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JASSO PRESS

平成27年(2015 年)4月30日

報道関係者各位

大学等における障害のある学生への支援・配慮事例について

 独立行政法人日本学生支援機構では、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)が平成28年4月から施行されることに伴い、大学、短期大学及び高等専門学校(以下、大学等)において、障害のある学生の修学機会が確保されるよう、今後、大学等が合理的配慮の提供にあたって参考とするための支援・配慮事例を取りまとめましたので、公表いたします。
 障害のある学生の修学支援事例集としては、平成20 年度に支援の取組内容を示した「障害学生修学支援事例集」を発行しています。今回の事例集は、支援の申し出から対応に至るまでのプロセスを示したものとして初めてのものです。(大学等の規模、支援体制も記載)

Web サイトURL http://www.jasso.go.jp/tokubetsu_shien/2014jirei_top.html

○趣旨・背景

 我が国でも大学等に在籍する障害学生数が年々増加しており、特に発達障害、病弱・虚弱、精神障害の学生が急増しています。一方、平成26 年2月17 日には障害者権利条約が我が国において発効し、平成28年4月には障害者差別解消法の合理的配慮規定等が施行される予定で、国公立の大学等では障害者への差別的取扱いの禁止と合理的配慮の不提供の禁止が法的義務となり、私立の大学等では障害者への差別的取り扱いの禁止は法的義務、合理的配慮の不提供の禁止は努力義務となります。本機構では、こうした動向を踏まえ、障害のある学生からの支援の申し出に対して、適切な対応を行なうために参考となる取組事例の収集を目的とする調査を実施しました。
 今般御紹介する事例は、各大学等において実際に学生に配慮を行なった事例です。これらはそのまますべての大学等における「合理的配慮」の提供にあたるといった性格のものではありませんが、大学等において今後の具体的取組を検討する際の参考資料として提供するものです。

○紹介事例:188例

視覚障害 27例

聴覚・言語障害 42例

肢体不自由 38例

病弱・虚弱 22例

発達障害 35例

精神障害 24例

独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)
学生生活部 障害学生支援課/石塚、榎元
TEL: 03-5520-6176
FAX: 03-5520-6051
E-mail: tokubetsushien@jasso.go.jp URL: http://www.jasso.go.jp/


平成27年4月30日
学生生活部 障害学生支援課

障害のある学生への支援・配慮事例について

1.趣旨

 障害者差別解消法における合理的配慮規定等が平成28年4月に施行される。文部科学省「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第一次まとめ)」(平成24年12月21日)において、「大学等における合理的配慮」とは、「障害のある者が、他の者と平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、大学等が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある学生に対し、その状況に応じて、大学等において教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」であり、かつ「大学等に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」とされている。
 今回収集し、紹介する事例は、各大学等において実際に学生に配慮を行なった事例である。これらはそのまますべての大学等における「合理的配慮」となる性格のものではないが、大学等の規模、設備、組織体制や実施支援・配慮ならびに実際の支援に至るまでの手続きなどの面で多様な事例を提供している。大学等において、各校の状況に応じた具体的な取組を検討する際の参考資料として提供する。

2.障害種別ごとの紹介事例

 今回紹介する事例は、視覚障害27、聴覚・言語障害42、肢体不自由38、病弱・虚弱22、発達障害35、精神障害24 の計188 例。
 平成26年度収集した事例の中から、支援の申し出があってからの学生本人と大学等との協議、提供された支援のプロセスや申し出に対応できなかった際の理由がよくわかるものや、限られた資源や制約の中で工夫された支援の事例を紹介。

 視覚障害(盲)視覚障害(弱視)聴覚・言語障害(聾)聴覚・言語障害(難聴)聴覚・言語障害(言語のみ)聴覚・言語障害(重複)肢体不自由(上肢機能障害)肢体不自由下肢機能障害)肢体不自由(上下肢機能障害)肢体不自由(他の機能障害)病弱・虚弱発達障害(LD)発達障害(ADHD)発達障害(高機能自閉症等)精神障害小計
大学1213171224313153174101322160188
短大20060002002012015
高専00010001103041213
小計1413171924316163224151624 
274238223524

3.紹介の方法

JASSO Web サイト「障害学生修学支援情報」ページに掲載。

URL:http://www.jasso.go.jp/tokubetsu_shien/2014jirei_top.html

4. 内容

〔学校基本情報〕平成26年度(2014年度)障害のある学生修支援に関す実態調査回答を使用

  • 設置別学校種
  • 学校規模(全体の生数)
  • 障害学生数
  • 障害学生支援に対応する委員会
  • 支援担当部署機関
  • 当該障害種の学生へ実施支援

〔支援の申し出〕

  • 当該学生の障害種
  • 学科(専攻)年次(性別)
  • 申し出者(本人または以外)
  • 申し出内容

〔対応について〕

  • 申し出を受けた部署
  • 対応の手順
  • 学生との話し合い
  • 支援内容
  • 学外連携
  • 学内協議参加部署・機関
  • ニーズへの対応
  • 学生の反応、感想等
  • その他

5.紹介 にあたって にあたって にあたって の留意点

○個人情報保護

  • 学部学科、学内の部署、地名を付した機関等の名称は、一般的な名称に変更。
  • 障害や支援の内容、支援を受けた学生の特徴等から個人が特定されないよう、必要に応じて、事例の内容に影響が出ない範囲で名称等を変更。

6.本サイトの ポイント

 大学等が支援体制や対応手順あるいは実際の支援について検討するにあたって参照しやすいようにページを構成している。

○ 障害種 の詳細区分(例:視覚障害・盲) ごとの事例を、1つのページで全て閲覧することができる。

○ 入試受験上の配慮や授業支援といった場面ごとの索引によって、必要な支援・配慮に関する事例を探しやい。

○ 事例索引には、設置別学校種、学校規模、支援内容のわかるキーワドが記載されており、各大学等にとって条件の近い事例を探す指針なる。

○ 障害種(視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由、病弱・虚弱、発達障害、精神障害)ごとに事例をまめた印刷用PDFがダウンロードできる。

ページの動作

ページの動作

7.調査の概要

①調査対象 全国の大学等のうち、障害のある学生が在籍している学校(811校)

※平成25年度(2013年度)障害のある学生の修学支援に関する実態調査による。

②調査期間 平成26年7月1日~7月31日

③収集状況 回答校数 416校

聴覚・言語障害の例

事例 No.16

入学者選抜等(受験上の配慮を含む)

授業、試験、移動、施設改修等

進級、卒業、就職、学外実習等

学校基本情報(平成26年度(2014年度)大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査より)

私立大学

全体の学生数:1,000~1,999人

障害学生数:21人以上

対応する委員会:ない

支援担当部署・機関:学生課 医務室

聴覚・言語障害学生への実施支援:ノートテイク、パソコンテイク、ビデオ教材字幕付け・文字起こし、教室内座席配慮、FM補聴器/マイク使用、進路・就職指導、社会的スキル指導(対人関係、自己管理等)、出身校との連携、保護者との連携

(1)支援の申し出

聴覚・言語障害 聾

文化学 4年次、女

申し出者:本人、本人以外

申し出内容:入学前に特別支援学校の教員から入試について事前相談があり、キャンパスサポート受付に申し出があった。入学が決まった時点で具体的な支援について相談することとし、ノートテイカー制度の利用と配慮文書の作成の要望があった。

(2)対応について

申し出を受けた部署:入学試験の特別配慮については入試課が、入学後については学内支援受付で対応した。

対応の手順:入試については、大学入試センター試験の特別配慮を適用する等の対応を行なった。入学後の支援については学内支援チームとして学部長、担任、学生課、教務学事課、医務室が対応した。

学生との話し合い:引っ込み思案の学生であったが、自分の要求を相手に分かりやすく伝えることは自分の責任において行なうことを要求した。

支援内容:情報保障としてオリエンテーション、授業へのノートテイカー(パソコン、手書き)の配置、入学式等の式辞の原稿を配付した。また、科目担任へ配慮文書の配付を行なった。

学外連携:特別支援学校、医療機関(人工内耳の手術)

その他:半期に一度の面談を継続して実施している。

学内協議参加部署・機関:支援担当部署、所属学部・教員、保健管理センター等

(3)学生の反応、感想等

入学時は特別支援学校からの進学ということで、不慣れな点が多く大変であったが、その都度自分から相談に来てくれた。同じ聴覚障害の先輩と同じクラブに所属し、うまく人間関係を構築できたことは良かったと思う。4年次生になってからは、就職活動におけるグループディスカッションなど新たな壁にぶつかることで障害者採用枠の利用など自分で考えて行動するようになり、成長したと感じる。

肢体不自由の例

事例 No.9

授業、試験、移動、施設改修等

学外生活(通学・入寮等)

学校基本情報

国立大学

全体の学生数:5,000~9,999人

障害学生数:21人以上

対応する委員会:専門委員会

支援担当部署・機関:専門部署・機関

肢体不自由学生への実施支援:ガイドヘルプ、使用教室配慮、進路・就職指導、出身校との連携、保護者との連携、通学支援(自動車通学の許可、専用駐車場の確保等)

(1)支援の申し出

肢体不自由 下肢機能障害

医・歯学 3年次、男

申し出者:本人

申し出内容:入学時から3年次までに当該学生から以下のような申し出があった。

  • 自動車通学を認めてほしい、その際、障害者用駐車場を確保してほしい。
  • 雨天・積雪時に車椅子で乗り降りが可能なように駐車場に屋根を設置してほしい。
  • 車椅子でも受講できるよう、講義室を改修してほしい。
  • 体育実技授業に車椅子を利用して受講したい。
  • 更衣に時間を要するため体育実技授業に遅刻する場合があることを了解してほしい。
  • 実習時にスタンドアップ型電動車椅子を使用したい。
  • 車椅子で実習できるよう、実習室の実習台の高さを調節してほしい。
  • 体温調節が困難なため、教室の温度を調節してほしい。
  • 食堂と売店を車椅子で利用できるようスロープを設置してほしい。
  • 図書館内を車椅子で移動しやすくしてほしい。

(2)対応について

申し出を受けた部署:障害学生支援担当部署

対応の手順:合格発表後、当該学生、保護者、学部長、学科長、学務担当者、障害学生支援室員の話し合いの場を設けた。入学式前日から1週間は、毎日、当該学生に修学状況と支援ニーズを確認した。支援の申し出については、学務担当者を通じ、必要に応じて教員や関係機関に連絡を取り対応した。スタンドアップ型電動車椅子購入の際は、助成手続きについて、障害学生支援室員が、県身体障害者更生相談所、市役所福祉課に問い合わせ、自治体や病院での手続きに立ち会った。

学生との話し合い:入学当初は、自分から支援を申し出るということに遠慮や戸惑いが感じられたため、障害学生支援室員が必要な支援・配慮を申し出ることの重要性を説明した。

支援内容:自動車通学の許可、駐車場の確保及び屋根の設置、講義室の車椅子対応(大講義室では跳ね上げ式の椅子を取り除く、小講義室では入口から近い位置に指定席を設ける)、車椅子による体育実技の参加等(更衣場所の確保と更衣に時間がかかることによる遅刻の了解)、実習でのスタンドアップ型電動車椅子の使用、実習台の高さ調節、教室の温度調節、食堂・売店へのスロープ設置

学外連携:車椅子販売業者、県身体障害者更生相談所、市役所福祉課(電動車椅子購入の際)

その他:入学1年目は、状況の把握と情報交換のために、保護者との面談を定期的に行なった。

学内協議参加部署・機関:支援担当部署、所属学部・教員、保健管理センター等

ニーズへの対応:
できなかった内容:施設・設備
できなかった理由:食堂・売店及び図書館については施設改修の予定があったため

(3)学生の反応、感想等

  • 自分で必要な配慮を求められるようになった。
  • 支援学生の研修会や情報交換会に積極的に参加し、障害の有無に関わらず、互いに認め合い、学び合っている。

発達障害の例

事例 No.18

授業、試験、移動、施設改修等

学生相談、カウンセリング等

学校基本情報(平成26年度(2014年度)大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査より)

国立高専

全体の学生数:500~999人

障害学生数:6~10人

対応する委員会:専門委員会

支援担当部署・機関:専門部署・機関

発達障害学生への実施支援:実技・実習配慮、レポート作成指導、学習指導(履修方法、学習方法等)、進路・就職指導、社会的スキル指導(対人関係、自己管理等)、生活指導(食事、洗濯等)、発達障害者支援センター等との連携、保護者との連携、専門家によるカウンセリング

(1)支援の申し出

発達障害 ADHD(診断書有)

情報工学 4年次、男

申し出者:本人、本人以外

申し出内容:<入学時>健康調査に保護者からADHDへの配慮の申し出があった。一度に多くの課題や作業工程を与えず、全体の見通しを示し、メモを渡して段階的にやるべき事を指示してほしい。対人関係でトラブルはないため特別支援ではなくまずは現状を見守りたいと希望した。<3年時>多動傾向は落ち着いているが集中力を持続できず、学習やレポート提出を計画的に行なう事が苦手なため、予定を手帳に記入する事やレポート作成開始の声かけ、本人に合った勉強法についての指導等特別修学支援の要請があった。

(2)対応について

申し出を受けた部署:<入学時>保健室(健康調査)<3年時>本人が保健室に困っている事を打ち明けに来たのを機に、学生相談室において本人、保護者、カウンセラーとの面談を繰り返す過程で、特別修学支援を希望する意思表示があり、学生相談室長が窓口となり対応した。

対応の手順:<入学時>入学前に副校長と関係職員が保護者と面談し本人の特性や要望を確認した。<3年時>障害学生支援委員会において特別支援が必要と判断され、支援チーム結成となり、当該学生のクラスの全教科担当教員へ支援依頼文書を配付した。

支援内容:<3年時>支援方針、支援計画に基づき、手帳を活用したスケジュール管理、睡眠記録による安定した生活習慣獲得の支援、専攻科学生をチューターとしレポート作成等の学習支援を依頼。カウンセラーによるカウンセリング。

学外連携:検討中

学内協議参加部署・機関:委員会、支援担当部署、所属学部・教員、保健管理センター等

(3)学生の反応、感想等

進級、就職に向けての課題は多い現状ではあるが、支援を受け、話を聞いてもらう事で気持ちの落ち込みは改善していると本人は話し、前向きとなっている。入学前から発達障害に対する保護者の理解、受容が十分されていたため、信頼関係を良好に築く事ができている。


出典:独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO).大学等における障害のある学生への支援・配慮事例について.JASSO PRESS.2015.4.30,
http://www.jasso.go.jp/tokubetsu_shien/documents/2014jirei_pless.pdf
(参照 2015-05-20)