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ろう及び盲ろうの人を含むすべての人のためのインクルーシブで平等な人道システム

日本障害者リハビリテーション協会(仮訳)

国際ろう者救援

国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)は、障害のある人が災害時に死亡する可能性を、障害のない人の4倍と報告しています。緊急時への備えと人道的対応を促進する行動計画は、一般の人向けには整備されていますが、世界各地のろうコミュニティは、コミュニケーション上の障壁、資格のある手話通訳者の不足、低い識字能力のために、今なお社会から取り残され、見過ごされています。

世界ろう連盟によれば、世界にはおよそ7千万人のろう者がおり、そのうち80%が教育を受けることなく開発途上国で暮らしていると推定され、手話で教育を受けているのは、わずか1~2%のみとのことです。ろう者の権利は、特に開発途上国において、しばしば見過ごされています。社会の偏見と障壁のために、ろう者は完全な人権を享受できずにいるのです。おもな障壁は、認識と受容の欠如、あらゆる生活場面における手話の使用、ろう者の文化と言語的アイデンティティへの尊重の欠如などです。特に、ろうの女性と子どもは弱い立場にあります。

この意味で、仙台防災枠組は、人道に対して私たちがともに担う責任と人道の原則の普遍性を、ろう者及び盲ろう者への認識とともに、再び思い起こし、これらに命を吹き込む、たぐいまれな機会なのです。それは、取り残される危機に瀕している人々の苦しみを和らげるために、あらゆる意思決定の中心への、ろう者及び盲ろう者を含めた障害のある人のインクルージョンを重視するものです。

私たちは国際的な障害者団体(DPOs)、そして手話使用者として、よりレジリエントな地域社会を支援できるように、国や地域の代理や代替となるのではなく、むしろ国や地域の能力を強化することをめざして、地域の主要なろう者及び盲ろう者のDPOsとともに、より効果的かつ効率的な防災活動を行うべく、手話を使って取り組んでいます。人的資本への投資には、人道的対応だけでなく、さらに幅広いリスク管理、教育、雇用、アクセシブルな都市と不平等の削減をも目的とした、ろう者及び盲ろう者のDPOsによる多様かつ最適な資金調達も含まれることを強調しておきます。

開発途上国の大多数のろう者は読み書きができませんが、これは、インクルーシブではない教育や、農村部にはろう学校がないにもかかわらず、親が子どもを農業に従事させることを好み、これに投資するのが常であったことが原因です。そこで、防災活動を始める前に、地域社会の強化のために、まず、組織開発、リーダーシップ、障害者権利条約(CRPD)に従った権利擁護活動の研修を実施することが重要です。この点に関して、国際ろう者救援(IDE)は、2014年から2016年まで、ハイチ国内のろう者の人権実現に向けた連携能力構築のための助成金33,000ドルを、障害者権利基金(DRF)から確保しました。この基金の全額が、IDEによる監視と評価の下に、地域レベルで分配されました。IDEが指導した現地チームにより、地域の12の聴覚障害者団体を対象にCRPD研修が行われました。このうち6団体は、地方都市で設立されたものです。これらの団体は、強化研修を受けたのち、歴史上初めて、ハイチに新たな全国ろう連盟を創設することで合意しました。ハイチの国及び地域の団体は、地元のろうコミュニティに対し、研修や教育に加え、CRPD研修も実施して、支援を強化し、提供することを約束しています。また、地震やハリケーンなどの災害に、より効果的に立ち向かう方法について、グッドプラクティスを共有する防災訓練も行われました。200人を超える障害のある人が訓練に参加し、およそ1000人が間接的な指導を受けましたが、そのうち50%は女性でした。

IDEの成功の鍵は、これらのDPOsと、視覚障害のある人や車椅子の人などの他のDPOs、援助団体、政府機関及び住民などとの協力を支援し、コミュニケーション上の障壁を打ち破ることです。このような協力は、今後も障害のあるハイチ人の生活の質の向上に重点的に取り組む助けとなります。

私たちの活動は、世界人道サミットの課題として提唱されている核となる責任と足並みをそろえており、これには、国際人道法の遵守と護持、長引く危機におけるレジリエンスの構築、自然災害、気候変動への対応とその影響の軽減、障害のある女性と少女のリーダーシップとエンパワメント、人道的な資金調達と人道への投資、ろう者と盲ろう者に対する認識を伴う、より効果的で個々の状況に応じた、予測可能な対応に向けた人道的活動が展開される未来の構築が含まれます。

私のスピーチの目的は、長期計画と投資の奨励による地域及び国のDPOsの教育とエンパワメント、そして、世界中の障害のある人のための、人道的活動、開発活動及び平和構築活動のさらなる統一です。また、人道的活動が、弱者を含むすべての人に平等にいきわたるように、説明責任、リーダーシップ、資金調達にも取り組むことをめざしています。そして、主要なステークホルダーと国家による、人道分野における合理的配慮の実現と、障害のある人の完全かつ生産的な雇用を促進するためのよりインクルーシブな主流のイニシアティブの創造を重視しています。これにより、地域社会が人道的対応の中心となり、障害のある人は、人道的活動に完全に統合され、安全に尊厳をもって生きるチャンスを得、ただ生き延びるだけでなく成功する機会をも得られるのです。

さて、私は次のイスタンブールでの世界人道サミットに、サイドイベントのパネリストとして参加する予定です。そこで皆さんにお会いしたいと思います!

国際ろう者救援
代表
エマニュエル D. M. ジャック(Emmanuel D. M. Jacq)
Emmanuel.jacq@ideafe.org
Skype: Emmanueljacq


原文はこちら(英語)