音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

障害者権利条約文部科学省関連の項目についての意見書-2008年8月26日第4回政府意見交換会

JDF(日本障害フォーラム)

1.インクルーシブ教育への政策の転換の確認

(1)大臣答弁などからの確認

2006年6月14日衆議院本会議において、小坂憲次文部科学大臣(当時)は次のように答弁している。この答弁に変更はないことを確認し、「現場の体制整備」の方向性について明らかにされたい。ちなみに権利条約の第24条2項(c)では合理的配慮、同項(e)においては必要な支援を「完全なインクルージョンという目的に則して」提供することと規定した。また、条約の原則の一つに「社会への完全かつ効果的な参加とインクルージョン」(第3条)が規定された。この点に留意してお答えいただきたい。

「委員が御指摘いただきましたように、私も流れはインクルージョンの流れであるということをここではっきりさせていきたい、こう思います。その上で、現場の体制整備を行っていきたい」

(2)上記(1)に関連して初等中等教育局の見解

障害のある子どもが通常学級で学ぶための条件整備について、初等中等教育局としての見解を明らかにされたい。

(3)条約第24条の「インクルーシブ」の解釈

第24条第1項柱書きでは「あらゆる段階におけるインクルーシブな教育」とあり、第2項(b)では「自己の住む地域社会でインクルーシブで質の高い教育にアクセスできること」となっている。この「インクルーシブ」という文言をどのように解釈しているのか見解を明らかにされたい。

(4)障害をもつ子どもに対する異別取り扱いについて

学校教育法施行令第5条によって、当初より記載されている市町村の学齢簿から同施行令第22条の3に規定されている程度の障害をもつ子どもは都道府県に通知され、障害のない子どもと別扱いをされることで、市町村の教育委員会から就学通知が送付されないことになる。これは、障害を理由とした異別取り扱いであり、条約の規定するインクルーシブ教育に反すると思われるが、見解を明らかにされたい。

【参考 関連条文】

■学校教育法施行令第5条

市町村の教育委員会は、就学予定者(法第17条第1項又は第2項の規定により、翌学年の初めから小学校、中学校、中等教育学校又は特別支援学校に就学させるべき者をいう。以下同じ。)で次に掲げる者について、その保護者に対し、翌学年の初めから2月前までに、小学校又は中学校の入学期日を通知しなければならない。

1.就学予定者のうち、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。)で、その障害が、第22条の3の表に規定する程度のもの(以下「視覚障害者等」という。)以外の者

2.視覚障害者等のうち、市町村の教育委員会が、その者の障害の状態に照らして、当該市町村の設置する小学校又は中学校において適切な教育を受けることができる特別の事情があると認める者(以下「認定就学者」という。)

2.教育を受けるために必要な支援や合理的配慮について

(1)障害のある子どもが教育を受けるための支援について

第2条や第24条等では、合理的配慮について定義し、合理的配慮義務を国に課している。合理的配慮においては第2条で『不釣合いなまたは過重な負担』がある場合には行わなくてもよいという規定がなされている。しかし、特に義務教育課程では、他の者との平等を基礎とする限り、当該児童が学校教育を受けるために欠かすことのできない「配慮」をしないことは認められないと考えられるが、見解を明らかにされたい。

(2)合理的配慮義務を履行する体制の整備

第2条、第4条、第24条2項(c)の規定により、合理的配慮を行うための施策・制度を通う学校如何に関わらず、すべての障害をもつ子供に適用すべきである。これに関して貴省の見解を明らかにされたい。

(3)第24条1項(b)および(c)

第1項(b)「障害のある人が……(その)能力を最大限度まで発達させること」ならびに(c)「自由な社会に効果的に参加すること」を実現するために、通常学級をふくむすべての教育機関において教育条件の改善が急務であり、個人個人のニーズにあった支援が必要となるが、どのように考えるか見解を明らかにされたい。

(4)小中学校の施設設備の整備

小中学校の施設設備の整備を具体的にすすめるための計画を明らかにされたい。平成19年7月24日改正の小学校(中学校)施設整備指針は、「総則」において「特別支援教育推進のための施設」「施設のバリアフリー化」等を掲げている。しかし、これはあくまでも「指針」であり、拘束力はない。具体化のためにはどのようにお考えか。

3.第24条第3項に関連して

(1)言語としての手話

第2条において手話は音声言語と同様に言語であると定義づけられた。第24条第3項(b)において、「手話の習得及びろう社会の言語的なアイデンティティの促進を容易にすること」と規定されている。インクルーシブな教育制度にあっても、「手話の習得及びろう社会の言語的なアイデンティティの促進」を確保するためには、ろうの子どもの集団での教育が必要であり、手話を言語として位置づけたろう教育の確立が必要である。現在のろう学校のありかたについて、どのような認識をお持ちか見解を明らかにされたい。

(2)難聴者等について

聴覚障害者には、ろう者、難聴者、中途失聴者が存在する。難聴の子どもは、聴覚を活用して成長しており、難聴の子どもの教育に関しては、聴覚を活用した日本語学習・学科学習ができるように、支援が行われなければならないと考える。また、聞こえの程度もさまざまであり、一人ひとりにあった支援が必要であるが、貴省の見解をお聞きしたい。

(3)deafblind(盲ろう)および盲ろう者に関連して

第24条3項(c)で、原文は"deafblind"と記述されているのに対し、政府仮訳文では、「視覚障害と聴覚障害の重複障害のある者」となっている。世界の多くの国では、「盲ろう」を独自の障害区分として位置づけられているので、「盲ろう者」とあらためるべきと考える。貴省として、「盲ろう」を独自の障害として考えているのか、見解を明らかにされたい。

(4)特別支援学校の課題

条約の内容に照らして、特別支援学校の課題について、とくに知的障害校の「過大化・狭隘化」についての認識、盲学校、ろう学校の統廃合の見解を明らかにされたい。

(財)日本障害者リハビリテーション協会注:
本意見書は、2008年8月26日(火)14時30分より文部科学省旧庁舎保存棟6階第二講堂において行われた『障害者権利条約に係る意見交換会』のために作成された。