「私たちは、仲間になりたい!」
アジア太平洋障害者の「権利を実現する」インチョン戦略
わかりやすい版
国際連合
アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)
ESCAPとは、何ですか。
アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)は、国際連合のアジア太平洋地域の組織です。ESCAPは、みんながお金に困らずに、社会の一員として、今までよりもよい生活を送れる日が早く来るように、活動しています。
ESCAPは、これまで3回の「アジア太平洋障害者の10年」に取り組み、障害のある人を支援してきました。
第1回目の「10年」は、1993年から2002年まででした。
第2回目の「10年」は、2003年から2012年まででした。
今、ESCAPは、2013年から2022年までの、第3回目の「10年」に取り組んでいます。
「アジア太平洋障害者の10年」では、いつも、障害のある人の権利が本当に認められるように、社会をバリアフリーにすることをめざしています。
インチョン戦略は、第3回目の「10年」の行動計画です。
「インチョン戦略」という名前は、「10年」の行動計画が決められた場所の名前をとって、つけられました。
2012年11月に、アジア太平洋地域のいろいろな国の政府と障害のある人たちが、韓国のインチョンに集まり、インチョン戦略を決めたのです。
インチョン戦略とは、何ですか。
インチョン戦略には、10の目標があります。これらの目標に向けて、しなければならないことが27、また、その進み具合を知るための指標が62あります。この冊子では、これらのしなければならないことと指標について説明します。
私たちは、みんなのためにバリアフリーな社会が必要だということを知っています。けれども、それに向けて前進しているかどうかは、どうしたらわかるでしょうか。インチョン戦略は、すばらしい戦略です。それは、私たちがほかに何をしなければならないかがわかるように、あらゆる障害のある人についてのデータを集めることを、政府に求めています。
インチョン戦略で大切にされている考え
障害のある人は:
- 大事にされなければなりません。
- いろいろなことを自分で選べなければなりません。
- 差別されてはなりません。
- ほかのみんなと同じように、社会に参加できなければなりません。
障害があっても大丈夫!
障害のある人は:
- 学校に通ったり、仕事を持ったり、投票したり、選挙で選ばれたり、買い物に行ったり、ほかのみんながやっていることを何でもすることができる、平等な機会を持たなければなりません。
- 簡単に情報を手に入れられなければなりません。
- いろいろな場所に行くために、みんなが使う乗り物を使えなければなりません。
- 障害のある男の人と障害のある女の人は、平等に扱われなければなりません。
- 障害のある子どもは、ほかのすべての子どもと同じように、大事にされなければなりません。
- 障害のある貧しい人とその家族は、支援を受けられなければなりません。
- よい政策を作るために、政府は障害のある人のことをきちんと考え、その生活がどのくらいよくなっているかを調べなければなりません。
- 障害のある人は、地域、地方、国、そして世界というあらゆるレベルで、いろいろなことを決める活動に参加しなければなりません。
- 障害のある人は皆、自分に自信を持ち、自分の生活をよくするために、いろいろなことを知り、いろいろなスキルを持たなければなりません。
- 障害のある人の団体、障害のある人を支援する団体、障害のある人たちが助け合うためのグループ、障害のある人たちが権利を求めて活動するためのグループは、いろいろなことを決める活動に参加しなければなりません。
インチョン戦略の10の目標
目標1 障害のある貧しい人の数を減らし、障害のある人の仕事を増やす。
この目標に向けて前進しているかどうかは、どうしたらわかるでしょうか。(指標)
1.1 障害のある貧しい人の数を数える。
1.2 働いている障害のある人の数を数える。
1.3 政府の職業訓練に参加している障害のある人の数を数える。
目標2 政治活動やいろいろなことを決める活動への参加を進める。
この目標に向けて前進しているかどうかは、どうしたらわかるでしょうか。(指標)
2.1 障害のある国会議員の数を数える。
2.2 政府で障害に関する仕事をしているおもな組織に、障害のあるメンバーが何人いるか数える。
2.3 政府で男女の平等に関する仕事をしているおもな組織に、障害のあるメンバーが何人いるか数える。
2.4 障害のある人が、簡単に行けて、自分が誰に投票したかをほかの人に知らせなくてもよい投票の場所が、国の首都にいくつあるか数える。
目標3 建物や道路と、みんなが使う乗り物を使いやすくし、知識や情報を手に入れたり、自分の気持ちをほかの人に伝えたりすることが、簡単にできるようにする。
この目標に向けて前進しているかどうかは、どうしたらわかるでしょうか。(指標)
3.1 使いやすい政府の建物の数を数える。
3.2 使いやすい国際空港の数を数える。
3.3 字幕や手話通訳がついている、みんなが見るニュース番組の数を数える。
3.4 障害のある人が利用できる、政府の文書やウェブサイトの数を数える。
3.5 補聴器や白杖、車いすなどの支援機器を持つ障害のある人の数を数える。
目標4 障害のある人に対する政府の支援(現金、ガイドヘルパーなど支援者、介助者、カウンセリング、薬、医療、いろいろな治療法、リハビリテーション、そのほかの保健サービス)を増やす。
この目標に向けて前進しているかどうかは、どうしたらわかるでしょうか。(指標)
4.1 政府の保健ケアプログラムを利用している障害のある人の数を数える。
4.2 障害のある人が貧しいときや病気のときに支援しているかどうか、政府に尋ねる。
4.3 障害のある人が地域社会で自立した生活を送れるように支援しているかどうか、政府に尋ねる。
目標5 障害のある子どもをさらに支援し、教育する。
この目標に向けて前進しているかどうかは、どうしたらわかるでしょうか。(指標)
5.1 支援を受けている、障害のあるとても幼い子どもの数を数える。
5.2 小学校に通っている、障害のある子どもの数を数える。
5.3 中学校や高校に通っている、障害のある子どもの数を数える。
目標6 障害のある男の人と障害のある女の人を平等に扱い、障害のある女の人が自信を持って地域社会で自立した生活を送るために、いろいろなことを知り、いろいろなスキルを持てるよう支援する。
この目標に向けて前進しているかどうかは、どうしたらわかるでしょうか。(指標)
6.1 女の人の平等に関する国の行動計画に、障害のある女の人と障害のある女の子を参加させている政府がいくつあるか数える。
6.2 障害のある女の人の国会議員の数を数える。
6.3 性と生殖に関する保健サービスを利用できる、障害のある女の人と障害のある女の子の数を数える。
6.4 障害のある女の人と障害のある女の子を、虐待や暴力から守るプログラムの数を数える。
6.5 障害のある女の人と障害のある女の子が、暴力や虐待から立ち直れるよう支援するプログラムの数を数える。
目標7 災害が起きたときに、障害のある人が必ず無事でいられるようにする。
この目標に向けて前進しているかどうかは、どうしたらわかるでしょうか。(指標)
7.1 障害のある人のことも考えた防災計画の数を数える。
7.2 障害のある人の救助方法も取り入れた、防災の専門家のための訓練プログラムの数を数える。
7.3 使いやすい避難所と災害救援所の数を数える。
目標8 障害のある人のデータを、ほかの国と比較できる、信頼できるデータにする。
この目標に向けて前進しているかどうかは、どうしたらわかるでしょうか。(指標)
8.1 国内の障害のある人の数を数える。
8.2 アジア太平洋地域で、インチョン戦略の進み具合を知る指標の基準となるデータを持っている政府の数を数える。
8.3 障害のある女の人と障害のある女の子に関するデータがあるかどうか、政府に尋ねる。
目標9 障害者権利条約(CRPD)を実施し、国内の法律もこれと同じようなものにする。
この目標に向けて前進しているかどうかは、どうしたらわかるでしょうか。(指標)
9.1 障害者権利条約を守ることを約束した政府の数を数える。
9.2 障害があるからという理由で差別をしてはいけない、と決めている法律を持つ政府の数を数える。
目標10 小地域や地域の中で、また、地域と地域の間での協力をさらに進める。
この目標に向けて前進しているかどうかは、どうしたらわかるでしょうか。(指標)
10.1-3 アジア太平洋地域の障害のある人の権利を支援するために、どれだけのお金が使われているか調べる。
10.4-10 アジア太平洋地域で障害の問題に取り組んでいる国際機関の数を数える。
インチョン戦略の10の目標を読んでくださって、ありがとうございました!
付録1
この、わかりやすい版「私たちは、仲間になりたい!」は、どのようにして作られたのでしょうか
この『わかりやすいインチョン戦略』の作成には、知的障害のある人たちが参加してくれました。
アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)、アジア太平洋障害者センター(APCD)、メコン川流域知的障害者連合ネットワークは、2013年9月6日、バンコクで「わかりやすいインチョン戦略検討会議」を開きました。カンボジア、日本、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムから、障害のある人とその家族、支援してくれている人たち100人が、この会議に参加しました。そして、インチョン戦略の説明と、インチョン戦略の考えについて、自分たちの意見を発表しました。会議に参加し、力を貸してくださった皆さん、ありがとうございました。
付録2
この冊子のさし絵は、耳が不自由なイラストレーターのプロムス・プラモテ(Pramote Prommes)さんが描いてくれました。
私の名前はプロムス・プラモテです。私は耳が不自由なイラストレーターです。 私のモットーは、「意志あるところに道は開ける」です。
「私たちは、仲間になりたい!」
ESCAPは「アジア太平洋障害者の10年(2013-2022)」の事務局です。
この冊子は、韓国政府から惜しみない支援をいただき、作成することができました。
www.maketherightreal.net
2014年12月印刷
ST/ESCAP/2709
この冊子は、ESCAPではなく、長瀬修氏が監訳し、(公財)日本障害者リハビリテーション協会が翻訳しました。