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アジア太平洋障害者の10年(2013-2022)に関する閣僚宣言草稿、およびアジア太平洋障害者の「権利を実現する」インチョン戦略草案(仮訳)

Draft ministerial declaration on the Asian and Pacific Decade of Persons with Disabilities, 2013-2022, and the draft Incheon strategy to “make the right real” for persons with disabilities in Asia and the Pacific
検討用文書

E/ESCAP/APDDR(3)/WP.1
2012年6月29日


アジア太平洋経済社会委員会

アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施について最終的に検証するためのハイレベル政府間会合
2012年10月29日~11月2日
大韓民国・インチョン(仁川)

暫定議題(アジェンダ)第3項目
アジア太平洋障害者の10年(2013-2022)に関する閣僚宣言草稿、およびアジア太平洋障害者の「権利を実現する」インチョン戦略草案に関する考察

目次

I. アジア太平洋障害者の10年(2013-2022)に関する閣僚宣言草稿
II. アジア太平洋障害者の「権利を実現する」インチョン戦略草案
A. 背景
B. 主要な原則および政策の方向性
C. インチョン目標およびターゲット
目標:
貧困を削減し、労働および雇用の見込みを改善すること。
政治プロセスおよび政策決定への参加を促進すること。
物理環境、公共交通、知識・情報・コミュニケーションへのアクセスを高めること。
社会保護を強化すること。
障害のある子どもへの早期関与と早期教育を広めること。
目標 6:性(ジェンダー)の平等と女性のエンパワーメントを保障すること。
目標 7:災害の準備および対応に障害の視点のインクルージョンを保障すること。
目標 8:障害に関するデータの信頼性および比較可能性を向上させること。
目標 9:「障害者の権利に関する条約」の批准および実施を推進し、各国の法制度を権利条約と整合させること。
目標 10:小地域、地域内および地域間の協力を推進すること。
D. 「10年」を効果的に実施するためのモダリティ:国レベル、小地域レベルおよび地域レベル
国(National) レベル
小地域(Subregional)レベル
地域(Regional)レベル
附属書:委託事項: アジア太平洋障害者の10年に関する地域 ワーキンググループ

I. アジア太平洋障害者の10年(2013-2022)に関する閣僚宣言草稿

私たち、国際連合アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の加盟国政府および準加盟国政府の閣僚および代表は、2012年10月29日から同年11月2日まで大韓民国・インチョンにおいて開催された「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施について最終的に検証するためのハイレベル政府間会合」に集まり、

PP1. 「障害者に関する世界行動計画」を採択した1982年12月3日付け国連総会決議37/52および「障害者の機会均等化に関する基準規則」を採択した1983年12月20日付け国連総会決議48/96において、障害者が開発のあらゆる側面で開発の主体および受益者として認識されていることを想起し、

PP2. 2008年5月3日に効力を発生することとなる「障害者の権利に関する条約」およびその選択議定書を採択した2006年12月13日付け国連総会決議61/106を想起し、

PP3. 障害者を含む貧困層および困窮した状況下で生活する人たちに政策および活動の重点を置き、その人たちがミレニアム開発目標達成に向けた進展から利益を享受するようにしなければならないことをなかんずく認識するミレニアム開発目標を達成するために一致団結することを継続的に公約する2010年9月22日付け国連総会決議65/1を想起し、

PP4. この種の地域10年計画を世界ではじめて宣言した「アジア太平洋障害者の10年」(1993-2002)に関する1992年4月23日付け委員会決議48/3を想起し、

PP5. 「アジア太平洋障害者の10年」(1993-2002)をさらに10年(2003-2012)延長することを宣言した、21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブでバリアフリーなかつ権利に基づく社会の促進に関する2002年5月22日付け委員会決議58/4を想起し、

PP6. 委員会が加盟国政府および準加盟国政府にびわこミレニアム・フレームワーク実施への支援をなかんずく要請した「アジア太平洋障害者の10年」(2003-2012)の間に採択された「21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブでバリアフリーなかつ権利に基づく社会に向けた行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の地域的な実施に関する2003年9月4日付け委員会決議59/3を想起し、

PP7. 「アジア太平洋障害者の10年」(2003-2012)の最終年である2012年に「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」および「びわこプラスファイブ」の実施について検証するハイレベル政府間会合を召集することを命じた「21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブでバリアフリーなかつ権利に基づく社会に向けた行動のためのびわこミレニアム・フレームワークおよびびわこプラスファイブ」の地域的な実施に関する2008年4月30日付け委員会決議64/8を想起し、

PP8. ハイレベル政府間会合につながる準備プロセスにアジア太平洋地域の障害者団体を含むすべての主要なステークホルダーが関与することを奨励した「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施について最終的に検証するためのハイレベル政府間会合」に向けた地域的な準備に関する2010年5月19日付け委員会決議66/11を想起し、

PP9. 「アジア太平洋障害者の権利を実現する10年」(2013-2022)を宣言するとともに、加盟国政府および準加盟国政府に対して、ハイレベル政府間会合に積極的に参加すること、そして「障害者の権利に関する条約」に定められた諸原則および義務に基づく「10年」を実施する指針となる戦略的な枠組みを検討および採用することを促す2012年5月23日付け委員会決議68/7 を想起し、

PP10. アジア太平洋地域では、総人口の約15%にあたる推計6億5,000万人が障害をもって生活し、そのうち80%が開発途上国に暮らしていることに留意し、

PP11. 1993年から2012年にわたって2度の「アジア太平洋の10年」が実施される過程で、ESCAP加盟国政府および準加盟国政府が、とりわけ政策的・制度的な関与や法制度およびエンパワーメントにおける新たな進展を通じて、インクルーシブな開発に向けた権利に基づくアプローチのための基盤を確立する観点から達成してきた進歩を歓迎し、

PP12. 市民社会、とりわけ障害者の当事者団体および支援団体が、多様な障害者の権利に関する継続的な啓発活動、良好な実践例の採用、政策的な対話への関与などを通じて達成してきた進歩に感謝とともに留意し、

PP13. 太平洋地域のリーダーたちが、ポート・ヴィラで開催された第14回太平洋諸島フォーラムにおいて、2010年8月5日付けのコミュニケを通じて、障害者の権利を保護・促進し、障害をインクルーシブする太平洋地域を築き上げるための枠組みを提供し、「障害者の権利に関する条約」および障害に関連するその他の人権文書の実施に向けたステークホルダーの関与を強化する「障害に関する太平洋地域戦略2010-2015」を強く支持していることを念頭に置き、

PP14. インドネシア・バリで開催された第19回ASEAN首脳会議が、ASEAN地域の経済・政治保障・社会文化の全分野を通じたASEANの諸政策・諸制度のなかで障害者が有効に参加でき障害の観点が主流化されることをめざして、ASEAN地域に暮らす障害者の役割と社会参加の強化に関する「バリ宣言」を2011年11月17日付けで採択し、あわせて2011~2020年を「ASEAN障害者の10年」にすると宣言したことに留意し、

PP15. 大韓民国・プサン(釜山)で開催された「第4 回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラム」が、2011年12月1日付けで「効果的な開発協力のための釜山パートナーシップ」を採択し、効果的な開発に向けた協力の基盤を形成するために障害に関する国際的な関与が重要であることを認識したことを歓迎し、

PP16. 「障害者の権利に関する条約」を実施するための包括的で分野横断型の貧困削減戦略を提供する、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)、国際障害・開発コンソーシアム(IDDC)の共同文書である「コミュニティに根ざしたリハビリテーション(CBR)ガイドライン」に留意し、

PP17. 「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」の成果文書として国際連合加盟国が2012年6月22日付けで採択した「私たちが望む未来」において、持続可能な開発への関与の実現を加速させる対策としてなかんずく障害者を挙げてそのインクルージョンの権利を認識したことを想起し、

PP18. アジア太平洋地域の障害者が経済的・社会的な機会や政治参加への公正なアクセスの権利を有することが保障されるためには、いまだに数多くの課題に対処しなければならないことに懸念とともに留意し、

PP19. アジア太平洋地域で進行している急速な人口高齢化の長期的な結果に関して障害の課題に対処する必要性を強調し、

PP20. 過去30年間でもっとも多くの自然災害が発生しているアジア太平洋地域において、障害者が災害の被害を受ける度合いが高いことに深刻な懸念とともに留意し、

PP21. 障害者に対するネガティブな偏見や差別的態度がいまだに横行していることにあわせて留意し、

PP.22. アクセスを高めるための新しい技術を利用するなど、障害者の権利を促進する機会が高まりつつあることを心に留め、

OP1. 新たな「アジア太平洋障害者の権利を実現する10年」(2013-2022)の間にアジア太平洋地域のすべての障害者の権利を保障、促進および擁護するインクルーシブな社会の地域的なビジョンの達成を加速させる行動を引き起こすために、添付の通り「アジア太平洋障害者の『権利を実現する』インチョン戦略」(以下、インチョン戦略と称する)を採択し、

OP.2. 政府が、障害者の権利を保障、促進および擁護するための中心的な役割を果たすことを認識し、

OP2. 2022年までにインチョン目標およびターゲットに到達するための行動を促進することで本宣言およびインチョン戦略を実施することを誓い、

OP3. 以下に掲げるように、関係するすべてのステークホルダーが、本宣言およびインチョン戦略の実施に貢献する全地域のパートナーシップに参加するように呼びかけ、

(a) 東南アジア諸国連合(ASEAN)、経済協力機構(ECO)事務局、太平洋諸島フォーラム(PIF)、上海協力機構(SCO)、南アジア地域協力連合(SAARC)といった、小地域の政府間組織が、ESCAPと連携しながら、障害をインクルーシブする開発に向けた小地域レベルの協力関係を促進および強化すること。

(b)   開発協力機構が、その政策、計画および制度について、障害をインクルーシブする度合いを強化すること。

(c) 世界銀行およびアジア開発銀行が、その技術的・財政的資源を、アジア太平洋地域において障害をインクルーシブする開発が促進されるように活用すること。

(d) 国際連合システムの加盟国が、アジア太平洋地域において障害をインクルーシブする開発が促進されるように、国際連合開発グループ(UNDG)や国連カントリーチーム(UNCTs)といった既存の諸機関を有効に利用するなどして「一体となった任務遂行」を行い、多様な部門における2015年以降の開発計画に障害分野が含まれるように促すこと。

(e) 市民社会団体、とりわけ障害者団体および支援団体が、多様な障害者グループを支援し、政策・制度の開発および実行に貢献するなどして、障害者の要望やニーズに沿った継続的な「10年」の対応を行うこと。

(d) 民間部門が、障害をインクルーシブする事業の実践を促進すること。

OP4. ESCAP事務局長に対して、以下の事柄を要請する。

(a) 加盟国政府および準加盟国政府が、ほかの関係団体と協力して本宣言およびインチョン宣言を完全かつ有効に実施できるように、優先して支援を行うこと。

(b) 本宣言およびインチョン宣言を完全かつ有効に実施できるようにステークホルダーを関与させ、参加を奨励すること。

(c) 本ハイレベル政府間会合の成果文書を第69回セッションで委員会に提出し、承認を得ること。

(d) 以後、「10年」が終了するまで、本宣言の実施の進捗状況を3年ごとに委員会に報告すること。

(e) ハイレベル政府間会合を召集して、「10年」の中間時点(2017年)で「10年」の進捗状況を検証し、「10年」の結末(2022年)を締めくくること。

II. アジア太平洋障害者の「権利を実現する」インチョン戦略草案

1. インチョン戦略の構成案は以下の通りである。

A. 背景
B. 主要な原則および政策の方向性
C. インチョン目標およびターゲット
D. 効果的に実施するためのモダリティ:国レベル、小地域レベル、地域レベル

A. 背景

2. アジア太平洋障害者の「権利を実現する」インチョン戦略草案の策定は、2度にわたって実施された「アジア太平洋障害者の10年」(1993-2002および2003-2012)のほか、2006年の国際連合総会で採択された歴史的な「障害者の権利に関する条約」における諸々の経験からもたらされたものである。

3. インチョン戦略草案の策定は、政府、障害者団体・支援団体、およびその他の主要なステークホルダーの貢献のお陰である。以下に示す地域コンサルテーションを通じて得られたフィードバックおよび知見を反映している。すなわち、「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)―行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク―の実施について検証するための専門家会議兼ステークホルダー・コンサルテーション(2011年6月23日~25日・バンコク)、「社会開発に関する委員会」第2セッション(2010年10月19日~21日・バンコク)、「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施について最終的に検証するためのハイレベル政府間会合に向けた地域ステークホルダー・コンサルテーション」(2011年12月14日~16日・バンコク)、「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施について最終的に検証するためのハイレベル政府間会合に向けた地域予備会議(2012年3月14日~16日・バンコク)である。

4. アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)を最終的に検証するためのESCAP 地域調査に対する政府および障害者団体・支援団体からの回答によって、インチョン戦略を策定するにあたり豊富なエビデンスの基盤が得られた。

5. インチョン戦略は、「アジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブでバリアフリーなかつ権利に基づく社会に向けた活動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」「びわこプラスファイブ」および「障害者の権利に関する条約」を繰り返すことを意図したものではない。これらはいずれも、障害の分野における地域活動の包括的な政策の枠組みとして、今後も継続的に役割を果たすのである。

6. ミレニアム開発目標1と同様に、インチョン目標および指標は、新たな「10年」(2013-2022)の間に優先度の高い目標およびターゲットを達成することに特に重点を置き、実施のスピードが速まるように、また、アジア太平洋地域での進捗状況の測定を容易にするため、期間を区切っている。

B. 主要な原則および政策の方向性

7. インチョン戦略は、国連「障害者の権利に関する条約」の一般原則に基づくものである。

(a) 固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含む。)及び個人の自立の尊重
(b) 無差別
(c) 社会への完全かつ効果的な参加及び包容
(d) 差異の尊重並びに人間の多様性の一部及び人類の一員としての障害者の受け入れ
(e) 機会の均等
(f) 施設及びサービス等の利用の容易さ
(g) 男女の平等。
(h) 障害のある児童の発達しつつある能力の尊重及び障害のある児童がその同一性を保持する権利の尊重 

*上記(a)~(h)の訳は、政府公定訳案(2009年3月3日版より)

8. アジア太平洋地域の障害者の権利を実現しそれを保護するために、インチョン戦略は以下に定める政策の方向性を強調する。

9. 以下の各項を保障するように最大限の努力をはかる。

(a) 障害に基づく差別を撤廃するために、権利を実現する支えとなる司法、行政その他の対策を採択、実施、検証、強化する。

(b) 開発政策およびプログラムは、障害がインクルーシブでかつジェンダー〔男女平等〕に配慮したものとし、障害者がその権利を実現できるようにユニバーサルデザインと技術的な進展とを結びつける可能性を引き出すようにする。

(c) 開発政策およびプログラムは、生活に困窮する障害者およびその家族の基本的なニーズに対処するものとする。

(d) エビデンスに基づく政策立案を行うために、障害に関する男女別データを厳密な形で収集、分析する。

(e) 開発プログラムおよび生活の全側面に関わるサービス領域に障害者がいっそう参加できるように、障害に配慮した計画に基づく国家、準国家、地方(政府)の政策およびプログラムは、障害インクルーシブな開発に重点を置く。

(f) 障害がインクルーシブな開発のあらゆるレベルにおいて、必要な財政的支援が提供されるように保障する。

(g) 「10年」の実施を促進し検証するために、また関連する好実践例を共有するために、部門横断型の協力を強化することで、小地域と地域とリンクした、国家、準国家、地方(政府)のコーディネーションをさらに強固なものにする。

(h) すべての障害者が、社会的・経済的な地位、宗教、民族および門地に関わりなく、開発イニシアティブ、とりわけ貧困削減プログラムに参画およびその利益を享受できることを保障するために、コミュニティに根ざしたインクルーシブな開発を促進する。

(i) 障害者は、ほかの人と同等の選択権を有し、メインストリーム〔主流〕のコミュニティ生活の一員となる。その選択には、本人が望む場合には独立して生活する選択肢も含まれる。

(j) 障害者は、合理的配慮を提供され、また経済的、地理的、言語的、その他の文化的な多様性に配慮する必要性が考慮されたうえで、物理的環境、公共交通機関、知識および情報伝達システムに、利用可能な方式でアクセスできるようになる。これらは一体として障害者の権利を実現するために不可欠な架け橋となる要素である。

(k) 多様な障害者グループがエンパワーメントされる。それらのグループには以下の障害者が含まれるが、これに限定するものではない。障害のある少女・少年、障害のある青年、障害のある女性、知的障害者・学習障害者・発達障害者、自閉症者、心理・社会的障害者、盲ろう者、重複障害者、全身性障害者、障害のある高齢者、HIV感染者、障害のある先住民、ハンセン病患者、家族アドボカシー団体、また、貧民街・過疎地域・遠隔地や島の環礁に暮らす周縁的な障害者。

(l) 周縁的なグループに適切に利益をもたらすことを保障するために、障害者団体、自助グループおよびセルフ・アドボカシー・グループは、必要であれば家族の支援を受け、政策決定に関与する。

(m) 啓発活動を「10年」を通じて強化・継続することで、考え方や態度を改善し、実施のモダリティに対して部門横断型の関与が効果的にできるようにする。

C. インチョン目標およびターゲット

10. インチョン戦略は、相互に関連する10の目標、26のターゲット、50の指標から成り立っている。

11. 目標およびターゲットを達成する期間は、2013~2022年の「10年」である。

12. 「目標」とは、達成すべき望ましい結果を記述したものである。「ターゲット」とは、該当の期間のなかで達成することをめざすものである。「指標」は、ターゲットが達成したことを測定および検証するものである。2指標には、「主たる指標」と「補助指標」の2種類がある。3

目標 1:貧困を削減し、労働および雇用の見込みを改善すること。

新しい10年は、障害者およびその家族の貧困を削減する点において、大きな進歩を遂げなければならない。障害者の大多数は、不釣り合いに貧しく、不利な立場に置かれ、社会から疎外されることも少なくない。正規の職に就き、その職を維持するために必要な教育、訓練、および支援を受けることが、貧困を克服するための最良の手段のひとつである。したがって、就労可能であり、かつそれを望む人には、働けるようにするために十分な支援および必要なものを与えなければならない。このためには、労働市場をより柔軟で配慮に富むものとする必要がある。障害者およびその家族を貧困から脱出させることで、インクルーシブな成長と持続可能性のある開発の達成に寄与することになる。

ターゲット 1:生活に困窮する障害者の割合を半減させる。

ターゲット 2:障害者の就労を50%増加させる。

ターゲット 3: 職業訓練およびその他の雇用支援制度に対する障害者の参加率を増大させる。

目標 1: 進捗状況(以下同様)を確認するための指標
主要な指標
1. 国際的な貧困線である1日1.25米ドル未満で生活する、障害者の割合。
2. 障害者の就業率。
3. 政府が助成する職業訓練およびその他の就労支援制度に参加する人のうち、障害者の割合。
補助指標
1A. 国の貧困線を下回る生活を送る障害者の割合。

目標 2:政治プロセスおよび政策決定への参加を促進すること。

障害者の参加は、障害者の権利を実現するための要である。投票権および被選挙権を行使できることは、この目標に欠かせない。2013~2022年の「10年」は、障害のある女性および障害のある青年を含めて、多様な障害者グループがあらゆるレベルで政治プロセスおよび政策決定に参加できるように、大きく広範にわたる進捗が示されなければならない。さらに、障害者が政策決定プロセスに参画し、社会の完全な一員としてその権利を行使し責任を果たすことができるために、技術の進歩が活用されるべきである。その進歩には、能力のある障害者に対して、最高裁判所判事や閣僚や国会議員といった、司法、行政、および立法に関わる政府の部署に平等に任用されるような、能力がいかせる環境が提供されることも含まれる。

ターゲット 1: 障害者が政策決定機関に参加することを保障する。

ターゲット 2: 障害者が政治プロセスに参加しやすくするために合理的配慮を提供する。

目標 2: 進捗を確認するための指標
主要な指標
1.  障害者が、国会またはそれに相当する国の立法機関に占める議席の割合。
1A. 障害に関する国のコーディネーション機関のメンバーとして参加する多様な障害者グループの割合。
1B. 性の平等および女性のエンパワーメントを目的とする国の女性機構に参加する、障害のある女性の割合。
2.  国の首都において、アクセシブルであり、障害者の投票の秘密が守られるように対策がとられた投票所の割合。
補助指標
1C. 国レベルで閣僚の地位を占める障害者の割合。
1D. 最高裁判所判事である障害者の割合。
2A. 国の選挙機関に対して、多様な障害者にアクセシブルな様式で選挙プロセスを遂行することを定める法制度の有無。

目標 3:物理環境、公共交通、知識・情報・コミュニケーションへのアクセスを高めること。

物理環境、公共交通、および知識を得るための情報に対するアクセスは、障害がインクルーシブな社会においてその権利を実現するための前提条件である。ユニバーサルデザインを基盤とする、都市部、地方および遠隔地のアクセシビリティは、障害者はもちろんその他すべての社会の構成員にとって安全性および利便性を向上させるものである。アクセスの監査は、アクセシビリティを保障する大切な手段であり、プランニング、デザイン、建設、メンテナンス、およびモニタリング・評価プロセスのすべての段階を網羅しなければならない。支援機器および関連する支援サービスへのアクセスもまた、障害者が日常生活の自立度を最大限に高め、尊厳のある生活を送るための前提条件である。限られた資源環境で生活している障害者が支援機器を利用できることが保障されるように、研究、開発、生産、流通、およびメンテナンスを働きかける必要がある。

ターゲット 1: 国の首都において、公に開かれた物理環境のアクセシビリティを増大させる。
ターゲット 2: 公共交通のアクセシビリティおよび利便性を高める。
ターゲット 3: 情報・コミュニケーションサービスのアクセシビリティおよび利便性を高める。
ターゲット 4: 適切な支援機器または製品を必要としながらそれを持たない障害者の割合を半減させる。

目標 3: 進捗を確認するための指標
主要な指標
1.  国の首都において、アクセシブルな政府機関の建築物の割合。
2.  アクセシブルな国際空港の割合。
3.  公共のテレビニュース番組において、日常的に字幕および手話通訳が付与されている割合。
3A. 国際的に認められた情報・コミュニケーション技術の基準を満たす政府ウェブサイトの割合。
4.  支援機器または製品を必要とし、それを所有する障害者の割合。
補助指標
1A. 障害者の専門家を参加させることを求める政府のアクセス監査制度の有無。
1B. 一般市民が利用しうる建築物のあらゆる設計を承認するさいに適用される、バリアフリー・アクセスに対する義務的な技術基準の有無。
3B. 手話通訳者の数。
3C. 一般向けのウェブサイトなど、あらゆるICT関連のサービスを承認するさいに適用される、バリアフリー・アクセスに対する義務的な技術基準の有無。

目標 4:社会保護を強化すること。

アジア太平洋の開発途上地域では、社会保障の対象者が公共部門で正規の雇用契約を結んでいる労働者に限定されがちであり、人口の大部分、とりわけ障害者には十分に行き届いていないことが多い。したがって、一般的な社会保護の図式のなかで障害の観点を主流化させ、健康保障および基本収入保障に焦点を当てた社会保護をいっそう促進することが重要である。さらに、パーソナル・アシスタンスやピア・カウンセリングのサービスといった、障害者が地域社会のなかで自立した生活を送れるための低額なサービスが不足している。そのようなサービスは、心理・社会的障害者、重度障害者、重複障害者、および知的障害者にとって、とりわけ不可欠である。

ターゲット 1: 障害者に対して保健医療の提供を増大させる。
ターゲット 2: 障害者に対して障害給付金を増大させる。
ターゲット 3: パーソナル・アシスタンスやピア・カウンセリングなど、重複障害者、重度障害者、および多様な障害者が地域社会のなかで自立した生活を送れるように支援するサービスおよびプログラムを強化する。

目標 4: 進捗を確認するための指標
主要な指標
1. 政府の保健医療制度を利用する障害者の割合。
2. 社会保護を受ける資格のある障害者1人あたりに支払われる障害給付金の年間平均額。
3. パーソナル・アシスタンスやピア・カウンセリングなど、障害者が地域社会のなかで自立した生活を送れるように支援する、政府助成によるサービスおよびプログラムの有無。
補助指標
1A. レスパイト・ケアを含め、政府が支援する介護サービスプログラムの数。
3A. 地域社会に根ざした国のリハビリテーションプログラムの有無。

目標 5:障害のある子どもへの早期関与と早期教育を広めること。

障害のある子どもを早期に発見し、関与し、ケアを行い、教育し、エンパワーメントすることは、障害のある子どもの発達の可能性を最大限高めるために最重要である。早期の子ども支援制度に注力することで、その後の教育・訓練と比べても大きな成果が得られると期待できる。しかし、ほとんどのアジア太平洋地域で、そのような制度へのアクセスがない障害児の数はきわめて多い。政府が早期の子ども支援プログラムに関与すれば、子どもたちの発達の結果は格段に改善するであろう。さらに、障害のある子どもが、自分たちの暮らす地域でのほかの子どもたちと同等に質の高い初等・中等教育にアクセスするように、政府が保障することが不可欠である。このプロセスには、障害のある子どもにより効率的な支援を提供するパートナーとして、家族の関与を深めることも含まれる。

ターゲット 1:出生時から就学前までの障害児の早期発見および関与に向けた対策を強化する。

ターゲット 2:障害のある子どもと障害のない子どもとの初等学校・中等学校在籍率の差を半減させる。

目標 5: 進捗を確認するための指標
主要な指標
1.  政府の施設において早期関与を受ける、障害のある子どもの数。
2.  障害のある子どもの初等学校在籍率。
2B. 障害のある子どもの中等学校在籍率。
補助指標
1A. 子どもの障害の早期発見および障害児の権利保護に関する情報およびサービスを提供する政府の産前・産後ケア施設の割合。
2C. 手話を指導手段として使用するろう学校の割合。
2D. アクセシブルな形式で作られた教育素材を所有する視覚障害学生の割合。

目標 6:性(ジェンダー)の平等と女性のエンパワーメントを保障すること。

障害のある少女および女性は、重複した形で不利益に直面している。扶養者への依存によってさらに深まる孤立のせいで、女性たちは多様な形態の搾取、暴力、および虐待にきわめてさらされやすい。さらに、HIV感染、妊娠、出産期・出生時の死亡など、それに付随するリスクもある。障害のある少女および女性は、主流の性の平等プログラムから見過ごされていることが多い。性や生殖に関する保健、一般的な保健医療、および関連するサービスに関連する知識の情報がアクセシブルな形式および言語で提供されることは稀である。2013~2022年の「10年」の約束は、障害のある少女および女性が主流の開発において活動的な主体となってはじめて、完全に実現したことになるのである。

ターゲット 1: 障害のある少女および女性が主流の開発プログラムに平等にアクセスできるようにする。

ターゲット 2: 障害のある少女および女性が、障害のない少女および女性と同様に、性や生殖に関する保健医療にアクセスできるように保障する。

ターゲット 3: 障害のある少女および女性を暴力から守るための対策を増大させる。

目標 6: 進捗を確認するための指標
主要な指標
1. 障害のある少女および女性が主流の開発プログラムに参加することを促進する国の計画の有無。
2. 性や生殖に関する政府の保健医療サービスにアクセスする、障害のある少女および女性の割合。
3. 性的虐待や搾取を含め、障害のある少女および女性に対する暴力を削減することを目的とする政府のプログラムの数。
補助指標
2A. HIV予防、治療、ケアおよび支援にアクセスする、障害のある女性および少女の割合。

目標 7:災害の準備および対応に障害の視点のインクルージョンを保障すること。

アジア太平洋は、気候変動によって引き起こされるものを含め、災害の被害を受けやすい地域である。障害者およびその他の弱者グループは、災害に備えた政策、計画、プログラムから疎外され、その結果として死亡、負傷、および二次障害の被害に遭う危険性が比較的高い。公的サービスの告知は、障害者にとってアクセシブルでない形式や言語で発信されることが多い。加えて、非常口、避難所および施設はバリアフリーでないものになりがちである。したがって、災害リスクを軽減および災害に対応するためのプログラムは、障害インクルーシブなものでなければならず、あらゆる人のアクセスと安全のためにサービスおよびインフラストラクチャーにユニバーサルデザインの原則を取り入れることが不可欠である。地方や地区レベルで実施される防災訓練やその他の災害リスク削減対策に障害者が定期的に参加することで、災害発生時のリスクと被害を防止または最小限に抑えることができるだろう。ユニバーサルデザインの原則を取り入れた物理的および情報面のインフラストラクチャーを整えることで、安全と生存の可能性が向上すると考えられる。

ターゲット 1: 障害がインクルーシブな災害リスク削減計画を強化する。

ターゲット 2: 災害への対応にあたり、障害者に対して迅速かつ適切な支援を提供する対策の実施を強化する。

目標 7: 進捗を確認するための指標
主要な指標
1. 障害がインクルーシブな災害リスク削減計画の有無。
2. 制服を着用したすべてのサービス担当職員を対象とする、障害がインクルーシブな研修の有無。
2A. アクセシブルな避難所および災害救援所の割合。
補助指標
1A. 災害の犠牲者に関する障害比率のデータ。
2B. 被災した障害者のために動員しうる心理・社会的支援サービス担当者の有無。

目標 8:障害に関するデータの信頼性および比較可能性を向上させること。

数に入れられないということは、障害者が目につかない存在となり、疎外されがちになるということである。障害に関するデータを収集する際に使われる「障害」および「障害者」という語句の定義は、アジア太平洋地域内で大きく異なっている。これらが相まって、国を越えたデータの比較が信頼性を欠くことがしばしばである。アジア太平洋地域では、多様な障害者およびその社会的・経済的地位に関するより正確な統計を必要とされている。障害に関するデータが充実することで、障害者の権利を実現する支えとなる政策立案を、エビデンスに基づいて策定することができるだろう。2013~2022年の「10年」は、時と国境を越えた比較が可能な障害関連の統計の作成をめざしたデータ収集を強化する機会である。インチョン戦略の目標およびターゲットの達成に向けて有効に進捗状況を確認することができるように、その指標の基準となるデータを利用可能な状態にしておくことが肝要である。

ターゲット 1: 障害者にアクセシブルな形式で、信頼しうる、国際的に比較可能な障害関連の統計を作成し、普及させる。

ターゲット 2: インチョン戦略の目標およびターゲットの達成に向けて有効に進捗状況を確認するための源として、信頼しうる統計を2015年までに確立する。

目標 8: 進捗を確認するための指標
主要な指標
1. 国際生活機能分類(ICF)のアプローチまたはその他のアプローチ(年齢、性別、社会的・経済的地位、学歴、障害の原因および種別、ならびに地理的な場所)に基づく障害者の比率。
2. インチョン戦略の目標およびターゲットの達成に向けて進捗状況を確認するための基準となるデータを、2015年までに確立した政府の数。

目標 9:「障害者の権利に関する条約」の批准および実施を推進し、各国の法制度を権利条約と整合させること。

「障害者の権利に関する条約」(権利条約)は、障害者の権利を尊重し、保護し、実現させるための網羅的なアプローチを提供する、障害に特化した初の国際法令文書である。本条約により、障害者は、慈悲の対象として扱われる存在ではなく、権利を持つ主体として明確にエンパワーメントされている。ESCAP地域は、権利条約の起草と条文作成に重要かつ歴史的役割を果たした。世界106ヵ国が条約加盟国、153ヵ国が署名国である。2012年6月28日時点で、アジア太平洋地域で35ヵ国の政府が権利条約に署名し、同地域で23ヵ国の政府が本条約の批准国または加盟国となった。

ターゲット 1: 「10年」の中間時(2017年)までに10ヵ国のアジア太平洋会員諸国が新たに障害者の権利に関する条約を批准し、「10年」の最終時(2022年)までにさらに10ヵ国のアジア太平洋会員諸国が新たに障害者の権利に関する条約を批准する。

ターゲット 2: 差別禁止条項、技術的な基準、および障害者の権利を下支えし保護するその他の対策を盛り込んだ国内法を立法化する。

目標 9: 進捗を確認するための指標
主要な指標
1. 権利条約を批准した政府の数。
2. 障害者の権利を下支えし保護する、国の差別禁止法制度の有無。
補助指標
1A. 「障害者の権利に関する条約」の選択議定書を批准したアジア太平洋諸国の政府の数。

目標 10:小地域、地域内および地域間の協力を推進すること。

2度にわたる「アジア太平洋障害者の10年」を経て、得られた教訓、好実践例および革新的な解決策を共有することなどを通じて円滑な相互支援ができるように、小地域、地域内および地域間の各レベルで協力することの価値が浮き彫りになった。2011年12月1日に大韓民国・プサン(釜山)で「第4回援助効果に関するハイレベル・フォーラム」が採択した「効果的な開発協力のためのプサン・パートナーシップ」では、有効な開発の協力基盤を形成するために、障害に対する国際的な関わりの重要性が認識されている。市民社会および民間部門は、インチョン宣言およびターゲットを実現する革新的なアプローチの媒介となる重要な役割を果たしうる。アジア太平洋地域は、いまだに長期にわたる課題に直面している。紛争を経験した地域では、地雷や戦争の名残といった困難が残り、障害や脆弱な生活環境が引き続き生じている。2013~2022年の「10年」は、そのような課題を克服し、有効な実施を支援するために、多部門にわたる次元から、国際的な協力の可能性をもたらすものである。

ターゲット 1: 「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)に関する閣僚宣言」4およびインチョン戦略の実施を支援するイニシアティブやプログラムに貢献する。

ターゲット 2: アジア太平洋地域の開発協力機構が、その政策およびプログラムにける障害インクルーシブな度合いを強化する。

ターゲット 3: 国際連合の地域委員会が、障害の諸問題および障害者の権利に関する条約の実施に関わる経験および好実践例について、地域間の情報交換を強化する。

目標 10: 進捗を確認するための指標
主要な指標
1.  南南協力を含め、「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)に関する閣僚宣言」およびインチョン戦略の実施を支援することを明示する地域協力プログラムがある国際連合機関の数。
1A. 南南協力を含め、「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)に関する閣僚宣言」およびインチョン戦略の実施を支援することを明示する地域協力プログラムがある小地域政府間機関の数。
1B. 南南協力を含め、「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)に関する閣僚宣言」およびインチョン戦略の実施を支援することを明示する地域協力プログラムがある地域プロジェクトおよび小地域プロジェクトの数。
2.  アジア太平洋地域で活動する開発協力機構のうち、権利条約の批准および実施ならびに関連する検証について支援し、障害インクルーシブな開発に関する要請、政策、活動計画およびフォーカルポイント(拠点)を備えるものの割合。
3.  5つの国際連合地域委員会における、障害者の権利に関する条約の実施を支援する共同活動の数。

D. 「10年」を効果的に実施するためのモダリティ:国レベル、小地域レベルおよび地域レベル

13. 本セクションでは、一体となって実施を促進および支援すべきモダリティ〔様式〕を定める。とりわけ、これらのモダリティは、2013~2022年の「10年」にわたってインチョン戦略の実施を通じて障害者の権利の実現を推進するために、データおよび情報を構築し、複層レベルにわたる協力関係を強化するものである。

1. 国(National) レベル

14. インチョン戦略を実施する核となるのは、国内のあらゆる重要な諸機関を結びつける、障害に関する国のコーディネーション機関である。

15. これまでの2度にわたる「アジア太平洋障害者の10年」で、そのような機関が数多く設立された。したがって、それらの機関がインチョン戦略の実施を国レベルおよび地域レベルでコーディネートし、触媒の役割を果たす主要な責任を担うのは当然である。

16. 国の統計局は、国のコーディネーション機関から後援を受けて、指標の基盤となるデータを確立し、インチョン戦略の実施について進捗状況を確認するフォーカル・ポイントとなることが期待される。

17. 障害に関する国のコーディネーション機関は、以下に掲げる任務を遂行すべきである。ただしこれに限定するものではない。

(a) あらゆるレベルにわたる多様な部門の省庁・部局・政府機関、障害者団体・支援団体・家族支援グループを含む市民社会、研究機関、ならびに民間部門に働きかけ、部門を横断し全国規模でインチョン戦略の実施に関与させること。

(b) インチョン戦略の目標およびターゲットを達成する国の活動計画の実施について、発展、検証、報告すること。

(c) あらゆる部門およびすべての行政レベルに広く周知されるように、インチョン戦略を当該国の言語に翻訳し、その言語で記された戦略をアクセシブルな形式で利用できるように保障すること。

(d) 2013~2022年の「10年」を通して、認知度を高め、障害者に対して前向きな見方が育まれるように、「権利を実現する」キャンペーンなど、国や地方のキャンペーンを実行すること。

(e) 政策立案の基盤として、障害者の状況に関する研究を促進および支援すること。

18. 国際連合カントリーチームは、実施に向けたアドボカシー、コーディネーション、協力関係に特に注意を払いながら、地方レベルを含めて、国のコーディネーション機関が再活性化し、機能するように必要に応じた支援をすべきである。

2. 小地域(Subregional)レベル

19. 小地域の政府間組織、たとえば東南アジア諸国連合(ASEAN)、経済協力機構(ECO)事務局、太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局、上海協力機構(SCO)、および南アジア地域協力連合(SAARC)は、障害インクルーシブな政策およびプログラムをその権能において積極的に促進し、閣僚宣言およびインチョン戦略の実施を加速させるために重要な役割を果たす。

20. ESCAP事務局は、「アジア太平洋障害者の10年」(2013-2022)の促進活動において、小地域の政府間組織と連携しながら、小地域および小地域間の協力を支援するものとする。そうすることで、北・中央アジア、東・北東アジア、太平洋、および南・東南アジアにある各小地域事務所が、5各地域機関 の支援を受けながら、障害インクルーシブな開発に積極的に参加できるようにする。

3. 地域(Regional)レベル

21. 「アジア太平洋障害者の10年(2013-2022年)に関するワーキンググループ」を設立する。ワーキンググループは、「10年」を通じて完全かつ有効な実施がなされるように支援するものとする。その機能は、閣僚宣言およびインチョン宣言の地域的な実施についてESCAP事務局への助言および支援を適切な方法で行うことが中心となる。ワーキンググループの委託事項草稿は附属書として添付する。

22. ESCAP事務局は、地域をまとめ基準を設定する役割、分析作業、および政府への技術的な支援を通じて、「10年」の実施に貢献するものとする。とりわけ、ESCAP事務局は以下の各項を実行することが求められる。

(a) 法制度が「障害者の権利に関する条約」と整合するように、また、「権利を実現する」キャンペーンの促進について、政府を適切な方法で支援すること。

(b) 障害がインクルーシブな開発や障害者の権利の保護・下支えに関する、国の経験と好実践について、情報交換を促進すること。

(c) 「10年」の進捗状況を確認し、障害に関する統計が改善されるように支援すること。

(d) 障害がインクルーシブな開発を促進するために、加盟国政府および準加盟国政府を能力構築の面で支援すること。

(e) ステークホルダー・コンサルテーションのための地域的な場(プラットホーム)を提供すること。

23. アジア太平洋障害開発センターは、最初の「アジア太平洋障害者の10年」の成果として障害者のエンパワーメントおよびバリアフリーでインクルーシブな社会を促進するために設立された機関であるが、とりわけ障害者の立場に沿った製品、サービス、雇用機会および起業家精神開発を促進するような、障害インクルーシブな事業に民間部門が関わるように奨励することにとくに配慮しながら、継続して障害者の能力を構築し部門横断型の協力関係を築き上げていくことが求められる。

24. 市民社会団体は、「10年」が継続して障害者の要望とニーズに応えることが保障されるように、閣僚宣言およびインチョン戦略の実施に関与することが奨励される。

附属書:

委託事項:
アジア太平洋障害者の10年に関する地域 ワーキンググループ
草案

目的

1. 本文書で提案する「アジア太平洋障害者の10年に関する地域ワーキンググループ」(Regional Working group on the Asian and Pacific Decade of Persons with Disabilities)の目的は、2013~2022年の「10年」が完全かつ有効に実施されるように技術的な助言と支援をESCAP事務局に提供することである。

機能

2. 上記第1パラグラフで定めた目的を遂行するために、ワーキンググループはESCAP事務局に対して以下に関する助言を行う。

(a) 「10年」の進捗状況、とりわけ「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)に関する閣僚宣言」および「アジア太平洋障害者の『権利を実現する』インチョン戦略」の実施に向けた進捗状況について、検証を行うこと。

(b) 閣僚宣言およびインチョン戦略の実施を推し進めるために地域および小地域の協力を促進すること。

(c) アジア太平洋に暮らす障害者の発展状況について調査すること。

(d) 国および地方レベルの多様な障害者グループと接触し、ネットワークを形成すること。

委員

3. ワーキンググループは、ESCAP加盟国政府および準加盟国政府に加えて、アジア太平洋の地域・小地域レベルで活動する市民社会団体で構成するものとする。

4. ワーキンググループ委員の任期は5年間とし、再選によりさらに5年間の任期を務めることができる。

5. すべてのESCAP加盟国政府および準加盟国政府は、委員に立候補する資格を有するものとする。

6. 下記の基準に合致する市民社会団体は、委員に立候補する資格を有するものとする。(a) アジア太平洋地域において地域および小地域レベルで活動を行っている。(b) 多様な障害者の利益を代表、支援および/または促進している団体または組織である。(c)閣僚宣言およびインチョン戦略を推し進めるために必要な専門技能・知見を有している。

7. ワーキンググループ委員を務めることに関心のあるESCAP加盟国政府および準加盟国政府、ならびに市民社会団体は、2012年10月29日から同年11月2日まで大韓民国・インチョンで開催される「アジア太平洋障害者の10年(2003-2012)の実施について最終的に検証するためのハイレベル政府間会合」において、意思表示を行うものとする。

8. ワーキンググループの委員構成案は、ハイレベル政府間会合後の直近に開催されるセッションで委員会に提出され、最終判断を受けるものとする。したがって、委員会は、2013年の第69回セッションで、2013~2017年の第1期ワーキンググループの構成について最終決定することになる。ワーキンググループ委員を務めることに関心のある者の第2回目の意思表示は、「10年」の中間時点(2017年)に開催される、その次のハイレベル政府間会合において行う。委員会は、2018年の第74回セッションで、2018~2022年の第2期ワーキンググループの構成について最終決定する。

手続規則

9. ワーキンググループは、その手続規則を採択するものとする。

事務局

10. ESCAP事務局は、ワーキンググループ事務局を担うものとする。なかんずく、ワーキンググループの文書をアクセシブルな形式で普及させる役割を担うものとする。


注:

本文書は正式な編集作業を経ずに発行したものである。
1.ミレニアム開発目標は、8の目標、21のターゲット、および60の指標で成り立っている。
2.いずれの指標も、可能な限り男女別のデータを算出すべきである。
3.主たる指標を用いれば、新しい「10年」の間に各国間での進捗の共有が容易になる。その指標の基となるデータは一定の努力で算出できるものである。補助指標は、社会的・経済的な開発状況が同程度の国の間で進捗を確認するのに役立つが、基となるデータを集めるのが比較的困難である。
4.以下、閣僚宣言と称する。
5.アジア太平洋情報通信技術センター(APCICT、大韓民国・インチョン)、アジア太平洋技術移転センター(APCTT、ニューデリー)、アジア太平洋統計研修所(SIAP、東京)、持続的農業による貧困削減アジア太平洋研究センター(CAPSA、インドネシア・ボゴール)、国連アジア太平洋農業土木・機械地域センター(UNAPCAEM、北京)。