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2004年度サムハル社(スウェーデン)年次報告書

-社長の言葉-

労働社会における重要な戦力としての障害者

サムハルでの一年目は、国内をあちこち旅し、様々な職場を訪問することに非常に多くの時間を捧げた。 どこへ行っても、仕事に大いに貢献し、また業務の発展に強い関心を抱いている人々に出会えた。 同時にサムハルで進行しつつある改革について不満や不安を訴える従業員にも出会った。そして何よりも、 仕事を持つことの価値について、多くの従業員が一般的な生活の質と社会参加の機会という観点から語ってくれた。

サムハルの事業の大きな特徴は、人と活動の両方における多様性である。それはまたサムハルの使命を支える基盤の一つにもなっている。 サムハルの強みは、障害者の様々なニーズを満たすことによってこれまで獲得され、蓄積されてきた経験と専門知識を持っている所、 またそれによって障害者が労働社会に参加し、そこで成長していくための新たな条件を次々と創造している所にあるといえる。

私が約1年前にサムハルの社長に就任した際、当社が近年広範囲に渡る改革を実施してきたことについて、十分承知していた。 今、2004年度の業績をまとめるに当り、多くの点で当社が正しい道を歩んでいることが分かった。我々は経営目標の全てを本質的に達成し、 新組織は本領を発揮し始めている。我々は戦略目標を設定し、今後数年間の行動計画を作成した。

4つの目標のうち3つを達成

ここ数年間、当社のオーナーであるスウェーデン国家はサムハルに4つの目標を達成することを求めてきた。 これらの目標には、仕事数、移行者数、特別に優先されるグループからの採用、財政状況などが含まれている。 2004年初めに当社の業績は4つの点全てに関して悪かった。この傾向が秋に一転し、現在4つのうち3つの目標が達成されている。 更に病欠者の割合も減り続けている。

売上高は完全に計画通りというわけにはいかなかったが2004年度は利益を計上した。

目標を完全に達成できなかったのはサムハルから他の雇用機関への移行という1点である。 しかし、昨年度と比べれば移行は4.6%に増えた(昨年度は4.3%)。スウェーデン国家は最低5%を要求している。 我々は年度の初めに移行に向けた動機付けや教育の様々な企画を実施して、従業員が移行するための支援を優先的に行ってきた。 これらの手段が2005年度の移行数の増加に貢献するものと確信している。

労働市場の変化

現在100万人以上のスウェーデン人が労働社会から締め出されており、早期退職年金、疾病手当て、 失業手当或いは社会保障を受けながら暮らしている。適応性への要求が高まり、より速い作業速度、 より高度な教育、ソーシャルスキルその他の要素が求められるようになり、障害者及びその他の労働市場において弱い立場に ある人々にとって支障が増している。このような事情を考えれば、障害者の雇用に関する悲観的な前途を理解しやすいであろう。 しかし同時に、労働市場の多くの部門において、今後労働力に対するニーズが次第に高まっていくであろうことが伺える。 その結果、このような労働市場の状況が労働社会における戦力としての障害者に真に焦点を当てる機会をもたらすのは確実である。 これはサムハルが新たな事業を開発していく上で、重要かつ基本的な前提となる。

労働市場における障害者の可能性を最大限活用するには、個々の多様なニーズに合わせ、様々な計画をたてることが必要である。 この点において、サムハルは重要な役割を果たすことができる。職場のアクセシビリティーを確保し、 障害者向けに職場環境を改良していく必要があると同時に、障害者に対する雇用者の態度を改めさせ、 雇用者に障害者について指導していかなければならない。

製造及びサービス両部門における事業

サムハルは障害者に、専門的な商品の生産及びサービスの提供に関わる仕事と能力開発の機会を提供する。 これはサムハルがビジネスを選択する際、従業員の条件と能力開発のニーズに焦点を当てなければならないということを意味する。

製造業の仕事は、従来サムハルの事業の確固たる基盤とされてきた。 現在では半分以上がサービス部門における仕事で、この分野は今後更に成長し続けると見られているが、 製造業もサムハルにおいて引き続き重要な役割を果たしていくものと思われる

近年、サムハルではサービス部門が着実に発展してきており、現在ではサムハルの従業員は広い範囲のサービス業に従事している。 またもう一つの成長しつつある分野は統合事業で、約4000人の従業員が他の雇用機関へ派遣され働いている。 ただしこれらの派遣社員はサムハルの指導官の支援を受けている。更に、ベースユニットにおける開発事業も好調である。 ベースユニットは地域の様々な外部関係機関と活動していく上で重要な役割を果たしている。サムハルは、 今後も広く支持される、地域に根付いた組織であり続けることを望んでいる。

製造業部門では、大型製品の回復はほとんど見込めない。しかし、スウェーデンの国際的な製造会社が国内で 製品の製造を続けていこうとする傾向が垣間見られる。これらの企業では製品の開発と製造を密接に 結びつける必要があり、そこにサムハルが重要な下請け会社として入り込めるチャンスがあるのではないかと思われる。 更にもう一つの可能性として、他国の類似会社及び団体と商取引の協力関係を結ぶことが考えられる。 既に数年前から、ワーカビリティー・インターナショナルという組織内で、国際的なネットワークが機能している。

サムハルの25年間

サムハルは25年前、1980年1月に発足した。長年、サムハルの重要性は、早期退職をしたり、 職場からある意味で排除されたりして、サムハルで働くことになった多くの人々の間で特に注目されていた。 この25年間、サムハルは約10万人の障害者を雇用してきた。このうちおよそ2万5千人は、 サムハルでしばらく働いた後、別の雇用機関での仕事を見つけ、ステップアップに成功した。 これは個人の生活の質を高めることに貢献すると同時に、社会経済的に見ても大きな価値があった。

サムハルの使命はこの25年間本質的には変わっていない。しかし経済状態と商取引の可能性の両方の点において、 成功する見込みは完全に一変した。国際化の影響は非常に大きく、また職場の状況も変わった。この25年間で、 サムハルは障害者の雇用を通じた能力開発の分野における独自のノウハウを獲得した。我々は今、このノウハウを保持し、 これを元に未来を築き上げていかねばならない。

スウェーデンのリーディングカンパニー

サムハルの短期目標は収支のバランスの取れた財政と、オーナーが定めた目標の達成である。 財政については、2004年度は、数年にわたり社内で実施されてきた主要な活動計画とコスト削減政策の成果が見られた。 現在財政状態を改善させるため新たなビジネスの開発と創造に積極的に取り組んでいる。

今後数年間に向けての展望は、サムハルを障害者の雇用を通じた能力開発の分野における、 スウェーデンのリーディングカンパニーとすることである。2005年度の活動では、一時的な「能力開発のための職」 を活用する取り組みを続けていくことが重要となるであろう。このような方法により、将来障害者のための労働市場政策の イニシアティブを発揮するというサムハルの希望とその手腕とを示していきたいと考えている。

代表取締役社長
ビルイッタ・ベーリン