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メージャーグループ問題

河村宏氏インタビュー(2014年10月)

 最初はメージャーグループ問題として私たちが認識をしている問題について話します。

 もともとは、Disability Inclusive Disaster Risk Reduction (HFA2)という兵庫フレームワークの次のバージョンについては、Disability Inclusiveにすることが私たちの目標で、そのために仙台会議を行なったわけです。

 そしてそのフォローアップとして、2014年6月に開催された障害者権利条約締約国会議に参加をして、DESAフォーラムを行なったわけです。6月の終わりには、このHFA2の改訂のプロセスとして、アジア太平地域の会議がバンコク・タイで行われたわけです。これは「第6回防災閣僚会議(The 6th Asian Ministerial Conference on Disaster Risk Reduction) 」という名前で行われました。略称は6AMCDIRRになります。これらを通じて確認した仙台会議の声明は、非常に良く受け入れられてこれで行こうという機運が盛り上がったと思います。

 これで行くという内容は、1つには権利の問題として、障害者が対等な安全を保障されていないということです。これは東日本大震災において、主に津波ですが、死者の比率が障害者については非常に高いということが各自治体の調査で出たということ、高齢者については、65%の人が60歳以上だったかと思いますが、人口比率に比べて、非常に高い比率で死亡者がでたということが統計的に明らかになったということです。この差別的な状態をなんとかするという対等な権利の問題です。このことは、障害者権利条約第11条に記されている権利の問題として取り上げていこうというのが1つです。

 もう1つの表と裏の関係ですが、障害者の安全をきちんとコミュニティレベルで確保することです。つまり状況に応じて避難したり、一緒に避難する人が確保されているとか、そのようなコミュニティレベルでの取り組みが重要で、そこのレベルでの防災が、コミュニティ資源を活用して安全確保ができていないと命が守れないわけです。具体的には、外部から救援が来ることが大規模災害の時には時間がとてもかかるということをどこでも体験しているので、コミュニティベースでということは当初から言われてきたことです。コミュニティレベルで一緒に避難したり、お互いに支え合うことができてないと障害のある人は、避難もできないという現実が明らかになりました。そのためコミュニティレベルでの防災活動の参加が重要であることが言われていて、その参加を保障するためのアクセシビリティの課題が重要だということになってきているわけです。

 この後半の参加ということは、当然障害者も状況を認識して判断するという活動に参加することになるわけです。Inclusive Community Developmentの不可分の活動としてコミュニティベースの災害リスク軽減という文脈になります。この2つの積極的な防災参加者としての障害者の側面と現在災害の時により高い比率で犠牲になっているという差別的な現実、この2つを一体のものとして解決していくことがDIDRR(Disability Inclusive Disaster Risk Reduction)であることが確認されたました。そのことが、仙台発DIDRRからフォーローアップまでのDIDRRの主要なステートメントとなるわけです。

 それでは、次のHFA2にどのように実現していくのかということが、現在2015年の仙台に向けて取り組むことの課題となるわけです。この課題は2つの面で取り組まれます。

 HFA2の文書の中でどのようにきちんとした戦略を立てるのか、戦略そのものの内容に関わる問題、全体のプロセスに障害者がどのように参加をするのか、その後の実施に参加をしていく上での参加とアクセシビリティの確保という2つの問題について今行われているところです。

 そのため第一回の準備会議が「プレコム(Precom)」と呼ばれるのですが、7月にジュネーブで行われた際にいくつか準備をしています。その中の1つがプレコムで国連が新しく任命をした Special Envoy on Disability and Accessibility(障害とアクセシビリティの特使)は、エクアドルの前副大統領で車いす利用者なのですが、この方にISDRから依頼があってこの方にDIDDRについて概要説明を行なってほしいという依頼がありました。これを積極的に受け止めて、直接私に依頼があったのですが、国際障害者同盟(IDA)の事務局がジュネーブにあるのでIDAの名前できちんと説明をした方が良いだろうとIDAに繋ぎました。そこでIDAの議長であるマリアンがあちこち捜したが説明する人が見つからないと連絡をしてきたので、それではタイのモンティエンではどうかと提案をしたところ、「モンティエンなら申し分ない」ということになり、急遽、モンティエンに依頼をして、私とそして何人かで説明をすることなりました。その際のモンティエンの派遣費用は支援技術開発機構(ATDO)が負担するという形で、プレコム1の時に、できるだけ公式の取り組みに、できるだけ障害やアクセシビリティの取り組みが記録に残るようにいたしました。

 その結果、特使への説明は成功して、説明を受けた特使は、演壇から障害者の参加と安全の確保をHFA2に向けての取り組んでやってほしいと語ってくれて、全体として政府関係者にも障害に対する認識が深まったと考えます。それから日本政府代表も当初からステートメントの中で、障害者、高齢者を盛り込んであって、数少ない政府ステートメントの中で障害者に触れたものになっています。それらを踏まえて障害者セクターとしてのまとまった意見を出そうと模索をしたのですが、このプレコムおよび準備プロセスが、市民社会団体に関しては9つのメージャーグループのカテゴリに分けられていて、それぞれのメージャーグループがパートナー団体を選出して、その運営パートナー団体がISDRの事務局と連携をして、市民社会が関わるというチャネルになっていて、その運営パートナーのグループ分けに女性、子供と青少年、先住民族、地方政府、労働者と労働組合、企業と産業、科学界と技術界、農業者とその他もろもろがNGOメージャーグループとなっていて、どれか一つ登録をしなければならないとなっているのです。

 NGOメージャーグループに登録をして、いろいろ相談をして明らかになったことは、このグループには、もろもろの団体が入っていて、日本からは「世界青年の船」事業が日本のNGOの代表として登録しています。とても障害者のことについて議論する場ではなく、我々としては、ここに留まっていては、DIDRRの議論を全体に反映することはできないと判断して、運営パートナーとして障害グループを作るという目標を立てました。

 そのためのいろいろな経由を調べました。国連総会が2015年に第3回世界防災会議を行うと決めましたが、この決議は2回行われています。2013年の12月の2回目の決議文書をよく読んでいくとマルチステークホルダーで取り組むことが重要だと書いてあります。その中で「relevant stakeholders including major groups…」と書いてありますが、この関連するステークホルダーはメージャーグループがパートナーであると国連総会が決めたことであるという点を押えて、ISDRの実際の運営がメージャーグループだけを対象にするのはおかしいと考えました。関連するステークホルダーには当然障害者グループも入るという理論でその方向に向けて一斉に活動を始めました。政府代表やISDRの担当者に働きかけ、個別に話したり、コンサルテーションの時に発言するなどして、障害グループはとても目立つ存在として認知されるようになりました。実際に7月にプレコムがあって、8月には「pre-zero draft」が出て、この草案に対して非公式のコンサルテーションの対象はメージャーグループでしたので、入口はNGOとして、実際には障害グループとして活動していきました。

 今回のフォーカルポイント挙げられている4つの団体は、リハビリテーションインターナショナル、日本財団、DIRRNとIDAです。DIRRNは可児さんが行なっていたのですが、実際には彼女の代わりにオランダベースのValerieさんが担当しました。IDAは事務局の人権を担当するTchaurea さんが担当しています。この4つの団体で、目立つようにあらゆるところで発言をし、4団体の共同ステートメントを出しました。私が取りまとめをしてIDAのマリアンの名前で共同議長、日本政府代表とISDRの事務総長に送りました。

 そのステートメントには、国連総会の決議に基づいて、関連する団体と連携をして運営をしていかなければならないとして、従って障害グループを、現在メージャーグループを担っていないが、関連団体として障害グループを認め、ウェブでの公示と共に実際のプロセスに連携を図ることができるようにしてほしいという提言をしました。その結果、ISDRのウェブサイトには、メージャーグループ以外に「その他の重要なステークホルダー」というカテゴリーを作らせて、今のところDisability Groupだけですがエントリさせることができました。そこにフォーカルポイントとして4つのグループがあがっています。現在の機能として、他のメージャーグループとまったく同じように、公式にDisability Groupが公式にISDRと一緒にセッションができるようになって、セッション番号として26になっています。このセッション番号26というのは、ビューローという執行委員会に当たるところですが、そこに承認されていますのでISDRと一緒になって公式セッションを行うことができます。マルチステークホルダーとしてのコンセプトノートを作成しています。

 このコンセプトノートが執行委員会に承認されればオープンになり、皆で議論をしてこのコンセプトノートを充実したものにすることができます。このワーキングセッションは1時間半になります。全部で34あり、その中の1つになります。同じように児童とか女性とかで1つずつワーキングセッションがあります。それぞれに障害の観点から参加することが可能です。Disability フォーカルポイントとしては、コミュニティとレジリアンスというワーキングセッションに注目をしていて、そこに発表者を出そうとしていて、コンセプト開発にも参加したいと考えています。また閣僚のラウンドテーブルがありますが、そのなかにInclusive DRRがあるのでそこにもコンセプトノート開発の段階から参加しようと考えています。

Realizing a disability-inclusive post-2015 disaster risk reduction strategy (UN enable)
http://www.un.org/disabilities/default.asp?id=1619