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障害インクルーシブなポスト2015年開発目標
国連第8回障害者権利条約締約国会議に参加して

カマル ラミチャネ(Kamal Lamichhane)
筑波大学教育開発国際協力研究センター 准教授

国連経済社会局のお招きにより、私は6月9日から12日にニューヨークの国連本部で行われた第8回障害者権利条約締約国会議に参加しました。2008年以降、国連は毎年、障害者権利条約締約国会議を開催しています。国連安全保障委員会の全会一致で承認された障害者権利条約は2008年に発効され、この時20カ国がこの条約を批准しました。

今年の会議のテーマは、“ポスト2015年開発枠組みにおける障害者の権利の主流化”。本締約国会議の前に、幾つかのイベントが市民社会グループによって開催されました。本大会が行われている中、障害者団体や様々な国の国連代表部がスポンサーとなり50近くのサイドイベントも同時に行われました。

第1回ラウンドパネルディスカッション「貧困削減や不平等の軽減における障害の主流化(Mainstreaming disability in reduction of poverty and inequality)」に参加し、私はポスト2015年開発アジェンダが障害インクルーシブであることの必要性を強調し、政府や他のステークホルダーが障害を慈善ではなく投資として考察するように強く訴えました。ネパールやフィリピンを含めた様々な国々からの教育の役割に関する実証的なエビデンスを紹介し、これは労働市場への参加の増進だけではなく貧困削減や不平等の軽減の後押しにもなると述べました。

加えて、高い障害の発生率と合わせて学校教育のレベルの低さと高い貧困率の調査結果を幾つか紹介をし、この課題を扱う政府の関心を集め、教育への投資を増やし、貧困削減や不平等を軽減し障害者にとって労働市場の参加が可能である環境を開拓するように効果的に障害インクルーシブな貧困軽減戦略を実施することを政府に強く求めました。同時に、障害者がポスト2015年の持続可能な開発目標(SDGs)の実施やモニタリングのプロセスに参加する必要性も強調しました。私の隣にいたブラジルの国連代表部が議長を務めたパネルでは、Rocío Soledad Florentín Gómez氏(National Secretariat for the Social Integration of People with Disabilities)やTiina Nummi-Södergren氏(My Right, Civil Society Organisation)、障害者の権利に関する特別報告者であるCatalina Devandas Aguilar氏がいました。彼らも同様に、SDGs達成にむけた障害のターゲットや指標の開発の必要性を強調していました。150カ国以上がこのイベントに参加していました。そして、6月12日にDESAやDSPDが運営している障害や開発に関するフォーラムに参加し、様々な専門家が障害と災害に着目したSDGsの議論を行いました。約9,000人の死者、20万人の負傷者、住む場所を失った何千もの人々や孤児を生み出したネパールで起きた最近の壊滅的な地震の事例を紹介し、障害インクルーシブなリスク軽減戦略の開発の必要性を強調しました。加えてネパールの復興への取組みに向けた支援を行っている国連や他の機関に訴え、研究者、機関を含むすべての関係者に、震災を経験した障害者のニーズ解明の研究と、生まれつきもしくは病気によって障害になった人々の問題とは違った、災害などによって障害になった人の考えられる心理社会的な問題の対応について協力して取り組むことを求めました。

締約国会議は国連副事務総長によって公式な開会挨拶が行われました。障害者権利条約を効果的に実施するためのコミットメントを表したカントリーレポートを各国政府の代表が発表していました。近づきつつあるSDGsにおける障害の主流化や、SDGsなどの目標に向けた実施やモニタリングのプロセスにおける障害者の完全なる参加の実現の方法は、今年の締約国会議において中核となる議題でありました。


日本障害者リハビリテーション協会 仮訳

原文はこちらから(英語)