHS)」がニュージーランド全土で必要とされる。可能である場合、これらのサービスは、およそ0歳~14歳の年齢の子どもおよび家族向けサービスと、15歳~19歳の年齢向けの「青少年専門サービス(Youth Specialty Services)(YSS)」の2つの個別サービスとして提供されるべきである。これらのサービスの年齢範囲および成人向けサービスへのアクセス年齢範囲は、実際の年齢ではなく、個々のニーズ、発育段階、および発達の状況に応じて柔軟に解釈しなければならない。

15歳~19歳の年齢層は、精神疾患への予想有病率が最も高く、他の年齢層よりもサービスのニーズ・レベルが高い。このことは、この年齢層において有病率がより高い障害の種類と、アルコールおよびその他の薬物の使用・依存の影響の両方を反映している22

青少年向けサービスは子どもに提供されるサービスとほとんど同じであるが、異なる重点や技能が必要とされ、特定のアルコール乱用者および薬物乱用者へのサービスが含まれなければならない。青少年にとって利用可能かつ適切とするためにこれらのサービスは、低年齢層に提供されるサービスから物理的に切り離す必要がある場合がある。しかし、全ての子どもと青少年がその年齢や発育段階に応じた方法で支援を受けられるように、CAMHS、YSS、および成人向けサービスが緊密に連携することが不可欠である。サービス間の境界線は柔軟である必要がある。

青少年向けサービスの特定要件は以下の通りである。

  • 青年期の発育段階についての高い知識および青少年に対処する技能
  • アルコールおよび薬物の乱用・依存を識別して、治療する技能
  • 精神分裂症などのこの年齢層において発現し始めることが多い疾患を識別して、治療する技能
  • 自殺の危険のある青少年を識別して、管理する技能
  • 各サービスのユーザーに最も適切な支援・治療が確実に行われるようにする、子ども向けおよび成人向けメンタルヘルスサービスの両サービスや他の機関との効果的な連携
  • 家族/ファナウ(whanau:拡大家族)に効果的に対処する技能

マオリの人々は、他の人々と比較して人口統計データがかなり若く、CAMHSサービスの特定ニーズを有している。これらのサービスは、サービス内でのマオリの臨床スタッフの直接的な関与を通してや、他のマオリ向けサービスからの文化的支援へのアクセスによって、マオリの人々の文化的ニーズに応じるようにする必要がある。可能な場合には、子ども向けまたは青少年向けのカウパパ・マオリ・サービスを整備すべきである。

ニュージーランド国内の太平洋地域の人々も相対的に若い集団であり、特定の文化的ニーズを有している。太平洋地域の人々が多い地域においては、サービスはこのニーズを特に満たす必要があり、文化アドバイザーを採用して太平洋地域の人々の家族に対処にする。

CAMHSおよびYSSは、以下のサービス・コンポーネントを有していなければならない。

危機サービス
サービスは危機に効果的に対応することができなければならない。危機における初期接触および対応は、CAMHSおよびYSSからの24時間のコンサルテーションおよび連携支援を受けながら、成人向けサービスによって提供することができる。
急性入院
安全な環境および/または警備付き環境における24時間治療を必要とする、急性で重度の症状を抱えた子どもと青少年向けのサービス。入院施設は、成人用施設から分離されていて、子どもと青少年の入院評価・治療の特定の経験および技能を有する臨床医がスタッフとして配置されていなければならない。
警備入院
警備付き入院環境においてあらゆる範囲の精神医学サービスおよびメンタルヘルスサービスを提供する、罪を犯した青少年向けのサービス。
コミュニティ・チーム - 子どもおよび家族
子ども、青少年、およびその家族とファナウ(whanau:拡大家族)に専門的な評価、治療、および支援(アルコール乱用障害および薬物乱用障害についての支援を含む)を提供する集学的チーム。一次医療・小児医療サービスとや、教育機関や「児童青少年家族局(Children, Young Persons and their Families Service)(CYPFS)」などの子どもや青少年に対処するその他の機関、およびその他の保健機関とのコンサルテーションおよび連携が必要とされる。昼間プログラムが提供される場合がある。
レスパイト・サービス
治療ニーズによって通常の生活状況から離れて休息が求められる子どもと青少年向けの収容サービス。計画レスパイトおよび危機レスパイトの両方を含む。
コミュニティ昼間・収容サービス
社会的支援システムが著しく欠如した子どもと青少年、および/またはその状態によって徹底したモニタリング・監督が求められる子どもと青少年向けの専用昼間・収容プログラム。

5.3.2 子どもへのリソース・ガイドライン

0歳~14歳の子どもと青少年、およびその家族向けのメンタルヘルスサービスに利用可能であるべきリソースのガイドラインを下記の表に示す。上記のように、年齢の上限は柔軟に解釈しなければならない(詳細については付録IVを参照)。

サービス・コンポーネント 全人口10万人あたりのリソース・ガイドライン
入院サービス ベッド数または「ケア・パッケージ数」1.3
コミュニティを拠点とした昼間・収容サービス ベッド数または「ケア・パッケージ数」3.7
コミュニティを拠点とした昼間メンタルヘルス・チーム FTE人数 16.6人

各地域において、リソース・ガイドラインの一部は、その地方人口におけるマオリの割合に応じてカウパパ・マオリ・サービスに割り当てなければならない。同様に、その一部は太平洋地域の人々向けのサービスに割り当てなければならない。

5.3.3 青少年へのリソース・ガイドライン

年齢15歳~19歳の青少年へのメンタルヘルスサービスに利用可能であるべきリソースのガイドラインを下記の表に示す。繰り返しになるが、年齢制限は柔軟に解釈しなければならない(詳しくは付録IVを参照)。

サービス・コンポーネント 全人口10万人あたりのリソース・ガイドライン
入院サービス ベッド数または「ケア・パッケージ数」3.0
コミュニティを拠点とした昼間・収容サービス ベッド数または「ケア・パッケージ数」8.35
コミュニティを拠点としたメンタルヘルス・チーム FTE人数20.75人
コミュニティ支援サービス FTE人数2.2人
消費者および家族への助言および支援 FTE人数 0.4人
新しい抗精神病薬へのアクセス 31.2人
アルコールおよび薬物解毒サービス ベッド数または「ケア・パッケージ数」0.2
アルコール乱用者および薬物乱用者収容療法サービス ベッド数または「ケア・パッケージ数」0.9
アルコール乱用者および薬物乱用者のコミュニティを拠点としたチーム FTE人数0.9人
メタドン治療 10.0カ所

各地域において、リソース・ガイドラインの一部は、その地方人口におけるマオリの割合に応じてカウパパ・マオリ・サービスに割り当てなければならない。同様に、その一部は太平洋地域の人々向けのサービスに割り当てなければならない。

5.4 高齢者へのサービス

5.4.1 サービス・コンポーネント

精神疾患を抱えた高齢者(年齢65歳以上)もまた、高齢者が達している特定のライフステージを考慮に入れた方法でそのニーズを満たすサービスを必要とする。かなりの期間にわたって精神疾患を抱えている高齢者を含めた一部の高齢者にとって、そのメンタルヘルスサービスのニーズはより年齢の若い成人のニーズと同じものとなる。精神疾患の症状を示す他の高齢者は、加齢に伴う特定のニーズを有するようになり、高齢者精神医学の専門技術を持つ人々が評価を行う必要がある。特定個人のメンタルヘルスのニーズを専門サービスによって満たすか、あるいは成人向けメンタルヘルスサービスによって満たすかに関しては柔軟であるべきである。サービスは(年齢に関係なく)全ての成人を網羅する統合メンタルヘルスサービスによって提供することができる。

高齢者へのメンタルヘルスサービスは現在、いくつかのHFA地域ではメンタルヘルスサービスの責務とされているが、他のHFA地域ではそのようになっていない。高齢者へのサービスは、いくつかの病院・医療サービス(Hospital and Health Services)ではメンタルヘルスサービスの範囲内とされているが、他では高齢者サービスと組み合わされている。その割り振りは、購買内容およびサービスの提供が透明であり、高齢者の精神医学における大きな進歩が利用されていて、この分野に携わる他の機関との綿密なコンサルテーションが行われる限り、どのようなものでも構わない。

高齢者へのサービスには以下の中心的サービス・コンポーネントがある。

急性入院評価・治療
高齢者の精神疾患の時限付き評価および治療を提供する専門入院サービス。
収容サービス提供者が運営する施設における支援
障害となる進行中の精神疾患を抱えた高齢者への収容治療・支援サービス。このサービスは通常、メンタルヘルスサービスではなく、「高齢者障害支援サービス(Disability Support for Older People services)」によって提供される。
家庭外における昼間支援
障害となる進行中の精神疾患を抱えた高齢者への昼間治療・支援サービス。このサービスは、病院やコミュニティ環境において行われる。
コミュニティ・チーム
様々な環境から働きかけて、評価、処置・治療的介入、および介護の調整を提供する集学的臨床チーム。

5.4.2 リソース・ガイドライン

年齢65歳以上の人々へのサービスに利用可能であるべきリソースのガイドラインを下記の表に示す。上記のように、どのサービスがこれらのリソースを提供するかに関しては柔軟でなければならない。

サービス・コンポーネント 全人口10万人あたりのリソース・ガイドライン
入院サービス ベッド数または「ケア・パッケージ数」5.3
専門デイケア・サービス 4.0 カ所
コミュニティ・メンタルヘルス・チーム FTE人数 13.0人
コミュニティ支援サービス FTE人数 1.3人
消費者および家族への助言および支援 FTE人数 0.6人
新しい抗精神病薬へのアクセス 18.1人
アルコール乱用者および薬物乱用者のコミュニティを拠点としたチーム FTE人数1.4人

入院サービスのガイドラインには、専門高齢者メンタルヘルス病棟でのベッド数4台および一般成人急性メンタルヘルス病棟でのベッド数1.3台の提供が含まれる(詳細については、付録IVを参照)。

各地域において、リソース・ガイドラインの一部は、その地方人口におけるマオリの割合に応じてカウパパ・マオリ・サービスに割り当てなければならない。同様に、その一部は太平洋地域の人々向けのサービスに割り当てなければならない。

5.5 司法精神医学的サービス

5.5.1 サービス・コンポーネント

司法精神医学的サービスは、精神障害を抱えた、あるいは精神障害が疑われる以下の人々のニーズを満たす。

  • 刑事司法制度から紹介された人々および/または
  • 罪を犯す恐れのある、非常に暴力的または危険な行動を示し、専門評価および管理が求められる人々

多くのマオリについては、しばしば危機が発生してしまうまで精神疾患が発見されない。これは太平洋地域の人々についても当てはまる。このために、その多くは罪を犯してしまって初めてメンタルヘルスサービスの目にとまることから、現在この2つのグループは司法精神医学的サービスにおいてその割合が過剰に多くなっている。

警備入院サービス
警備付き入院環境において完全な精神医学サービスおよびメンタルヘルスサービスを提供するサービス。これらのサービスはマオリの人々にとって効果的でなければならない。これらのサービスは以下の警備レベルを網羅しなければならない。
  1. 急性入院(中等度の警備レベル)
  2. 最低警備レベル
  3. 長期滞在(最高警備レベル)

全てのレベルでは、回復のための教育および支援が提供されなければならない。

コミュニティを拠点とした回復のための収容支援および教育
警備入院サービスをもはや必要としないが、その危険管理および安全のニーズによって、コミュニティ環境におけるさらなる期間の集中監督が必要とされる人々のための専門支援宿泊施設および回復のための支援・教育サービス。
裁判所との連携
裁判官への助言、評価、報告、および提言の提供を行う司法精神医学的サービス・スタッフの出廷。
刑務所サービスおよび連携
受刑者への専門精神医学サービスおよび(看守200人あたりFTE 1人に基づいた)刑務所サービス・スタッフへのコンサルテーションおよび支援。
司法精神医学的コミュニティ・サービスおよび連携
司法精神医学的サービス・コミュニティによる、一般メンタルヘルスサービスとのコンサルテーションおよび連携を取り入れた、コミュニティにおける司法精神医学的クライアントのための評価、治療、およびフォローアップ、および一般メンタルヘルスサービスのための評価および助言。

司法精神医学的な措置入院サービスは、地方の一般メンタルヘルスサービスとの緊密な協力関係において地域レベルで提供されるべきである。農村地区の人々も、リソース・ガイドラインのレベルと同等の司法精神医学的サービスを確実に受けることができるようにしなければならない。このためには、一般メンタルヘルス・チームからのリソース調達による柔軟なアプローチをが求められることがある。このような場合には、地方サービスと司法精神医学的サービスとの間の役割および責任区分を明確にしておかなければならない。

行動障害および暴力の防止および管理についての司法精神医学的サービスの技能は、コンサルテーションおよび連携を通して、バックアップ・サービスとして一般成人メンタルヘルスサービスにも利用可能であるべきである。

刑務所治療および連携の役割が拡大しているが、それは、一部に刑務所システム内での精神疾患を抱えた人々の人数の明らかな増加によるものであり、また一部に刑務所内で精神疾患がより適切に見分けられるようになったことによるものである。司法精神医学的サービスは、刑務所内に常設診療室を提供するべきであり、重度のメンタルヘルス障害を経験している入院サービスを必要とする人々は、治療のために警備付き司法精神医学的サービスに移されるべきである。サービスのユーザーが刑務所に戻った際のフォローアップ治療は、必要とされる限り継続すべきである。司法精神医学的サービスには、行動障害を示す受刑者の治療および支援を支援するように刑務所スタッフ(医療スタッフ、看護士スタッフ、および心理学スタッフを含む)と協力する主要な連携の役割がある。

サービスのユーザーの一般メンタルヘルスサービスと司法精神医学的サービスとの間の移動に関しては、明確な基準が存在すべきである。司法精神医学的サービスのかつてのサービスのユーザーがさらなるメンタルヘルスサービスを必要とした場合など、自動的に司法精神医学的サービスのユーザーとして扱うべきではない。

5.5.2 リソース・ガイドライン

司法精神医学的サービスにおいて利用可能であるべきリソースのガイドラインを下記の表に示す。

サービス・コンポーネント 全人口10万人あたりのリソース・ガイドライン
入院サービス ベッド数または「ケア・パッケージ数」6.25
コミュニティを拠点とした収容サービス ベッド数または「ケア・パッケージ数」0.75
コミュニティ・メンタルヘルス・チーム FTE人数 2.17人

保健省は、司法精神医学的サービスのためのリソース・ガイドラインを作成中である。

5.6 精神疾患に対する予防

5.6.1 サービス・コンポーネント

全国メンタルヘルス戦略の第一目標である精神疾患の有病率の縮小に取り組むために新たな精神疾患予防サービスが提案されている。メンタルヘルス臨床医には、予防の取り組みを実施して、他のサービスやプログラムと連携して、自殺予防の取り組みを含めた、危険な状態にある集団や個人についての予防戦略を整備するように資金供給が行われることになる。メンタルヘルス委員会は、このサービスが専門メンタルヘルスサービスの広がりの部分として発展すると予想している。スタッフは、精神疾患の有無を評価する技能、後の精神疾患や障害の原因となる可能性がある要因を識別する技能、および包括的な予防介入を構成する技能を有してなければならない。

危険な状態にあると確認された集団のための精神疾患予防は、引き続き公衆衛生サービスの責務である全国民を対象としたメンタルヘルス促進と混同してはならない。

証拠に基づいた精神疾患予防プログラムは、疾患の予想有病率を低下させる可能性があり、その結果として中・長期的な治療サービスの需要を縮小させる。

精神疾患予防サービスは以下のことから必要とされる。

  • 精神疾患発現の危険因子および徴候ついての教育の提供、精神疾患予防、および自殺予防
  • 例えば以下のような予想疾患発生率のレベルがより高い分野における精神疾患予防の促進
  • 社会的に不利な立場にあり、家庭が崩壊状態にあり、問題行動を示し、かつ教育環境において落ちこぼれ状態にある子どもと青少年
  • 後に精神疾患を発症する危険が高いことが既知の心的外傷を経験する危険にある人々

これらのコンポーネントを提供するには、以下の機関と連携して、その取り組みの支援を行う指定メンタルヘルス専門スタッフが存在しなければならない。

  • 家族/ファナウ(whanau:拡大家族)および親を対象とした支援団体、および文化および教会系支援団体を含めたコミュニティの中で活動する非政府機関
  • 幼児期および就学前レベルを含めた教育サービス
  • マオリの人々、太平洋地域の人々、およびその他の民族を対象とした保健・社会サービス

サービスには、可能である場合にはマオリの人々のためのマオリによるサービスを含めた、マオリ特定のサービスが含まれていなければならない。

これらのサービスは新規サービスとなることから、プログラムの評価を重視することが必要となる。

5.6.2 リソース・ガイドライン

全ての年齢層についての新規精神疾患予防サービスで利用可能とされるべきリソースのガイドラインを下記の表に示す。予防サービスは、精神疾患を抱えた人々ではなく、危険な状態にあると確認された人々を対象とすることから、これらのガイドラインは、3%のアクセス目標値を目標としていない。

サービス・コンポーネント 年齢層別の全人口10万人あたりのリソース・ガイドライン
0-14 15-19 20-64
精神疾患予防サービス FTE 3.3人 FTE 2.8人 FTE 3.9人 FTE 10.0人

現時点では、HFAによって購入されている特定予防サービスは存在しない。

5.7 全ての年齢層へのリソース・ガイドラインの概要

全人口10万人あたりに必要とされる全リソースおよび1998年のニュージーランドの人口に必要とされる全リソースの概要を下記の表に示す。この表には、現在(1998年6月時点で)HFAによって資金供給されているリソースも示されている。


年齢層別の人口10万人あたりのリソース・ガイドライン 全国目標値 全国現状
0-14 15-19 20-64 65 +

入院 ベッド数または「ケア・パッケージ数」 1.3 3 31.05 5.3 40.65 1,535 1,424
収容 ベッド数または「ケア・パッケージ数」 3.7 8.35 69.85 4 85.9 3,243 2,576
コミュニティ・メンタルヘルス FTE人数 16.6 20.75 52.79 13.0 103.14 3,822 1,923
コミュニティ支援 FTE人数 0 2.2 30.5 1.3 34 1,284 388
助言サービスおよびイニシアティブ(消費者および家族) FTE人数 0 0.4 5.5 0.6 6.5 246 63
新たな抗精神 人数 0 31.2 175.7 18.1 225 8,500 3,547
病薬へのアクセス 人数 0 31.2 175.7 18.1 225 8,500 3,547
解毒 ベッド数または「ケア・パッケージ数」 0 0.2 2.8 0 3 113 96
収容アルコール乱用者および薬物乱用者 ベッド数または「ケア・パッケージ数」 0 0.9 9.1 0 10 378 376
コミュニティ・アルコール乱用者および薬物乱用者 FTE人数 0 0.9 13.95 1.4 16.25 614 262
メタドン治療 施設数 0 10 140 0 150 5,666 3,030
精神疾患予防 FTE人数 3.3 2.8 3.9 0 10 378 0

これらのリソース・ガイドラインの詳細については付録IVを参照されたい。

5.8 マオリの人々へのサービス

マオリは、条約によるパートナーとして、主流のサービスの全範囲とカウパパ・マオリ・サービスの両サービスへのアクセスを選択する権利を有している。これら2つのサービスは、共にマオリに適した方法で対応するものでなければならない。「前進(Moving Forward)」は、国の目標を次のように定めている。

2005年7月までにマオリの成人の50%が、主流サービスまたはカウパパ・マオリ・コミュニティ支援メンタルヘルスサービスの何れかを選択する。

サービスの利用およびその成果におけるマオリとマオリ以外の間にある格差に対処するために、この目標達成は高い優先順位に置く必要がある。

マオリの人々のサービスに必要とされる整備に関する完全な議論については、本計画の第6章を参照されたい。

前節の全てのリソース・ガイドラインには、カウパパ・マオリ・サービスおよび主流サービスを含むマオリの人々へのサービスの提供が含まれている。

5.9 太平洋地域の人々へのサービス

太平洋地域の人々は、(太平洋地域の人々の文化を認識・確認していなければならない)主流サービスの全範囲と、地方住民のニーズおよび人数を鑑みて実行可能である場合は、独立した太平洋地域の人々へのサービスとの両方にアクセスする必要がある。太平洋地域の人々の人口が多い地域では、太平洋地域の人々のメンタルヘルスサービスの整備および資金供給を優先しなければならない。

太平洋地域の人々のニーズおよびサービスについての詳細には第7章を参照されたい。

5.10 サービスを安全に提供するために

5.10.1 危害の危険性

全ての保健サービスは、そのサービスのユーザーおよび提供者が危害および虐待から確実に守られるようにしなければならないということは当然のことである。メンタルヘルス委員会は、メンタルヘルスサービスが次のような危害の危険性を低減させる能力を向上させる必要があると確認している。

  • 精神疾患を抱えた人々が自らに危害を加える危険性(例えば、自傷・自殺行動および自己無視)
  • 他の人々が精神疾患を抱えた人々に危害を加える危険性(例えば、身体的、性的、または精神的な虐待)
  • 精神疾患を抱えた人々が他の人々に危害を加える危険性

これらの危険性に対処するにあたり、サービスは、各個人の特定のニーズや状況に加えて、サービスの管理や提供における問題を考慮しなければならない。安全性は、個々のニーズが把握されて、それに応じる効果的なサービスが十分に存在することによって向上される。

5.10.2 安全なサービス管理

サービスには、虐待や危害が発生する危険性を特定して、低減させる正規の規定および手順を整備する注意義務がある。安全でないサービス環境の特徴には、スタッフの差別的行動、スタッフの士気の低さ、過密状態、不十分な支援、不適切に一緒に収容されているニーズの全く異なる人々、容認されない行動の不明瞭な境界線およびこのような行動に対する一貫性のない対応、および十分な研修を受けていないスタッフを含めることができる。

安全なサービスの鍵は、適した個人的特質を備えたスタッフをそろえて、それらのスタッフを支援することにある。これは、明確な採用・身元調査手順、スタッフが対立に対処できるように支援する継続的な研修、および職務を安全に遂行しないスタッフの勤務評定の明確なプロトコルや手続きによって達成される。

サービスは、(管理、事故報告、および診療評価による)サービス・レベルと(評価や治療計画の審査を通した)個別レベルの両レベルにおいてその危険性低減手順の成果を監視して評価する必要がある。

5.10.3 危害の危険性を減らすための医療の責務

個人が自分自身や他人に危害を加えたり、他人から危害を加えられる恐れは、精神疾患や、それによって作り出される生活状況の変化の結果として時に高まる。このことから、危害の危険性を低減させるように構成された手順は、臨床診療(および回復アプローチ)の不可欠部分であり、全ての人々の安全を最大限に高めるために、如何なる環境における如何なる臨床サービスの提供についても正規要件として明記されるべきである。

サービスは、メンタルヘルス臨床医が臨床における危険性の評価や管理を向上させるように指導して補助する基本的枠組みを特に提供するように、保健省が保険金局と協力して作成した「メンタルヘルスサービスにおける臨床的危険性の評価・管理のガイドライン(1998年)(Guidelines for clinical risk assessment and management in mental health services (1998))」を実践しなければならない。

コミュニティおよび病院サービスのガイドラインは以下の事柄を網羅する必要がある。

  • 危害の恐れの個別評価
    サービスには、全ての人々についての危害の危険性をメンタルヘルスサービスに初めて接触した際に評価するためと、その継続的治療の一環として定期的に評価するための明確なプロトコルが必要とされる。この評価は、過去および現在の危害行動に関する入手可能な全ての情報に基づいたものでなければならない。
  • 危害の危険性の低減のための個別計画
    評価において危害の危険性が確認された場合には、それに対処する方法が、それぞれの同意回復計画の中で明確に提示される必要がある。指定キーワーカーが、その個人に対処して、計画の構成、実行、および見直しを監督して、必要に応じて家族/ファナウ(whanau:拡大家族)およびその他がその作成および実施に関わる。
  • 退院計画および管理
    如何なる個人も、治療の概要を示す計画、および危害の危険性の低減方法に関する情報を含む回復戦略なしにサービスから離脱する(サービス間を移動する)ことがあってはならない。退院計画には、その個人とサービスが協力して作成した明確な再発防止および危機管理戦略が含められる。必要に応じて、家族/ファナウ(whanau:拡大家族)その他が関わらなければならない。
  • フォローアップおよび見直し
    高い支援ニーズを有すると評価された個人には、確実にそのニーズが満たされて、変化するニーズに対応しながら、危険性低減計画が目的通りに作用するようにする能動的なフォローアップが必要とされる。

5.10.4 人々の保護と個人情報の共有

情報は、個人の安全および回復のために、治療や支援の提供に携わる全ての人々によって共有される必要がある場合がある。このような公開は、1993年プライバシー保護法(Privacy Act 1993)および1994年保健情報プライバシー規約(Health Information Privacy Code 1994 )(特に規則11(2)(d))に適合したものである必要がある。

サービスには、「メンタルヘルス部門機関向けメンタルヘルス専門家および患者情報手引きノート(1997年)(Mental health professionals and patient information guidance notes for agencies in the mental health sector (1997))」を実践することが勧められる。これは個人情報の公開に関するメンタルヘルス専門家の責務の明確化を目的としたものである。