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国連障害者の権利条約署名式関連

署名式スピーチ:国際障害同盟(IDA)、国際障害コーカス (IDC)代表ギディオン・カイノ・マンデシ氏による祝辞

ギディオン・カイノ・マンデシ
国際障害同盟(IDA)、国際障害コーカス (IDC)

項目 内容
会議名 国連障害者権利条約署名式式典
発表年月 2007年3月30日

祝辞

国連障害者権利条約署名式というこの重大な式典に際し、国際障害同盟(IDA)-世界的かつ民主的な障害者団体8団体によるネットワーク-および国際障害コーカス(IDC)-70を越える国際的な障害者団体、地域的な障害者団体および国内の障害者団体と、これと連携する機関による連合体-を代表し、皆様のような著名な方々に向けて、祝辞を述べさせていただくことは、私にとって光栄でございます。本条約および選択議定書の最初の署名国になるという、深い意味のある一歩を踏み出したすべての国の皆様に対して、お祝いの言葉をお贈りいたします。

本条約の基本原則-尊厳、非差別、完全参加、尊重、平等およびアクセシビリティ-は、すべての障害者は社会の中で他の人々と同じ権利および機会を保障されなければならないという考え方を強固にするものですが、これには障害に対する人権を基本としたアプローチへのきわめて重大なパラダイムシフトを伴います。本条約には世界全体でおよそ6億5千万人の障害者が大きな期待を寄せています。それは、教育、雇用、その他の生活分野における差別のない社会、すべての人が自由にアクセスすることができる情報と物理的空間、意思決定支援が後見制度に取って代わる、法の前における平等な承認、年齢、性別、居住地、障害の種類、或いは障害が「見える」か「見えない」か、また障害が容易に発見することができないことなどによらない、コミュニティにおける完全なインクルージョンへの期待です。

完全な権利の実現へ向けた次の段階では、立法措置および行政措置を担当し、十分なリソースを振り当てられる責任者が、あらゆるレベルにおいて必要となります。その責務には、障害者の人権に関する意識向上、強制的な精神的無能力法などに見られる差別的な条件を、国内法、政策および慣習に一切つけないことの保障、条約実施のための青写真としての包括的な国内行動計画の作成、障害問題を開発課題の主流に組み込むこと、点字および手話の公式な認定、特に重度知的障害者の生活で家族が果たせる支援的な役割を高く評価すること、そして条約実施過程の全段階に障害者団体を参加させることが含まれます。

条約策定の全行程を通じて、障害者団体そしてその他の市民社会のメンバーは、最初の条約草案を起草した作業部会から特別委員会での最終段階の議論に至るまで、その生きた経験と知識とを分かち合いつつ、積極的に参加してきました。私たちは、市民社会、政府、国連機関、そして国内人権機関のすべてが効果的に協力しあってさまざまな障害を克服し、すばらしい成果を達成できることを証明しました。これまでの経験を元に、条約の監視過程のあらゆる段階において、障害者の声が引き続き聞き入れられ、尊重されること、特に障害のある非常に有能な専門家によって構成される条約監視委員会が設立されることに、私たちは勇気づけられております。更に障害者が国内および国際レベルの最高意思決定機関と政策決定機関に、代表として参加できるよう保障することにも、慎重に取り組んでいく必要があるでしょう。

貧しい暮らしをしている何百万人もの障害者を含む障害者の声が、真に届けられることを約束するために、各国政府の皆様には、南半球の障害者団体が締約国会議に参加する費用を引き続き援助していただけますようお願い申し上げます。障害と貧困は相互に関係し合っています。障害は貧困をもたらし、貧困は障害をもたらします。障害と貧困の関係は、障害のある女性や障害のある先住民が経験する差別のように多様な形を取りながら、悪化しています。このような経済的社会的格差の問題に取り組むためには、国連機関のプログラムに障害問題を盛り込むことが重要です。ユニフェム(国連女性開発基金)やユニセフ(国連児童基金)などの基金は、意識向上および世界の女性と児童の生活向上に大きく功を奏しました。長期的な目標としては、障害に対する人権に基づいたアプローチによる単独の基金が、条約実施に向けて国際的なリソースを効果的に運用できるようにすることが掲げられます。

私たちは本条約が、すべての障害者にとって大きな前進をもたらす、法的拘束力を持つ法律文書となることを確保する重大な時を迎えています。そこで各国政府の皆様には、条約と選択議定書に署名するだけでなく、批准もするということ、それもできるだけ早く、そして留保や宣言を一切つけずにしていただくことを強くお願い申し上げます。

本日署名なさる各国政府の皆様はもちろん、これまで本条約を支持し、市民社会代表と協力して取り組み、国連ボランタリー基金にご寄付いただきました各国政府の皆様にも、感謝の意をお伝えしたいと思います。そしてエクアドルのルイス・ガレゴス大使とニュージーランドのドン・マッケイ大使にも、特別委員会でリーダーシップをとっていただいたことに感謝いたします。議長団および事務局の皆様には、本条約の策定過程全体を通じて、障害者コミュニティの参加を促進してくださったことを感謝いたします。更に、本日手話通訳がありましたことにも感謝し、国連における物理的空間と情報の両方へのアクセシビリティ向上に向けて、私たちも引き続き協力していきたいと願っております。また、国連の障害問題特別報告者であるシェイカ・ヘッサ・アルタニ氏からも貴重なご支援をいただきましたことを感謝いたします。

最後に今一度、障害者の国際的なコミュニティの真価を認める機会をいただけましたことに、御礼申し上げます。私たちは障害者が完全な権利と参加を享受できる社会に向けてこの道を歩み続けていくのを楽しみにしています。それはこの重要な条約で約束されていることが現実となる社会です。私たち抜きで、私たちのことを決めないでください!