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国連障害者権利委員会への第1回代替報告

イタリア障害フォーラム(FID)
2016年1月18日提出

(日本障害フォーラム(JDF)仮訳・抄)

目次

序論

執筆者について

手法に関する注釈

優先事項のリスト

第1条~4条 一般条項(第1条‐目的、第2条‐定義、第3条‐一般原則、第4条‐一般的義務)

第5条‐平等及び無差別

第6条‐障害のある女子

第7条‐障害のある児童

第8条‐意識の向上

第9条‐施設及びサービス等の利用の容易さ

第10条‐生命に対する権利

第11条‐危険な状況及び人道上の緊急事態

第12条‐法律の前にひとしく認められる権利

第13条‐司法手続の利用の機会

第14条‐身体の自由及び安全、第15条‐拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由、第16条‐搾取、暴力及び虐待からの自由、第17条‐個人をそのままの状態で保護すること

第18条‐移動の自由及び国籍についての権利

第19条‐自立した生活及び地域社会への包容

第20条‐個人の移動を容易にすること

第21条‐表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会

第22条‐プライバシーの尊重

第23条‐家庭及び家族の尊重

第24条‐教育

第25条‐健康

第26条‐ハビリテーション(適応のための技能の習得)及びリハビリテーション

第27条‐労働及び雇用

第28条‐相当な生活水準及び社会的な保障

第29条‐政治及び公的活動への参加

第30条‐文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加

第31条‐統計及び資料の収集

第32条‐国際協力

第33条‐国内における実施及び監視

情報コラム 一覧(略)

序論

イタリア障害フォーラム(FID)は、人権擁護活動という幅広い文脈の中で、我々を鼓舞する国連障害者権利条約(以下、「権利条約」)に定められた原則に根ざした障害のある人の権利を促進するための政策と計画の適用を監視する責任を久しく負ってきた。

イタリアは権利条約の採択により、長年の念願であった人権システムに障害を含めるプロセスに着手したが、これまで収集されてきた実践例とエビデンスはいずれも、この新たなアプローチの根底を成す文化の変革が、わが国において今なおそれほど確固たるものでも包括的なものでもないことを示している。障害はいまだに政治課題として顧みられることのない問題である。また、アクセシビリティ、有用性及びユニバーサルデザインの原則そのものを考慮しない医学的アプローチが蔓延し続けている。

新たな障害モデルが完全に受け入れられるまでにかなり時間がかかるのは間違いないことを認識し、我々は障害のある人と障害者団体が、議論と意思決定のプロセスに効果的に参加することによってのみ、権利条約の原則を実現することが可能だと確信している。本書は、国連障害者権利条約に関するイタリア政府の報告の検討プロセスへの、市民社会による明確かつ積極的な参加表明となることを意図している。したがって我々は、評価に重要と我々が考える特定のテーマに関する一定の見解を、たとえ2013年1月21日に障害者権利委員会に提出された政府の報告1)にそのテーマが記載されていなくても、純粋に協力の精神をもって送付することが、理解されるよう望んでいる。なぜなら我々は、障害を人権促進政策の分析と評価のあらゆる側面に含めると同時に、いくつかの重要な分野においては、より深い分析の対象とするべきだと提案したいからである。さらに、各パラグラフの最後に記載した勧告は、委員会が我が国に対して条約実施を促す際に呼びかけてほしい内容を強調することを目的としている。

本代替報告の発表により、イタリア障害フォーラム(FID)は各機関に対し、障害のある人の権利をその政治課題及び計画の中心に位置付けることを強く求める。社会政策へのさまざまな介入を調整し、組織化することが可能な機関がなければ、また、適切な活動と資源による支えがなければ、これらの権利の享受が脅かされるからである。

執筆者について

イタリア障害フォーラム(Forum Italiano sulla Disabilita-FID)は、イタリアの非営利障害者団体で、ヨーロッパ障害フォーラム(EDF)の正会員であり、イタリアの障害のある人の利益を代表している。FIDは、障害のある人とその家族の全国的な組織のみで構成されている。その目的は、障害のある人の人権の認識、促進及び保護と、無差別及び平等な機会のために闘うことである。設立以来FIDは、EDFが実施するすべてのイニシアティブと活動に参加してきた。ここ数年間でFIDは、特定の国連委員会に対し、イタリアの普遍的定期審査(UPR)に関する勧告案を、また、経済的、社会的及び文化的権利委員会(CESCR)に対し、第5回イタリア定期報告2)に関連する事項リストについての提案を、いずれも書面で発表し、提出してきた。

FIDの会員:

ADV-盲人協会

AICE-イタリアてんかん協会

AIPD-イタリアダウン症協会

AISM-イタリア多発性硬化症協会

ANGLAT-全国障害者交通法協会

ANMIC-全国四肢切断障害者協会

ANMIL-全国身体障害労働者協会

APICI-地方障害者・高齢者協会

ARPA-精神病・自閉症研究協会

ASBI-イタリア二分脊椎協会

DPI イタリア-障害者インターナショナル・イタリア

ENS-全国ろう者協会

FIADDA-イタリアろう・難聴者家族協会

FISH-イタリア障害克服連盟3)

UICI-イタリア全盲・弱視者連合

UILDM-イタリア筋ジストロフィー闘病者連合

UNMS-全国四肢切断者サービス連合

本書は、ルイーザ・ボシシオ・ファッツィ、シモネッタ・カポビアンコ、ロドルフォ・カッターニ、パトリツィア・ツェーニャ、ジャンピエロ・グリッフォ及びドナータ・ヴィヴァンティから成る権利条約特別作業グループによって作成された。

本報告は、FIDがそのネットワークを通じて促進し、調整を行った協議プロセスの成果である。書面による提案やコメントを寄せてくれた組織は以下の通り。

ADV-盲人協会

AIPD-イタリアダウン症協会

ANFFAS-全国知的障害者家族協会

ANMIC-全国四肢切断障害者協会

ANS-全国弱視者協会、ロンバルディ州支部

CBMイタリア

DPI イタリア-障害者インターナショナル・イタリア

ENILイタリア-ヨーロッパ自立生活ネットワーク

ENS-全国ろう者協会

FISH-イタリア障害克服連盟

LEDHA-障害者権利同盟

UICI-イタリア全盲・弱視者連合

注:本代替報告は、労働社会政策省の障害のある人の状況に対する国の監視委員会のウェブサイトで公開され、2012年11月下旬に人権に関する省間委員会(CIDU)によって障害者権利委員会に送付された、イタリア語版政府報告(http://www.osservatoriodisabilita.it/images/documenti/TREATY_DEF_Italia.pdfで入手可能)の文章を基に作成された。

手法に関する注釈

本報告は、イタリア障害フォーラムが2016年1月にイタリア語で発表した報告の要約版である。要約版では、状況及び現象論的側面の分析が短縮されている。この背景には、イタリア語版が各機関のステークホルダーを対象としており、彼らが組織に関する見解や提案を得られるようにしたという理由があった。

また、イタリア語版は、はるかに広範な、この分野に従事していない人も含めた一般の人をも対象としており、このため一般的な枠組みや関連事象の詳細な記述、より詳しい情報を得るための参考文献の提供も重要であった。

一方、英語版は、おもに国連障害者権利委員会の委員を対象としており、国連委員会の指示に従い、短縮されている。とはいえ、イタリアの制度の長所と短所はすべて述べられている。

執筆者連絡先

Forum Italiano sulla Disabilita (FID) - Italian Disability Forum Via Borgognona 38 - 00187 ROMA Italy

Secretariat(事務局)-International Relations Office(国際関係室):

電話番号 (+39)06/69988375-388

E-Mail: fid.presidenza@gmail.com

Facebook:https://www.facebook.com/forumitalianodisabilita

Web: https://www.uiciechi.it/AttivitaInternazionali/fid.asp

優先事項のリスト

障害者団体は障害者権利委員会に対し、今後12ヶ月以内の適用をイタリアに求める勧告として、以下の優先事項を検討することを強く求める。

1. 合理的配慮の定義をイタリアの国及び州の法律に含め、その拒否が障害に基づく差別の一形態であることを認める。

(権利条約第1~4条に関する14ページ、第5条に関する18ページを参照)

イタリアの法律には合理的配慮への明確な言及はあるが定義はなく、その実施は利用可能な資源によって左右される。さらに、法律99/2013は雇用分野に関する言及のみで、権利条約の要件を遵守した他の生活分野における合理的配慮の提供については述べていない。イタリアの法律では合理的配慮の拒否を障害に基づく差別と認めていない。この定義の欠如は、障害のある人を含むすべての分野において自立した立法権を持つ州の法的枠組みでも認められる。

2. 法案2444ACに記されているように、学校改革法107/2015に学校職員のスキル向上と支援教員の特別な役割の確立を含める。

(権利条約第24条に関する62ページを参照)

障害のあるすべての児童・生徒の普通学校と教育支援策へのアクセスを確保する法的枠組みにもかかわらず、障害のある生徒のインクルージョンにかかわる学校職員の資格認定と、その結果としての指導の質は不十分である。障害のある人は一般の人に比べて教育水準が低い。障害者団体は、学校職員の資格認定と支援教員に対する別個の教育課程により、障害のある生徒の特別な教育ニーズ(SEN)をすべて満たし、教師が一時的な代替手段として支援を選択することを防止できるように、障害のある児童・生徒のためのインクルーシブな教育の質を向上させる法案(2444AC)を作成した。法案2444ACは、障害のある生徒のためのインクルーシブな教育における学校職員の能力向上全般に深く関連があるにもかかわらず、採択されておらず、改革法107/2015にも十分に盛り込まれていない。

以下の優先事項は、権利条約の条文の順番に従って記載されており、重要性の高い順ではない。

3. 権利条約に従った障害の共通の定義を決定する。

(権利条約第1~4条に関する14ページを参照)

イタリアでは国の法律全般において、障害、障害のある人、高度な支援ニーズのある人の統一された定義を示しておらず、また、国及び州の法律における〔障害のある人を〕重症、「非自立者」とする考え方は、権利条約の「より多くの支援を必要とする」4)という概念とは対照的な、否定的な視点を暗に示している。これは、医療及び社会政策の定義と実施に関して、全国で認められる大きな地域格差の原因となっている。

4. 障害のあるすべての人による、障害者団体を通じた積極的かつ組織的な参加を確保する。

(権利条約第1~4条に関する14ページを参照)

年2回の障害行動計画(PAB)の実施と障害者団体のエンパワメント、権利条約の実施並びに政府のあらゆるレベルにおける障害のある人に関する法律、政策、活動の考案、実施及び監視への参加を支援することには、これまで一切資金が割り当てられてこなかった。障害者団体のリーダーは、通常、制度的イニシアティブに関する討議への参加は要請されるが、これは慣例ではない。障害者団体と政策立案者との間の組織的対話はなく、あらゆる生活面における障害のある人に関する法律や政策の決定すべてに障害者団体を関与させる義務もない。

5. 障害者団体の積極的な関与を伴う、全機関及び一般の人に対する組織的な啓発活動を導入する。

(権利条約第8条に関する34ページを参照)

イタリアでは権利条約に関する具体的な啓発活動は行われていない。これまで実施された数少ない啓発キャンペーンは、権利条約の権利に根ざしたアプローチを、メディアや公務員、民間企業、労働組合、平等推進団体やオンブズパーソン、一般市民に啓発するには不十分であり、効果的ではなかった。実際、障害のある人に対する誹謗中傷キャンペーンは、「非生産的な者」を支援する金の無駄使いに対する緊縮政策として市民に課せられた財務制限と強く結びついていた。障害の複雑性はイタリアではあまり知られていない。一般の人に対する啓発キャンペーンへの障害者団体の積極的な参加を支援する組織的な活動は一切ない。

6. アクセシビリティ(環境、輸送機関、ウェブ、TV及びコミュニケーション)に関する法律とその適用の格差を軽減し、デザイン・フォー・オールの原則に関する研修を、すべてのアクセシビリティ専門家の一般教育課程に含める。

(権利条約第9条に関する36ページを参照)

イタリアにはアクセシビリティ(環境、輸送機関、ウェブ及びTV)に関する優れた法律があるが、それは多くの場合軽視されており、その適用や提供されるサービスの質に関するいかなるデータも提供されない。アクセシビリティの専門家に対する「デザイン・フォー・オール」の基準に関する研修は一般教育課程に含まれておらず、国家当局による十分な監視も進められていない。

7. イタリアの領土に入国する移民と難民の保護活動に障害問題を含め、〔障害のある移民や難民の〕人数と状況に関するデータを収集する。

(権利条約第11条に関する41ページを参照)

自然災害及び人災時の、さらには、最近の戦地及びテロ地域からの難民を含む移民のイタリア経由でのヨーロッパ大量移住に対する通常の介入計画に、障害のある人を含めるための特別な政策は一切採用されていない。障害のある人、障害のある女性と子ども、保護者のいない障害のある未成年者の数、障害の種類と提供された解決策に関する情報はない。また、政府及びNGOによる障害のある難民と移民への支援方略に関する情報もない。イタリアにおける難民・移民センターについては、そのアクセシビリティや障害のある難民や移民に提供される合理的配慮、子どもを含むPTSDの人への心理的サポートの提供に関する情報はない。

8. 禁治産宣告及び資格剥奪(後見人制度)に関する法規定を廃止し、管理支援制度という現行の法制度を改正し、イタリアの法律において意思決定への支援を規定する。

(権利条約第12条に関する42ページを参照)

イタリアでは、法律6/2004により、行為能力が限られている/損なわれている人のための管理支援者の制度を導入した。しかし同時に、全面的あるいは部分的な心神喪失が個人に認められることを前提とする禁治産宣告及び資格剥奪という法制度が、今も実施されている。禁治産宣告/資格剥奪という法制度も現行の管理支援制度も、本人の利益を最優先した保護という考え方に基づいており、障害のあるすべての人の完全な法的能力を例外なく認めることと本人の意思を尊重した意思決定の支援の提供を定めた第12条とは対照的である。

9. 障害のあるすべての人が、事情を知らされた上での自由な同意を表明できるようにする。

(権利条約第12条に関する42ページ、第14条に関する46ページ、第22条に関する56ページ、第25条に関する68ページを参照)

イタリアでは禁治産宣告制度によって宣告を受けた人が投票権を自動的に奪われることはないが、それ以外の権利と選択、決定及び自己決定の権限はすべて剥奪される。強制治療(TSO)に送られた人は同意なく治療を受けさせられる。法的能力を剥奪された、あるいは、判断能力がないと見なされた障害のある人は、個人情報の扱いに同意する資格がない。イタリアの法律は医療介入を施す前にインフォームドコンセントを得る義務を定めている。にもかかわらず、行動規範(2006)では、健全な精神状態の人のみがインフォームドコンセントを与えることを認められている。

10. 障害に基づく強制治療及び強制収容を容認している国の法律を廃止する。

(権利条約第14条に関する46ページを参照)

強制治療(TSO)及び強制入院は、本人の意思に反することであっても法律で許可されている。この法律(833/78)は、医師によって処方された必要な治療を拒否する人や、自分自身または他者にとって危険であると判断された人に対し、TSOを施すことができると定めている。TSOは市長によって決定され、必要であれば警察によって実施される。TSOに送られた人は、本人の意思に反して医療施設や一般病院の精神病棟に収容される可能性がある。

11. 最低社会援助基準(LIVEAS)の制定と導入を義務付け、国の最低援助基準に、障害のあるすべての人の自立生活スキームへの均一なアクセスを含める。

(権利条約第19条に関する49ページを参照)

LIVEASは、すべての国民に保証されるべき手続きとサービスの最低基準で、一般税で賄われる。LIVEASの概念は2000年以降法制度に導入されたが、LIVEASは一度も定義されておらず、実施もされていない。LIVEASの実施-決定の失敗により、全国の障害のある人が支援やサービス、特に自立生活スキームへの平等なアクセスを得られないなど、多数の影響が出ている。

12. 脱施設化のプロセスを実施し、新たな施設の建設を中止する。

(権利条約第19条に関する49ページを参照)

イタリアには、家族のサポートがない障害のある成人を隔離施設に収容するという確固たる伝統がある。施設収容に代わる解決策(小規模グループホーム、援助付き住宅、在宅支援など)は今なお非常に少なく、おもに軽度の障害のある人に限られている。分離型居住サービスを続ける理由として、制度面及び経済面が引き合いに出される。一部の州では、州の政策で障害のある人の施設収容を支持する解決策を示しており、イタリアは国土のあらゆる地域で、より多くの支援を必要としている障害のある人に「他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと」を保証する、均一な方法による適切な支援を、いまだに提供していない。

13. 自宅で生活している障害のある子どもや高度な支援ニーズのある大人の家族に、支援を提供する。

(権利条約第6条に関する19ページ、第7条に関する26ページ、第23条に関する58ページを参照)

子どもや高度な支援ニーズのある大人を含む障害のある人向けの質のよいサービスや支援が不足しているため、多くの場合、障害のある身内のケアを家族が独力ですることになる。行動計画実施に対する国の児童青年監視委員会によるモニタリング(L 451/97参照)からは、障害のある子どもに提供される援助やその家族の支援のための組織的な方策の不足とケアの質水準に関して、州や地域による過大な格差が明らかになった。支援の欠如と障害のある身内のケアを家族に任せるという不適切な委託とが、介護者(おもに障害のある人の母親)の仕事と社会生活に影響を与えており、家族全体の疎外と貧困につながっている。

14. 障害のある学生が課外の職業訓練活動に最大限参加できるようにする方策を、学校改革法107/2015に盛り込む。

(権利条約第24条に関する62ページを参照)

障害のある学生、おもに知的障害のある学生による、授業内及び課外職業訓練プログラムの利用を強化する。

15. 学校改革法107/2015に定められている学校の改修に、アクセシビリティ要件を含める。

(権利条約第24条に関する62ページを参照)

学校のアクセシビリティは明らかに改善したとはいえ、すべての学校施設における建築上の障壁の撤廃は、州によって著しい格差はあるものの、まだ校舎の3分の1について実施されなければならない。

16. プライマリー・ヘルスケア、早期診断及び総合的なサービスとハビリテーション・リハビリテーションプログラムへの障害のある人のアクセスを確保するための新たな最低医療基準(LEA)を導入する。

(権利条約第25条に関する68ページ、第26条に関する70ページを参照)

最低医療基準(LEA)は、医療サービス機関がすべての国民に保証しなければならない手続きとサービスで、料金は無料または小額の負担金を現金(チケット)で支払う。これは一般税で賄われ、2001年に制定され、2002年2月23日に発効した。2012年にこのLEAを全面的に導入していたのは10州のみであった。合理的配慮はLEAに定められていない。このため、州や町、さらには同じ町でも病院によって医療へのアクセスにおける不平等が生まれている。大多数の障害のある人の早期診断へのアクセスは、現行の国の最低医療基準(LEA)には盛り込まれていない。さらに、医療サービスの運営に関して、あまりに多くの責任が州に委譲されたことから、全国で早期診断へのアクセスに不平等が生じている。これらすべてが、自閉スペクトラム症(ASD)の人を含む障害のある人に、全国における早期診断、早期介入とハビリテーションサービスへの差別のない均一なアクセスの欠如をもたらしている。

17. 障害のある女性と高度な支援ニーズを持つ人に特に注目し、障害のある人の雇用率を高める効率的な策を講じる。

(権利条約第27条に関する72ページを参照)

イタリアでは一般労働市場の雇用率が88%であるのに対して、障害のある人の雇用率は20%未満である。障害のある人の雇用を支援する国家政策はなく、その理由は、第一に、入手可能な(しかし不完全な)データが行政データで、国家統計局が収集し、処理したものではないこと、そして第二に、積極的労働政策、つまり、現在ヨーロッパにおいて最も効率的な雇用支援策に、障害のある人が含まれていないことである。

18. 国内人権機関を設立する。

(権利条約第33条に関する87ページを参照)

イタリアはヨーロッパにおいて、パリ原則に基づく国内人権機関を持たない数少ない国の1つである。2007年と2010年、新たな国連人権理事会への立候補表明の際、イタリアは人権と基本的な自由の促進及び保護に関する独立した国家委員会を設立すると約束した。だが、議会に多くの法案が提出されたにもかかわらず、法的手続きは終わっていない。さらに市民社会は、パリ原則に定められている独立性、また、経済的な独立性についても、保証されていないと嘆いている。これが一連の不完全な中央連絡先と監視の仕組みとあいまって、人権の法的保護と促進における深刻な弱点を生み出している。

19. 権利条約に従い、1つまたは2つ以上の中央連絡先、調整のための仕組みと監視するための枠組みを設ける。

(権利条約第33条に関する87ページを参照)

権利条約批准法18/09により、権利条約実施の唯一の中央連絡先として、労働社会政策省インクルージョン及び社会的権利・責任総局が指定された。同局は、障害のある人を含むあらゆる分野において各州が自立した立法権を持つにもかかわらず、各省の調整機構としての役割も果たしている。中央連絡先の活動は、労働社会政策省が委員長を務め、中央連絡先の諮問機関としての役割を果たしている、障害のある人の状況を監視する国の委員会による支援を受けている。監視委員会には、障害者団体と市民社会、州及び地域の行政機関、社会保障機関、国家統計局及び労働組合の代表らが参加している。これらの機関はいずれも、独立した監視機関または監視の枠組みとして活動することはできない。なぜなら、それらはパリ原則を遵守しておらず、違反機関に対する異議申し立てを受理したり、行動を起こしたりすることができないからである。

20. 一般国民に関する調査や国勢調査に、年齢別・性別で分類された障害関連データを含める。

(権利条約第6条に関する19ページ、第7条に関する26ページ、第31条に関する83ページを参照)

障害のある人の状況に関する信頼のおけるデータは、一部の生活分野に関して今なお限られており、入手可能な一般国民に関するデータに比べて不十分である。入手可能なデータの不足は、障害のある人の社会的・市民的権利享受の強化に向けた政策と活動の不足に関連している。特に、障害のある女性、障害のある移民と難民、0~5歳の障害のある子どもが直面する二重の差別状況に関するデータと統計は入手できない。一般国民を対象とした調査では医学的アプローチを維持しており、障害のある人を系統的に含めていないため、他の国民と比較した障害の状況や障害のある人の差別の評価に疑問がある。

第6条‐障害のある女子

ジェンダーと障害は、今日の現実世界ではほとんど結び付けられることのない2つの次元である。ジェンダーは、良くも悪くも、文化と社会の基本構成要素だが、障害の世界では隠されている。その隠蔽が、女性で障害のある人に対する人権侵害の根底を成していることは、疑いの余地がない。
障害のある女性が二重の差別、すなわち、女性差別と障害差別に苦しんでいることは確かだが、これらの女性は、自分の考えを述べたり、その事実を告発したりするための適切な言葉を持たないことから、これを明らかにするのは難しい。

国の報告

国の報告では、以下の情報を提供している。

  • この問題に関するイニシアティブのガバナンスは、州が担っている。
  • 全国均等コンサルタント(National Councilor for Equality)が設置された。
  • UNAR(障害を分野横断的状況と見なし、平等な取扱いと、人種や種族的出身に基づく差別の撤廃を促進する、機会均等省内の局)という名称の機関がある。
  • イタリアには、女性に関する法律で、障害のある女性や少女に特に言及しているものはない。16)

国の報告に書かれていないこと

  • 障害のある女性による権利の享受に関する規則がもたらした実際の効果
  • 差別を発見し、闘うために設立された機関(UNAR)や、障害のある人、特に障害のある少女と女性の保護に関連した男女平等に向けて設立された機関(全国均等コンサルタント)によって運営されている活動の有効性と効率性
  • 規制適用について分析し、立証するための仕組み
  • 障害のある女性が直面する差別の状況、社会生活への参加度、あらゆる生活分野における平等な機会へのアクセスの分析に関連のあるデータと統計の欠如

コラム2-二重の差別

男女を区別していない文書には、障害のある女性を含む女性についての十分な記述や配慮がない。障害のある女性は二重の差別に直面すること以外に、二重の不可視性、すなわち、女性としての不可視性と障害のある人としての不可視性という問題にも直面しなければならない。
主流化の原則を完全に導入するということは、あらゆる国で障害関連の法律、活動及び計画の開発と実施におけるジェンダーの視点の積極的な採用を保証するという意味でもある。 男女平等の支持は必要であるが、それだけでは十分ではない。 障害のある女性の特別な問題について明記することにより、政府が適切な解決策を講じる可能性が高まる。

障害者団体からの情報

統計数字

国の報告に添付された利用可能な統計は性別で分類されている。残念ながらこのデータは(2004年以降)更新されておらず、知的障害のある人や施設で生活している人が含まれていない17)。0~6歳の子どものデータもまったくない。さらに、生活している場所/状況は報告されているが、男女を問わず、障害の状況に関する報告はない。

インクルーシブな教育の分野では、公式な統計と調査の深刻な不足が認められ、障害のある児童・生徒の数について、性別ではなく合計のみが示されている。教育、障害及びジェンダーに関する唯一の公式な調査は2005年のもので、これによれば18)障害のある人計178,220人のうち、中学校(10~12歳)と高校(13~18歳)に通っている男子は14.3%であるのに対し、女子はわずか8.4%である。

コラム-3女性の言い分

このようなデータの欠如のため、毎年女性会員の不満の声を集めてきた障害者団体によるこのステートメントを発表することができない。これらの不満は、障害のある少女が中等レベルか、さらにそれより上の高等・大学レベルの教育を終えられないことによってもたらされる障壁を中心としたものであった。彼女たちは学業を継続できたとしても、労働市場での隷属的な地位や、高い技術を必要としない仕事につながる特定の訓練を選択するよう仕向けられる。

ジェンダーについて言及している情報源はない。実際のところ、イタリアの大学に障害のある女子学生が何人在籍しているのかはわからない。

コラム4-障害のある人とない人の比較 統計調査2013 19)

15歳以上の人の障害の有無別教育水準(同じ特徴を持つ100人に占める割合)

幼稚園、小学校及び中学校まで

15~44歳

障害のある女性:41.70%
障害のある男性:47.70%
障害のない女性:32.90%
障害のない男性:38.90%

45~64歳

障害のある女性:60.30%
障害のある男性:57.90%
障害のない女性:49.10%
障害のない男性:48.80%

高校以上

15~44歳

障害のある女性:47.90%
障害のある男性:41.90%
障害のない女性:66.50%
障害のない男性:60.50%

45~64歳

障害のある女性:28.90%
障害のある男性:29.90%
障害のない女性:49.60%
障害のない男性:50.30%

学歴なし

15~44歳

障害のある女性:10.50%
障害のある男性:10.60%
障害のない女性:0.50%
障害のない男性:0.50%

45~64歳

障害のある女性:10.80%
障害のある男性:12.10%
障害のない女性:1.30%
障害のない男性:0.90%

障害のある女性は雇用においても二重の差別に直面していることを強調しておかなければならない。2014年に発行された、1999年3月12日の法律第68号「障害のある人の就労の権利に関する規則」の適用に関する議会への第7回報告(2012-2013)20)によれば、全国リストに登録されている障害のある人の総数(728,326)の内訳について、男性(52.6%)が女性(47.4%)よりも多いことが明らかになった。

就職斡旋について、全国データからは、2012年のエントリーのうち41.5%が女性であったが(女性7,941人、男性11,173人)、2013年にはこれが40.5%に下がった(女性7,453人、男性10,842人)ことがわかる。男女格差は2012年には29%だったが、2013年には31%で、やはり女性に不利である。契約に至った割合は、障害のある女性の場合、変わっていない(43%)。

障害のある人の労働統合に関する統計の情報源は、中央と州両方のレベルで多数あり、種類も多いが、それでもなお、就職斡旋に関する規則の実際の効果を検証することは、州レベルでも、また、一時的にもできない21)

国家統計局(ISTAT)の報告(15歳以上の人の自己申告による障害の有無別・男女別雇用状況(同じ特徴を持つ100人に占める割合))22)によれば、2013年のデータでは、障害のない男性(15~44歳)の雇用率は62.7%、障害のある男性(同)は24.8%、障害のない男性(45~64歳)は71.2%、障害のある男性(同)は23%である。障害のない女性(15~44歳)については、同じ調査の報告によれば46.3%、障害のある女性(同)は20.4%となっている。また、障害のない女性(45~64歳)は46.7%であるのに対して、障害のある女性(同)は14%である23)

コラム5-15歳以上の人の自己申告による障害の有無別雇用状況

雇用状況(雇用されている/雇用されていない)

15~44歳

障害のある女性:20.4%
障害のある男性:24.8%
障害のない女性:46.3%
障害のない男性:62.7%

45~64歳

障害のある女性:14%
障害のある男性:23%
障害のない女性:46.7%
障害のない男性:71.2%

全国のデータ

障害のある女性:2.3%
障害のある男性:6.3%
障害のない女性:36.5%
障害のない男性:54.3%

障害のある人の雇用を規制している法律68/99では、障害のある女性の雇用に関する積極的な活動や特別な方策の形を示していない。法規定の受益者は「障害のある人」で、障害のある女性への言及はない。女性は障害の世界では隠されており、労働力としての役割は認識すらされていない。一般的な枠組みの中では障害のある女性を特に扱った法律や政策が存在しないことを強調しておかなければならない。障害のある女性が雇用分野でも受ける二重の差別がどのような現象なのか、障害の社会的モデルと人権の尊重という視点から検討した全国的な調査24)や研究が存在するかどうかはわからない。

障害のある女性の福祉と健康

我々が調べたデータによれば、イタリアではこの部門においてもジェンダーへの配慮がないようである。この主張を支持すると思われる具体的な情報がないとはいえ、直接連絡したり意見交換したりした結果、障害のある女性と少女は医療を必要とする際に多くの障壁に直面しなければならないことがわかった。非常に多くの場合、彼女たちのニーズと特別な問題、たとえば産婦人科の問題などが、通常のケアプログラムに盛り込まれていないのである。さらに、彼女たちのために企画された性、避妊、性感染症、乳がんや子宮がんの予防に関する情報キャンペーンがまったくない上、障害者団体が企画した一部の情報キャンペーンを除けば、公式な保健キャンペーンで手話や点字など別のコミュニケーション形態に特別な配慮をしているかどうか、また、学習障害や知的障害のある女性に適した言葉を使っている情報キャンペーンに関する情報もまったくない。

イタリアにおけるもう1つの難しい問題は、診断方法や医療機関へのアクセシビリティが不十分であることと、障害のある女性の特別なニーズに対処する際の医療スタッフの無能さである。国際的な研究や調査25)から、障害のある女性は生殖器系疾患に関する検査や健診を受ける可能性が、あるとしても低いことがわかった。

イタリアでは不妊手術、子宮摘出及び安楽死などの処置は違法で、文化的に容認されていないが、それらを実際に行われていないものとして排除できるほどの情報はない。確かに、イタリアには障害のある女性のための特別な経済的、社会的、技術的支援はないと言える。前述のように、情報がないため、これを検証することはできない。

障害のある女性に対する暴力

障害のある女性は、性的、身体的、心理的暴力にさらされることが多いという事実にもかかわらず、1996年2月15日の法律第66号「性的暴力禁止規則」26)には彼女たちへの言及はなく、ジェンダーにかかわらず、障害のある人に振るわれる暴力に対する罰を全般的に重くすることしか述べられていない。法的言及がないということが、イタリアで障害のある女性が苦しんでいる暴力や虐待に関する情報がまったくないことの根底にあるという仮説が立てられる。

権利・機会平等省から委託され、国家統計局(ISTAT)によって2007年1月から10月まで実施された、女性の安全に関する調査結果に基づく「女性に対する暴力と虐待」最終報告にさえ、障害のある女性に関する情報はない。また、ISTATによって2008年から2009年まで実施された「嫌がらせと性的嫌がらせ」の調査にも、障害のある少女と女性に関する情報はない27)データの不在は、その現象が存在しないという意味ではない。それどころか、イタリア当局の無関心と配慮のなさを示すものである。これは、2015年7月7日の首相命令「性的暴力とジェンダーに対する特別行動計画」において、障害のある女性への言及がまったくないことでも再度実証されている。

障害のある女性は障害のない女性よりも「ターゲットになりやすい」と考えられており、身体的暴力と性的暴力に苦しむリスクに二重にさらされているのに、予防対策に含まれておらず、暴力に関する統計にもほとんど入っていないことを指摘することは重要である。さらに、知的障害のある少女の39~68%と少年の16~30%が、18歳の誕生日を迎える前に性的虐待を受ける28)

暴力や虐待の対象となるリスクは、精神障害や知的障害があり、施設で生活している人、特に女性の場合、現実的である。他者に完全に依存しているため、暴力のリスクにさらされることになり、たとえどうにか暴力を逃れることができたとしても、自分に適した保護サービスを見つけることができないのだ。この分野におけるカウンセリングや緊急サービスの専門家は障害のある女性の状況を知らないため、あるいは、虐待を障害と関連のある暴力と認識しないため、彼女たちが負っているリスクに気づかないことが多い。兆候を読み違えるリスクは、専門家が特別研修に参加することで大幅に軽減される。
同時に、レイプに関する告発を受ける責任を負う専門家は、暴力やひどい扱い、虐待について障害のある女性から報告を受けた際の彼女たちへの接し方について、研修を受けなければならない。統計によれば、法廷に持ち込まれた数多くの事件の中で、障害のある女性にかかわるものはごくわずかである。これは、暴力についての報告がないこと、あるいは、障害のある女性は事件についてほかの人と対等に報告することはできないだろうという理由から、彼女たちが信用されていないことを意味する。

2006年のISTATによる報告、「女性に対する暴力と虐待」29)にも、障害のある女性に関するデータはない。しかし、2015年6月5日にISTATは新たな報告30)を発表し、その中には障害のある女性に関するデータがいくつかある。これは障害者団体によって積極的に記録されたデータである。この報告によれば、健康状態が悪いと申告している女性の間で、身体的または性的暴力が36%に達し、重度の機能制限のある女性の場合は36.6%に上る。しかし、性的暴力全般としては、機能制限と慢性疾患のある女性の場合は約24%に達するが、これを除けば健康状態による影響は受けにくい。レイプやレイプ未遂など、最も深刻な形態の性的暴力についても同様である(機能制限のない女性の4.7%に対して10%)。

障害のある人の母親

障害は、今なお制度的課題において取り上げられていないが、その問題は家族に劇的な影響を与え、多くの場合、障害のある身内のケアを家族が独力ですることになる。多くの研究者が、障害のある人の状況に関連のある、その家族が直面する経験について研究を進めてきた。

2011年には、チェーザレ・セロノ財団の社会投資研究センター(Censis)31)が、多発性硬化症と自閉症に焦点を絞った「隠れた障害の次元」という調査を実施した。これにより、親による介護負担に関する数字、特に障害のある人の母親が苦しんでいる差別が明らかになった。

実際のところ、この研究では、調査に参加した家族の大多数において労働生活への悪影響が明らかになり、全体で65.9%の家族が少なくとも1人の親の負の変化を報告している。障害が重度ではないとされた人の親でも61.3%という数字が出ており、重度あるいは非常に重度の障害がある人の親の場合、68.9%であった。この種の職業面での悪化を経験していたのは、父親(事例の25.5%)ではなく特に母親(事例の62.6%)であった。
特に、母親の25.9%は仕事を辞めたり失ったりしており、23.4%が就業時間を減らしていた(非常勤の仕事に変えるなど)。これは、父親の回答の中で最も多かったものである(11.2%)。一方、8.3%が、自分の昇進の機会が減ったと主張した。また、「多くの生活面にかかわる介護負担を支える女性が直面する困難の増加。世代を超えた母娘の協力による支援がますます重荷となっており、新たなニーズが生じた場合、非公式なネットワークを少しずつ調整する方略をとることになる。健康と障害の状況は、ここで述べられているように、確かに事態を複雑にする2つの重要な課題であり、世代を超えた母娘の協力による援助に依存する福祉モデルを、間違いなく危機に追い込んでいる」32)との報告にあるように、人口学的、社会的及び経済的現象も認められる。

第6条に対する違反

差別は、障害のある女性と彼女たちの社会生活への参加、そして日々の生活における平等な機会に影響を与える。女性のための法律の適用について分析し、立証するための仕組みがないこと、また、このようなデータや統計がないことで、障害のある女性が直面している差別の度合いが分析できなくなる。

障害のある人の雇用を規制する特別な規則には、障害のある女性の労働市場への参加に関する効果が何も示されていない。
産婦人科の問題など、彼女たちのニーズと特別な問題が、通常のケアプログラムに盛り込まれていない。

イタリアには、障害のある女性のための特別な経済的、社会的及び技術的支援がない。

障害のある女性が苦しんでいる暴力や虐待についての情報はない。障害のある女性は、障害のある女性が暴力や虐待にあわないよう予防し、保護し、支援するサービスを利用できない。

勧告

6. 障害関連の法律、活動及び計画の開発と実施において、ジェンダーの視点を積極的に採用することを確保する。

7. 障害のある女性の特別な問題への言及を、女性のための政策や活動で採用された方策に明確に盛り込む。

8. 医療、女性に対する暴力の防止及び暴力の撲滅にかかわるサービスの中で、障害に関連のある暴力を発見できる技術的・文化的配慮を促進する。

9. 司法制度、暴力追放センター、緊急サービスに携わっている職員、また、障害のある女性や障害のある人にかかわる仕事をしている専門家全般に対する研修を促進し、彼らが虐待を障害に関連のある暴力として認識し、発見できるようにする。

第9条‐施設及びサービス等の利用の容易さ

イタリアにはアクセシビリティ(環境、輸送機関、ウェブ及びテレビ)に関する優れた法律があるが、それは多くの場合、軽視されており、その適用や提供されるサービスの質に関するいかなるデータも提供されない。アクセシビリティ専門家に対する「デザイン・フォー・オール」の基準に関する研修は一般教育課程に含まれておらず、国家当局による十分な監視も進められていない。

国の報告

アクセシビリティと、建築、知覚またはコミュニケーション面の障壁の撤廃に関するおもだった国家規範はすべて掲載されているが、その適用に関するデータは一切ない。

障害者団体からの情報

公共及び民間の建物の中の建築及び知覚面の障壁の撤廃に関する法律の適用は、多くの場合、軽視されている。公共の建物、事業、輸送機関、公開されているウェブサイトのアクセシビリティに関する法律違反の報告86)が多発している。実際のところ、最近は進展が見られるものの、違反数はいまだに膨大で、直接の関係者による報告がない場合、監視や管理が行われないことが多い。

法律と、現場における関連方策の実施との格差は、障害のある人がアクセシビリティ面で劇的に経験することである。物理的環境、輸送機関、情報通信の各分野、そして公衆に開放され、あるいは提供される施設やサービスの大半において、アクセシビリティを阻む障壁の確認と撤廃を目指す方策は、国家当局や管理者の認識とプロ意識の欠如から、しばしば軽視されている。建造環境や都市環境のアクセシビリティは極めて限られており、公共交通機関は、多くの場合、時代遅れゆえにアクセシブルではない。電子サービス及び緊急サービスなど情報通信等のサービスは、障害のある人の大多数が使用できない。公衆に開放され、あるいは提供される施設とサービスのアクセシビリティガイドラインは、ほとんどが軽視されており、アクセシビリティ専門家のための研修は、建築士、エンジニア及びハードウェア・ソフトウェア開発者の教育課程に盛り込まれていない。ろうの人のための文字情報や、手話使用者のための手話による情報、全盲または弱視の人のための点字や大活字による情報、学習障害や認知障害のある人のための読みやすくわかりやすい形式の情報は、存在しないに等しい。障害のある人のニーズを満たす「デザイン・フォー・オール」の原則に基づく製品とサービスの設計と開発、また、それらの利用可能性と使いやすさが、特に情報通信技術、移動補助具、支援技術などの新技術に関して、十分に促進、支援されていない。障害のない人にも日常的に使用されているコンピューターとオペレーティングシステム、アプリ、ATM、発券機や搭乗手続き機、タッチパネル式家庭用機器、デジタルテレビとその関連サービス、視聴覚メディアサービスと関連機器、銀行サービス、電子書籍及び電子商取引サービスなど、広範囲に及ぶ基本的な製品とサービスは、今なお障害のある人にとってほとんどアクセシブルではない。公衆に公開されるウェブサイトや、公共サービス機関のウェブサイトは、法的拘束力のある法律があるにもかかわらず、いまだにほとんどがアクセシブルではなく、全盲の生徒を対象とした電子版教科書も同様である。

コラム11-ヴェネチアのカラトラヴァ橋の事例

ヴェネチア議会は、著名なスペイン人建築家サンティアゴ・カラトラヴァに、運河で分断された市内への車によるアクセスを鉄道駅とも接続する橋の建築を委託した。この橋は、イタリア憲法制定60周年を記念して憲法の橋と呼ばれているが、ありとあらゆる論争が引き起こされたために、建設後の開通式(2008年)に共和国大統領が参加しなかった。橋を渡る唯一の手段は階段で、障害のある人のためのアクセシビリティ設備がまったく設けられていなかったことが発覚したのだ。建設費は数百万ユーロだが、障害者団体の報告によれば、イタリアのアクセシビリティ関連法は守られなかったのである。議会は事態を是正しようと、透明のゴンドラを使ったケーブル輸送の資金を出したが、それは1度も利用されることがなかった。実は、障害者団体はこの解決策を、極めて長時間ゴンドラ内にとどまることになる人たちの尊厳を尊重していない、明らかにスティグマ化のプロセスであり(権利条約では、障害が人と環境、彼らが生活する社会の特徴の相互作用であり、主観的な状態ではないことが強調されている)、悪天候の時や夏の暑い時期には危険であると拒否し、この解決策によれば運河を約15分で渡ることができるが、フェリー(ヴェネチアでは、すべてのフェリーはアクセシブルである)なら、1分で同じことができるという事実を強く主張したのである。この事件は現在、司法による調査の対象となっている87)

この問題は、介入して状況を改善できる2つの重要な側面を示している。1つは、建築士、エンジニア及び政府の監視官の教育において〔アクセシビリティに関する〕カリキュラムがないことだ。実は、この部門の教育は、専門教育(修士課程と上級訓練課程)のみなので、実務担当者の大多数は、規範を参加と完全な市民権を促す要素ではなく制約としてしか解釈しない(しかも、悪いように解釈することが多い)。もう1つの要素は、特に輸送機関に関する規範の監視に関連している。過去15年間、EUは航空機、鉄道、道路、ケーブル及び水上輸送分野に介入する指令と規制を制定し、飛行場、鉄道、市バス及び船の強制的なアクセシビリティ基準を導入してきた。残念ながら、支援を受けた乗客、車両のリニューアル、アクセシブルな駅の数などに関するデータはあるものの、これらの収集と処理はなされていない。このため、輸送分野における国連〔障害者権利〕条約の(国、州及び地域での)実施の度合い、これらの規範を遵守した適切な資源利用、アクセシビリティ水準の保証と監視に不可欠な要素に関する統計はない。欧州構造基金(障害のある人のためのアクセシビリティ参照基準を使用するよう制約)の利用についても、この分野の規範の遵守に関する詳細なデータはない。

重大な格差としては、提供されているアクセシビリティサービスの数と質の監視が行われていないこと、また、建築であれ情報コミュニケーションであれ、その解決策を実践するための資格証明書を取得しておかなければならない専門家が、これを取得していないということがあげられる。障害者団体と専門家は質を評価する手続きには関与していないため、何の進展も見られず、また、進展を評価することもできない。これは、社会的枠組みに盛り込まれたアクセシビリティ政策が存在するとしても、エビデンスベースではなく、優先されない場合が多いことを意味する。

勧告

16. 建築士、エンジニア、公認のコミュニケーション専門家及び政府の監視官の教育に、アクセシビリティ規範の遵守、建築、知覚及びコミュニケーション上の障壁の撤廃、国家当局と公務員の国連障害者権利条約に対する認識の向上をテーマとして導入する。

17. 障害のある人のためのアクセシブルなアプリ、公衆に開放され、あるいは提供される施設とサービスのアクセシビリティガイドラインの採用、アクセシビリティ専門家、特にハードウェア及びソフトウェア開発者に対する研修の実施などを通じて、情報、コミュニケーション、電子サービス及び緊急サービスのアクセシビリティを確保する。

18. デザイン・フォー・オールの原則に基づき、製品とサービスの設計と開発、また、それらの利用可能性と使いやすさを促進し、支援する。

19. あらゆる輸送手段(航空機、鉄道、道路、ケーブル及び水上輸送)について、アクセシビリティ水準と障害のある人の利用可能性に関するデータと統計を収集する。

第12条‐法律の前にひとしく認められる権利

管理支援制度という法制度を導入する法律6/2004が採択されたにもかかわらず、国の法律では、いまだに心神喪失を理由とする法的能力の剥奪を認めている。

国の報告

国の報告では、法の前にひとしく認められる権利がイタリア憲法に正式に記されていること、その結果、イタリアの法律では、法的能力にかかわる分野において障害に基づく差別が認められていないことを確認している。同時に、全面的あるいは部分的な心神喪失が個人に認められることを前提とする禁治産宣告と資格剥奪という法制度が、今も実施されていると認めている(パラグラフ30)。管理支援制度は、2004年に法律6/04で制定された。この法律によれば、管理支援者は行為能力が限られている/損なわれている人を支援する(パラグラフ31)。

国の報告に書かれていないこと

国の報告では、後見人の下にある人の数に関するデータや、障害のあるすべての人による支援付き意思決定と関連保護措置へのアクセスを確保する規定に関する明確な情報を提供していない。

障害者団体からの情報

管理支援制度という法制度は、全面的な、あるいは、長期に及ぶ資格剥奪に代わるものである。したがって資格剥奪は、個人の状況に基づく判断によって決定され、多かれ少なかれ長期化する可能性がある規定で、権利と権力の悪用という明確な危険の発生に左右されると見なされなければならない。にもかかわらず、法律6/2004にさえも、「弱者の保護」を目的としつつ、認知能力や意思能力が全面的あるいは部分的に、また、一時的あるいは永久的に欠ける人について、「管理能力の不足」や「生まれながらの無能力」などとする否定的な考え方が残っている。イタリアの法的能力に関する法律は、それゆえ、管理支援制度と、心神喪失者に適用できる禁治産宣告及び資格剥奪の継続という二本立てを基本としている。イタリアの禁治産宣告制度では、禁治産宣告を受けた人から自動的に投票権を奪うことはないが、それ以外の、選択、決定及び自己決定の権利と能力を剥奪する。さらに、第12条に基づく意思決定の支援へのアクセスを確保し、規制する法律もない。

第12条に対する違反

禁治産宣告/資格剥奪という法制度は、いずれもいまだに実施されており、現行の管理支援制度とともに、本人の利益を最優先する保護という考え方に基づいている点で、障害のあるすべての人の完全な法的能力を例外なく認めることと、本人の意思を尊重した意思決定の支援の提供を定めた第12条とは対照的である。

勧告

26.  第12条に従い、障害に基づく禁治産宣告と資格剥奪という法制度を通じた法的能力の剥奪を認める法律を廃止し、現行の管理支援制度を、無能力の概念を削除し、あらゆる生活分野への適用を拡大して、改正する。

27. イタリアの法律に意思決定の支援に関する規則と規制を含め、「本人の利益を最優先する代替的意思決定」という考え方を、「いかなる方法で表明されたかを問わず、本人の意思を尊重した支援付き意思決定」という考え方に置き換える。必要に応じて、管理支援者に対する権利条約、すなわち、その第12条の規定に従った権利に基づくアプローチと、代替的/補助的なコミュニケーションの形態及び手段に関する研修を行い、十分な資金を提供する。

第19条‐自立した生活及び地域社会への包容

イタリアには、家族からのサポートがない障害のある成人を隔離施設に収容するという確固たる伝統がある。(小規模グループホーム、援助付き住宅、在宅支援などの)居住型施設による解決策という代替手段は、今なお非常に少なく、おもに軽度の障害のある人に限られている。居住型施設で生活している人で、小規模家族型コミュニティやコミュニティ住宅を利用している人はわずか3.4%にすぎない。収容施設で生活している人は90%を超える。

国の報告

国の報告では、以下を確認している。

  • 自立生活と社会へのインクルージョンに関するイタリアの法律は、権利条約第19条に定められている義務のほぼすべてを実施している点で、極めて進歩的である(パラグラフ56)。
  • 法律104/92は、パーソナルアシスタンスとコミュニティにおける代替的小規模居住型施設など、在宅支援及びサービスの開発について定めている(パラグラフ56)。
  • 法律162/98は、パーソナルアシスタンスを含む自立生活への道の確保を目的として個人に合わせて作成される計画の開発について定めている(パラグラフ57)。
  • 法律328/00は、提供可能な最低限のサービスのうち、自立生活スキーム、コミュニティ支援サービス、およびコミュニティでの小規模居住型施設に対する財政支援に関する規定を記している(パラグラフ58)。

一方、国の報告では、以下についても認めている。

  • 法的枠組みには、障害のある人のどこで誰と生活するかを選択する権利への明白な言及がない(パラグラフ67)。
  • 障害のある成人、特に知的障害のある人の、居所に関する政策の中心となっているのは施設収容である(パラグラフ67)。
  • 居住型施設(グループホーム、介護付き集合住宅、援助付き住宅など)による代替的解決策はほとんどなく、おもに軽度の障害のある人に限られている(パラグラフ67)。

国の報告に書かれていないこと

  • どこで誰と生活するかを選択する権利の享受に関する規則の実際の効果
  • 権利条約批准後に正式に手続きが進められた脱施設化への消極的/積極的な流れに関連した活動の有効性と効率性
  • 国の報告で指摘された規制の適用に関する分析と立証
  • 地域社会での生活に向けた移行計画の開発に関する情報の欠如
  • 知的障害や精神障害のある成人の高い施設収容率を監視するためのデータと統計の欠如

障害者団体からの情報

この数年間、マルケ、サルデーニャ、カンパニア、トスカーナなどの州で障害のある人の施設収容という解決策を支持する地域政策への警鐘100)が高まってきた。イタリアは、より多くの支援を必要としている障害のある人に「他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと」を保証する適切な支援を、領土内で一様な方法により、全地域で提供することは、まだしていない。

イタリアには、家族からのサポートがない障害のある成人を、おもに宗教団体が運営する隔離施設に収容するという確固たる伝統がある。(小規模グループホーム、援助付き住宅、在宅支援などの)居住型施設による解決策という代替手段は今なお非常に少なく、おもに軽度の障害のある人に限られている101)。居住型施設で生活している人で、小規模家族型コミュニティやコミュニティ住宅を利用している人はわずか3.4%にすぎない。収容施設で生活している人は90%を超える102)
隔離施設でのサービスを続ける理由としては、制度面及び経済面が引き合いに出される。これらの理由は、障害のある人の選択と選好の権利よりも優先されており、その結果、障害のある人の内なる尊厳を侵害している。権利条約批准後も、地域社会での生活への積極的な流れはまったく生じていない。パーソナルアシスタンスなどの自立生活に向けた個別支援は、すべての州で平等に保証されているわけではない。さらに、大規模施設への収容に代わる選択肢(より小規模な生活コミュニティ、グループホームなど)でも、居住者は自分自身の生活を選択したり管理したりすることができないという理由から、多くの場合、施設収容型の運営が継続されている。

コラム15-イタリアにおける居住支援サービス

2011年、イタリアにおける〔障害のある人の〕受け入れ先は386,803で、そのうちの88%は30人以上を収容している施設に、95%は10人以上を収容している施設にあった103)。2009年に国連〔障害者権利〕条約を批准したにもかかわらず、2011年に提供された居住支援サービスのタイプが大きく変化したようには見えない。その一方で、障害のある人のための居住支援サービスが提供する受け入れ先の合計は、2007年(178,830)の2倍となった。2007年には受け入れ先の85%(153,798)が30人以上を収容している施設に、92%以上(165,832)が20人以上を収容している施設にあった。施設に収容された障害のある人は、2013年に約370,000人(イタリアの人口の0.6%)104)で、これは2011年と実質的に変わらない率である。
州政策では、引き続き障害のある人の施設収容を促進しており、時には緊縮財政策の結果、施設収容が行われる場合もある。たとえば、マルケ州の州議会決議1260/2013は、障害のある人の居住施設では病床数を20床未満にしてはならないと定めており、20床の施設と合併して、少なくとも40~60人を収容する居住型施設にするよう勧めている。トスカーナ州では、知的障害や発達障害のある人のための大規模施設が2件、エンポリとピサで建設中であり、1件は居住支援サービスで20、デイサービスで60以上、もう1件は居住支援サービスで100、デイサービスで400の受け入れ先を提供する予定である。

全国レベルでは、地方自治体が負担する障害のある人の在宅支援関連費(211,201,262ユーロ)は、居住型施設に割り当てられている資金(256,926,187ユーロ、利用者の参加に応じて割り当てられる額を除く)よりも少ない。障害関連費の平均は、サービスのタイプによって著しく異なり、社会扶助サービス(RAS)の1利用者当たり年間3,469ユーロから、障害のある人向けの医療付き居住型施設(RSD)の12,201ユーロ(利用者の参加に応じて割り当てられる額を除く)まで、さまざまである。

高度なニーズを持つ人の「多くの支援」へのアクセスは、特別に割り当てられた資金の利用可能性に左右される。国による「非自立者支援基金」の額は、安定法で毎年決定され、地方自治体を通じて分配されるが、その際、地方自治体独自の資金が加算される場合もある。

国による非自立者支援基金は2011~2013年には中止となった。しかし、2014年には2億5千万ユーロ、2015年には4億ユーロが全国で再び支給され、2015年にはそのうちの3900万ユーロが州に割り当てられた。現在の積極的な流れにもかかわらず、必要なサービスや手続きへのアクセスを、多くの支援を必要としている障害のあるすべての人に保証するには、国の基金を州独自の資金と合算している州でも、この額ではまだ不十分である。さらに、これらの資金が施設収容を増やすために使用されることもある。2009年に権利条約が批准されたにもかかわらず、地域福祉政策に割り当てられる資金の総額は2010年から2011年にかけて減少した(-1%)。この消極的な流れは、2003年から2009年までの積極的な流れとは逆方向へと進み続け、障害のある人への社会サービスは州によってかなり異なることとなった。北部イタリアで生活している障害のある人に対するサービスや支援のための社会費は、南部の777ユーロに対し、年間5,370ユーロである105)

パーソナルアシスタンスを含む自立生活スキームを採用し、これに資金提供しているのは、わずか2、3州である。自立生活プロジェクトへの支援を提供していない州で生活している障害のある人は、それゆえ、 他州で生活し、このような機会の恩恵を受けることができる人と比較して、差別されている。さらに、パーソナルアシスタンスや自立生活に向けたその他の形式の支援〔の州による格差〕、州をまたいでの移動のしにくさは、障害のある人の全国各地への移動を妨げている。

2014年にイタリア政府は、小額の基金(1千万ユーロ)を州レベルで実施される自立生活試験プロジェクトに割り当てた。これに対する問い合わせと申請から、公務員や社会サービス従事者が、この件についての知識をほとんど持っていないことが明らかになった。

コラム16-非自立者支援基金の割り当て

国の「非自立者支援」基金の割り当てに関する指令には、州が国の資金を主として(いかなる場合でも最低40%は)重度の障害のある人のために使用することが明記されている。定義によれば重度の障害のある人とは、「心身の深刻な状態に由来する複雑なニーズのために継続的な在宅支援と24時間体制の社会的健康監視が必要な、生命を他者に依存している状態にある人で…心身のインテグリティ〔心身がそのままの状態で尊重されること〕を保証するために第三者による油断のない援助を必要とする人」である106)。この定義には年齢への言及がないが、非自立者支援基金をおもに65歳以上の人に割り当てている州もある。

たとえば、2014年に決定された、2015年のトスカーナ州における非自立者支援基金は、国からの割り当て分27,651,000ユーロに州の資金を加算し、合計79,800,000ユーロである。非自立者支援基金の総額の割り当てに関する州指令では、資金の95%以上(75,921,324ユーロ)を障害のある人の80%に相当する65歳以上の非自立者に割り当てている。また、資金の30%以上(24,921,324ユーロ)が社会扶助施設(RSA)への施設収容の財源に充てられている。障害のある人の20%に相当する65歳未満の非自立者108)に割り当てられたのは、非自立者支援基金の総額の5%にも満たない3,878,676ユーロで、これは2015年に受領した国からの割当額のわずか14%に過ぎない107)。イタリアの障害のある人の80%が65歳以上であることを考慮しても、トスカーナ州の非自立者支援基金の割り当ては、重度の障害のある65歳未満の人にとって不利である。

ほとんどの州で、65歳以上の障害のある人は障害のある人を対象としたサービスから自動的に外され、どこで誰と生活するかを選択する権利や特別なニーズに関係なく、高齢者向けサービスの対象となる。彼らの人生やケアを中断するこのような移行によって生じる可能性のある利益や損害については、何の評価もなされていない。

高度な支援を必要とする障害のある人は、家族の助けがなくなると、施設収容に代わる形式の住宅へのアクセスを失う。代替形式の住宅支援、隔離施設に代わる家族型施設などのサービス、地域社会における住宅の手配に向けた移行プロセスに関する計画、実現と資金調達は、多くの支援ニーズのある人の家族に懸念を引き起こす。誰にも頼れないと不服を訴える家族の数は、当事者の年齢が上がるにつれて増加し、自分たちが死んだ後の障害のある子どもの将来の生活の見通しに対する親の懸念も膨らんでいく。ダウン症の子どもや15歳までの若者の親で、「私たちがいなくなった後」子どもが自立または半自立生活を送れるものと考えている人の数は30~40%と幅があり、この割合は、成人の親では12%にまで減少する。自閉症の子どもや若者の親で、子どもの将来について自立または部分的に自立した状況をイメージする親の割合(23%)は、21歳以上の自閉症の成人の家族の場合、さらに劇的に減少する(5%)109)

勧告

33. 障害のある人を対象とした居住支援及びサービスの最低基準を国レベルで定め、導入し、資金を調達し、高度な支援ニーズのある人(非自立者)を含む障害のあるすべての人に、個別に作成された計画に従い、本人の選択と希望を尊重し、その居所や必要な支援のレベルに関係なく、自立生活スキームと小規模な地域に根ざした居住支援サービスへの均一なアクセスを確保する。自立生活に関する国のガイドラインを定める。この際、障害のある人にその代表団体を通じて積極的に参加してもらう。

34. 分離型居住支援サービスに代わるインクルーシブなサービスへの妥当な期間内での移行プロセスを、知的障害や精神障害のある人、多くの支援を必要としている人を含むあらゆる年齢の障害のある人に、地域社会におけるさまざまな居住型施設を必要な個別支援とともに提供することによって促進し、実施することを、イタリア各州に強く促す。

35. 障害者団体と連携し、障害のある人の選択と自己決定の能力を強化するための意識向上及びエンパワメント活動を開発する。

第24条‐教育

障害のあるすべての児童・生徒の普通学校と教育支援策へのアクセスを保証する法的枠組みにもかかわらず、障害のある生徒のインクルージョンにかかわる学校職員の資格認定と、その結果としての指導の質は、多くの場合不十分で、高等学校や大学、職業訓練へのアクセスが制限されることになる。卒業後のソーシャルインクルージョンと労働市場における職場へのインクルージョンの成果は、特に学習障害のある人及び障害のある少女と女性の場合、満足のいかないものである。

国の報告

国の報告では、以下が強調されている。

  • イタリアの憲法と教育分野にかかわる法的枠組み(法律118/71第28条、法律517/77、法律104/92)は、必要な教育支援のレベルに関係なく、障害のあるすべての児童・生徒の普通学校及び普通学級におけるインクルーシブな教育へのアクセスを保証している(パラグラフ101)。
  • 入院中の児童は、ホームスクーリングや院内学級が利用できる(パラグラフ103)。
  • すべての生徒の個別のニーズを満たす教育支援策に、一貫した量の財源と人的資源が割り当てられている。
  • 障害のある人の職業訓練へのアクセスは、イタリア憲法第38条、法律118/1971118)、845/1978119)及び104/1992120)で認められているが、公共または民間の職業訓練施設、普通学級、専門課程への障害のある学生のインクルージョンは各州に任されている(パラグラフ102)。
  • 合理的配慮は「身体障害または知覚障害のある生徒の自立とパーソナルコミュニケーションの援助」の分担と、個別計画、教材と支援技術の支給、大学への手話通訳者の派遣、障害のある児童がいる学級の児童数の上限の設定を含むその他の方策に関する法律104/92に基づき提供される(パラグラフ104)。
  • 障害のある教師は小学校で支援教員として働くことができ、全盲の教師には中学校の授業に信頼のおけるアシスタントを連れて行く権利がある(法律270/82第64条)(パラグラフ109)。

国の報告では、法律328/2000第14条に基づく、障害のある成人、特に高度な支援が必要な成人による、職業訓練、生涯教育プログラム、障害のある成人向けの特別な居住支援サービスとデイサービスにおける個別のニーズを満たすための教育支援へのアクセスに関する最低基準と監視の仕組みがないことを認めている(パラグラフ102)。

国の報告に書かれていないこと

国の報告には、以下が明確に述べられていない。

  • アクセシビリティ要件が、あらゆるレベルのすべての学校で遵守されているかどうか
  • あらゆるレベルの学校において、児童・生徒の効果的な学習という観点から、教育の質がどのように評価されているのか
  • 障害のある児童・生徒に対する指導の継続がどのように確保されているのか
  • 障害のある生徒が学校で達成する資格という観点からの、ジェンダーの平等に関する情報
  • 普通教員の教職課程に障害のある児童・生徒の特別な教育ニーズに関する知識が含まれているのか、また、どの程度含まれているのか
  • 支援教員と支援を担当するその他の学校職員の資格基準が、国レベルで設定されているのか
  • 普通教員及び支援教員、支援を担当するその他の職員のための大学課程について、障害のある児童・生徒の特別な教育ニーズに関する質基準が、国レベルで存在するのか
  • 障害のある教師の採用はどのように認められ、また、促進されているのか

障害者団体からの情報

障害のあるすべての生徒にインクルーシブな教育へのアクセシビリティを保証する進歩的な法的枠組みと財政援助にもかかわらず、まだ解決しなければならない例外と課題がいくつかある。

例外は、イタリアの在外学校に見られ、現地の憲法で障害のある児童を受け入れることを義務付けていない可能性がある。

課題は、障害のある生徒のためのアクセシビリティ基準を満たしていない学校の数である。2003/2004年度及び2009-2010年度の教育・大学・研究省(MIUR)のデータ121)によれば、すべての学校施設における建築上の障壁の撤廃は、州によって著しい格差はあるものの、まだ校舎の3分の1について実施されなければならないが、学校のアクセシビリティは明らかに改善している。

もう1つの大きな課題は、障害のある児童・生徒に与えられる教育の質が低いことである。インクルーシブな教育制度にもかかわらず、いくつかの要因のために、障害のある生徒に質の低い教育を提供することになってしまっており、雇用と社会への障害のある成人のインクルージョンや参加が促進できずにいる。

支援教員の専門教育を行う大学院課程の質は、教育省による監視を受けていない。一部の大学では、海外の大学と提携して数日間の研修による専門教育を確保している例もある。教師や学校職員、特に深刻な学習障害やコミュニケーション障害のある生徒のインクルージョンを支援する支援教員とコミュニケーション/パーソナルアシスタントに対する、特別支援教育と代替/補助的コミュニケーション方略、特別な補助教材や新世代ソフトウェアの利用に関する不十分な、また、時として大雑把な研修は、深刻な学習障害やコミュニケーション障害のある生徒の学習の機会を困難にし、障害のある人の卒業後の社会や職場へのインクルージョンが不満足な結果となってしまう。手話をコミュニケーション手段として選択しているろうの生徒の要求は十分に満たされていない。2011‐2012年度には、深刻な学習障害と行動面の問題のある生徒の家族の約9%が、子どもの学校と行政に対して、子どもが学校で直面する困難に対処できるように支援時間を増やすことを求めて訴訟を起こした。

さらに、学校による法的規範の実施における格差、障害のある生徒の機能面のプロフィールのアセスメントと年度初めからのタイミングのよい個別教育計画における重大な遅延、支援教員の過剰な入れ替わりと彼らの大雑把でしばしば不十分な専門性、また、意欲や専門能力の欠如と、普通教員と支援教員による連携の欠如のために、教育の質の問題が発生している122)

指導の継続に関しては、2014‐2015年度に、障害のある小学生の14.7%、中学1年生の16.5%が支援教員を変更し、障害のある小学の生の41.9%、中学1年生の36.5%が前年度の支援教員を変更した123)

コラム19-支援教員の任命における課題

2011年には、生徒数の減少や指導時間の減少、または、別の学校から上級の資格を持つ同僚が異動してきたことなどを理由に職を失った普通教員に、支援教員のポストが300以上与えられた。普通教員のほぼ全員が、障害のある生徒を指導する資格を持っていなかった。資格のない普通教員を支援教員に任命することは、二重の意味で誤りである。一方では、誰もラテン語の教師に数学を教えるポストを与えないからだ。この点において、自宅から遠い別の学校に異動する代わりに、自分が研修を受けていない教科を教えることを選択する教師の職業意識の低さは、驚くべきことである。他方では(これが最も懸念される側面なのだが)、このようなことが起こるのは、支援がしばしば学校経営者によって(そして労働組合によって)重要ではない仕事で、資格のない教師に委ねることができると見なされていることを裏付けるものであり、したがって、特別支援教育で成し遂げられることとその方略、専門的な研修と知識という点で、障害のある生徒の特別なニーズが軽視されていることになる124)

より複雑な学習障害やコミュニケーション障害のある生徒は、質の高い教育への権利を侵害される危険だけでなく、学校での虐待や品位を傷つける取扱い、自らの尊厳とインテグリティ〔心身がそのままの状態で尊重されること〕に対する侵害の危険にさえさらされている。生徒の挑発的な行動に対処する能力が欠けていたことを原因とする、権利条約第15~17条に違反した、教師による重度の知的障害や発達障害のある児童に対する虐待の事例について、いくつかの報道記事が発表されてきた。

コラム20-学校における障害のある生徒に対する差別と虐待の事例数件

トリエステ 2009年1月27日
学校アシスタントの報告によれば、支援教員M.D.F.は、彼女に任された自閉症の生徒を落ちつかせるために、首の後ろの神経を強く抑えようと彼の首をつかみ、危険な医学的手技を軽く実行した。この医学的手技は、子どもの「発作性頻脈」を止めるために、常に経験豊富な医師によって医療の場で施されなければならず、学校現場で子どもの発達を促す教師が行ってよいものではないことは確かである。

サポート・ジャーナルによれば、この教師は、マットレスの上で尿まみれの自閉症の生徒を半裸にし、学友のさらし者にするなど、刑罰や品位を傷つける取扱いを継続的かつ故意に行っている。
この教師(M.D.F.)は自閉症の知識がないことを認めている。にもかかわらず、生徒の表情から彼が「正常」な認知機能を持ち、したがって同級生と全く同じように行動できると確信していた。それに反する証拠が日々あがっていたのに125)
自閉症の生徒には、特にこのような形の虐待の危険がある。学校での子どもへの虐待が頻繁に発生したのを受けて、一部の親の会は、学校現場に監視カメラの設置を要求することを検討している。

ヴィチェンツァ 2013年4月8日
ヴィチェンツァでは、14歳の自閉症の生徒が、担当教員による平手打ち、侮辱と虐待に苦しんでいた。支援教員とそのアシスタントは警察に逮捕された。この生徒は言葉が出ないため、学校で苦しまなければならなかった虐待を報告できなかった。2人の女性が虐待行為で警察に捕まり、その卑劣な行為を理由に直ぐに逮捕された。子どもの体、おもに頭に暴力の兆候を認めた両親が声を上げたのである126)

トレヴィーゾ 2014年12月30日
モリアーノ・ヴェネトの公立幼稚園で、5歳の自閉症児の母親は別の親から、彼女の子どもが在園中、支援教員に引っ張られたと聞いた。母親は園長に何が起きたかを調べるよう直ちに要求し、抗議した。その間、子どもは園に戻ることを拒んだ127)

リヴォルノ 2015年6月16日
重度の知的障害とコミュニケーション障害のある生徒の両親が、彼らの子どもの尊厳と自由に対する、学校職員による障害に基づく差別と有害な行動について、教育省と学校を訴えた。この生徒は学校で支援教員による差別と嫌がらせに苦しみ、その結果、障害を理由に尊厳の侵害と屈辱を受けていた。これらの虐待を認める一方で、裁判所は、この生徒に対する直接的な差別も記録した。彼は学校が彼のクラスのために企画した遠足から排除されたのである。さらに、彼の家族は学校の教育行事に彼を参加させないよう求められた。このような状況が明らかになり、その生徒に対して繰り返された頻繁な差別とその深刻さ、それらが生徒にもたらした感情面の影響を考慮し、教育省と学校は原告に慰謝料を支払うよう宣告された128)

障害のある生徒の退学率は他の生徒に比べて高く、知的障害や発達障害のある生徒、また、障害のある少女の場合はさらに高い。この結果、障害のある人は一般の人に比べて教育水準が低い。イタリアでは、中学の卒業証書を持つ人は、一般の人の31%に対して障害のある人の場合わずか17%であり、高等教育の卒業証書を持つ人は、一般の人の28%に対して障害のある人では8%である129)。2008‐2009年度および2009‐2010年度には、小学校に入学した障害のある児童のうち32.6%、中学校に入学した障害のある生徒のうち37.3%が、障害のある少女だった。2009年には、障害のある女性の16.3%が何の学歴も持っていなかったが、障害のある男性の場合は12.6%であった。また、障害のある少女の25.7%が卒業証書を持ち、あるいは、学校を卒業しているが、障害のある少年の場合は39.6%であった。

コラム21-質の低い教育が知的障害や発達障害のある成人に与える影響

就学前のダウン症の子どもの82%が保育所や幼稚園を利用しており、6~14歳の子どもの97.4%が普通学校に通学している一方で、普通学校に通学している青少年の割合は半数弱に減少する。同じ傾向は自閉スペクトラム症(ASD)の子どもにも見られ、14歳未満の93.4%が普通学校に通学しているのに対して、14歳以上の青少年の場合は67.1%である。 義務教育後は、ダウン症の若者で職業訓練を利用しているのは11.2%のみで、20歳以上の若者で職業訓練課程に参加しているのは6.7%である。彼らの労働市場へのインクルージョンはほとんどない。24歳以上のダウン症の人のうち、働いているのは31.4%のみで、その大半(60%以上)は雇用契約を結んでいない。70%以上が何の賃金も受け取っておらず、最低賃金を受け取っている者もいるが、それは同じ仕事の通常の報酬よりも低い。ASDの人の状況はさらに悪く、20歳以上の人で働いているのは、保護的な職場を含めても10%のみである130)。。

一時的に高度な健康ニーズのある生徒の在宅教育の利用について定めた省内回覧60/2012では、障害のある生徒と永久的に健康ニーズのある生徒(寝たきりまたは免疫不全の生徒など)の通学を禁じ、教育制度から排除している。さらに同回覧は、在宅支援教員の任命を定めているだけで、在宅教育の質は保証しておらず、個別に作成された質の高い在宅教育プログラムの開発に必要な、より詳細な手段や配慮についても定めていない。

新たな学校改革法107/2015では、障害のある児童・生徒の教育の質と継続性を高めるために、支援教員の専門研修のプロセスと独自の仕事、また、障害のある児童・生徒のインクルージョン方略に関する必須研修を、普通教員の教育課程に含めるよう定めている。障害者団体は、障害のある生徒の教育ニーズを最大限満たし、教師が支援を一時的な代替策として選択することを防止するため、特別支援教育とコミュニケーション方略関連の徹底した資格認定を通じて障害のある児童・生徒のインクルーシブな教育の質を改善する法案131)を作成した。

最後に、法律270/82の第64条では、障害のある教師が小学校で支援教員として働くことを認めており、また、全盲の教師には中学校の授業に信頼のおけるアシスタントを連れて行く権利があると定めている。とはいえ、それは障害のある人のあらゆるレベルの学校における普通教員及び支援教員への採用を促進するものではなく、障害のある教師にその障害種を問わず信頼のおけるアシスタントによる支援を明確に保証するものでもない。

学校改革法107/2015では、高校生による労働市場または仮想企業におけるさまざまな職業体験へのアクセス強化を定めている。とはいえ、それは障害のある生徒を明確に含むものではなく、彼らが労働市場における訓練の機会へのアクセスを得るために必要となる可能性がある支援や合理的配慮を保証するものでもない。

障害のある学生に支援サービスの利用、個別指導および教材のアクセシビリティを保証している大学は少ない。このため、障害のある多くの学生が、自宅から遠く離れた、支援サービスを提供している大学に移らなければならない。さらに、支援サービスと個別指導の継続は、予算を理由に一時中断される可能性があるため、保証されていない。

生涯学習については、州による違いはあるが、15~64歳の障害のある人や慢性疾患のある人約5百万人(38%)132)が、大学や職業訓練課程へのアクセスを持っていない。この分野における州の自由裁量性は、職業訓練へのアクセスに関する国の基準や監視の仕組みがないために、不適切なほど拡大されている。生涯学習サービスに関する国家戦略ガイドラインが国、州及び地域行政統合会議によって2014年に合意されたが、これには障害のある人が含まれていない。

障害や高度な支援ニーズのある成人のための居住型施設とデイセンターが、おもに支援を提供している。そのほとんどは、教育や、社会・職業ハビリテーションまたはリハビリテーションプログラムを保証していない。国の法律328/2000の実施に関する省令308/2001では、障害のある人のためのデイセンターの構造的要件を定めているが、提供される活動の規制は州行政に委ねている。

第24条に対する違反

支援教員と普通教員の、特別支援教育の方略と代替的/補助的なコミュニケーションの形態及び手段に関する不十分で大雑把なスキル、支援教員の入れ替わりが、障害のある生徒に質の高い教育を保証する義務の妨げとなっている。この結果、障害のある生徒は、高等教育や職業訓練を受ける平等な機会を得られず、職場でのインクルージョンを果たせていない。より複雑な学習障害や深刻なコミュニケーション障害のある人は特に不利で、権利条約第15条、16条及び17条に反し、虐待や、インテグリティ〔心身がそのままの状態で尊重されること〕と尊厳を損なう取扱いを受ける危険にさらされている。

勧告

48. 子どもの権利委員会の総括所見に従い、学校及び各学級における障害のある児童・生徒のインクルージョンと教育の質を、彼らの課内・課外活動への参加と、高等教育や職業訓練へのアクセス、卒業後の職場でのインクルージョンも含めて監視するための適切な指標を考案し、採用し、使用する。ジェンダーの平等の問題と、高度な教育支援ニーズのある生徒に対する障害に基づく不平等に、特別な注意を払わなければならない。

49. 普通教員とその他の学校職員の障害のある生徒の教育ニーズに関するスキルを、初期に必須研修を行うことで強化する。子どもの権利委員会並びに経済的、社会的及び文化的権利委員会の総括所見に従い、障害のある児童・生徒の多種多様な教育・コミュニケーションニーズに適した効果的な特別支援教育の方略と代替的/補助的なコミュニケーションの形態と手段に関する専門課程を設けるとともに、支援教員の特別な役割を定め、障害のある生徒への指導継続を確保するために必要な措置を提供し、障害者団体が促進している法案2444ACを改革法107/2015の実施に関する委任法令に統合する。

50. 教員、学校アシスタント、支援教員を対象とする、特別支援教育の方略133)、補助器具及び新世代ソフトウェアの使用に関する大学講座と研修の質基準を設け、支援教員に対する研修と講座の質の監視に障害者団体の積極的な参加を得る。

51. 法律107/2015第1条153‐155に定められている校舎の改修に、ユニバーサルデザインに従ったアクセシビリティ要件を盛り込む。大学院課程を含む大学へのアクセスを、学習やコミュニケーションに困難がある学生のニーズを満たす適切なサービス、すなわち、個別指導、字幕、手話通訳者などの一様な提供により改善する。障害のある教師の、普通教員及び支援教員への採用を促進する。

52.  法律107/2015第1条153-155に定められている校舎の改修に、ユニバーサルデザインに従ったアクセシビリティ要件を盛り込む。大学院課程を含む大学、在学中及び卒業後の職業訓練、生涯学習プログラムへのアクセスを、学習やコミュニケーションに困難がある学生のニーズを満たす適切な支援サービスと合理的配慮、すなわち、個別指導、字幕、手話通訳者などの一様な提供により改善する。普通教員及び支援教員への障害のある教師の採用を促進する。

第27条‐労働及び雇用

第27条-労働及び雇用

イタリアでは、収集されたデータの中に障害のある人の総失業率がない。総失業・非労働力率は、一般の人の12%に対して、障害のある人の場合、80%を超えている。
障害のある人の雇用を支援する国家政策はなく、その理由は、第一に、入手可能な(しかし不完全な)データが行政データで、国家統計局が収集し、処理したものではないこと、そして第二に、積極的労働政策、つまり、現在ヨーロッパにおいて最も効率的な雇用支援策に、障害のある人が含まれていないことである。

国の報告

国の報告には、障害のある人の労働市場と雇用環境、雇用保護に関するおもな法的措置が、法律68/99に定められているとはっきり示されている。同法は、障害のある人のスキルと能力の尊重を保証する一方で、彼らの職場への参加と統合におもに焦点を絞っている。

国の報告に書かれていないこと

  • 法律68/99が障害のある人の労働と雇用の権利の享受に実際与えた影響
  • 雇用法改正(政令151/2015)の有効性と効率性
  • 規制適用について分析し、立証するための仕組み
  • 障害のある人が直面している差別の状況、高い失業率とその原因、労働市場への参加の度合い、障壁を分析した年齢別、性別データと統計の欠如

障害者団体からの情報

イタリア議会は最近、障害のある人に有利な変更点をいくつか取り入れた、雇用法の改正に関する法律(政令151/2015)を承認した。しかし、これらは障害のある人の労働市場へのインクルージョンを支援する政策を保証するのに十分とは思えない。

障害のある人の雇用について議会に提出された、法律68/99の実施に関する第7回報告139)によれば、この数年間で年間雇用者数は30%以上減少している(2004年以来最低水準で、18,295人のみ)。一般の人の雇用に関する統計は3ヵ月ごとに入手できるが、障害のある人の統計は2年おきにしか入手できない。収集されたデータの中には障害のある人の総失業率はない。(イタリア障害克服連盟の推定によれば)失業率は一般の人の12%に対して、障害のある人の場合、80%を超えている140)。賃金は約70%少なく、女性の被雇用者は約40.7%である。法律68/99を改善する法令が最近承認されたが、割当雇用率制度を基本としているため、公共機関と民間企業における障害のある人の数が制限され、まったく不適切であることが判明した(2013年の企業の空きポストの総数は、失業者名簿登録者数の6.1%だった)。職業紹介所の建物がアクセシブルでないこと(2008年には職業紹介所の25%に物理的障害があった141))に加えて、県の行政機関の多くは、障害のある人を採用するという目標に取り組んだり(同法第2条)、障害のある人をその人にふさわしい仕事、すなわち、その人のスキルと能力に見合った仕事に就かせたりすることができない。

コラム23-議会への障害のある人の労働の権利に関する基準を含む法律の実施状況に関する第7回報告(2012・2013年)

2013年 県のリストに登録されている障害のある人の数:676,775人
女性:319,673人 登録者の49.6%に相当
2013年 雇用されている労働者の数:18,295人(登録者の2.7%に相当)
女性:7,453人 雇用されている人の40.7%に相当
2013年 割当雇用率制度による企業の空きポストの数:41,238 (登録者の6.1%に相当)

このように、イタリアには障害のある人の雇用を支援する国家政策はなく、その理由は、第一に、入手可能な(しかし不完全な)データが行政データで、国家統計局が収集し、処理したものではないこと、そのため全国の失業に関するデータから切り離されていること、そして第二に、積極的労働政策、つまり、現在ヨーロッパにおいて最も効率的な雇用支援策に障害のある人が含まれていないことである。

コラム24-「若年者保障」

最近のヨーロッパにおける若者雇用支援イニシアティブ、「若年者保障」について、イタリアには、障害のある人によるこの機会の利用を認める規則がなく、実際には、国の規則における一般的な言及にもかかわらず、すべての失業者が登録しなければならない州のウェブサイトの大半が、法律4/2004に定められているアクセシビリティ関連規則を遵守しておらず(ウェブ・アクセシビリティ・イニシアティブ)、また、登録している障害のある人に対する適切な支援(個別指導、合理的配慮)が予算に計上されていないことが明らかになった。

特に不利なのが知的障害や精神障害のある人で、サービス機関や職業紹介所の力量が十分でない場合に顕著である。

第27条に対する違反

障害のある人は他の国民と比較して、データと統計の入手可能性、労働の機会、積極的労働政策、労働市場における彼らに対する投資の点で、差別されている。さらに、障害のある女性は、仕事の獲得が不利となる複合差別状態の下で生活している。

勧告

58. 国家統計局に、障害のある人の雇用に関するデータを、一般の人の雇用に関する入手可能なデータと同じ期限を設けて処理させる。

59. 一般政策または国及び州の労働政策並びに積極的労働政策全般において、障害のある人の主流化に着手する。

60. より多くの支援を必要とする人に大いに注目し、障害のある人のジョブコーチに関する能力と専門性を備えた雇用サービス機関に資格を与える。

第33条‐国内における実施及び監視

イタリアでは権利条約の実施と監視が、第33条の実施が不十分なために課題となっている。独立した監視の仕組みは設けられていない。障害問題への対処能力を備えた独立した人権機関がない。調整のための仕組みは、労働社会政策省内に指定されているが、権利条約の実施に関係のあるすべての省を生産的に関与させる効果はない。さらに、国レベルで1つの中央連絡先が指定されていても、州及び地域レベルでの権利条約の実施について報告する州の中央連絡先は設置されていない。

国の報告

  • 権利条約批准法18/09で、労働社会政策省のインクルージョン、社会的権利及び責任総局が権利条約実施の中央連絡先として指定された(パラグラフ218)。
  • 国の監視委員会は、権利条約の実施に関する国の報告及び年2回の行動計画の作成など、権利条約の実施に関連した中央連絡先による調整、統合及び監視活動を支援する(パラグラフ212、213)。
  • 国の監視委員会には、障害者団体と市民社会、州及び地域行政機関、社会保障機関、国家統計局(ISTAT)及び労働組合の代表が参加している(パラグラフ214)。
  • 中央連絡先はまた、権利条約の実施にかかわりのある他の省の参加を得ることを通じて、調整機構としての役割も果たしている(パラグラフ214)。

国の報告に書かれていないこと

国の報告では:

  • 権利条約実施の中央連絡先とされる労働社会政策省の、諮問機関としての国の監視委員会の設立とその役割におもに焦点を絞っている。
  • 障害のある人の生活に影響を与える州の法律、政策及び活動の権利条約とのコンプライアンスの見直しと報告のために、州の中央連絡先が設立されたか、あるいは、今後設立されるかどうか、また、その設立方法について、説明していない。
  • 障害者団体を国の監視委員会、すなわち、諮問機関に参加させることによって、権利条約実施に向けた政策と活動への効果と影響力がいかに確保されるかについて、言及していない。
  • 他の省の官僚が参加することによって、調整の仕組みの効果的な機能がいかに確保できるかについて、言及していない。
  • 権利条約に明記されているすべての権利の広範な実施という視点から、障害に関する政策と活動にかかわりのある、運輸省と経済財務省を含むすべての省の参加が確保されるかどうか、またどのように確保されるのかについて、説明していない。
  • 権利条約第33条第2項に基づく独立した監視機関または枠組みが設置されていない理由、また、権利条約及び今後の委員会による総括所見の実施に対する独立した監視がどのように行われるかについて、言及していない。
  • 独立した国内人権機関が設立されたかどうか、また、それが障害者団体とともに独立した監視の枠組みに含まれているかどうかについて、言及していない。

障害者団体からの情報

イタリアでは、障害政策分野における多くの責任が州レベルに委ねられているにもかかわらず、唯一の中央連絡先は国レベルで指定されている。州政府はこれまで州の中央連絡先を設置してこなかった。このため州政府は、州及び地域レベルでの権利条約の実施に関する報告を行っていない。

権利条約の実施を促進し、報告し、監視するために、障害のある人の状況に関する国の監視委員会が設置された。しかし、第33条第2項の規定に反して、独立した監視の仕組みは設置されていない。国の監視委員会は労働社会政策省の一部で、同大臣が委員長を務めているが、これは第33条第2項及びパリ原則の要件を遵守した独立した仕組みではない。さらに、国の監視委員会は、障害のある人の権利を「保護する」機能を果たすことや、苦情の申し立てを受理し、違反機関に対する措置を取ることができない。

第4条第3項に従い、障害者団体が国の監視委員会に参加しているが、監視の枠組みは設置されていないため、これには参加していない。実はイタリアでは、監視の仕組みを代表する、あるいは、これに参加している、独立した人権機関がまだ設置されていない。既存の人権機関は、刑務所における虐待と拷問の防止という非常に限られた範囲の活動を行っている。国の憲法や国際条約に明記されている人権の促進と保護に関する国家委員会の設立を求める法案が議会で議論されたことは一度もない。

国の監視委員会に設置された調整のための仕組みは、第33条を満たすものではない。保健省及び教育省の官僚が参加してはいるが、各省にそれぞれの専門分野における権利条約の実施を目的とした政策や活動への関与を促すことはできていない。さらに、運輸省や経済省などの重要な省の代表が国の監視委員会に参加していない。

第33条に対する違反

権利条約批准法108/2009では、独立した監視の仕組み、州の中央連絡先、効果的な調整のための仕組みの設置について定めていなかった。

勧告

75. 障害のある人の権利の監視を含む、広い範囲を対象とする独立した人権機関を設置する。権利条約第33条第2項に従い、独立した監視の仕組みまたは枠組みを設置する。障害のある人に、その代表団体を通じて参加してもらう。

76. 権利条約の実施にかかわるすべての省を含めた省間委員会を、調整のための仕組みとして設置する。

77. 州及び地域レベルでの権利条約の実施に関する報告を行う州の中央連絡先を、州議会の同意の下に設置する。


1)http://daccess-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/G15/044/22/PDF/G1504422.pdf?OpenElement
※転載者注:現在はこのリンクにはつながらない。

2)http://tbinternet.ohchr.org/_layouts/treatybodyexternal/SessionDetails1.aspx?SessionID=968&Lang=en

3)FISHのネットワークには、すべての障害種を網羅する37の全国協会が参加している。

4)国連障害者権利条約前文(j)

16)Fondazione Nilde Iotti, Le leggi delle donne che hanno cambiato l’Italia. Chronological order (1950-2011) of Laws, Pag. 17, http://www.fondazionenildeiotti.it/docs/documento4338870.pdf

17)WHOヨーロッパの定義によれば、「知的障害とは新規または複雑な情報を理解し、新規の技能を学習し適用する能力が著しく低下していることを意味する(知能の障害)。この結果、自立した対応の能力が低下する(社会的機能の障害)。これは成人前に始まり、発達に持続的な影響を与える」(http://www.euro.who.int/en/health-topics/noncommunicable-diseases/mental-health/news/news/2010/15/childrens-right-to-family-life/definition-intellectual-disability) この定義には、WHOの国際疾病分類ICD10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版)で心理的発達の障害として分類され、そのため発達障害に入れられている自閉スペクトラム症も含まれる。

18)ISTAT による2005年の調査の中の教育に関する最新の公式細分データ http://dati.disabilitaincifre.it/dawinciMD.jsp?a1=uAqw8I8&a2=_y&n=$$$909$$$$$&o=1T1S&v=1UL0900R0ANE00000000000&p=0&sp=null&l=1&exp=1

19)http://dati.disabilitaincifre.it/dawinciMD.jsp?a1=u2iCY4Y&a2=_-&n=$$$109$$$$$&o=1S&p=0&sp=null&l=1&exp=0

20)下院 障害のある人の就労の権利に関する法律の適用に関する報告(2012-2013) 111-135 http://www.camera.it/_dati/leg17/lavori/documentiparlamentari/IndiceETesti/178/001/INTERO.pdf

21)ISTAT, La disabilita in Italia Il quadro della statistica ufficiale, 2009, pag. 102
http://www3.istat.it/dati/catalogo/20100513_00/arg_09_37_la_disabilita_in_Italia.pdf

22)ISTAT, Disabilita in cifre, 2013, http://dati.disabilitaincifre.it/dawinciMD.jsp?a1=u2i5Y4Y&a2=_-&n=$$$909$$$$$&o=1R1M&v=1UT0904M0ANE00000010000&p=0&sp=null&l=0&exp=0

23)国家統計局(ISTAT)は毎月男女別雇用率と失業率を合計人数と割合で発表している。残念ながら、障害のある男女の雇用率と失業率は発表されない。ISTAT, Disabilita in cifre, 2005, http://dati.disabilitaincifre.it/dawinciMD.jsp?a1=uAmM8I8&a2=_y&n=$$$909$$$$$&o=1R1M&v=1UL0904O0ANE0000000010000&p=0&sp=null&l=1&exp=0

24)http://www.nuovowelfare.it/nuovoWelfare/store/fileStore/File/STUDI%20e%20RICERCHE/DonneDisabili/PercorsoLavorativoDonne_Libro.pdf
※転載者注:現在はこのリンクにはつながらない。

25)Jacobs Institute of Women's Health, Breast and cervical cancer screening disparities associated with disability severity, Elsevier Inc 2014, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24439941

26)http://www.solideadonne.org/pdf/legislazione/scheda_legge_66_1996.pdf※転載者注:現在はこのリンクにはつながらない。
同法の受益者は性行為を強制された成人・未成年の男女である。子どもに特別な保護が与えられる。

27)権利・機会均等省から委託され、国家統計局(ISTAT)によって2007年1月から10月まで実施された、女性の安全に関する調査結果に基づく「女性に対する暴力と虐待」及びISTATによって2008年から2009年まで実施された「嫌がらせと性的嫌がらせ」

28)Sobsey, 1994, Reynolds, 1997で報告、Rousso 2000に引用

29)http://www3.istat.it/dati/catalogo/20091012_00/Inf_08_07_violenza_contro_donne_2006.pdf

30)http://www.istat.it/it/files/2015/06/Violenze_contro_le_donne.pdf?title=Violenza+contro+le+donne+-+05%2Fgiu%2F2015+-+Testo+integrale.pdf

31)http://www.censis.it/5?shadow_evento=117959

32)Rapporto annuale ISTAT 2014 ? nuove sfide per il sistema di welfare

86)http://www.superando.it/?s=barriere+architettonicheを参照

87)http://www.superando.it/?s=ponte+di+Calatrava&paged=1を参照

100)www.superando.itを参照。≪istituzionalizzazione≫という見出し語を検索エンジンで使用

101)Beadle-Brown J and Kozma A (2007): Deinstitutionalisation and community living ? outcomes and costs DECLOC): report of a European Study. Volume 3: Country Reports. Canterbury: Tizard Centre, University of Kent.

102)ISTAT 2013. I presidi residenziali socio-assistenziali e socio-sanitari, Gli interventi e i servizi sociali dei comuni.

103)同書

104)Rapporto Osserva salute - Stato di salute e qualità dell'assistenza nelle regioni italiane 2014. Salute e disabilità

105)Rapporto annuale ISTAT 2014 ? nuove sfide per il sistema di welfare

106)Decree of the Ministry of Lavour and Social Policies 14 May 2015 “Allocation of the tributary financial resources to the Fund for non-self-sufficiency, for the year 2015.”, art. 3.

107)Deliberation 3rd June 2014, n. 444L.R. n. 66/2008 “Establishment of the regional fund for non-self-sufficiency”. Year 2014: allocation to the Zone/District of the fund for non-self-sufficiency.11.6.2014 ? Bollettino ufficiale della regione toscana - N. 23

108)ISTAT, Disability in Italy. Il quadro della statistica ufficiale, 2009

109)Censis, 3rdissue of the ≪Diario della transizione≫, 2014

118)Conversione in legge del D.L. 30 gennaio 1971, n. 5 e nuove norme in favore dei mutilati e dinvalidi civili.

119)Legge-quadro in materia di formazione professionale

120)Legge-quadro per l'assistenza, l'integrazione sociale e i diritti delle persone handicappate.

121)ISTAT: La disabilita? in Italia - Il quadro della statistica ufficiale (2009) http://www3.istat.it/dati/catalogo/20100513_00/arg_09_37_la_disabilita_in_Italia.pdf

122) Associazione TreeLLLe, Caritas Italiana e Fondazione Agnelli Glialunni con disabilita? nella scuola italiana: bilancio e proposte, 2011

123)ISTAT : L’integrazione degli alunni con disabilita? nelle scuole primarie e secondarie di primo grado statali e non statali. Anno scolastico 2014-2015 http://www.istat.it/it/archivio/176952

124)Andrea Gavosto, direttore della Fondazione Giovanni Agnelli, La Stampa, 12.9.2011

125)支援教員M.D.F.の再雇用に関する訴訟における児童・青年・成人精神神経科医 Dr. F. N.からトリエステ控訴裁判所雇用セクションRL 148/2013への専門家の意見の抜粋ct 192/2012

126)Gianluca Nicoletti : ≪ Arrestate a scuola: maltrattavano il ragazzo autistico a loro affidato ≫ La stampa, 8/04/2013.

127)Corriere Del Veneto : ≪ Bimbo Autistico Maltrattato all’asilo. Inchiesta Della Scuola Sulla Maestra ≫, 30 dicembre 2014

128)N. R.G. 2014/2976 Civil Court of Livorno

129)Istat 2013, “L’integrazione degli alunni con disabilita nelle scuole primarie e secondarie di primo grado statali e non statali. Anno scolastico 2011-2012

130)Censis, 3° issue of the ≪Diario della transizione≫, 2014

131)PdL 2444 AC

132)ISTAT, 2015: Inclusione sociale delle persone con limitazioni funzionali, invalidita? o cronicita? gravi, Anno 2013

133)国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)障害のある人の教育の権利に関するテーマ別研究(UN Doc A/HRC/25/29), 18.12.2013, para. 7.

139)議会への障害のある人の雇用の権利に関する基準を含む法律の実施に関する第7回報告(2012- 2013)。労働社会政策省に提出され、2015年8月4日に大統領に送信。イタリア下院DOC CLXXVIII, n. 1

140)www.condicio.itを参照

141)議会への障害のある人の労働の権利に関する基準を含む法律の実施状況に関する第5回報告 (2008-2009)