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テクノロジーの可能性:障害者も含む災害リスク軽減と人道的な活動

 2014年国連障害者ディーを記念して、国連経済社会局 (UNDESA)と日本財団が企画し、国連日本代表部と共同で、防災に関わるパネルディスカッション"The Promise of Technology: Disability-Inclusive Disaster Risk Reduction and Humanitarian Action"(テクノロジーの可能性:障害者も含む災害リスク軽減と人道的な活動)を開催した。

プログラム

(2014年12月3日、1:15 to 2:30 p.m., 会議室4)

パネルディスカッション「テクノロジーの可能性:障害者も含む災害リスク軽減と人道的な活動」

主催:国連経済社会局、日本財団
後援:国際連合日本代表部

趣旨:
アクセスできない避難や応答、復興が原因で、障害者は災害や緊急事態そして紛争時に不釣り合いな被害を受ける。このパネルでは、インクルーシブな災害リスク軽減と緊急時における対応を支援するための利用可能なテクノロジーについて説明する。同様に、災害と緊急時に障害者の命を救う早期警報、位置ナビゲーション装置といった革新的かつ補助的な新しいICT技術の可能性についても模索する。

開会の挨拶:特命全権大使・国際連合日本政府常駐代表 吉川 元偉氏

モデレーター:
河村宏氏(第三回災害リスク軽減 障害グループフォーカルポイント(調整役))
福田暁子氏(世界盲ろう者連盟第三回総会 事務局長
エリナ・パーム氏(国連国際防災戦略事務局(UNISDR)渉外オフィサー)
エリザベス・ロックウッド氏(クリストッフェル視覚障害者援護会 国連アドボカシーオフィサー)

Web Cast

http://webtv.un.org/meetings-events/watch/disaster-risk-reduction-and-emergency-responses-panel-discussion/3922335616001

吉川大使のごあいさつ

国際連合日本政府常駐代表吉川元衛大使による、国際障害者デー開会の挨拶
「テクノロジーの活用:障害インクルーシブな災害リスク軽減と人道主義的行動」
2014年12月3日

閣下各位ならびにご来賓の皆様

国際障害者デーに開催されるこのパネルディスカッションの共催者として、本日、開会のご挨拶をさせていただきますことを、誠に光栄に存じます。同じく共催者である国際連合経済社会局(DESA)と日本財団に対し、感謝の意を表したいと思います。

また、本日このパネルディスカッションのモデレーターを務めて下さいます河村宏氏にも、お礼を申し上げたいと思います。河村氏は、DAISYとして知られている「アクセシブルな情報システム」に貢献されてきた方々のお一人です。DAISYの電子ナビゲーションシステムは、障害のある方が災害時にどこにどのように避難するかを容易に理解できるようにするために、役立てられてきました。

DAISYは、15,000人を超える方々が亡くなられた2011年の東日本大震災の際に、有用であることが証明されました。

今年1月に障害者権利条約を批准してから、日本は現在、この条約の完全な実施に取り組んでいる段階です。今年6月、日本は障害者権利条約締約国会議に、初めて締約国として出席しました。

私はその時のステートメントの中で、3つの重要な点の1つとして、「障害と災害」を強調いたしました。

締約国会議のサイドイベントでは、日本の市民社会代表が、災害時には障害のある方を優先的に避難させなければならないと強く訴えました。

私は、DAISYのような技術が、災害の際に障害のある方の役に立つと信じております。

また、災害時に障害のある方の命を救うために、災害政策と、さらには災害に関する国際的な議論に、そのニーズを取り入れていくことが重要であると信じています。

日本政府は、2011年の地震で被災した仙台において、第3回国連防災世界会議を共催する予定です。

本日のディスカッションは、この会議ならびにポスト2015年開発アジェンダに、必ずや有意義なインプットを提供するものとなるでしょう。

パネリストの皆様は、今年のテーマ「持続可能な開発にテクノロジーの活用を」について話し合うために、ここにおられます。

参加して下さったパネリストの皆様に、お礼を申し上げます。

中でも、体調が極めて厳しい状況であるにもかかわらず、日本から来て下さった福田暁子氏には、特に感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

パネリストの皆様から本日賜りますご意見は、障害のある方への災害の影響を軽減するという目的を促進するために、極めて重要です。

この件に関しまして、皆様の個人的な体験談を、是非伺いたいと考えております。

お時間を取っていただき、ありがとうございました。それでは、河村様、どうぞよろしくお願いいたします。

引用元:
http://www.un.emb-japan.go.jp/jp/statements/yoshikawa120314.html

パネリストの福田暁子さんの発表

日本語原稿

みなさん、こんにちは。
私は福田暁子と申します。世界盲ろう者連盟の事務局長、および日本の全国盲ろう者協会の国際協力推進委員をしています。

私は全盲ろうです。どういうことかというと、私は全く見えず、全く聴こえません。また、呼吸器と車いすを使っています。私の触手話という方法でコミュニケーションをとっています。私は、私の横にいるこの温かい手を通して、ものを見て、聴きたいものを聴いています。もし、この手が離れてしまったら、私は自分がどこにいるかもわからないし、ましてや、私は人の前で話をしているのか、もしくは、あなたが私の隣に立っているのかすらも分からないのです。
(右側をさぐって)どうやらこちらには誰もいないようですね。
これらの手を通して得られる情報をもとに私は何でも自分で決めて、地域で自立した生活を送っています。

みなさん、1分間、ちょっと目をつぶってみてください。

私の世界というのは、すごく静かでまるで深海の底にいるようで、時々もう上にあがってこられないのではないかと思うときもあります。
どんなに私が叫んでも、私の声は届かないかもしれない。そんな絶望感を感じることもあります。でも、私は声をあげることをやめません。なぜなら私はここにいるよ!と他の人に伝えたいからです。

みなさんに、率直に質問させてください。
あなたは今、あなたの人生を楽しんでいますか?
自分の心に聞いてみてください。
精一杯充実した人生を送っていますか?
(手を上げなくてもいいですよ、どうせ見えないですからね)
どうぞ、目を開けてください。

人生の中には思いもかけない出来事がたくさんあります。
私は全く見えなくなって、全く聴こえなくなるなんて、10年前には想像すらしていませんでした。そして、いまや、足は車輪になってるし、機械が代わりに呼吸すらしてくれています。

私の世界は一度閉じてしまいました。私がコミュニケーションとモビリティを失ったとき、本当にこの世のすべてのものから切り離されたような気持ちになりました。
新しいコミュニケーション方法を獲得して、盲ろう者通訳介助者制度を利用し始め、そして私の回復するのをあきらめずに自らの時間を割いてくれた支援者や友人がいました。だから、今、私はここにいます。

私たち盲ろう者ひとりひとりは、何らかのかたちで「喪失と再生」というサバイバルな経験を持っています。これは、災害に通じるものがあるかもしれません。回復というのは、困難で長いプロセスです。しかし、私たちはあきらめることはありません。あきらめてしまうことは簡単ですが、あきらめたくないのです。私は今日のこの日まで生きのびてきました、そして、生きていれば人生は喜びに満ちたものになりうることを私は知っているからです。

災害というものは、どういう形であれ、私たちの人生を遮断させるべきではないでしょう。私はここで何が言いたかったのかというと、充実した喜びのある毎日を作ることこそ、災害リスク削減の基礎となるということです。

私、そして障害を持つたくさんの友達はアクセシビリティが極限に限られた毎日を生きのびています。みなさまと私たちの経験を共有することは、大変意味があることだと私は信じています。

もう一度、目を閉じてください。
自分の心に聞いてください。
大地震がまもなくやってきます。
あなたはどうやって私にそれを伝えますか?
津波が押し寄せています。あなたは気づいても、私は分からない。
あなたはどうしますか?
この部屋が火事になりました。あなたは気づいても、私は熱さを感じて火傷を負うまで分からないでしょう。
私をおいて逃げますか?
目を開けてください。

テクノロジーについて・・・
確かに、テクノロジーは私たちの生活を便利にし、可能性を広げています。
私たちの生活はテクノロジーなしには成り立たないのも事実です。
テクノロジーは素晴らしい、しかし、正直なところ、ほとんどの機械というものが盲ろう者には使えません。目覚まし時計にしても、自分でセットできるものはないし、体温計も、体重計も、自分自身で使えるものは本当にないんですよね。

私は将来、いつの日かテレビを自分自身で見られたらいいなという夢がありますが、我々はまだ人間の手をテレビに移植することはできていません。どなたか、テレビの機械に点字システムを組み込むという素晴らしいアイデアを持っている人がいましたが、メロドラマを点字で読んでもつまらないですよね。
隣にいるこの手がなければ、私はこの世の中を生きのびて、楽しむことはできないのです。

人はテクノロジーをつくりましたが、テクノロジーは人をつくることはありません。

私たち、盲ろう者が予期しない出来事に対して生きのびて、力強くいられるのは、周りの誰かが、気にかけてくれる人が、いるときなのです。
私たちは弱いものだとお思いの方もいらっしゃると思います。しかし、私たちの弱さこそが強みであり、世界をよりよい場所にしていくのです。他の人とのつながりを知っています。障害というものは価値ある資源です。

何が言いたいのかと申しますと、人は人とのつながりの中でしか生きられない、ということです。私たちが生きのびられるかどうかは、思いを寄せてくれる人、気にかけてくれる人がいるかどうかで決まってくるのです。

テクノロジーの力をもって、人は人の命を救う。人の命は人が救うのです。

ご清聴ありがとうございました。


英語原文は、
Panel discussion on "The Promise of Technology: Disability-Inclusive Disaster Risk Reduction and Humanitarian Action"
http://www.dinf.ne.jp/doc/english/world/panel141203en.html
に掲載している。